著者
福山 佑樹 中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.309-319, 2012
被引用文献数
1

現代社会における深刻な問題の一つである社会的ジレンマを体験し,協力行動を促進する心理的要因の向上を目指すゲーム教材である「Connect the World II」を開発した.「Connect the World II」はこれまで広く社会的ジレンマのゲームとして用いられてきた個人レベルを対象とした社会的ジレンマゲームに「集団」の役割を追加し,個人と集団の2つの役割を参加者に担わせるという構造が特徴である.その評価のため,「Connect the World II」と「Connect the World II」から「集団」の役割を除外した個人レベルのみのゲームとの比較実験を行った.結果,本研究で開発したゲームでは,個人レベルのみを扱ったゲームと比較して,社会的ジレンマ状況において他者も協力するという「信頼」の向上が確認され,道徳意識の獲得に繋がるとされる「責任感」の向上の可能性が示唆された.
著者
深見 友紀子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.333-341, 2013

子どもにとって主な音楽学習の場は,学校の音楽室と,一般的に"習い事"と称されている企業の音楽教室や街の音楽教室である.本資料では,筆者の音楽教室で取り入れている情報通信技術,情報通信技術を活用したインフォーマルラーニングの事例を紹介した.具体的には,(1)ピアノ教育雑誌に掲載された情報通信技術に関連する記事,筆者の音楽教室,学校音楽教育における情報通信技術の活用状況を提示した.(2)情報通信技術による音楽聴取機会の増加,情報通信機器の操作スキルの向上等により,子どもたちが音楽演奏へのアプローチの仕方を変化させていること,とりわけ保守的なピアノ教育の現場で,このような動きが子どもたちから自然に生まれてきていることを示した.(3)子どもの音楽学習でインフォーマルラーニングが発展する背景や要件,身につけたスキルを認定することの難しさ等,今後の課題について言及した.
著者
小孫 康平 田多 英興
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.29-38, 2004
被引用文献数
3 1

本研究では,ワーキングメモリの負荷が精神活動の指標である瞬目活動に及ぼす影響について検討した.実験では,日本語版リーディングスパンテスト(RST)を用いてワーキングメモリの負荷を操作した.実験参加者は,大学生・大学院生15名であった.その結果,(1)負荷が低い2文および負荷が非常に高い5文では,再生中の瞬目率の方が再生後の瞬目率より有意に高かった.(2)再生中の瞬目率では各文条件間で有意差は認められなかったが,再生後の瞬目率では3文および4文は2文より有意に高かった.このことは,ワーキングメモリ上の処理資源の減少が瞬目活動に影響を与えることを示唆する.(3)外的注意を伴う音読中の瞬目率は,内的注意を伴う再生中および再生後の瞬目率より有意に低かった.(4)瞬目率ピークは,再生指示の開始後や再生開始直後に形成された.このことは,刺激の処理終了や認知的努力を伴う意識的処理が行われたことを示唆する.
著者
渡辺 雄貴 加藤 浩 西原 明法
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.19-27, 2014

通勤・通学時に電車のような環境で学習する際には,学習以外に様々な情報を処理する必要がある.そこで本研究では,そのような環境下における情報の介入を想定し,動画コンテンツによる学習を行った際,どのような影響があるかをパフォーマンステストおよび質問紙調査により定量的,定性的に調査を行った.その結果,パフォーマンステストでは,内容理解を必要とする問題において,介入の有無により効果の差異があることが明らかになった.また,質問紙調査により,多くの被験者は視覚に対する介入と比較して,聴覚に対する介入を煩わしく思う傾向があることが明らかになった.
著者
加藤 由樹 杉村 和枝 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.93-105, 2005
被引用文献数
6

本研究は, 電子メールのコミュニケーションで生じる感情に及ぼす, メール文の内容の影響に注目した.本論文は, 研究Iと研究IIから構成される.研究Iでは, 62名の被験者に, 実際に電子メールを使ってコミュニケーションを行ってもらい, ここで収集したデータから, 電子メールの内容と, それを読んだ時の感情的な側面との関係を, 重回帰分析を用いて探索的に調べた.結果から, 「顔文字」, 「性別の返答」, 「質問」, 「強調記号」, 「文字数」の影響が示された.続いて, 研究IIでは, これらの要因の影響を仮説として, 23名の被験者に, これらの要因を操作したメール文を提示して, それを読んだときの感情を測定した.結果から, これらの要因の影響は, 概ね支持された.このことから, 電子メールでは, 自己を強く主張するのではなく, 相手との関わり合いを重視し, 顔文字などを上手く用いることで, コミュニケーションが良好になる可能性が示唆された.
著者
森田 英嗣 土居 崇
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.65-68, 2010

本研究では大阪弁と共通語の持つ指標的機能に注目し,授業スタイルとの関連を検討した.大阪府内で行われた二つの中学校数学の授業ビデオを対象にして,生徒と教師が授業の中で大阪弁と共通語をどのように運用するかを,一斉と個別の場面ごとに分析した.その結果,両場面で大阪弁を基調とした授業を行い,生徒の大阪弁使用を許し多数の発言を引き出すような授業スタイルと,一斉場面で共通語,個別場面で大阪弁を基調とした変化のある授業を行い,生徒には一貫して共通語の発話をさせながら落ち着いた雰囲気で進行していく授業スタイルが見出された.最後に今後のさらなる研究の必要性を指摘した.
著者
生田 淳一 野上 俊一 丸野 俊一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.117-120, 2006
参考文献数
6
被引用文献数
1

本研究では,公立中学校の1年生から3年生の生徒(517名)を対象に,学校既有の資料(アンケート,学力テスト)をもとに,学習場面での質問行動(わからないことがあったら質問する)についての実態と,動機づけ及び学業成績との関連を検討した.その結果,実態として,全体の52.6%が質問行動を利用しており,中学生にとって比較的利用可能性の高い学習ストラテジーであることがわかった.そして,質問する生徒の方が質問しない生徒よりも,学習する理由として内発的動機づけに関する項目があてはまると認識しているものが多く,学業成績が高いという結果から,質問行動と内発的動機づけ及び学業成績との関連性が示唆された.
著者
島田 英昭 北島 宗雄
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.111-119, 2009
被引用文献数
4

マルチメディアマニュアルの分かりやすさを向上させるため,3種の構成要素(画像,字幕,ナレーション)の提示タイミングと分かりやすさの関係を認知心理学的に議論し,適切な提示タイミングを心理実験により同定した.地震が起きたときの対処手順を説明する防災マニュアルを題材として,3つの実験を実施した.実験参加者は,1秒単位(実験1,2)または0.5秒単位(実験3)で3種の構成要素の提示タイミングが操作されたマニュアルの一場面を見て,分かりやすさを主観的に評価することを求められた.その結果,分かりやすい場面の条件は,画像の1秒後にナレーションが提示されることと,字幕がその間に提示されることの2点であることが明らかになった.
著者
藤野 良孝 井上 康生 吉川 政夫 仁科 エミ 山田 恒夫
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.5-8, 2006
参考文献数
4
被引用文献数
2

スポーツ場面で,ある身体動作を伝達する時,その動作に必要な力の強弱や筋の緊張状態をオノマトペ(擬態語・擬音語)で表現する場合が多い.オノマトペは,五感による感覚印象を言葉で表現する特性から,運動感覚の学習において有用であると言われている.しかしながらスポーツで用いるオノマトペ(Sportsonomatope)の基礎的なデータは存在せず,オノマトペが具体的にどのような用途を持ち,どんな構造で使用されているのか明瞭でなかった.そこで上記の問題を明らかにする為,スポーツアスリート384名を対象にスポーツオノマトペの実態調査を実施し,収集されたスポーツオノマトペの分析を行った.収集されたスポーツオノマトペは多くの学習者が共有可能なデータベースとして構築された.
著者
松村 敦 根岸 舞 宇陀 則彦
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.157-160, 2014

絵本の読み聞かせを効果的に行うための読み手と聴き手のコミュニケーションの1つとして,絵本の読み聞かせ後の問いかけが子どもに与える影響について検討した.具体的には,物語理解とイメージ形成の2つの側面における子どもへの影響を実験的に明らかにすることを目的とした.年長児81名に対して,物語理解への影響を見る実験とイメージ形成への影響を見る実験の2つの実験を行った.それぞれの実験で,問いかけをする質問群と問いかけをしない統制群の2グループに分けて,物語理解度を測るテスト,イメージ形成量を測るテストを行い,分析対象として62名分のデータを得た.実験の結果,物語理解度は質問群の方が統計的に有意に高いことが示され,イメージ形成量は質問群の方が低いという有意傾向が示された.
著者
松村 敦 根岸 舞 宇陀 則彦
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.157-160, 2014

絵本の読み聞かせを効果的に行うための読み手と聴き手のコミュニケーションの1つとして,絵本の読み聞かせ後の問いかけが子どもに与える影響について検討した.具体的には,物語理解とイメージ形成の2つの側面における子どもへの影響を実験的に明らかにすることを目的とした.年長児81名に対して,物語理解への影響を見る実験とイメージ形成への影響を見る実験の2つの実験を行った.それぞれの実験で,問いかけをする質問群と問いかけをしない統制群の2グループに分けて,物語理解度を測るテスト,イメージ形成量を測るテストを行い,分析対象として62名分のデータを得た.実験の結果,物語理解度は質問群の方が統計的に有意に高いことが示され,イメージ形成量は質問群の方が低いという有意傾向が示された.
著者
中橋 雄 寺嶋 浩介 中川 一史 太田 泉
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.373-382, 2010
参考文献数
14

本研究は,「電子黒板を活用して学習者が考えを説明する学習活動」で生じる相互作用を調査し,学習者同士の思考と対話を促すために教師が行った指導方略をモデル化して捉えることを目的としたものである.学習場面をビデオで撮影するフィールド調査により,学習者および教師の発話と行動について分析を行った.その結果,教師の指導方略として,「対話のための場を整える」,「説明方法を指導する」,「自らモデルを示す」,学習者の説明に対して「受け答える」,「思考を促す問いかけをする」といった事象のカテゴリーが生成された.そして,それらを構成する要素の中には,<提示画像を準備する><説明を書き込むよう注意する><印の付け方を注意する><色を変えて比較させる><書き込みを保存させる><立つ位置の見本を示す><身振り手振りの見本を示す>といった電子黒板を活用することによる特徴的な所作・動作を伴う事象が確認された.
著者
畔田 暁子 鈴木 佳苗
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.85-88, 2012

本研究の目的は,美術科の鑑賞学習の授業において利用できる可能性がある学習コンテンツの1つであるウェブ上の画像に関して,鑑賞学習の授業での現在の利用状況,利用の際に必要な機器や機能・要素,教員の意識と利用の際の課題を明らかにすることである.現職の中学校美術科担当教員を対象として質問紙調査を行った結果,1)ウェブ上の画像は第3学年対象の鑑賞学習の授業において利用頻度が高い傾向があり,2)いずれの学年の授業においても「絵画など平面作品」の画像が利用されることがもっとも多く,3)美術科担当教員は,ウェブ上の画像には画質とともに「歴史・文化的背景」や「素材や技法の説明」などの情報が必要だと考えていることが示された.
著者
田口 真奈 半澤 礼之 杉原 真晃 村上 正行
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.327-337, 2012
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究は,FD(Faculty Development)業務を担当する若手教職員を対象とした調査結果から,担当者が業務上,連携を取る必要のある部局との連携の程度,ならびに担当者のキャリア展望が,FD業務へのやりがいや不安といった感情にどのような影響を与えるのかを明らかにするものである.大学教育センター等に所属する教員,FD委員会に所属する教員,事務職,組織の代表者といったポジションによる違いを検討したところ,センター所属の教員の方が委員会所属の教員よりも,また代表者は,若手教員よりもやりがいが高いことが明らかとなった.次に,こうしたやりがいや不安に影響を与える要因として,委員会所属の教員においては,連携が取れていることと,FD業務を自身のキャリア展望に位置づけられることがやりがいを増すことにつながる可能性が示唆された.センター所属の教員については,キャリア展望と,やりがいにのみ関連がみられた.事務職については関連はみられなかった.
著者
岡本 雅子 村上 正行 吉川 直人 喜多 一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.35-45, 2013

プログラミングの学習では,サンプルプログラムを使って,プログラムの記述(命令)とその実行結果(動作)から各処理概念を学んでいく経験学習の方略が用いられる.しかしながら,各命令と動作の関係そのものを暗記するだけで,概念あるいは機能の理解といった段階にまで到達していない学習者が散見される.こうした事例に関し,本研究では,「現在使用されているカリキュラムや教材が,経験学習の構造的特性に合致していない」ことが,理解を妨げている要因の一つであるのではないかと考えた.そこで,経験学習を構成する「対象の認知と現象の把握」の過程に注目し,プログラムと動作の関係を視覚的に「顕在化」することに配慮したカリキュラムおよび教材を開発した.また,これらを評価するため,授業において運用を試みた結果,視覚的顕在化の側面において受講生への効果を確認するとともに開発した教材およびカリキュラムの有効性が示唆された.
著者
神邊 篤史 永井 久美 松原 行宏 岩根 典之 岡本 勝
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.143-150, 2009

運動学習による動作訓練は,新たな身体技能の獲得や日常生活における身体機能の再獲得において重要である.本報告では上肢の大きな動作の学習のための仮想環境について提案する.本システムにおいて,学習者は環境内に提示されるポインタの位置を視覚や触覚を通して確認することで,動作を修正しながら目標位置に向かって上肢を動かしていく.具体的には,cube型環塊と三次元迷路環境の2つの環境での訓練により,上肢の大きな動作を行う際の運動の計画,運動の実行と修正や,問題のある筋の特定が可能である.健常大学生を対象とした実験では,本システムを用いた動作習熟の可能性を確認できた.
著者
北村 智 脇本 健弘 松河 秀哉
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.129-132, 2013

本研究では実践共同体としての学術共同体に対するネットワーク分析によるアプローチを試みる.特に学習としての正統的周辺参加に着目し,共同体における参加者の「位置」を定量的に表現する手法として中心性を採用する.中心性からみた共同体における参加者の「位置」の変化と,共同体における参加者の役割獲得の関係を分析し,実践共同体に対するネットワークアプローチの妥当性について検討する.
著者
田口 真奈 西森 年寿 神藤 貴昭 中村 晃 中原 淳
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.19-28, 2006
被引用文献数
10 9

大学教員初任者に対して「何に不安を抱き,どのようなサポートを必要としているのか」に関する調査を行った.また,高等教育機関に対して「どのような初任者研修を必要と感じ,実施しているのか」に関する調査を実施した.前者の調査からは,初任者が教育方法に関してもっとも不安を感じていることが明らかになった.ただし教育方法に関する研修に対する教員の必要性は必ずしも高くはなく,有効なサポート方法の検討が課題であることが示唆された.後者の機関調査からは,教育方法やITに関わる内容について機関による十分なサポートが提供されていないことが明らかとなった.特に,小規模な機関においては,その必要性が認められているにもかかわらず,サポートが十全でない状況が推測され,そうした機関の初任者をサポートする手だての必要性が示唆された.
著者
張 セイ 森本 康彦 宮寺 庸造
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.177-180, 2012
参考文献数
9

近年,自己調整学習を支援するシステムが開発されているが,初歩の自己調整者に特化した支援が不十分なため,自己調整学習に不慣れな学習者には扱いにくいシステムとなっていた.そこで,本研究では,この問題点を解決するため,初歩の自己調整者の学習プロセスを通して自己調整学習を支援するシステムを開発した.本システムは,足場かけ/足場外しを半自動化することで自己調整者の上達を促すことを特徴とする.評価の結果,本システムは,自己調整学習を効果的に支援することが示され,問題点の解決の可能性が示された.
著者
森 玲奈 北村 智
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.309-318, 2013

ワークショップは教育工学の研究対象として認識されてきた.しかしながら,教育工学研究としてのワークショップの評価について,十分な議論が行われていない.そこで本稿では,第一に,ワークショップの教育評価について,ワークショップと学習目標との関係に着眼し,検討を行なった.第二に,教育工学研究としてワークショップを評価する方法について,都市計画研究における方法と認知科学研究における方法を参照し,検討を行なった.検討の結果,第一に,ワークショップの教育評価では,我々は明示された学習目標と明示されていない学習目標を分ける考えを示した.加えて,「予期されなかった学習」の重要性を指摘した.第二に,都市計画研究における評価方法を検討した結果,研究の妥当性・有用性を考える上で,実践の置かれた文脈と同様に,実践に対する研究者の立場を詳述することが重要であることと,参加者・研究者のみならず,企画者・運営者を含めた多様な関わりを踏まえた多面的な分析に,有用な知見を見いだせる可能性があることを示した.第三に,認知科学研究における相互作用分析の研究を踏まえると,言語行動のみならず,非言語行動を含めたマルチモーダルな分析を行うことが有効ではないかと提案した.