著者
齋藤 茂
出版者
生理学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

生息環境に応じた温度感覚の進化な変化とその分子メカニズムを解明するために、異なる温度環境に適応した両生類(カエル)を対象にした研究を行う。幼生(オタマジャクシ)が冷涼な環境で生育する種、温暖な環境で生育する種、また、高い温度でも生育できる種を用いた比較解析を行う。生息地において温度の経時的な測定を行い、各種の幼生が自然環境下で経験する温度を調べる。また、実験室にて幼生の温度応答行動を観察し、温度耐性や温度選択性に種間で差が生じているかを検討する。次に、温度感覚のセンサー分子の機能特性を比較し、温度感覚の進化的変化が環境適応に果たした役割およびその分子メカニズムを解明することを目指す。
著者
花村 克悟
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,加熱された表面近傍(光の波長程度)に生ずる近接場光をナノスケールの隙間(ナノギャップ)を介してGaSb系の熱光起電力電池(Thermophotovoltaic Cell : TPV Cell)へ導き電力を得る,ナノサイズ発電システムについて検討したものである.真空容器内にこの電池と鏡面研磨されたタングステンエミッター(放射体)を向い合わせ,両面をゴニオメーターで平行に保ちつつ,高精度マイクロメーターで接触するまで近づけた.8mm×2mmのエミッター面積に対して隙間が40μm以下となると,形態係数はほぼ1となり,隙間が10μm程度までは出力電力は一定となる.さらに隙間を狭くした場合,この領域では簡易マイクロスコープを用いて隙間を測定することができない.そこで,出力がゼロとなる接触した位置をゼロ点とすることを試みた.したがって,多少,この領域での隙間の精度が低い.出力がほぼゼロ,すなわちその位置において,外部負荷を変化させたときの電流-電圧特性曲線が得られない位置を隙間ゼロとすると,隙間が約2.5μmにおいて急激にエミッター温度が低下し,出力も低下した.さらに,隙間が1μmより小さくなるとエミッター温度が低下し続けるにもかかわらず,出力がいったん増大した.そこからわずかに近づけると出力は急激に低下し,そこでは外部負荷を変化させたときの電流-電圧特性曲線を得ることができなかった.これらのことから,隙間が2.5μm以下になると,電力には変換されない長波長域のふく射に対して近接場効果が顕著となり,熱移動が促進される.このため,加熱用のレーザー入力が一定条件では,エミッター温度が低下する.これに伴い,出力電力が低下する.隙間が1μmあるいは400〜500nm程度まで狭くなるとエミッター温度が低下するものの,電力に変換される波長のふく射の近接場効果が顕著となるため,出力が増大したものと考えられる.したがって,加熱面近傍に生ずる近接場光による,熱エネルギーから電力へのエネルギー変換の実現が示唆されたものと考えられる.
著者
花村 克悟
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、多孔質体内部で燃焼熱を光や熱ふく射に変換し、熱光起電力電池(Thermophotovoltaic Cell : TPV Cell)によって発電する,新規なエネルギー変換システムを提案し,その熱効率や自立分散型発電システムとしての可能性について検討したものである.その構造は,断熱された30mm×30mmの流路内に厚さ10mmのセラミック多孔質体を流路中心に充填し,その両側に20mmの燃焼空間および石英多孔板(厚さ3mm,φ2.5mm×75孔,開口比35%)を1mm間隔で10枚づつ配置したものである.ここへ周期的に流動方向を反転させながら空気を供給し,流動方向に合わせて燃焼空間に燃料を供給し中央のセラミック多孔体を加熱する.この燃焼ガスは下流側の石英多孔質体を通過する際,顕熱が蓄熱されるので,温度低下を伴って排出される.流動方向が反転すると,この蓄熱された熱により空気が予熱された後,燃焼空間に流入する.この熱循環により,わずかな燃焼熱でセラミック多孔質体が1500K程度まで加熱される.数値計算によれば,燃焼熱の約70%がふく射エネルギーとして系外に取り出され,2.2μmまで電力に変換できるTPV電池により熱効率15%が期待される.また,試作した実験装置を用いて発電したところ,電池への入射ふく射エネルギー強度の非一様性であるとか,電力変換に有効な短波長成分が周囲の断熱材に吸収されることなどにより,トータル熱効率は0.2%に留まっているが,この装置で最高温度が目標の1500Kに達していることから,発展性が期待できることが明らかとなった.なお,このシステム内の加熱用として,直径5mmのミリサイズスワールバーナーも同時に開発し,このような微小サイズでは壁面での角運動量損失や熱損失の影響が大きく,スワール数1前後の最低な条件で利用する必要があることが明らかとなった.
著者
春田 吉備彦
出版者
沖縄大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

研究目的のモチーフは、①排他的基地管理権、②間接雇用方式、③日米地位協定とMLCの関係をそれぞれ解明することである。2019年度の研究実績はつぎのものがある。(1)研究目的のモチーフのうち、とりわけ①の問題に焦点を当て、2018年12月18日に在日米軍横須賀基地内に停泊中の「空母ロナルド・レーガン」において実施された「日米合同訓練」の見聞記を執筆した。これが、春田吉備彦「Invisible baseworker(見えざる基地労働者)―ロナルド・レーガン乗船記―」『沖縄大学法経学部紀要第31号』(29頁~36頁)である。(2)日韓の国交が正常化していなかった、1956年に発生した、千代田丸事件をモチーフに「戦争災害(戦災)」「自然災害」 「労働災害(労災)」「NBC災害」 「CBRNE(シーバーン)災害」 「武力事態災害」 等の多様な災害概念を整理、労働者の労務給付拒絶権について試論を展開した。現在、基地労働者が直面している、「労務指揮権」の問題の基礎的考察としての位置づけをもつ、研究業績として、春田吉備彦「災害時の労働者の労務給付拒絶権にかかわる一試論―千代田丸事件最高裁判決(最三判小判昭和43.12.24民集22巻13号3050頁)の再読を通じて」大曽根寛/森田慎二郎/金川めぐみ/小西啓文編『福祉社会へのアプローチ 下巻』(成文堂)(353頁~366頁)がある。両業績とも、主として、日米地位協定上の①排他的基地管理権に関連する考察である。日本国内にありながら、米軍基地内の労働問題や米軍関係の労働問題は、可視化が難しいという特徴がある。両業績は、この点に着目している。
著者
中田 理恵子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

葉酸が欠乏すると、ホモシステインからメチオニンへの代謝が阻害されて、血漿ホモシステイン濃度の上昇を引き起こすことが知られている。過剰なホモシステインは、血管内皮に損傷を与えて、動脈硬化性疾患の一因になることが注目されているが、その機構については十分に明らかにされていない。そこで、葉酸の欠乏により上昇したホモシステインが、血管の機能にどのような影響を与えるのかを検討するとともに、葉酸欠乏によるホモシステイン上昇の調節機構を、遺伝子レベルで明らかにすることを試みた。3週齢雄性ラットを2群に分け、葉酸欠乏食(葉酸フリー)と対照食(葉酸8mg/kg diet)各々自由摂取させた。実験食開始後4, 6, 8週目に血液,血管,肝臓を採取し、血漿と肝臓の葉酸量およびホモシステイン量を測定した。また、血漿中の一酸化窒素(NO)量を定量するとともに、血管中の血管内皮型NO合成酵素(eNOS)のたんぱく質量を測定した。さらに、肝臓にホモシステイン代謝酵素のmRNA量を測定した。血漿および肝臓中の葉酸量は、欠乏4週目から有意に減少した。一方、血漿と肝臓のホモシステイン量は有意に増加した。血管では、TBARS量の増加とグルタチオン量とビタミンC量の減少が見られた。血漿中のNO量は欠乏6週目から有意に低値を示し、eNOSたんぱく質量も減少していた。葉酸欠乏による血漿ホモシステインの上昇は、血管に酸化ストレスを与え、血管内皮の機能障害を誘導して、NO量の減少を起こすと考えられた。さらに、葉酸欠乏ラットの肝臓では、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR),メチオニン合成酵素(MS),シスタチオニン-β-合成酵素(CBS)のmRNA量が、対照群に対して有意に減少しており、葉酸欠乏によるホモシステインの上昇は、MTHFR, MS, CBS各遺伝子の発現が減少することによって起こると考えられた。
著者
内田 青蔵 安野 彰 須崎 文代 渕上 貴由樹 清 直樹
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、今後の住まいの在り方を考える一助として、持家志向の定着の様相を、戦前期に持家志向を中流層全般にまで拡大化させたことで知られる日本電話建物株式会社の事業や広報媒体である雑誌『朗』を通して明らかにすることを目的とした。その結果、日本電話建物株式会社の採用した住宅無尽の方法は、借家の家賃並みの金額で持家を得る方法として定着し、一気に中流層以下の人々の持家の可能性を高めたこと、また、持家を得た人々の多くは借家への不満はあったものの持家に対する明快な理念はほとんど持ち合わせておらず、持家を所有することそのものに意味を見出していたこと、が明らかとなった。
著者
岩崎 義則
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

第九代平戸藩主松浦静山の随筆「甲子夜話」(全278巻)について、東洋文庫本『甲子夜話』(全20冊)を底本とした全文のテキスト入力データをもとに、ネットワークサーバ上に全文検索システムを構築し公開した(http://yosi-iwa.sakura.ne.jp/programs/essay/contents)。あわせて、『甲子夜話』執筆にあたり、重要な情報源となった平戸藩楽歳堂文庫とその蔵書目録について調査研究を行い、蔵書目録の作成・伝来過程を明らかにした。
著者
志内 一興
出版者
武蔵野音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-10-21

「古代ギリシア・ローマ世界における呪詛行為の持つ社会的効用についての基礎研究」と題して研究を進めた。古代ギリシア・ローマ社会におけるコミュニティ内の緊張の緩和、及び紛争解決の方法理解には、従来は法に基づく「公的・合理的」な解決策の図式が重視されてきた。しかし多数発見されている「呪詛文書」は、公的なレベルに浮かび上がることの稀な、「私的・非合理的」緊張関係の緩和方法が、古代社会において重要な働きをしていたことを示唆していたからである。三年にわたる研究の結果、古代社会における紛争解決を、これまでとは違った視点から理解するための、あらたな視点の基礎を築くことができたものと思う。
著者
寺井 勝 地引 利昭 小穴 慎二 浜田 洋通 山本 重則
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

川崎病は乳幼児に発症する原因不明の血管炎である。当該研究者は,血中の単球遊走活性化因子MCP-1が急性期に血中に増加し,組織においても発現が増強していることを見出した。川崎病の治療薬であるガンマグロブリンは,MCP-1の生理活性を抑制することが判明した。またMCP-1をコードする遺伝子の転写開始部位から2518塩基上流のアデニン(A)とグアニン(G)のSingle nucleotide polymorphismとin vitroでの単核球によるMCP-1産生の関連をみたところ,G allele carrierが統計学的有意差をもってMCP-1を大量に産生することが判った。さらに急性期川崎病患者では,G allele carrierがAA homozygousよりも血中MCP-1を大量に産生することが判明した。同時に,日本人はG alleleを高率に有する民族であることを初めて明かにした。以上より,川崎病血管炎では,単球遊走活性化因子MCP-1が血管炎初期において炎症現揚の免疫担当細胞の遊走・活性化に重要な役割を果たしていること。さらに,日本人は外的な刺激に対してこのMCP-1を産生しやすい人種的特徴をもっていることが判明した。日本人に川崎病が多いことの背景になりうるかどうか,今後も更に検討が必要である。
著者
平田 豊
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

以下の成果が得られ、新たな細胞質雄性不稔制御の可能性を示した.1.雄性不稔ゲノム種のミトコンドリア構造であるorf138およびその周辺にある構造を含めた3分子種の特徴をあきらかにした。これら成果は.国内外の学期で発表され、論文として一部公表されている。2.ミトコンドリアの誘導メカニズムに関して、すでにゲノム間の組換えで生じたのではなく、すでに分化過程で存在していた異種分子種の存在としに量的変動調節変異である点を明らかにし、公表した.3.このミトコンドリアゲノムの量的変動によるゲノム種の変動と雄性不稔発現はキメラ合成だけで起こるのではなく、細胞融合によっても起こることを比較研究から明らかにした.4.この過程で、オグラ型、あるいはオグラ類似の雄性不稔ゲノムに塩基配列多型やマイナーな構造変異が存在することや従ってそれらをあたらな雄性不稔誘導のソースにし得ることを示し、新たな雄性不稔誘導メカニズムの存在する可能性を示した.5.これまで、細胞質雄性不稔がミトコンドリアゲノム構造に寄ること示してきたが、一方で良く知られているクロローシスの発現は葉緑体ゲノム構造と関係があることを示唆し,細胞質ゲノムの全体的な解析とメカニズムや制御の理解が必要なことを明らかにした.6.以上を頼詳細に明らかにするためには、B.rapaにもB.oleraceaにもないオグラあるいは類似の細胞質雄性不稔型細胞質の回復系の導入が必要であり,そのための材料や系の確立が求められる.
著者
斎藤 夏来
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

日本中世史研究にかかわる文献史学の立場から、画像賛を含む五山文学の研究を行う。五山文学には、創作に属する「作品」としての側面と、歴史的な諸事実を反映する「史料」としての側面とがあり、今後の研究の視野を格段に広げ深める可能性がある。特に、人物画像に書き込まれた賛文には、古文書や古記録には決して現れないような、当事者の主観に属するいわば機密的な内容が含まれている感触を得ており、その具体的な実証をめざす。
著者
長坂 猛 田中 美智子
出版者
宮崎県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

健常な成人(20-40代)を対象として、入眠前の10分間に眼部もしくは後頸部に40℃の温罨法を施し、その後の睡眠に与える効果を評価した。測定した項目は、心拍変動、体動であり、起床時にアンケートにも答えてもらった。睡眠前に温罨法を適用する条件に、何も適用しない対照条件を加え、計3条件で実験した。いずれの条件でも入眠時に顕著な心拍数の減少が認められた。心拍変動から見積もることができる自律神経活性については、どの条件でも睡眠中に副交感神経活性の上昇が見られたが、3つの条件による有意な差はなかった。入眠までの時間と睡眠調査票による主観的な評価にも、眼部と後頸部による明らかな差は見られなかった。
著者
武石 典史
出版者
聖路加国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、政治・政治家が教育政策過程においてどのような役割を果たしたのかを分析しつつ、教育と政治の関係性を考察したものである。政治変動により内閣と党との力関係が教育政策を左右するようになったため、内閣府が主導権を握った2000年代は、文教族による教育政策への関与が限定的となったことをあきらかにした。併せて、連立政権下において選挙協力が重視され、教育政策が選挙結果の影響力を強く受けはじめたことにより、文協族の影響力が低下したことを指摘した。また、2000年代の野党民主党における教育政策の策定過程を検討し、政党間競争・政党内競争という野党をも含めた教育政策分析の視点を提示した。
著者
臼山 利信
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

日本の地方自治体で広がりを見せる「やさしい日本語」による表現方法や情報を英・露・中・韓・西・独・仏語他に援用・発展させる可能性を探り、特に災害などの緊急時や地域社会での日常生活等に役立つ、多様な「やさしい言語」の言語表現の形態を検討・考察し、地方自治体の言語サービス、自動音声通訳・翻訳技術の分野などにおいて社会実装するための方法や形態を研究することである。「やさしい言語」研究の第一歩として、先行研究による従来の優れた「やさしい日本語」研究の成果と蓄積を活かし発展させながら、国内外における「やさしい言語」研究の必要性、可能性とその課題を明らかにする。
著者
鶴崎 展巨
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

アカサビザトウムシGagrellula ferruginea(クモガタ綱ザトウムシ目)では,これまでに2カ所(長野県北アルプス周辺と香川県讃岐山地)で環状重複とみられる現象が生じている。これら両地域で染色体や色斑の調査を進め,両地域でのその様相の詳細を追跡した。北アルプスの同所的集団では相互に数も核型も大きく異なる。両者の交配前生殖隔離機構が不完全で,繁殖干渉により同所的になれない可能性が高い。讃岐山地では同所的集団は竜王山山頂付近のごく狭い範囲に限定されており,周辺はすべて2n=12の集団で固められていることがわかった。
著者
吉村 正和
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、19世紀における心霊主義の展開を骨相学、社会主義(社会改革)、神智学、心霊研究協会などを中心に検討していくことにより、超自然・非合理に軸足をおく現象と一般に考えられている心霊主義が、それとは逆に理性主義的な思考法に基づく「合理宗教」という側面が強く見られることを検証することにあった。平成15年度においては、ジョージ・クームの骨相学を中心に検討し、ヒプノティズムと融合して骨相ヒプノティズムとなって心霊主義の潮流に合流する経緯をたどった。平成15年7月31日から8月29日まで夏季休暇期間を利用してロンドンとチューリヒに滞在してブリティッシュ・ライブラリー、心霊研究協会などの諸機関で同主題に関する資料調査を実施した。平成16年度においては、ブラヴァツキー夫人やアニー・ベサントなどの神智学、フレデリック・マイヤーズ(心霊研究協会)の心理学を中心に検討し、心霊主義が霊的進化論や心理学へと展開していく経緯をたどった。平成17年1月4日から1月12日まで冬季休暇期間を利用してシドニー大学フィッシャー図書館及びニューサウスウェールズ州立図書館で同主題に関する資料調査を実施した。平成15年度から平成16年度の2年間にわたる研究期間において、研究課題「19世紀のイギリス心霊主義の社会精神史的意義に関する研究」をほぼ当初計画通りに実施し、その成果を研究報告書(全48頁)にまとめることができた。
著者
森内 浩幸
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

牛白血病ウイルス(BLV)はヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)の近縁のウイルスであり、多くのウシが感染していることから、ヒトへの感染の有無が心配される。(1)BLVのプロウイルスDNA(pDNA)の検出末梢血単核細胞(PBMC)からのBLV pDNAの検出を、PCR+Southern blotting(SB)またはreal-time PCRを用いて行った。一部の検体からごく僅かのBLV pDNAが検出されたが、確認実験の成績は不安定であった。閾値ギリギリの微量であることが予想し、検出感度を高めるためにウイルス感染細胞と推測されるB細胞をEBウイルス感染によって不死化させ増殖させた上でDNAを抽出し検索したところ、一名の健常人検体ではSB法でtax・env遺伝子で陽性、pol遺伝子もPCR法で陽性となった。この健常人検体より増幅されたBLV env遺伝子の配列を解析し、既知のBLV遺伝子配列と共に系統樹解析を行ったところ検体中のenv遺伝子は米国や豪州のBLVと近縁で、本邦の牛のBLVと同一グループに属した。しかし、pDNAの全域の増幅と塩基配列の決定を試みたが、増幅困難な箇所が多々みられ未だ確認に至っていない。(2)抗BLV抗体の検出BLV持続感染細胞の細胞抽出液や培養上澄液に存在するBLV蛋白や、GSTとの融合蛋白としてBLVのEnvやTaxなどのウイルス蛋白を実験室内で精製した。これらを抗原として研究対象者の血清中の抗BLV抗体の有無をWB法で調べたところ、健常人で陽性1/11(9%)・保留1/11(9%)、乳癌患者で陽性1/32(3%)・保留3/32(9%)であったが、BLV pDNA検出結果との一致は明らかではなかった。【考察】過去の報告に比し人におけるBLV抗体保有率は低く、また現段階ではこれが真の感染を示唆するものかどうかの確証は得られなかった。一検体において複数のウイルス遺伝子配列が検出されたが、検出範囲は短くpDNAが全域存在する確証は得られていない。以上の結果からBLVの人への感染はあっても比較的稀であることが推察された。
著者
奥 健太郎 河野 康子 武田 知己 黒澤 良 矢野 信幸 相原 耕作 村井 哲也 岡崎 加奈子
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は自民党政権の意思決定システムの形成過程に関する共同研究である。研究成果の特に重要なものとしては、事前審査制の歴史的考察がある。従来、自民党政権の事前審査制は1962年の赤城書簡を嚆矢とし、それ以後次第に慣習化されたと考えられてきた。しかしながら、我々の共同研究の結果、以下の点が明らかになった。第一にその淵源は桂園時代に遡ることができ、戦時体制下ですら与党審査が重要な意味を持っていたこと、第二に、事前審査制は自民党結党直後から今日に近い形で始まり、赤城書簡によって事前審査制が完成したことである。
著者
小池 英勝
出版者
札幌学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

コンテナ流通混雑問題は,世界経済に影響を与えるできるだけ早く解決するべき重要な問題である。この混雑問題を解消するための一つの手段として,船積が始まる前に船積時間が最短になるようにコンテナの再配置が行われる。しかし,この再配置の最適な手順を求めるのは難しい。再配置の手順が最適でなかったり,手順の発見に時間がかかれば,混雑解消はできなくなる。本研究の目的は,コンテナの最適な再配置の手順を計算機で高速に発見することで,混雑を解消することである。最適性や完全性(解を全て列挙できること)を両立する独自のアプローチでこの問題の計算方法を開発し,その有効性を実験システムを開発して実証する。
著者
國廣 悌二 吉田 賢市 菊池 勇太
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

汎関数くりこみ群に基づく密度汎関数理論(FRG-DFT)を発展させ「ハミルトニアンから出発した実践的な密度汎関数理論の確立」を目指す。具体的な課題は以下の通り:(1) 空間2,3 次元への適用、(2) スピンやアイソスピンなどの内部自由度の取り入れ、(3) 有限温度系への適用、(4) 非一様系への適用、(5) 上記のそれぞれについて励起モード/スペクトル関数の計算。(6) 第一原理計算に基づき流体方程式などの非平衡非線型ダイナミクスの導出を目指す。そこではその発展に申請者が寄与した力学系の縮約法である「くりこみ群法」とFRG-DFTを結び付けた理論を展開する。