著者
元木 幸一
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ゼーバルト・ベーハム作《ケルミス大版画》を中心に、居酒屋、歯医者、雄鶏合戦、ダンス、九柱戯、刃渡り、鶏ダンス、徒競走、競馬など諸モティーフの意味、起源を詳細に分析した。また宗教画と世俗画における画中版画と文献資料の分析から、農民祝祭版画の受容と販売形式を明らかにした。最後に、ニュルンベルク宗教改革がいかに祝祭行事に介入したかを歴史的に解明し、それがケルミスにどのように影響したか、そして《ケルミス大版画》がどのような機能を目指して制作されたかをまとめた。
著者
野地 恒有
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

近代以降に移住者の開拓によってその集落が形成された島において、定住化のための「持続する生業体系」 の特徴について調査研究した。その結果、周辺社会との間に張りめぐらされた海縁ネットワークにより定住生活は持続され安定されること、移住先の定住生活を成立させる生業体系とは外部との海縁ネットワークの体系であること、その海縁ネットワークを作り出すその島独自の(ほかの地域に依存しない)生業手段・技術が必要であること、などを明らかにした。
著者
若松 昭彦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,自閉性障害児・者を対象とした感情理解プログラム・パッケージの開発を目的として,そのベースとなる表情学習プログラムの実用化,音調や身振りによる感情表現や感情喚起状況の理解課題などの作成を目指してきた。それらの課題の中で,感情喚起状況の理解課題については,近年,発達障害児・者に対する社会的スキル学習の重要性が増してきていることから,課題内容を変更して,高校生や青年を想定し,教室場面等での望ましい言動と望ましくない言動をペアにして演劇部の学生に演じてもらい,動画による場面集を作成して,2事例に試行した。その結果,1)グループ活動での会話場面でも,相手の表情や視線などの様子を意識しようとする意欲が見られた。2)最初は雑談の内容が全く分からない様子であったが,何度も聞くことで,その概要の記述ができた。3)学習から日を経ない場合には,スキルを実際に使っている姿が見られた,等の対象者の変化が報告された。繰り返し視聴できるので,場面の状況や適切な行動のポイントなどを説明しやすい,人とのかかわり方だけではなく,表情を読む,視線や語調の違いに気づく,気持ちを知る,雑談の内容を理解する課題としても使用できるなどの利点があり,教材としての有用性が示唆された。しかしながら,日常場面への明らかな効果が見られたとは言えず,最適な学習内容・方法の検討や般化を促す支援方法の工夫などが,今後の課題として提起された。一方,音調の理解課題については,素材は収集したものの,作成の途上にある。また,表情学習プログラムについては,技術移転した企業との共同研究で,試作版を作成している段階である。その開発過程で,新たな特許申請の準備も進めており,今後,表情,音声,社会的スキルなどの学習課題を組み込んだ,発達障害児・者のための感情・社会的スキル学習プログラムの実用化を目指していく計画である。
著者
若林 幹夫 田中 大介 南後 由和
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、消費化・情報化時代の「都市の論理」と、それを成立させる社会的過程と構造を明らかにすることを目的としている。具体的には、1990年代以降、全国の都市部や郊外地域に普及した消費空間であるショッピングセンター、ショッピングモールを主要な対象として、現代都市社会における空間の生産・流通・消費のあり方と、それが生み出す社会と文化の様態を、情報化・消費化社会における新たな「都市の論理」として分析した。
著者
佐々木 宏子
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

絵本は、乳幼児の(0・1・2歳児)のコミュニケーション能力をどのように育むかを調査した。まず、絵本のタイプをA「ナンセンス・ユーモア絵本」と伝統的なB「物語絵本」に分けた。約20組の親子に3年間でABタイプの絵本を各30冊ずつ60冊貸与し、親子で読み合いの記録を採ってもらった。その結果、Aタイプの絵本は言葉を獲得する前の乳幼児をもつ親子に豊かなコミュニケーション能力を育むことが分かった。
著者
眞保 智子
出版者
高崎健康福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の調査の方法は予備調査を含めて30社へのインタビューと全国の特例子会社278社(回答数153社、回収率55.03%)に対するアンケートである。知的障害者の技能について、従来指摘されている仕事より、やや高度な仕事、すなわち判断を伴う仕事の一部をこなせることが明らかになった。能力開発の方法は、OJTが中心であるがoff-JTも行われていた。アンケート調査の結果から定着する労働者と早期に退職する労働者の分岐点が入社後3 年程度のところにあることが示唆されている。健常者が基幹的な仕事を担い、知的障害者が周辺業務を担う分業により、リーマンショック後においても助成金を加えることなく黒字である企業の割合は40%強存在した。
著者
板東 絹恵
出版者
四国大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

思春期、青年期を対象とした分析結果から、摂食障害傾向スクリーニング尺度を作成した。この尺度は質問29項目からなり、摂食障害の特徴的パーソナリティや摂食行動より抽出された「食へのとらわれ」、「ジェンダー」、「自己肯定感」、「完璧主義」、「摂食行動」の5因子から構成されている。そして、この尺度の内的整合性および安定性、さらに構成概念妥当性について、十分な値が得られたことから、作成した尺度の信頼性と妥当性を確認することができた。
著者
水野 みか子 マルク バティエ ダニエル テルッジ
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、 20世紀半ば以降の現代音楽に関して「ひびき」の概念を打ち出し、和声、旋律、律動という三分法でも、音高、持続、強度、音色という四分法でもない音楽構成分析の視軸を提示した。研究過程では、歴史研究、分析研究、創作実践の三つの分野を横断する形で、当該時代の作品や作曲家の新生面を明らかにした。「ひびき」という用語は、専門性が薄く、音楽学や音楽分析ではなく、むしろ評論や日常の言葉として頻用されるが、それに対して本研究では、あえてこの一般的な語を引き合いに出して、その一般性が示唆する、学問分野を越えた研究分析方法を打ち立てることをめざした。
著者
澤村 一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の成果を主要なものに限って以下のようにまとめる.1.東洋の合理思想・論理を反映した議論の論理の研究4値テトラレンマに基づく議論の論理の対話的証明論と意味論を形式化した.それを用いた東洋的議論例を示し,この議論の論理の有効性を実証した.さらにJainaの7値論理やアラビア論理についても調べ,多文化間で合意可能な議論方式を与えた.これは多元的議論の方法論として意義ある結果である.2.対話の論理の形式化:議論から対話へ議論の論理の形式化をもとに,これを多値の対話モデルへと展開し,対話の証明論とその不動点意味論を与え,対話モデルも数学的意味論を持つことができることを示した.さらに,記号議論の弱点をニューラルネットによって補う研究を進め,記号議論とニューラルネット議論のハイブリッド方式による議論の方法を与えた.この結果は予想外の結果として,国際会議で高く評価された.3.議論するエージェントシステムの試作議論するエージェントシステムの利用をサポートするために,より豊かな統合議論環境(IAE)を構築し,かなり複雑な議論にも対応可能なことを確認した.さらに,議論結果から議論・対話シナリオを作成し,それを動画表示する方法も与えた.この他に議論で必要とされる知識ベースの準備を容易にするために,自然言語議論を我々の多値議論モデルの形式的議論へ変換する方法と,さらにその逆変換を行う研究を行ない,双方向変換の重要な部分が自動化できることを示した.
著者
山村 一繁 見波 進 中村 孝也 饗庭 伸 吉川 徹 藤田 香織
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

中小規模の建物が密集して存在する地区を対象に,その地区内の建物の地震リスク評価を行い,その情報を地域住民と共有するための方法を開発した。地震リスクは,その地域における建物と地盤の特性および想定すべき地震の情報をもとに,建物倒壊,道路閉塞,外壁被害の観点から評価を行った。それらをまとめた資料を用いて地域住民とのワークショップを実施し,一連の取り組みが住民の地震防災意識の向上につながったかを検討した。
著者
大澤 麦
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、ピューリタン革命の後半期(1653-59 年)に成立したオリヴァ・クロムウェルの護国卿体制の歴史的かつ思想的意味を、宗教改革に淵源をもつピューリタニズムと古典古代の政治的伝統に由来する古典的共和主義という二つの思想的潮流に着目することで明らかにすることにあった。この体制は従来の研究の中では短命に終わった軍事独裁として、過少評価される傾向にあった。これに対し本研究は、護国卿体制こそピューリタニズムと共和主義の理念をを取り入れ、これらを総合することによって、「自由な国家」としての共和国を基礎づける原理を形成せんとしていたレジームであることを見出した。
著者
馬 青 吉見 毅彦 渡辺 靖彦
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

英作文において、部分的に適切な英語表現が思い浮かばないとき、本来言い表したい日本語表現(単語またはフレーズ)をそのまま入力するだけで、すなわち、日英混在の入力文から、適切な英語表現を生成してくれる英作文支援システムを開発した。単語レベルでの支援においては最適な文脈による訳語選択手法と大規模で高品質な英語コーパスと超大規模なWebデータの統合利用手法を提案した。フレーズレベルでの支援においては日本語フレーズを構成する各単語の訳語候補の組み合わせによる英語フレーズの生成手法と、大規模で高精度な日英対訳表現抽出手法とそれにより抽出した日英対訳表現を利用した用例ベースに基づく英作文支援手法を開発した。
著者
武田 裕紀
出版者
追手門学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

17世紀前半(ケプラーからホイヘンスまで)は光学という学問を構成している枠組みそのものが変革を被った時代である。そのため発展的な通史として記述しにくく、また論点が狭義の光学に収まりきらないという困難を伴っている。申請者は、こうした困難を理解しつつも、デカルトとその論争者を通して、この時代の光学の展開を、数学・自然学・生理学・形而上学・論証論のそれぞれの領域において明らかにし、学問の編成において光学の果たした基軸的な役割を明らかにした。
著者
中西 淳
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、感性の涵養とコミュニケーション能力育成のための、国際交流による俳句指導法を探るところにある。まず、北米における俳句教育に関する情報を収集した。その結果、シラブル数にこだわる形式重視の授業が多いこと、我が国の句会のようなコミュニケーション重視の授業はあまり行われていないことが明らかになった。そこで、カナダの教師を対象として、コミュニケーション重視の俳句ワークショップを行った。その結果、その俳句ワークショップの有用性が検証された。さらに、国際交流を展開するための俳句指導のあり方に関する示唆も得ることができた。
著者
石井 吉之
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

降雨と融雪が重なって生じる融雪洪水の発生メカニズムを解明するため、2011~2013年の各融雪期に、母子里において模擬降雨の散水実験を行った。2012年の実験(積雪深170cm)では、散水開始後50~90分で積雪底面から流出が始まり、総散水量120~170Lに対し総流出量は46~48Lであった。散水量と流出量が定常となった時点における流出水に含まれる模擬降水の割合は、水および同位体の収支式から概ね6~7割と見積もられ、晴天日や弱い降雨時の融雪水とは異なった流出過程をとることが分かった。
著者
中村 哲也 丸山 敦史
出版者
共栄大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、産業観光における果樹産地の地域振興と都市市場開拓を目標としている。具体的には、フルーツパーク、体験型学習型観光農園、農業体験併設型道の駅、農村カフェ、郷土・地場料理体験型宿泊施設等を事例として研究を進めた。そして産地と大都市圏フィールド・リサーチと統計データを使用した実証的分析によって、地方果樹産地の自立と活性化を図った。その結果、名護パイナップルパークや弘前市りんご公園では、食農体験ができる人気施設として、都市住民と地域住民に親しまれていた。また、黒石市のりんご試験場・資料館は、地域生産者の情報交換の場として活用され、観光客も生産者の学習に貢献する施設であった。
著者
兒玉 英也 篠原 ひとみ 志賀 くに子 渡邊 美奈子
出版者
秋田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

妊娠末期の妊婦の定常状態の自律神経活動と妊婦のQOL(睡眠、メンタルヘルス、疲労感)との関係を調査したパイロットスタディの結果、睡眠の満足度と有意な関係が認められた。そこで160例の妊婦を対象とし、睡眠障害と安静時の心拍変動との関係を調査したところ、習慣的にいびきをかく妊婦の自律神経活動は交感神経優位にあると考えられた。64例の妊婦の夜間の動脈血酸素飽和度のモニタリングを行い心拍変動との関係を調査したところ、夜間に重度の低酸素症を経験した妊婦において副交感神経活動の減弱が認められた。妊婦の自律神経活動には潜在的な睡眠時無呼吸の影響が考えられ、看護介入を考慮する場合には考慮する必要がある。
著者
陳 玲 飯島 康夫 池田 哲夫 中野 泰 田邊 幹
出版者
新潟県立歴史博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

山古志地区は、2004年10月23日に突然襲ってきた新潟県中越地震で、一瞬のうちに、一部を除き、住宅の全壊、道路と田畑、山の崩壊など、これまで築かれてきた生活環境が完全に破壊された。地震後、行政措置として「全村避難」が決断された。避難所に引き続き、仮設住宅は、それまで維持してきたコミュニティを考慮した配置構成がなされ、それを暮らしの場とした被災生活が3年間続いていた。その間、「皆で山古志へ帰ろう」というキャッチフレーズ、いわゆる「帰村」をめぐって、集落移転、宅地と墓地の再編、住宅と墓の再建、水利と棚田の復旧活動などが展開されてきた。本研究では、人びとの暮らしや生きる知恵などを研究対象としてきた民俗学のこれまでの視点や方法を用いながら、現代社会という時間軸において、山古志地区の住民が災害に対して、いかに適応し対応し、そして、さまざまな葛藤する問題の中でいかに生活の再建に向かって取り組んできたのか、その実態の把握、記録、考察を行なった。「帰村」をめぐる復旧、復興活動を、いずれも生活再建、社会組織の再編過程そのものとして捉えた。
著者
佐分利 育代
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

表現の対象が放つ質的特性(ダイナミクス)を聴覚障害児と視覚障害児がどのようにとらえ、ダンスの中で運動のダイナミクスとして表現しているのかをラバンの運動解析を手がかりに探った。対象は鳥取聾学校の中学部と高等部の生徒、鳥取盲学校の中学部生である。まず、花火大会に出かけ、その体験を一人でダンスで即興表現したものを比較した。(1)聴覚障害児:見たままをクリアに表現している。ダイナミクスは力の要素に欠けるVision Driveの傾向にある。指先まで使っている。屈伸、ジャンプ、ジェスチャーの動作で、対称的な形、大きな身体支配空間、空間を移動して、平面的に踊っている。(2)視覚障害児:内的体験から直接出てくるような表現である。ダイナミクスは空間(方向性)の要素の欠けるPassion Driveの傾向にある。胴と四肢を使っているが、肘までの使用である。移動、ジャンプ、落ちる、傾ける、手を着くの動作があった。対称、非対称の形があり、大きくない身体支配空間内で、身体の向きのまま動く結果空間が現れる。次に鳥取砂丘での体験をもとにした合同作品「砂の世界」をビデオより観察し、次のことを得た。(1)イメージを表現しようとして練った動きには、ソロでの表現にもそれぞれに観察されなかったダイナミクスの要素(聴覚障害児に力、視覚障害児には空間)が現れる。(2)聴覚障害児と視覚障害児がダンス表現を共有できるのは、即興表現に共通に観察された時間と流れのダイナミクスの要素によると思われる。流れの要素には力と空間(方向性)の要素が内在するとされることから、一緒に練習する中でリズム、運動の発せられる方向等共感できると思われる。また、ダンスが障害の種類、障害の有無に関わらず一緒に活動できるのは、次のような、そのグループに独特の運動のダイナミクスの体験があるからと考えられる。(1)場面の持つダイナミクスを踊る人全員で創り出している。(2)場面と場面のテンションの引き継ぎが共有される(3)作品の完成時、上演時は作品全体としてのダイナミクスと、グループの一体感が体験される。(4)上演では、障害や個人によって異なる原体験に内在するダイナミクスが共有される。内的体験におけるダイナミクスが運動に反映されるメカニズムは課題として残されている。
著者
小林 真
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

視覚障害者ボウリングを楽しむ当事者らのニーズをもとに、「投球フォーム検出と提示」「残ピン状況の読み上げ」「ボール軌跡の読み上げ」を目的とするシステム開発と検証を行った。フォーム検出に関しては、腕に装着した加速度センサから投球タイミングの検出が可能なことが分かった。また残ピン読み上げに関しては画像処理を利用してほぼ完璧な認識が可能であり、実際の練習に役立つシステムを構築できた。ボール軌跡については、深度センサで実現可能なことが分かった。さらにスポーツにおける状況の音声化は,プレーヤー自身だけではなく,応援や観戦をしている視覚障害者にとって重要なエンターテインメント要素になることが分かった.