著者
大島 純 新原 勇介 太田 健介 大島 律子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.333-342, 2010
参考文献数
23
被引用文献数
2

本研究の目的は,協調学習活動の分析にネットワーク分析の手法を応用し,分散認知の観点からグループの知識進展や学習者個人の貢献の様相を俯瞰的に明らかにすることであった.対象とした協調学習グループは,大学の教職必修講義において,学習理論と実践の関連性を学習した5名であった.各学習者の発言のネットワーク分析から,学習内容に関わる重要発言は他の発言を媒介する傾向が強いが,時間の推移とともにその媒介性が低下することがわかった.こうした全体傾向と学習者個人の重要発言の推移を比較することで,各学習者の学習プロフィールを作成しその特徴を明らかにした.その結果,小集団で長期的に行われる協調学習を評価する際に,俯瞰的にその対話全体の特徴を明らかにし,より詳細な分析を必要とする学習者や対話の箇所を選定してく分析として有益であることが示唆された.
著者
益子 典文 前田 康裕
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌
巻号頁・発行日
vol.41, pp.141-144, 2018

<p>現職教師が学校に勤務しながら教育実践研究を展開するためには,自らを実践知の生産者と位置づける「知識生産型」の認識を持つことが重要である.本研究では,働きながら学ぶ大学院を修了し,持続的に教育実践研究を展開している現職教師(第二著者)を対象とし,PAC 分析による教育実践研究のイメージの分析を行った.その結果,特徴的なクラスターの存在が見いだされた.この結果に基づき,現職教師が持続的に教育実践研究を推進するための条件について,研究者・実践者相互の立場から考察を行った.</p>
著者
高橋 暁子 市川 尚 阿部 昭博 鈴木 克明
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.Suppl., pp.25-28, 2008-02-10 (Released:2016-08-04)
参考文献数
6
被引用文献数
1

本研究では,自己管理学習スキルのうち,とくに学習内容の選択の支援を目的に,課題分析図を見ながら学習項目の選択ができるeラーニングシステムを開発した.学習項目を選択するインタフェースとして課題分析図を用いることで,学習者が習得状況を直感的に把握し,構造の上下関係に基づいて学習項目の選択を行うことを目指した.事前テストと事後テスト機能においては,課題分析図の構造による出題制御を行った.形成的評価の結果,習得状況を直感的に把握することに関して有用性が示唆されたものの,実際に構造の上下関係に基づいて学習項目を選択するかは学習者によって異なることがわかった.
著者
島田 英昭
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.61-64, 2016

説明文に挿入される挿絵は,理解支援だけではなく,読解初期の動機づけを高める効果がある.本研究は実験心理学的手法により,説明文におけるテキストと挿絵の関連性が,読解初期2秒間の間に動機づけを高めるかどうかを検討した.実験参加者(大学生,N=16)は,テキストと挿絵の関連性および挿絵の有無が操作された防災マニュアルの1ページを2秒間見た後,動機づけの程度を評価した.その結果,挿絵の有無に比較すると小さいが,テキストと挿絵の関連性の効果がみられた.また,関連性が強いほど動機づけが高かった.以上から,テキストと挿絵の関連性は読解初期2秒間の間に動機づけを高め,その効果は関連性の程度に依存することが明らかになった.
著者
梅本 貴豊
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.79-87, 2013
参考文献数
34

本研究では,メタ認知的方略,動機づけ調整方略が認知的方略,学習の持続性に与える影響について検討を行った.197名の大学生に対して,質問紙調査が行われた.動機づけ調整方略には下位尺度として自律的調整方略,協同方略,成績重視方略が,認知的方略には下位尺度として反復作業方略,深い処理方略,まとめ作業方略が含まれた.そして,重回帰分析により,以下の結果が示された.(1)自律的調整方略は,全ての認知的方略に促進的な影響を与えていた.(2)メタ認知的方略は,深い処理方略と学習の持続性に促進的な影響を与えていた.(3)成績重視方略は,反復作業方略に促進的な影響を,学習の持続性に抑制的な影響を与えていた.以上の結果に基づき,メタ認知的方略と動機づけ調整方略が学習を調整するプロセスについて議論が行われた.
著者
梅本 貴豊 矢田 尚也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.167-175, 2014

本研究はテスト学習場面を対象に,認知的方略,動機づけ調整方略とテスト学習時間との関連について検討した.研究1では,38名の専門学校生に対して質問紙調査を行い,認知的方略,テスト学習時間,テスト得点との関連を検討した.研究2では,63名の大学生に対して縦断的な質問紙調査を行い,動機づけ調整方略とテスト学習時間との関連を検討した.分析により,以下の結果が示された.(1)テスト学習時間を統制するか否かによって,認知的方略とテスト得点との関連が変化した.(2)認知的方略に比べ,テスト学習時間の方がテスト得点とより強い正の関連を示した.(3)興味高揚方略と成績重視方略がテスト学習時間と正の関連を示し,価値づけ方略と協同方略が負の関連を示した.
著者
上淵 寿 松村 大希 敦澤 彩香
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.29-32, 2017

<p> 本研究では, 友人との学習を「意図的な協同学習」,「他者意識」,「雑談」に分類した質問紙を作成し, 動機づけ調整及び学習のパフォーマンスとの因果関係を共分散構造分析によって検討した. その結果, 意図的な協同学習は自律的調整方略を介して学習の持続性に正の影響を与え, 自律的調整方略を介さない場合は学習の持続性に負の影響を与えることが示された. また, 雑談と他者意識は成績重視方略を介して学習の持続性に負の影響を与えることが示された. ゆえに,友人との学習を行った後も動機づけを高めるための方略を使用することが学習の持続性につながり,動機づけを高めるための友人との学習は,必ずしも学習の持続性には直接はつながらないことが示された. </p>
著者
鈴木 豪
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.95-103, 2016-09-20 (Released:2016-09-15)
参考文献数
20

本研究では,「特定の教科の課題」として回答することが,グラフの解釈と判断を行う課題において,回答に差異をもたらすかを検証した.小学5年生(N=91)と6年生(N=94)を対象とし,同一の課題について「算数」または「社会科」の課題として回答する群と,特に教科を指示されない群の計3群を設定し,回答内容を分析した.その結果,5年生では「社会科」の課題として回答する場合,「算数」の課題として回答する場合よりも,省略されて差異が過大に見せられた棒グラフについて,グラフの見た目だけでなく具体的な数値を用いて解釈する傾向が見られた.また,6年生では,社会科の学習が得意であるほど,同様の解釈をする確率が高い傾向が見られた.特に,5年生で社会科の文脈が与えられることが,グラフの適切な解釈を促進する可能性が示唆された.
著者
安斎 勇樹 塩瀬 隆之 山田 小百合 水町 衣里
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.97-100, 2013

本研究の目的は,視覚障害者をリードユーザーとしたインクルーシブデザインワークショップにおいて,障害者に対する晴眼者の先入観を取り除き,共感的理解を持ちながらコミュニケーションを取ることができるようなアイスブレイク手法を提案することである.「視覚が奪われた状態で,リードユーザーが日常経験するような生活作業に取り組み,リードユーザーから支援を受ける」というアイスブレイク手法を考案し,この手法に基づく場合とそうでない場合の参加者の発話を比較したところ,考案した手法に一定の効果があることが示された.
著者
西森 年寿 望月 俊男 椿本 弥生 山内 祐平 久松 慎一 中原 淳 大浦 弘樹
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.309-316, 2014-12-25 (Released:2016-08-11)

筆者らは,大学教育での学生によるレポート課題などにおける問題設定の支援を目的として,映像資料閲覧を支援するための視聴プレイヤーMEET Video Explorerを開発した.教育現場での映像アーカイブ利用が普及し,一人一台環境が実現されるなかで,こうしたツールの利用可能性が高まっている.本研究では実験授業においてこのツールを用い,問題設定に対して映像アーカイブの個別視聴が与える効果と,ナレッジマップ機能の持つ効果について検討を行った.個別視聴活動と講師が説明を行う一斉視聴活動を行った群の比較から,個別視聴群では一部の問題に凝集しない問題設定が行えていることが分かった.また,ナレッジマップの作成により,複数の情報を統合しようとする独創性の高い問題設定が支援できる可能性が示唆された.
著者
石川 奈保子 向後 千春
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.329-343, 2018

<p>本研究では,オンライン大学で学んでいる学生を対象に,自己調整学習およびつまずき対処方略の使用状況について明らかにするために調査を行った.その結果,以下の3点が明らかになった.(1)オンライン大学の学生のつまずき対処方略は,「学友に質問する」「教育コーチに質問する」「放置する」「自分で解決する」の四つの方略に分類された.(2)ゼミに所属している場合,学習の相談ができる学友がいる学生は,教育コーチや学友に援助要請することでつまずきを解消していた.一方,そういった学友がいない学生は,つまずいたときでも援助要請しない傾向があった.(3)学習の相談ができる学友がいる学生は,より多くの自己調整学習方略およびつまずき対処方略を使用していた.以上のことから,オンライン大学での学習継続においてメンターや学友との交流が重要であることが,自己調整学習方略使用の側面から裏づけられた.</p>
著者
遠海 友紀 岸 磨貴子 久保田 賢一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.209-212, 2012
参考文献数
4

本研究の目的は,初年次教育の学習活動において学生自身が到達目標を設定することが,学生の自律的な学習態度へどのような影響を与えるのかを明らかにすることである.初年次教育の授業において学生がルーブリックを作成し評価に用いる実践を行った.質問紙調査の結果,ルーブリックを自分達で作成することにより,多くの学生が目標と省察を意識しながら学習活動を行ったことが分かった.また,学生の自由記述を分析した結果,ルーブリックを自分達で作成することは「目標への意識」「課題に対する動機づけ/責任感」「課題の成果に対する省察」「評価に対する公平感」「多様な評価の観点の気付き」と関連していたことが分かった.
著者
瀬戸崎 典夫 上妻 尭甫 岩崎 勤 森田 裕介
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.185-188, 2012
参考文献数
7

本研究は,タブレット端末によって視聴可能な天体学習用ARテキストを試作した.さらに,試作したARテキストが有するコンテンツを評価した.その結果,AR型動画コンテンツは,講師の解説による講義映像の提示が効果的であったことが示された.また,「見易さ」を考慮し,紙テキストに重畳表示する動画の画面構成や配置を検討する必要性が示された.AR型CGコンテンツにおいて,3DCGによる立体的な提示が有用であることが示された.また,タブレット端末を動かすことによる様々な角度からの能動的な観察が効果的であることが示された.
著者
松河 秀哉 齊藤 貴浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.217-226, 2011-12-20 (Released:2016-08-08)
参考文献数
12
被引用文献数
2

本研究では,大阪大学で行われてきた授業評価アンケートに関して,回帰二進木分析,相関ルールといった,データ・テキストマイニング技術を用いた分析を組み込んだ授業評価アンケート結果のフィードバックシステムを開発し,システムを利用した教員による評価を行った.その結果,システムを全体としてみた場合,利用者は授業改善に対して本システムが有効であると捉えていることが明らかになった.機能別にみた場合,相関ルールを活用した機能は利用者に有効と捉えられた一方,回帰二進木分析を活用した機能は,高い評価は得られなかった.今回のシステムは全体として授業改善の効果の観点からはおおむね高い評価を得たといえる一方,使いやすさ等に関しては相対的に評価が低かったため,インターフェースを改善していく必要性が示唆された.
著者
畠岡 優 中條 和光
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.339-350, 2013-02-20 (Released:2016-08-09)
参考文献数
22

本研究では,手順を説明する手続き的説明文の読解方略の使用と読み手の特性との関係を検討する.研究1では,自由記述で手続き的説明文の読み方を収集し,それらに因子分析を適用して,図表の活用,意味明確化,標識の活用,メタ認知的な活動,既有知識活用という読解方略の5つのカテゴリーを見出した.研究2では,読み手の特性として,言語性作動記憶と空間性作動記憶の容量の個人差が読み手の読解方略の使用に及ぼす影響を検討した.読解直後に5カテゴリーの読解方略の使用に関する質問紙に回答させた.その結果,図表の活用方略の使用に空間性作動記憶が関わること,また,意味明確化および既有知識活用方略は,二種類の作動記憶容量の高低によって方略の使用に交互作用の傾向が見られ,言語性作動記憶の得点が低く,空間性作動記憶の得点が高いほど,それらの方略を使用する傾向にあることが見いだされた.
著者
青山 郁子 藤川 大祐 五十嵐 哲也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Suppl., pp.189-192, 2018-03-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
14

本研究は,小・中学生の「ネットいじめの芽」の経験,そうした状況における深刻度の認識,対処の自信・対処行動について調査した.調査対象者は小・中学生419名,調査時期は2015年2月である.結果は,ネットいじめの芽の状況に関して男子よりも女子の方が多く経験を報告した.対処の自信において性差と学校間に有意な差は見られなかった.深刻度の認識では,小学生の方が問題の深刻さを認識していた.また,小学生の方が概ね積極的な対処行動を回答する一方で中学生は回避的な対処行動を選択してした.これらの結果から,予防においては,いじめの問題の深刻度の共有とともに,問題解決へのより適切な対処行動が取れるよう,発達段階に応じた予防対策の必要性が示唆された.
著者
解良 優基 中谷 素之 梅本 貴豊 中西 満悠 柳澤 香那子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.57-60, 2017

<p> 本研究は,大学生を対象として授業内容に対する利用価値認知に働きかける介入を行い,課題価値および自己効力感に与える影響について検討を行った.半期の授業内で3回の介入を受けた介入群は221名,対照群は144名であった.研究協力者には,半期の授業の開始時と終了時の2時点で質問紙に回答を求めた.プレ時点の各得点を共変量とした共分散分析の結果,興味価値と実践的利用価値において,介入群の方が対照群よりもそれぞれのポスト得点が高いことが示された.以上の結果に基づき,本研究における介入授業が大学生の学習動機づけに与える影響について考察した. </p>
著者
上田 勇仁
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Suppl., pp.133-136, 2017-01-15 (Released:2017-03-06)
参考文献数
4

プロジェクト学習など実習型式の授業において,リフレクションの重要性がこれまで指摘されてきたが,毎回の授業の終了後に実施する個人のリフレクションを検証した研究は少ない.本研究では,(1)プロジェクト学習における個人のリフレクションにどのような特徴があるのか明らかにし,(2)PBLの各学習活動が個人のリフレクションにどのような影響を与えるのか検証する.その結果,個人のリフレクションの特徴として「報告」「解釈」「計画」「応用」の傾向が明らかになり,各授業の学習活動のうち発表活動を設定した授業回においては,「応用」に関する記述数の頻度が向上することが確認された.
著者
相良 かおる 音成 陽子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.99-107, 2004
参考文献数
9
被引用文献数
2

近年,大学生の学力低下,学習意欲の低下が指摘され,1年次を対象に導入教育を実施し,『大学での学び方』を指導する大学も出現している.しかしながら,看護師,保健師,社会福祉士などの国家資格の取得を目指す大学では,必須の専門教育科目が多く,導入教育を行う時間的な余裕はない.そこで,1年次を対象にした必須科目である一般情報処理教育において,レポートの書き方,情報検索などの学び方の指導,著作権やプライバシーの保護,インターネットを安全に利用する方法などの内容を盛り込み,実践を行った.著作権に関する授業,情報検索に関する授業,および,文書作成ソフトを使ったレポート作成の授業の効果を調べるために,本授業を受講した学生と本授業が開講される前の2001年度の入学生を対象に,1年前期終了時7月末提出の看護専門科目におけるレポートについて,文書作成ソフトを利用したレポートの数,参考文献の明記状況,参考文献リストにおけるインターネット検索の有無について,調査を行った.その結果,それぞれについて本授業の受講生の割合が高くなっていた.一方,本授業の受講生の中には,図書検索を行わずにインターネット検索のみでレポートを作成している学生がおり,インターネット検索で得られた情報の信頼性などに関する新たな指導が必要であろうことがわかった.
著者
福山 佑樹 中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.309-319, 2012-03-30 (Released:2016-08-08)
参考文献数
23
被引用文献数
1

現代社会における深刻な問題の一つである社会的ジレンマを体験し,協力行動を促進する心理的要因の向上を目指すゲーム教材である「Connect the World II」を開発した.「Connect the World II」はこれまで広く社会的ジレンマのゲームとして用いられてきた個人レベルを対象とした社会的ジレンマゲームに「集団」の役割を追加し,個人と集団の2つの役割を参加者に担わせるという構造が特徴である.その評価のため,「Connect the World II」と「Connect the World II」から「集団」の役割を除外した個人レベルのみのゲームとの比較実験を行った.結果,本研究で開発したゲームでは,個人レベルのみを扱ったゲームと比較して,社会的ジレンマ状況において他者も協力するという「信頼」の向上が確認され,道徳意識の獲得に繋がるとされる「責任感」の向上の可能性が示唆された.