著者
奥谷 文乃 藤田 博一 村田 和子
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

うつ病の患者では食欲が低下し、体重が減少することが知られている。味覚・嗅覚機能の異常を来している可能性を検証するために本研究を実施した。同意の得られたうつ病患者さんに、嗅覚検査を実施したところ、ほぼ全例で嗅覚機能は正常であり、functional MRIにより中枢性の嗅覚情報処理機能を検索すべき症例が得られなかった。しかしながら、同様に抗うつ剤で治療を受けている「パニック障害」の患者さんでは嗅覚閾値が検知・認知いずれもきわめて低いことがわかった。以上より、「うつ病」に限らず、各種精神神経疾患における嗅覚機能の検索が診断・治療の重要な情報を提供する可能性が示唆された。
著者
鍋島 茂樹
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

麻黄湯は古来よりインフルエンザに効果があることが知られていたが、そのメカニズムについては解明されていない。我々は、A549細胞にインフルエンザウイルス(PR8株)を感染させ、同時に麻黄湯を添加した際に、麻黄湯によりウイルス増殖が抑制されるかどうかを検討した。培養24時間後、培養液中の感染性ウイルス価、ウイルスRNAおよびウイルス蛋白は著明に減少した。次に麻黄湯の添加時期をずらして検討したところ、前処置、または感染6時間以内で最も効果が高いことがわかった。麻黄湯は、インフルエンザウイルスの感染初期に、何らかの機序でウイルスの侵入または、増殖を抑えていると考えられた。
著者
金蔵 拓郎
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究はCD147/basigin を介するTh細胞の分化制御機構と乾癬病態形成を解明する目的で計画された。CD147/basiginは解糖系の調節を介してTリンパ球の分化と活性化を制御している。すなわちCD147/basiginはモノカルボン酸トランスポーター(monocarboxylate transporter; MCT)と複合体を形成することでMCTの細胞膜への正常な発現をサポートし、解糖系の代謝産物である乳酸の細胞膜輸送を制御している。平成30年度はCD147/basiginの解糖系を介するT細胞の活性化に対する関与をin vitroの系で検討することを計画した。この検討のために野生型マウス由来のT細胞 (T-wt)とCD147/basiginノックアウトマウス由来のT細胞 (T-ko) を用いてそれぞれPMA + ionomycinあるいは固層化した抗CD3/抗TCR抗体で刺激し、MCT1, MCT4の細胞膜上の発現を観察する。平成30年度にはT細胞を刺激する実験系を確立した。ノックアウトマウスは連携研究者が保有しておりヘテロ同士を掛け合わせてホモのノックアウトマウスを得るが、CD147/basiginの機能上ホモのノックアウトマウスの産生効率が極めて低く、研究に十分な数を得るのに長期間を要することが判明した。そこでメイティングによる繁殖を進める一方で、乾癬では免疫系細胞が病態形成に重要な役割を果たしている事実に鑑み、ホモのノックアウトマウスの骨髄を用いて骨髄キメラマウスを作成する方針とした。骨髄キメラマウスはホモのノックアウトマウスが1匹得られれば作成可能である。平成30年度はキメラマウスのレシピエントマウスの繁殖を行なった。
著者
日暮 美奈子 浅田 進史 鈴木 楠緒子 松本 彰 伊東 直美 大井 知範
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本共同研究は、トランスナショナル史とジェンダー史の視点から帝政期ドイツの人的移動とその管理体制について分析したものである。たとえば、研究代表者は「婦女売買」に関わるドイツ国内の警察ネットワークの形成を検証した。また、共同研究者は植民地都市青島における売春業者によって斡旋された日本人女性の事例を扱った。これらの研究を通じて、本研究プロジェクトは帝政期ドイツのトランスナショナルな人的移動と国際秩序の形成が密接に関連する過程を示した。
著者
吉江 崇
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、鎌倉時代史の基本的文献である『平戸記』に関して、信頼に足るような新たな校訂本を作成し、研究の基盤整備を行うことにある。第3年度にあたる平成30年度には、前年度に終えた伏見宮家旧蔵本の校訂作業を基盤としながら、伏見宮家旧蔵本に含まれていない年次について、校訂作業を実施するとともに、人名・地名の比定作業および人名索引の作成、各記事を端的に要約して示すような標出の作成に着手した。これまで研究協力者などで構成される8人のメンバーで校訂会を開催し、伏見宮家旧蔵本の校訂を実施してきたが、それが一段落したことを受け、伏見宮家本以外の校訂、人名・地名の比定、標出の作成、といった3つの部門に分け、それぞれが担当の作業を行うこととした。そして、計4回の会合をもって、各担当部分の進捗状況の確認や、作業を遂行する上で発生した諸問題の検討などを行った。校訂作業については、日次記部分の全てにおいて、諸本の相違点を抽出した。その後、抽出した写本間の相違点について、どの文字を校訂注として示すか、または示さないかを検討し、校訂を確定させる作業に着手した。このような形で平成30年度中に校訂を確定し終えたのは、全体の半分程度である。人名・地名比定作業については、日次記全体から人名・地名を抽出し、比定作業を順次行った。平成30年度中に一通りの比定を終えることはできたものの、なお検討が必要な箇所が少なからず存在する。また、比定ができたものについても、実際にどの記載を新訂本で明示するかについては、これから検討することになる。標出作成作業については、全体の半分程度で標出を作成することができた。その際、すでに標出を行っている大日本史料の記述方法などを参考にした。
著者
江藤 みちる
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

不妊は大きな社会問題であり、ストレスの関与が指摘されている。研究代表者はストレス関連生理活性ペプチド「マンセリン」が卵管内腔上皮の分泌細胞に存在することを見出した。本研究では、卵管マンセリンの性周期、発達およびストレス環境下での局在について検討した。マンセリンは生後7日のラットでは発現せず、生後14日で卵管内腔の一部に発現していた。成獣ラットでは卵管内腔に広く局在し、性周期やストレス負荷に伴う局在の変化は見られなかった。視床下部の弓状核ではドーパミン神経と共存し、マンセリンが視床下部-下垂体-性腺軸の調節に関与することが示唆された。
著者
南 秀雄 趙 哲済 杉本 厚典
出版者
一般財団法人大阪市文化財協会
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

淀川・大和川河口の低地に位置する大阪では、洪水対策なくして都市の形成・拡大はありえなかった。本研究では、大阪市内で増えてきた堤防跡などの関連遺構の発掘成果を活かし、急速に進んできた古地形復元とあわせ、考古学・地質学・堆積学・河川工学の協働により、都市大阪における5世紀から17世紀の治水・水防遺構の実態と機能を明らかにする。また、それらが基盤となってどのように街づくりや街の形態が規定され、次代に受け継がれていったのかを通時代的に究明することを目指す。
著者
宮地 正人 箱石 大
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1.中津川に出張し、間譲嗣家、間和夫家、菅井深恵家、市岡楯子家等に出張し、各家に所蔵されている大量の書翰類を中心に撮影し、焼きつけ写真をもとに、年代、差出人、受取人、内容確定の作業をおこなった。2.中津川国学者のネットワークは、東美濃においては、北部の附知町にまで達しているため、同町の田口慶昭家を訪問し、関係史料を調査・撮影した。3.北三河稲武町の古橋源六郎家は、中津川国学者と深い関係を有し、幕末期の当主は平田国学者でもあったので、同家に赴き、調査・撮影をおこなった。4.飯田市を訪問し、同市の平田国学者関係史料の収集方について調査した。5.国学者の動向を知る上では、滋賀大経済学部に所蔵されている近江平田国学のリーダーであった西川吉輔の風説留は重要な史料なので出張、撮影したフィルムの焼付けをおこなった。6.市岡楯子家に所蔵されている嘉永元年から明治初年にかけての、各地の政治情報を収録した10册におよぶ大部の風説留を、史料編纂所に借用し、写真撮影をおこなった。7.馬籠の藤村記念館所蔵の「大黒屋日記」は、中津川宿の動向を知る上で不可欠の史料であるため、撮影申請をおこなったが、プライヴァシー問題の記載を理由に拒否された。この結果、同館に赴き、必要部分の史料筆写をおこなった。8.風説留は詳細目録がないと使用しにくく、また史料引用の上でも必要なので、一点目録を作成した。9.各家で収集した史料に関しては、全点にわたり年代を確定し、年月日順に編纂をおこなった。10.編年目録・風説留目録・大黒屋日記中中津川関係史料書抜の三目録を纏めて科研報告書を作成した。
著者
月村 太郎
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は21世紀初頭の国際政治において喫緊の課題となっている民族紛争について、政治学、比較政治学、国際政治学の分析ツールを利用して、特に発生、激化・拡大、予防、解決について論じることであった。得られた知見を纏めると以下のようになる。1.民族紛争の特徴について-民族紛争は一般的に泥沼化する傾向が強い。その第一の原因はリーダーシップの弱さであり、逆説的だがそれ故に立場の急進化が見られる。そこには代行者の存在、中央と出先の温度差が存在する。第二の原因は民族紛争ではゲリラ戦術が採用され、小火器が主に利用されることである。第三には争点がアイデンティティであることが指摘できる。2.民族紛争の発生について-民族紛争発生の原因には基底的原因と直接的原因がある。そして基底的原因の問題性が悪化して直接的原因となるパターンと、基底的原因に何らかの変化が生じてそれが直接的原因となるパターンがある。また民族紛争の発生と貧困化と民主化は密接な関係にある。3.民族紛争の激化と拡大-まず紛争の垂直的次元の成長である激化と水平的次元の成長であると拡大は区別しなくてはならない。激化過程では当事者間のコミュニケーションの減少、欠如が見られ、それが激化に大きく作用し、また激化によって争点が変化することもある。そこでは安全保障ジレンマが影響することもある。民族紛争の拡大には伝播と介入がある。4.民族紛争の予防-予防策のうち、現在の国際社会において許されるのは多民族性を維持しながら国境の変化させない方策である。代表的なものは、連邦制、多極共存、文化的自治があるが、いずれも統治の効率性が低下する。5.民族紛争の解決-解決の主体は外部者である。平和維持は現在盛んに利用されているが、平和維持は紛争を「瞬間冷凍」したに過ぎない。紛争を根本的に:解決するのは平和構築が必要である。軍事介入の場合には、介入者の有権者(=納税者)への説明責任が前提である。研究成果報告書では、以上の特に1.〜3.の観点から、旧ユーゴ内戦を事例研究として取り上げた。
著者
岩井 宜子 内山 絢子 後藤 弘子 長谷川 眞理子 松本 良枝 宮園 久枝 安部 哲夫
出版者
専修大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究においては、平成になってからの日本における殺人・傷害致死の第1審の判決例を収集し、その加害者・被害者関係をジェンダーの視点で分析し、おもに、家庭内暴力(DV)が原因として働くものがどの程度存在し、どのような形で殺害というような結果をもたらしたかを詳察することにより、今後の対策を考察することを意図した。昭和年間の殺人の発生状況との比較において、まず、注目されるのは、えい児殺の減少であるが、昭和年間にかなりの数のえい児殺が存在したのは、女性の意思によらない妊娠が非常に多かったことに基づくと考えられ、平成になり、少子化の背景事情とともに、女性の意思によらない妊娠も減少したことが推察される。しかし、年長の実子を殺害するケースは、増加しており、その背景には、被害者の精神障害、家庭内暴力、非行などが、多く存在している。夫・愛人殺の増加の背景にも、長期間にわたる家庭内暴力の存在が観察される。「保護命令」制度などが、うまく機能し、家庭内暴力から脱出し、平穏に暮らせる社会への早期の移行が待たれる。女性が殺人の被害者となり、また加害者となるケースは、多くは家庭内で発生しており、その背景には、種々の形の暴力が存在している。児童虐待の事案も顕在化が進んでいるものと考えられるが、徴表に対し、より迅速に対応し、救済するシステムがいまだ確立していないことが伺える。家庭内の悲劇を社会に救済を求めうる実効的なシステムの構築が必要である。
著者
佐々木 真理
出版者
実践女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍した女性作家イーディス・ウォートンの作品を中心にその思想と手法の変遷を検証することで、女性の知識人の社会的地位がどのように構築され、そして表象されてきたかについて明らかとした。具体的には、ウォートンに与えた同時代の女性知識人の影響について考察することで知性の表象にはジェンダーの問題が深く関わっていたことがわかった。次に、当時の反知性主義と教育について分析し、世紀転換期における社会の変容が女性の知性のあり方と自己表象に大きく変化をもたらし、その変容に対するウォートンの視点が、当時の女性作家にあって独自の視点であるという結論が得られた。
著者
梅本 充子 野崎 玲子 神保 太樹
出版者
聖隷クリストファー大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

平成23年度、地域在住高齢者に対して、アロマを部屋に充満させた回想法を行った。実施前後の比較では、自律神経の活性化がえられた。他は、いずれも有意な差はなかった。次に道具を使った一般的回想法を実施した。実施前後の比較では、いずれも有意な差は、なかった。平成24年度は、懐かしい匂いを用いて行った。記憶力が、実施前後有意な差が得られ改善した。平成25年度は、懐かしい音を使った回想法を実施した。実施前後、実施後2ヵ月までQOLの改善と記憶の有意な傾向がえられた。一般的な回想法で使用する懐かしい道具に音や匂いを加えることで、視覚、触覚、聴覚、嗅覚の多彩な感覚刺激が脳への刺激を高めたことが示唆された。
著者
尾崎 明人
出版者
名古屋外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,日本語学習支援の活動に対する日本語ボランティアの意識を明らかにすること,ボランティア教室における教育方法の改善策を探ることを目的として,(1)ボランティアが運営する地域の日本語教室におけるコミュニケーションは,外国人の日本語学習,日本語習得にどのような効果をもたらしているか,(2)そのコミュニケーションは,日本人ボランティアにとってどのような学びの場になっているか,という二つの研究課題を設定した。この研究課題に沿って,1年目には愛知県下の日本語ボランティアおよそ1000名にアンケート調査票を配付し,475名分の有効回答を得た。2年目に調査票の量的分析を行い,3年目は自由記述欄の分析を行った。その結果,50代の主婦が全体の23%(107名)とボランティアの主力であること,ボランティアの約1割は420時間の日本語教師養成講座修了生など教師の卵であること,クラス形式の活動に従事するボランティアがもっとも多く,ボランティアの26%は日本語がほとんど分からない入門レベルの指導に当たっていることなどが明らかになった。ボランティア活動の意義として,外国人から感謝されることにやりがいを感じる(182名),外国人の日本語が伸びるのを見ると嬉しい(157名),外国人との交流で自分の世界が広がった(123名)など,日本語ボランティア活動の意義を示す自由記述が見られた。一方,外国人の多様性に対応するのが難しいという回答が多かった。1年目と2年目は日本語教室を合計36回見学し,2年目に16回分の授業を録音,録画し,7回分を文字化した。3年目は,談話資料をもとに授業展開の記述および日本人ボランティアの教授行動の分析を行い,さらに教室でのコミュニケーションを通して外国人学習者が定型表現を獲得していく過程の一端を明らかにした。
著者
三保 忠夫
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

古代の日本律令国家の時代から近世末期(近代の一部)までの文字資料を調査し、日本語の助数詞について検討してきた。7、8世紀の古文書・木簡等を中心とする資料、9〜19世紀の間の古文書類・古記録類・古辞書類等を中心とする資料を調査・研究した結果、ひとくちに「日本語の助数詞」と称されるものは、時代的な経緯により、性格上、「三層」構造となっていることが判明した。その第1は、「奈良時代の助数詞」であり、その第2は、「中古〜中世の助数詞」である。前者は、大陸渡来の文書行政の一環として導入され、「文書語」のひとつとして位置付けられる助数詞の体系である。後者は、それが日本社会に融け込み、日本的変容を遂げながらも、いわば「伝統的助数詞」として安定的な地位を獲得していった体系である。中世後半から近世にかけて、特に書記言語の世界において、その「伝統的助数詞」は、"典拠・故実"を有する「文書の作法・礼法」ともされた。だが、中世後半から近世にかけて、「第3の助数詞」が登場する。これは、禅宗文化や日明交易にともない、明国から(正確には元国から)入ってきた新しい助数詞の体系である。文房四宝の"筆・墨"の数量表現は、旧来の伝統的助数詞では「一管」「一挺」というが、これは「一枝」「一笏」という。江戸時代には、新時代的な言語(明国語)の体系と共に、こうした新しい助数詞が、文人・禅僧を中心とする文化人社会に行われていたのである。この「第3の助数詞」体系につき、従来、言及されることはなかった。この度、初めて明確になった知見であり、重要な研究成果であった。以上のような研究経過にともない、本研究では、個別的、具体的な種々相についての研究も行った。以後は、研究成果を速やかに公表し、各位の批判を得るよう努力する。末尾ながら、日本学術振興会より科学研究費補助金の交付を賜ったことにつき深く感謝申し上げたい。
著者
三好 康之 亀田 雅博 上利 崇 菊池 陽一郎
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012

視床下核などに対する深部脳電気刺激療法(DBS)は、パーキンソン病(PD)患者のwearing-offを改善し、ADL、QOLの向上をもたらすことが可能なため、重度のPD患者に対する有用な治療手段として確立している。近年、諸外国より、認知行動療法、薬物療法などのいかなる治療によっても十分な効果を得られなかった重度のうつ病患者に対してDBSが有効だったという報告が相次いで寄せられている。しかし、我々日本の脳外科医の立場からすると、動物実験に基づくscientificなデータの乏しさゆえ、DBSでうつ病を治療することが、医学的にも倫理的にも妥当なのか判断できないのが現状である。このような背景から、本研究ではうつ病に対するDBSの効果について、動物実験によるscientificな評価を行うことを目標として、今年度はうつ病モデルとしてどのモデルを利用するか検討した。これまでの報告では、うつ病モデルとしては、Tail suspension model、Forced swim model、Learned helplessness modelといったものがあり、これらはすでに抗うつ薬の評価などで用いられており、うつ病モデルとしてすでに十分に確立されているが、検討を重ねた結果、モデル作成から治療効果の評価といった一連の過程において安定した実験結果を得るためにはForced swimならびに,learned helplessnessを利用した市販システムを用いて実験を組むのがベストという結論を得た。
著者
関沢 和泉
出版者
東日本国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

日本の大学をはじめとした高等教育の改革において、組織ガバナンスの改革が課題とされています。そのために英米やドイツ、フランスの事例が先進事例として参照されるのですが、イタリアの事例が言及されることはあまりありません。しかし、イタリアは、主要な設置形態等で違いはありますが、英米モデルを参照しつつ実施された1994年からの各大学への評価制度導入を伴う権限委譲、2010年から学長権限強化、そしてその後の困難というプロセスが日本と類似しています。そこで一連の流れを構造的に分析することで、日本での改革において、同じ困難に陥らないようにするための条件を見出します。
著者
溝口 俊弥
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

非コンパクト剰余類に基づく N=2 超対称共形場理論によって特異的なカラビヤウ多様体を記述し、それをヘテロティック弦に応用した。一般の極小共形場理論が結合した系での局在場のスペクトラムを導き、特に3世代模型を構成した。一方、孤立特異点をもつ非コンパクトカラビヤウが、NS5-ブレーンと双対である事実に基づいて、交差する 5-ブレーンを表す超重力解中のゲージーノのディラック方程式を解き、 E6 の 27 および 27* に属するゼロモードがそれぞれ2および1世代存在することを示した。さらに、それが超対称シグマモデルの結果と一致することを示し、準南部・ゴールドストンフェルミオンによる世代統一の可能性を指摘した。
著者
武内 清 岩田 弘三 濱嶋 幸司
出版者
敬愛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

学生文化の変遷を、学生調査のデータをもとに考察した。特に、大学の「学校化」、学生の「生徒化」という側面に注目した。調査は2013年秋に全国の15大学(国立3校、私立12校)の大学生2789名から回答を得た。データから、現状に満足している学生の「生徒化」が読み取れた。授業の出席率は上昇し、授業満足度、友人関係満足度、そして大学満足度も上昇した。学生は、真面目で、素直で、従順になっている、つまり「生徒化」している。その背景には、大学生の就職難への対応と大学改革や各大学の努力の結果でもある。
著者
中山 大介 増崎 英明 三浦 清徳
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

自己免疫疾患の多くは女性に多く、妊娠により症状が変化するが、そのメカニズムは不明である。本研究では妊娠中に胎児細胞が母体血中に混入して母児の融合細胞を生じる現象(マイクロキメリズム)に着目し、自己免疫疾患のひとつである全身性強皮症患者を対象として患者血中から胎児DNAの検出を試みた。全身性強皮症患者では、他の自己免疫疾患患者と比較して血中に胎児由来のDNAが高い割合で検出され、マイクロキメリズムが発症に関与していることが示唆された。