著者
川上 泰雄
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.37_2, 2017 (Released:2018-02-15)

トップアスリートや舞踊家、音楽家など、様々なジャンルで活躍するエリート達は、いずれも人間の身体能力を極めて高いレベルで達成している「達人」であるといえる。人々を驚嘆、感動させるこうした達人たちの動きに関して精力的に研究・実践活動を進めている4名の専門家を演者としてお招きし、本シンポジウムを企画した。「達人技」の域に達する動作の機序、音楽・リズムとの絶妙な協調を成し遂げる情報処理能力や身体制御方略、そして人々の感動を呼ぶ達人の動きのポイントなどについて、各氏より最新の研究成果をご披露いただく。会場では「達人技を科学する」というテーマのもと、各演者の話題を中心に議論を行い、領域横断的な考察を深めることを目指す。シンポジウムに割り当てられる合計時間の関係から、パネルディスカッションは最小限とし、各演者のご発表と質疑応答にできる限りの時間を充てる予定である。バイオメカニクス研究領域はもちろん、ご興味をもたれる様々な研究領域の皆様のご参加と、積極的な意見交換をお願いする次第である。芸術の域にまで高められた人間の究極の動きに迫り、身体能力の多様な可能性を探りたい。
著者
井上 泰至
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.57-66, 2010-10-10

ペリー来航前後から安政の大獄あたりまでの、武家説話や、志士の言説における秀吉の朝鮮攻略について検討した。文化・文政期には昌平坂学問所の古賀[トウ]庵が、はやく秀吉のこの戦争の非倫理性を認めつつ、諸外国に示した「武威」の点で評価していたが、幕末になると秀吉の雄大な志を評価する方に傾き、そうした認識は、儒学・国学・洋学・水戸学の垣根を越え、漢文武家説話から絵本読本にまで確認できた。さらに、水戸学の影響を受けた吉田松陰により、秀吉の戦争の「正当性」は、天皇存在の聖性から理念化され、より具体的に大陸進出の膨張策が主張された点で、近代のこの戦争の評価と実際のアジア侵攻にリンクするものであったことを確認した。
著者
西上 泰子 柳沢 幸雄
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.129-138, 1995-05-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
21

人口増加と食肉需要の増大に伴い,牛の飼育頭数は急激に増加した。かつて牛は草や農作物残滓を食べて,牛肉や牛乳,皮革を人類に提供し,役畜として働き,その排泄物は肥料にも燃料にもなった。現在は大量の牛の飼育のために放牧地の植生が劣化し,熱帯林が草地へ転換されている。特に先進国では穀物飼育を行い,畜産排泄物は淡水資源を汚染する。これら畜産による地球環境負荷を考察した。さらに温室効果ガス(GHG)の地球規模の排出に,牛が関与する割合を計算した。 牛の飼育とGHGの関係には,GHG発生量の増加と,吸収量の減少の二つの側面がある。放出されるGHGとして,牛のルーメンから発生するメタン,呼吸によるCO2,飼料用穀物の生産のために発生するCO2などがある。他方,過放牧のために植生が減少したり,また草地を作るために森林が開拓されて,大気からのCO2の吸収量が減少する。また化学肥料の使用によって亜酸化窒素(N20)も空気中に放出される。これらの植生劣化まで含めて計算した結果,人為的GHG総排出量に対して,牛が関与する割合はCO2で25%,メタンで19%,N20では不確実性を伴うものの18%となった。メタンについては比較的短い寿命のために,大気中濃度安定化のための削減必要レベルは人為メタン総排出量の10%と小さく,牛の存在がなければメタンの問題は解決し,牛の関与分は大きいと言える。他方,CO2とN20については削減必要レベルはそれぞれ60%以上,70~80%と大きく,世界中で牛の飼育を全部削減したとしても,地球温暖化問題を解決するほどではない。
著者
石上 泰州
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.125-136,215, 2006

本稿は,集計データにより1957年4月から2005年3月までに行なわれた知事選挙の投票率を分析する。着目するのは,統一地方選挙の効果と,相乗りおよび自民党分裂の影響である。分析の結果,確認されたのは以下の点である。(1) 議会選挙との同時選挙になると知事選挙の投票率は高くなる。(2) 議会選挙において無投票の選挙区が生じることがあるが,無投票の選挙区が多いほど知事選挙の投票率は低くなる。(3) 衆院選,または参院選との同日選挙になると投票率は高くなる。ただし,参院補選との同日選挙では投票率に影響がみられない。(4) 統一地方選挙において行なわれる知事選挙の投票率は高い。ただし,同じ日に行なわれる知事選挙の数が多いほど投票率が高くなるわけではない。(5) 自民党に相乗りする政党が多くなるほど投票率は低くなる。(6) 国政第二党が自民党に相乗りすると投票率は低くなる。(5)よりも(6)のほうが投票率に対する影響はやや大きい。(7) 自民党が分裂した選挙は投票率が高い。
著者
井上 泰至
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国際日本文学研究集会会議録 = PROCEEDINGS OF INTERNATIONAL CONFERENCE ON JAPANESE LITERATURE (ISSN:03877280)
巻号頁・発行日
no.29, pp.127-137, 2006-03-01

In the Edo period, the number of works that depict war and warriors (kinsei gunsho) easily exceeds 100 for those published, and many more for those that survive as manuscripts. However, because these works were used politically pre-war for nationalistic purposes, and the post-war backlash led to an avoidance of examining them directly, the research into this field in Japan could not be said to be very active.This presentation will look into two points. First, records on the situation in Japan as written by foreign visitors and research into Japan overseas, particularly in the United States, will be introduced. These provide reasons not only to pursue research into kinei gunsho, but also offer hints towards it. The problems and advantages found therein will be discussed. Second, as an example of an application of research that has learned from outside examination of Japan, the problems surrounding the reprinting of Okaya Shigezane's Meisho Genkoroku (1869) in 1909 will be looked at in order to examine the establishment and subsequent reevaluation and rebirth of kinsei gunsho.The evaluation of the Edo period as an age of the commoner has established itself, but the authority and philosophy of rule of the time came from the warrior class. This peculiarity of Japan in East Asia can be seen in the introductions given of Japan by the ambassadors from Korea. The attention given to warrior culture inspired a bushido boom in the Meiji period which expanded to the West, but academically the heroes of Edo culture have been set as the commoners from the time of Sansom's Japan: A Short Cultural History. Post-war, the attention given to warrior culture by Japan researchers in America, such as Reischauer and Bellah, derives from looking for the reasons for modernization in Edo's warrior class. Expanding on this is the recent work of Ikegami Hideko, who proposes a continuity from the cultural resources found in warrior culture and the modern age. Using the vantage point of Japan studies in America, I would like to introduce parts that will offers hints into the meaning of the reprinting of Meisho Genkoroku.
著者
祖父江 孝男 須江 ひろ子 村上 泰治
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.77-91, 1957-12-30 (Released:2008-02-26)

(1) Ejiko is a child's cradle used among the folk-societies in the northeastern part of Japan. The most common type is made of straw (coiling) as shown in Fig. 1-3, in which a child squats, wrapped by futon (quilt) and tied by a rope. During a day, while the whole family is out for work, the child is left completely alone in the house, crying and screaming, but without any bodily movement; hence it is often the case that flies collect on the child's face, or a cat squats on it, etc. It is therefore obvious that this child-rearing pattern may give the child a great amount of frustration and his personality formation is considerably influenced by it. (Although WHITING concludes that the "independence training" is most severe among the Ainu(7), this Japanese pattern may exceed in this aspect.)
著者
村上 泰治
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.118-125, 1956-10-20
著者
馬場 駿吉 高坂 知節 稲村 直樹 佐藤 三吉 鈴木 茂 遠藤 里見 石戸谷 雅子 小野寺 亮 山田 公彦 大久 俊和 荒井 英爾 鈴木 雅明 大山 健二 粟田口 敏一 戸川 清 岡本 美孝 松崎 全成 寺田 修久 喜多村 健 石田 孝 馬場 廣太郎 島田 均 森 朗子 池田 聖 金子 敏郎 今野 昭義 山越 隆行 石井 哲夫 窪田 市世 鍋島 みどり 田口 喜一郎 石山 哲也 中野 雄一 中村 英生 五十嵐 文雄 古川 仭 作本 真 山下 公一 久保田 修 宇佐神 篤 伊藤 博隆 鈴木 元彦 間宮 紳一郎 横田 明 加藤 薫 大屋 靖彦 河合 〓 岩田 重信 横山 尚樹 井畑 克朗 瀧本 勲 稲福 繁 坂倉 康夫 鵜飼 幸太郎 雨皿 亮 山田 弘之 坂倉 健二 平田 圭甫 伊藤 由紀子 村上 泰 竹中 洋 山下 敏夫 久保 伸夫 中井 義明 大橋 淑宏 阪本 浩一 村田 清高 平沢 昌子 原田 康夫 森 直樹 白根 誠 多田 渉 小林 優子 竹林 脩文 河野 嘉彦 夜陣 紘治 平田 思 宮脇 修二 津田 哲也 山下 隆司 二階堂 真史 柿 音高 永澤 容 増田 游 後藤 昭一 西岡 慶子 折田 洋造 東川 康彦 武 浩太郎 進 武幹 前山 忠嗣 百田 統洋 堤 昭一郎 茂木 五郎 川内 秀之 松下 太 吉村 弘之 高田 順子 石川 哮 定永 恭明 大山 勝 松崎 勉 坂本 邦彦 廣田 常治 内薗 明裕 鯵坂 孝二 中島 光好
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.389-405, 1995-03-01
被引用文献数
13 16

The efficacy and safety of Kampo preparation Sho-seiryu-to were studied in a joint double-blind trial in comparison with a placebo. The study was carried out on 220 patients with perennial nasal allergy at 61 hospitals. Granules in a dose of 3 g were administered 3 times daily for 2 weeks. Moderate to high improvement was recorded in 44.6% of the treated patients and in 18.1% of those receiving placebo. The difference is significant (p <0.001). Side effects were noted in 6.5% of the treated patients and in 6.4% of the controls (not a significant deference). The side effects were mild and had no influence on the daily life of the patients.
著者
三上 泰史 石川 弘也 原 直裕 夏迫 和也 空閑 融 大和田 恭平 北浦 勇人 上田 隆一
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.143-153, 2022 (Released:2022-03-17)
参考文献数
20
被引用文献数
1

This paper proposes a method for training deep convolutional neural networks (DCNNs) as a detector of plant stems partly hidden by leaves. The detector is assumed to be used by an agricultural robot that treats near trees in dense fruit vegitable fields, where the stems of trees are hidden not only by leaves, but also by the totally green confusing background. We tackle this difficult problem by training DCNNs with datasets that are compose of realistic computer graphic images (CG images) and annotated images of foreground leaves and stems. Physically-based Rendering (PBR) and Image-based Learning (IBL) are utilized for creating the CG images that make DCNNs distinguish foreground trees from the background. We have trained two DCNNs with the CG images and created a main stem detector with the DCNNs. In the experiments, the detector has distinguished near trees from the confusing background and has found a main stem partly hidden by leaves.
著者
内田 明彦 川上 泰 加藤 茂 村田 義彦
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.115-119, 1999-02-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

1995~1997年に神奈川および静岡県内の河川に生息, あるいは養殖されるアユ, アマゴ, イワナ, ニジマスなどについて横川吸虫メタセルカリアの感染状況を調査した. 神奈川県内の河川から採取したアユの感染率は73.7~87.1%で, 1匹当たりのメタセルカリア数は12~348個体であった. 早川, 酒勾川で採取されたウグイは濃厚に感染 (87.0~100%) し, 1匹当たりのメタセルカリア数は27~1, 247個体であった. 早川, 藤木川産ニジマスには感染がみられなかった. 静岡県内 (狩野川本流とその支流) ではアユ (感染率80%, 寄生数25~428), ウグイ (93.8~100%, 36~1, 257), オイカワ (46.6~56.7%, 16~269), カワムツ (76.3%, 24~198) およびタカハヤ (100%, 49~165) の5種に感染がみられたが, ニゴイ, イワナ, ニジマス, アマゴからは検出されなかった. 井戸水飼育の養殖アユ212匹中3匹 (1.4%), 河川水利用の養殖アユでは223匹中142匹 (63.7%) からメタセルカリアが検出され, 感染率および1匹当たりのメタセルカリア数は晩秋に向けて増加した. しかし, 養殖ニジマス, イワナ, アマゴからはメタセルカリアは検出されなかった. 各種魚類から得られたメタセルカリアを猫に感染して得た成虫は, 形態変異がみられたが, すべて横川吸虫と同定された.
著者
井上 泰至
出版者
佛教大学国語国文学会
雑誌
京都語文 (ISSN:13424254)
巻号頁・発行日
no.26, pp.30-43, 2018-11-24

『雨月物語』「蛇性の婬」の歌枕による舞台設定(紀伊国三輪が崎・佐野の渡り)は、当時の中世歌学に従った通念とは異なった国学(契沖『万葉代匠記』(精選本))の成果による歌枕考証を基にしつつ、その通念と国学説の間を、俳諧的連想で自由につなぐものであった。また、主人公豊雄が引用する「三輪が崎・佐野の渡り」を詠みこんだ歌は、『万葉集』が出典ではあるが、平安朝文学に耽溺する余り、その文学世界から抜け出てきたような謎の女、真女児(まなご)に誘惑され、豊雄が懸想する場面での引用の背景には、『源氏物語』「東屋」が介在していることを考証した。これらの新事実を出発点に、原拠の中国白話小説をいかに日本の物語に「見立て」ていったか、その知的遊戯の実態を確認し、「物語」の高度な達成と、本作の主題について私見を提示した。
著者
石上 泰州
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.125-136,215, 2006-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本稿は,集計データにより1957年4月から2005年3月までに行なわれた知事選挙の投票率を分析する。着目するのは,統一地方選挙の効果と,相乗りおよび自民党分裂の影響である。分析の結果,確認されたのは以下の点である。(1) 議会選挙との同時選挙になると知事選挙の投票率は高くなる。(2) 議会選挙において無投票の選挙区が生じることがあるが,無投票の選挙区が多いほど知事選挙の投票率は低くなる。(3) 衆院選,または参院選との同日選挙になると投票率は高くなる。ただし,参院補選との同日選挙では投票率に影響がみられない。(4) 統一地方選挙において行なわれる知事選挙の投票率は高い。ただし,同じ日に行なわれる知事選挙の数が多いほど投票率が高くなるわけではない。(5) 自民党に相乗りする政党が多くなるほど投票率は低くなる。(6) 国政第二党が自民党に相乗りすると投票率は低くなる。(5)よりも(6)のほうが投票率に対する影響はやや大きい。(7) 自民党が分裂した選挙は投票率が高い。