著者
内田 隆三
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、(1)探偵小説のテクストの成立において、大都市のセンセーショナルな消費文化と膨大な群衆の出現という社会性の場の変化が本質的な媒介要因としてはたらいたことを見出し、探偵小説登場の歴史的な過程を明らかにした。(2)探偵小説のテクストの基本構造を分析し、探偵と犯人(殺人者)という二人の登場人物のあいだに構造的な類似性と同時に奇妙な差異からなる「双数性」(duality)の関係を見いだし、テクスト分析のツールとして概念化した。この「双数性」の構造は、探偵と犯人の同型性と同時に非対称性を担保するものであり、探偵小説のテクストを構成する基本的な要素として機能している。このようなパースペクティヴから探偵小説の歴史を見ると、ふたつの重要な「転回点」があることがわかる。第一の転回点は1920〜30年代の探偵小説の本格化・形式化の時期に当っており、第二の転回点は1980年代の異常犯罪を描いた作品群が人気を得るとともにはじまる。第一の時期は高度な消費社会が成立しはじめたときで、近代的な主体の意識が自我=アイデンティティの不安の念に駆られ、それが探偵雄小説の形式化をもたらしたが、その不安な空洞を埋めるために、人間的な動機の理解に焦点を置くコナン・ドイルの『緋色の研究』型の言説が補填された。第二の時期には人間的な動機の実定性や有効性が消去され、犯人を異様なモンスターとして同定する科学的捜査の微視的な過程に焦点を置く新しいタイプの言説が生み出されるようになった。このように、本研究による重要な貢献は、探偵小説のテクストの構造的変化と消費社会の論理との相関関係を歴史的に明らかにし、また、これまでの探偵小説の研究や解釈にはみられなかった独自の系譜学的な展望を与えたことにある。
著者
長尾 秀夫
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

この研究では、1991年からの学習困難児に対する教育支援の研究を発展させて、極低出生体重児の学習困難、特に(1)不器用、(2)算数の学習困難、(3)集団参加の困難に対する超早期教育支援を行い、子どもがもつ課題の発見法と支援モデルの雛形を作りました。また、遠隔地の教育支援のために遠隔双方向ビデオ会議システムを定期的に使用し、その効果的な活用法を明らかにしました。
著者
奥田 昌明
出版者
千葉県立中央博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

琵琶湖の堆積物を分析し、モダンアナログ法を用いて化石花粉(%)を古気温(℃)に定量変換することによりMIS1~MIS11間氷期の古気温を復元した。MIS5eおよびMIS11は、気候状態が現在と似ていることから温暖化後の地球のアナログとみられる。このMIS11(43万年前)において本研究では、琵琶湖が今の和歌山県南部くらいの暖かさにあったことを突きとめた。具体的には、7千年前の気候最適期に対して+1~1.5℃、300年前の産業革命前と比べて+1.5~2.5℃の温暖環境となる。これは100年後の気温上昇と比べるとやや足りないが、今後のCO2削減努力いかんでは100年後の地球のアナログになり得る。
著者
青木 隆浩 小池 淳一
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,異業種間における職人技術の関係を解明することを目的としている。一般に,職人の技術は他社のみならず,同僚に対してもしばしば秘匿とされている。そのため,同じ業界であっても,製造技術は多様である。一方で,変え難い伝統的な技術が存在する。その技術が消滅する原因は,原材料が入手困難になることや,関連業者が淘汰されることなど,外的な要因による。そして,それらを通じて,職人の技術は大きく変化すると考えられる。
著者
龍村 あや子 谷 正人 マーマット ウメル 小柴 はるみ 屋山 久美子
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は新疆ウイグル自治区のウイグル人作曲家、ウメル・マーマットを主たるインフォーマントとして、比較文化・文明の観点から中央・西アジア音楽研究に携わってきた研究代表者(龍村)が、トルコ(小柴はるみ)、イラン(谷正人)、アラブ(屋山久美子)の音楽研究者と共に、トルコ語系民族のウイグルと他の中央・西アジア地域の音楽との比較を行ったものである。今日の伝承におけるウイグルの「ムカーム」は、他の地域の伝統よりも固定性が強く、各ムカームが固有の旋法のみならず、固有のリズムと舞踊の様式を持っている。ムカームに基づく一人の奏者の即興演奏も見られるが、音楽・舞踊の一体化した全体が一つのムカームの表現なのである。
著者
松崎 正治
出版者
同志社女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

まず、先行研究の整理と分析枠組みの研究を行った。先行研究では、ライフヒストリーアプローチに焦点化して検討した。また分析枠組みの研究では、ライフヒストリー、カリキュラム経験、学習記録の3つの視点を設定した。これに基づいて、中学校国語科教諭・遠藤瑛子と高校国語科教諭・荻原伸にインタビューを重ね、ライフヒストリーを構成した。さらに、国語科授業に関するドキュメントや学習記録を収集し、それぞれのカリキュラム経験を分析した。遠藤瑛子教諭の場合、1990年度の「風-自然とともに生きる」というカリキュラム経験を通して、《往還するコミュニケーション》と《情報力》を重視する授業スタイルを創り出し、授業スタイルの選択肢を増やしていったことが分かった。また、1985年の単元「写真からことばへ」で意識されていた《再文脈化》と、1987年の単元「旅に生きる」で意識されていた《人間の生き方の認識-夢・希望》を、1996年の単元「あれから一年 強く生きる」では結びつけたというところに遠藤瑛子の「授業スタイル」のもっとも重要な変容があることが分かった。荻原伸教諭の場合、教師としてある志向性を持って教職生活に臨み、新任のおよそ十年という時間を経て、その志向性をどのように実践的に具体化していったのか、その力量形成の過程を検討した。。そのような教師の志向性のもとに、実践の「テーマ」と「モチーフ」が規定され、具体的な実践が生成される。荻原伸教諭の場合は、次の3つの志向性から実践が生み出されていることが分かった。(1)「ほんまもん」性で自分を試そう、(2)愛と世界平和、(3)関係性と批判的思考の重視→自他問題と学校言説の相対化という実践のテーマ。このように、荻原伸教諭の教職生活の最初十年間の初任期は、こういう志向性に支えられながら、自分の実践テーマを深めていったことが分かった。
著者
安藤 清一
出版者
名寄市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ウナギ血漿中には胆汁色素であるビリベルジンが存在し、青緑色を呈する。本研究では、これまで生化学的に解明される機会の乏しかった、ウナギ血漿ビリベルジン結合タンパク質(アンギラシアニンと仮称)の構造と機能について検討した。アンギラシアニンは分子量75, 000ダルトンの単量体として血漿中の非リポタンパク質画分に存在した。N末端および内部アミノ酸配列を決定した結果、アンギラシアニンは血漿中の遊離ヘム色素を結合する糖タンパク質であるヘモペキシン様タンパク質と高い相同性を示すことが明らかとなった。
著者
森 明彦
出版者
関西福祉科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

(1)三一権実論争が被差別民の性格に生まれついての悪人、穢れた存在との刻印を与える契機となったことを解明した。(2)神祇令散斎条の注釈では二つの新見解を提出した。i罪の決罰を行う場である市での官私間の交易が自由な価格設定で行われていたこと。ii祈年祭の成立は新しいとする説に批判を加え、プレ祈年祭というべき予祝の祭の存在を指摘した。(3)良源と仲算との三一権実論争の具体的姿を示すと考えられる良助の「天台法輪摧破法相外道銘」の復刻を行った。
著者
加藤 康子 三宅 興子 高岡 厚子
出版者
梅花女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

近年、絵本研究は進んだが、国際比較研究は未だ十分とは言えない。そこで、「狐」「イソップ寓話」という観点から、日本、イギリス、フランスの絵本を比較研究した。まず、各国のイソップ寓話受容と絵本化の流れを確認し、狐が中心となっている話をめぐって、挿絵や絵本作品を収集し、比較分析を行った。結果、イソップ寓話の受容は、各国の文化事情を反映して異なっていることが分かった。日本では、外国からの文化導入に特徴が見出される。このように、三ヶ国の挿絵や絵本には、その国情、文化、画家の個性が色濃く反映していることを確認した。
著者
宮本 陽一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、日本語の比較構文に生起する「より節」が目的語の数量を比較対象にする場合に、「かき混ぜ規則(scrambling)」、「数量詞上昇(Quantifier Raising)」等によって、生成された位置とは異なった位置に移動できることを明らかにした。これは、付加詞からの移動が常に排除されるわけではないことを意味している。この結果から、付加詞(特に二次述語)であっても主節と(素性照合によって)関係を結べる場合には抜き出しが許されることを明らかにした。
著者
荒井 良雄 箸本 健二 長沼 佐枝
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,条件不利地域における地理的デジタル・デバイドに対する地方自治体等による政策的対応とそれを利用した地域振興策の実状を調査・把握しようとした.その結果, 1)条件不利地域においてもブロードバンド環境は整備されてきているが,いまだに未整備地区が残存していること, 2)山間地域等では地上波デジタルテレビ放送移行への対応として整備されたケーブルテレビ網がブロードバンド整備にも有効であったこと, 3)情報システムを用いた地域振興では既存情報施設の十全な活用とソフト面での工夫が重要であること,等が判明した.
著者
江原 絢子
出版者
東京家政学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

<目的・方法>日本の近世・近代における日常食と饗応食の構造的特徴を明らかにするため、各地域、各家において実施された具体的な家文書を収集し、これらを調査・分析することとした。各家に残されることの多い記録は、婚礼や仏事など儀礼食の記録である。それらを調査するとともに、日常の食の記録のある日記等にも目配りしつつそれらの献立を調査し、地域間の異質性共通性を明らかにすることを目的とした。各図書館・文書館の家文書の調査および未公開の家文書を調査し、その食事記録を収集して目録を作成し、具体的な献立のある史料については写真、複写をおこないその分析をおこなった。<結果・考察>古橋家文書(三河)、千秋家文書(美濃)、大前家文書(飛騨)には婚礼献立が多く残されておりこれら史料を中心としてその婚礼献立を調査し、その特徴の概要を明らかにした。これらの文書は、いずれも庄屋クラスの家であり、地域も隣接している。いずれの史料も婚礼の献立の流れは、酒の儀礼、膳部、酒宴に分けられ、特に江戸時代にはこれら三家とも同じ流れを示したが、膳部は本膳のみがほとんどでわずかに、二の膳付き献立もみられた。しかし、明治後期から大正期の史料には、酒の儀礼に続いて酒宴の酒肴が先に供された後、本膳のみの食事が出されるようになる様式の変化があり、この傾向は他の史料についても同様の傾向を示した。婚礼に料理屋が関わることにより、会席料理の形式が婚礼にも用いられるようになっていく様子がうかがえた。
著者
秋永 優子 金子 小千枝
出版者
福岡教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

日常の食生活を,子どもたちが毎日食べることによって大きな影響を受けている学校給食での手法を踏まえ,家庭における実態について,「食の質」と「食文化の回復」および「グリーン購入」との関連性の観点から捉えることを目的とした。まず,6つの小学校の学校給食の質を,児童と教師による教室サイドの認識と,栄養士と調理員による調理場サイドの現状という2つの角度から,点数化して評価したところ,それらの結果は相関性が高く,かなりよく一致し,点数化の方法が有効であることを認めた。次に,家庭で主に家事を担当している人の食生活に関してアンケート調査し,527名から回答を得て,「食の質」,「食文化の回復」,「グリーン購入」の3つの観点から点数化して評価することを試みた。「食の質」として,食事が六つの基礎食品群を満たしているか,ご飯主食回数,料理の品数,しょうゆの原材料について,「食文化の回復」として日常食が和食であるか,みその使用頻度,保存食品および正月料理,郷土料理の家庭での手作りについて,「グリーン購入」として食品の購入先,購入時の優先事項,台所用洗浄剤の種類,トレーの処理,レジ袋持参などの項目別に点数化した。「食の質」,「食文化の回復」および「グリーン購入」のそれぞれについて回答者ごとに得点化したことろ,どの項目においても,人によって点数の差が大きかった。食生活の質とグリーン購入に関して項目の一部を用いて調べた結果,強い相関は見られなかったものの,関連性が認められた。
著者
板橋 義三
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

東北地方、特に秋田(阿仁地域)、青森(西目屋地域)のマタギ語の語彙を詳細にフィールド調査した。調査した言語学的レベルは語彙・意味だけでなく句や節、アクセント、イントネーションも含み文レベルである。また調査した語彙領域は日常生活マタギ語彙と談話、狩猟関連語彙、食文化語彙、儀礼・儀式関連語彙、その他必要と思われる語彙(インタビューと語彙調査)である。アイヌ語との関連も念頭において、これらの語彙をビデオとICレコーダーに収録したが、山での談話に関しては収録ができなかった。調査して収録できた語彙はすべて文字化し、それをデータベース化し、アルファベット順にまとめた。その語彙データベースを用いその分析を行い、その特徴などをまとめて考察し、それを口頭発表すると共に投稿論文として著した。できる限り山でのマタギの生活で使用する衣服や道具は実際に身に付けてもらい、マタギに関連する文化財はすべてカメラに収めた。それらの品とその解説記述を最終的にはマタギ語辞典に掲載した。既存のマタギ語の語彙文献も縦横に駆使し、現存するフィールド調査で得られた語彙は、様々な視点から分類し、それぞれの視点において詳細に分析し、アイヌ語との関連語彙は語源もできる限り明らかにし、マタギ語内のアイヌ語の語彙体系も詳しく分析した。アイヌ語と意味と形態素が近似する場合には、アクセントとイントネーションにも充分に気をつけ、その対応関係の有無も分析した。最終的にマタギ語の語彙をまとめ上げ、データベース化し、主に語レベルを中心に文レベルまで含め、包括的なマタギ語辞典を編纂した。
著者
大倉 元宏
出版者
成蹊大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

以下の3つのテーマについて,並行して研究を進めてきた。テーマ1 :視覚障害者用道路横断帯の耐久性向上と補修時期に関する調査研究テーマ2 :環状交差点における道路横断支援に関する研究テーマ3 :二次課題法による心理的ストレスの評価テーマ1に関しては,愛媛県松山市のある交差点の横断歩道に硬度の異なる3種類のウレタン系樹脂突起を使って道路横断帯を敷設し,摩耗経過を継続測定したところ,軟らかいほど摩耗が少ないことを示唆する結果を得た。また,補修時期の目安を求めるため,突起の高さと足裏での検知性の関係を目隠しをした晴眼被験者について調べたところ,高さが2mmになると検知性に低下があることが認められた。テーマ2に関しては,三鷹駅前のロータリ交差点(環状交差点)における平成22年度のフィールド実験において歩道縁石と横断歩道の方向が直交していないところや歩道上に誘導用ブロックが設置されていない箇所では方向を見失う場合が多々みられたことを受け,改修工事が行われた。すなわち,歩道縁石と横断歩道を直交させ,歩道上には誘導用ブロックが敷設された。前と同様,モデルルートを設定し, 5名の晴眼者と10名の視覚障害者の参加を得て,フィールド実験を行ったところ,方向を見失うケースは激減し,改修工事の妥当性が確認された。テーマ3に関しては,愛媛県のあるリハセンターの協力を得て,臨床試験を行った。道路横断を含むモデルコースを設定し,そのリハセンターに在籍する訓練生を対象に,タッピング(1秒間隔で押しボタンスイッチを押す)を二次課題法として,歩行訓練の進行に伴う二次課題のパフォーマンスの変化を調べたところ,向上がみられた。歩行における心理的ストレスの測定に二次課題法の適用できる可能性が示唆された。
著者
一色 哲 一色 哲
出版者
甲子園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究によって従来史料的制約から空白になっていた1940年代後半の沖縄での沖縄キリスト聯盟等のキリスト者の諸活動の実態がほぼ解明された。また、米軍占領下で行われた琉球王国末期の宣教師・ベッテルハイムに対する記念行事の研究や宮古・八重山のキリスト教受容の比較研究(交流史的研究)をきっかけに、琉球列島での近代以降、戦前・戦中のキリスト教史を戦後の米軍占領下の歴史に連結するという新たな展開が展望された。
著者
和田 淳一郎 坂口 利裕
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

通常、サーベイデータによって行われる伝統的なPB-C+Dモデルを、投票区レベルの客観的集計データによって実証することに成功している。なお、データベース構築の基本単位である投票区を扱うに当たり、ナッシュ社会的厚生関数に基づく指数の作成を行い、時系列的に、あるいは国際比較によって、一票の不平等の要因分解を行った。更にその分離可能な指数群の整数値最適解から、議員定数配分に関わる結果を生んだ。
著者
尾崎 行生 大久保 敬 増田 順一郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

食用ハス(レンコン)肥大の日長反応感受部位を調査したところ,いずれかの葉で短日を感受すれば,根茎の肥大が起こることが分かった.低(赤色光/遠赤色光)比率のフィルムで被覆した栽培を行うと,長日条件下であっても根茎の肥大が促進された.短日処理開始2週間後には根茎の肥大反応が起こり始め,この反応にはジベレリンが関与している可能性が高いことが分かった.食用ハスの根茎は「休眠」を持ち,その「休眠」は低温によって打破されると考えられた.
著者
井上 さつき 松本 彰
出版者
愛知県立芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

毎年、私たちは研究の方向性を検討するために、数回の打ち合わせを行った。また、ヨーロッパと日本で数回現地調査を行った。 2010年にはドイツ南西部、2011年には中部 (旧東ドイツ)を共同で調査し、さまざまな資料を収集することができた。私たちはいくつかのシンポジウムや学会で研究発表し、また研究誌や書籍の形で成果を発表した。ヨーロッパと日本の合唱運動のいくつかの事例研究を通じて、この分野の基礎研究を行った。
著者
吉田 文久
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

現在英国の17箇所の町、村に残存する民俗フットボールのうち、14箇所のゲームの実態をできる限り正確に記録し、それらのゲームを類似性、多様性の視点から整理した。また、それらが近代化せず、存続した意味について考察した。ゲームが残存する根底には、それを近代スポーツの発展史上に位置づけるのではない、固有の意味、つまり強い伝統維持の意識、地域のアイデンティティー形成のための有効的手段という意味があった。特に儀式化されているゲームは地元の名士や長老、かつての勝者をメンバーとする独自の委員会によって組織的に運営されている。民俗フットボールは、近代スポーツからそぎ落とされていったスポーツ本来の楽しみ方を教えてくれる。