著者
川上 礼四郎 伊藤 太郎 本田 豊 黒田 峻平
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.33, pp.78-79, 2017

<p>東京都動物園協会の多摩動物公園では,育児放棄されたボルネオオランウータン(<i>Pongo pygmaeus</i>,以下オランウータン)のチェリア(メス,2歳)に代理母であるジュリー(メス,51歳)を充てるという国内初の試みが行われている。そのため,代理母を充てた血縁関係のない親子の行動を血縁関係のある親子の行動と比較して考察していこうと考えている。過去に行った血縁関係のある親子間におけるオランウータンの社会的行動に関する研究では,ワカモノ以下の個体は母親だけでなく血縁関係のない個体とも身体接触を伴う社会的交流を行うのに対し,オトナは自身の子供としか交流を行わないという結果になった。また,ワカモノ以下の個体の方がオトナの個体に比べ単独行動時間が短く,また,血縁関係のない個体と個体間距離が短くなる時間が多いと考えられた。そこで本研究では「血縁関係がある親子,ない親子でも交流時間や個体間距離が短くなる時間は大きく変わらない」という仮説を立て,それを検証するために「母親(子供)と交流する時間」「母親(子供)と個体間距離が短くなる時間」を記録し,その結果を血縁関係がある親子(2組)と血縁関係がない親子(1組)で比較する予定である。調査は東京都動物園協会の多摩動物公園において4/23~6/18まで計13回,9:45~16:45まで行う予定である。調査対象は血縁関係がないジュリー(オトナメス,51歳)とチェリア(アカンボウ,2歳)の親子,血縁関係があるチャッピー(オトナメス,43歳)とアピ(アカンボウ,3歳)の親子,同じく血縁関係があるキキ(オトナメス,16歳)とリキ(コドモ,4歳)の親子である。収集したデータをもとに,代理母を充てることによる子供の行動変化について考察を行う予定である。</p>
著者
横山 修 泉 明宏 中村 克樹
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.23, pp.91, 2007

近年、マカクザルが、自らがある事柄を記憶しているか否かをある程度理解していること、つまり、メタ記憶能力を持つことを示唆する結果が報告されている。例えば、長期間の訓練後にあるアカゲザルは、記憶課題の正試行と誤試行とで異なる報酬を選択できることが示された。しかし、例数も少なく、また長期の訓練が必要かどうかなど、マカクザルのメタ記憶能力に関しては未だよく分かっていない。本研究では、記憶課題遂行後に報酬を得るためにある画像に触れることを要求する遅延見本合わせ課題を用い、記憶課題の訓練以外に特別な訓練をせず、報酬を要求する行動が記憶課題の正誤に応じて異なるかどうかを解析した。まず、タッチパネルモニタを用いて1頭のニホンザルに遅延見本合わせ課題を訓練した。十分な訓練後、試行の最後に別の画像を呈示するようにした。その画像に触れること(報酬要求行動)で、記憶課題が正解だった場合にはサツマイモ、誤りだった場合にはタイムアウトを与えた。その後、新しい試行を開始した。報酬要求行動における反応潜時を解析したところ、正試行よりも誤試行において有意に長く、ニホンザルが記憶課題に正しく答えたかどうかを区別していたことが示唆された。与えられる報酬や罰は反応潜時によって変化しないため、成績依存的な反応潜時の違いは訓練を通して獲得されたものではない。ニホンザルが、記憶課題後その正誤に応じて自発的に異なる行動をとったと考えられる。特別な訓練を行わずにこうした行動が見られたことは、ニホンザルには記憶に基づいて自ら行なった行動の妥当性を評価する能力があり、外部環境だけでなく内部状態をも考慮に入れたより適応的な行動の産出を行いうることを示唆する。
著者
浅井 隆之 藤田 志歩 塩谷 克典 稲留 陽尉
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.31, pp.92-93, 2015

ニホンザルの農作物被害対策において、農家によって動物の生態についての理解や対策への意識に差があることが、集落ぐるみの取り組みを行う上での障害となっている。しかし、どのような要因が農家の意識に隔差をもたらすかについては科学的な解析がほとんど行われていない。本研究は、ニホンザルによる農作物被害の程度が農家の対策意識や加害動物に対する感情にどのような影響を及ぼすかについて明らかにすることを目的とし、被害農家を対象に聞き取り調査を実施した。まず、対象地区を選定するため、鹿児島県薩摩郡さつま町および伊佐市において農作物被害を出している群れについてラジオテレメトリー調査を行い、その結果から、群れの出没頻度が異なるA、BおよびC地区を対象に選んだ。3つの地区の住民計19人からの回答を用いて、被害の実態やその対策、およびニホンザルに対する感情に関する8つの質問項目について主成分分析を行い、各主成分の得点を地区間で比較した。さらに、各農家の主成分得点と、被害の頻度、量、年数および季節それぞれとの相関を調べた。その結果、ニホンザルの生態についての理解度を表す第1主成分と嫌悪や憎悪の感情の強さを表す第3主成分は、被害がより古くからあり、被害頻度の高いA地区で最も高く、対策意識の高さを表す第2主成分は、被害は古くからあるが、その頻度は小さいB地区で高かった。一方、被害の年数が最も浅く、その季節が限定的なC地区では、第1、第2および第3主成分のいずれも得点が最も低かったが、恐怖の感情の強さを表す第4主成分の得点は最も高かった。また、各農家の主成分得点と被害の程度との関連では、第2主成分と被害の頻度との間にやや高い正の相関がみとめられた(r = 0.70, <i>P</i> < 0.05)。以上より、地区レベルおよび農家レベルのいずれにおいても、ニホンザルによる被害の程度によって農家の意識格差が生じることが示された。
著者
田中 伊知郎
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.21, pp.17, 2005

ニホンザルは毛づくろい中にシラミ卵をつまみ上げて食べる。その行動の形成過程B過程を調べるため、毛づくろい中におけるつまみ上げる行動について、餌付け群である志賀A-1群で横断的調査を行った。デジタルビデオカメラを用いて毛づくろい行動を撮影L録し、DVD-Rに落として、DVDプレイヤーで静止tスローを使ってつまみ上げ行動を解析した。コドモではつまみ上げた後、つまみ上げをやめ、別のところを探索することが多かったが、年齢が上昇するにつれてつまみ上げたものを食べる割合が上昇した。このつまみ上げた後でつまみ上げたものを食べる割合は年齢と相関した(Kendall順位相関、P< 0.01)。また同じ年齢群内での食べる割合の分散も年齢が上昇するにつれて、小さくなった。一方、性別による違いは見られなかった。言い換えると、コドモではよく見られるシラミ卵処理以外のつまみ上げるs動が、オトナになると毛づくろいの中で起こらなくなっていく。まとめると、毛づくろい中のつまむ行動は、大人になるにつれて、シラミ卵処理行動に収れんする。食べる割合は、子供期に個体間分散が大きく、成長するにつれて個体間分散が小さくなることから、摘み上げるものがシラミ卵になるようにニホンザルが学習獲得していくのでないかと示唆された。
著者
横山 浩
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.21, pp.36, 2005

(目的)飼育下のニホンザルを適正に飼育管理するためには個体数調整が不可欠である。しかしその方策としての余剰個体の搬出は最小限に留めるべきである。千葉市動物公園ではオトナメス(飼育頭数10&sim;20頭)へのホルモン剤のインプラントなどの避妊措置を実施してきたが、インプラントを行うヒトにもされるサルにも負担が重く、確実で負担が軽い方法として、ニホンザルの季節繁殖性に着目した、オスメス別居飼育による繁殖制限を中心に個体数調整を行ってきた。<br> (方法)1998年から完全繁殖制限のため、交尾期の始まる10月中旬からオトナオス(1&sim;2頭)を群れからはずし、室内ケージで別居飼育した。交尾期終了と共に、ふたたび群れに戻した。この方法で2001年まで行った。2002年は繁殖制限しなかった。2003年からは少数繁殖を目的として2&sim;3頭のオトナメスを選抜し、室内ケージでオトナオスと同居させて交配を試みた。<br> (結果)上記の方法により、1999年から2004年までの総繁殖頭数を9頭、年平均1.5頭に抑えることができた。(これ以前の年平均繁殖頭数は6頭)。また室内ケージにおいて少数繁殖が可能なことが確認できた。当初懸念されたオトナオス不在による群れの乱れや、移動に伴う激しい攻撃的行動も発生しなかった。一方で交尾期が長引き(別居飼育終了後の3月に交尾例あり)、別居飼育の期間を4月過ぎまで延長する必要があった。<br> (考察)上記の方法は単純、確実ではあるが、オトナオスが多数である場合、多くの飼育スペースが必要になりまた、別居飼育期間が半年近くに及ぶなどの難点がある。一方、個体選抜による交配を行うことで、近親交配を避け、計画的繁殖に基づいた個体数調整を行うことも可能である。しかしながら個体数調整を単一の方法で行うには限界がありいくつかの方法と併せて行う必要があると考えられる。
著者
Min HOU Masahiro HAYASHI Ryuichi ASHINO Amanda D. MELIN Shoji KAWAMURA
出版者
Primate Society of Japan
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
pp.32-33, 2020 (Released:2021-04-23)

Taste perception is fundamental in dietary selection for many animals. Bitter taste perception is important not only in dietary selection but also in preventing animals from ingesting potentially toxic compounds. Previous studies have revealed evolutionary divergence of the bitter taste receptor gene (TAS2R) repertoire in mammals, including primates, using publicly available whole genome sequence (WGS) data. Plant tissues contain more toxic compounds than animal tissues do. Herbivores could have less TAS2R genes because they are predicted to be more tolerant and less sensitive to bitter compounds to ingest poisons. On the other hand, herbivores could have more TAS2R genes because they are predicted to be in need of selecting and ingesting bitter plants which other animals avoid. Cercopithecid (African and Asian) monkeys are an excellent subject for studying adaptive evolution of bitter sensation because they have diverged into folivores (colobines) and omnivores (cercopithecines). However, only a few genera have been studied in this context. Dependence on WGS data is also potentially problematic due to its inherent incompleteness especially for multigene families such as TAS2Rs. In this study, we employed the target capture (TC) method specifically probing TAS2Rs followed by massive-parallel sequencing for nine cercopithecid species (seven cercopithecines: two Papio, two Macaca, one each of Cercopithecus, Chlorocebus and Erythrocebus species; two colobines: one each of Semnopithecus and Colobus species). We show that TC is far more effective than WGS in retrieving gene sequence and distinguishing intact and disrupted genes. We also find bitter taste gene composition differs among the species. Further studies are required to investigate whether difference of gene composition result in difference of receptor sensitivity and behavioral reactivity to bitter compounds.
著者
森田 哲夫 平川 浩文 坂口 英 七條 宏樹 近藤 祐志
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.29, 2013

&nbsp;消化管共生微生物の活動を通して栄養素の獲得を行う動物は微生物を宿すいわゆる発酵槽の配置により前胃(腸)発酵動物と後腸発酵動物に大別される.消化管の上流に微生物活動の場がある前胃発酵の場合,発酵産物と微生物体タンパク質はその後の消化管を食物とともに通過し通常の消化吸収を受ける.一方,後腸発酵ではその下流に充分に機能する消化管が存在せず,微生物が産生した栄養分は一旦ふりだしに戻り,消化を受ける必要がある.その手段として小型哺乳類の多くが自らの糞を食べる.このシンポジウムでは消化管形態が異なる小型哺乳類を対象にこの食糞の意義について考える.<br><br>&nbsp;糞食はウサギ類に不可欠の生活要素で高度な発達がみられる.発酵槽は盲腸で,小腸からの流入物がここで発酵される.盲腸に続く結腸には内容物内の微細片を水分と共に盲腸に戻す仕組みがある.この仕組みが働くと硬糞が,休むと軟糞が形成される.硬糞は水気が少なく硬い扁平球体で,主に食物粗片からなる.一方,軟糞は盲腸内容物に成分が近く,ビタミン類や蛋白などの栄養に富む.軟糞は肛門から直接摂食されてしまうため,通常人の目に触れない.軟糞の形状は分類群によって大きく異なり,<i>Lepus</i>属では不定形,<i>Oryctolagus</i>属では丈夫な粘膜で包まれたカプセル状である.<i>Lepus</i>属の糞食は日中休息時に行われ,軟糞・硬糞共に摂食される.<br><br>&nbsp;ヌートリア,モルモットの食糞はウサギ類と同様に飼育環境下でも重要な栄養摂取戦略として位置付けられる.摂取する糞(軟糞,盲腸糞)は盲腸内での微生物の定着と増殖が必須であるが,サイズが小さい動物は消化管の長さや容量が,微生物の定着に十分な内容物滞留時間を与えない.そこで,近位結腸には微生物を分離して盲腸に戻す機能が備えられ,盲腸内での微生物の定着と増殖を保証している.ヌートリア,モルモットでは,この結腸の機能は粘液層への微生物の捕捉と,結腸の溝部分の逆蠕動による粘液の逆流によってもたらされるもので,ウサギとは様式が大きく異なる.この違いは動物種間の消化戦略の違いと密接に関わっているようにみえる.<br><br>&nbsp;ハムスター類は発達した盲腸に加え,腺胃の噴門部に明確に区分された大きな前胃を持つ複胃動物である.ハムスター類の前胃は消化腺をもたない扁平上皮細胞であることや,前胃内には微生物が存在することなどが知られているが,食物の消化や吸収には影響を与えず,その主な機能は明らかとはいえない.一方,ウサギやヌートリアと比較すると食糞回数は少ないが,ハムスター類にとっても食糞は栄養,特にタンパク質栄養に大きな影響を与える.さらに,ハムスター類では食糞により後腸で作られた酵素を前胃へ導入し,これが食物に作用するという,ハムスター類の食糞と前胃の相互作用によって成り立つ,新たな機能が認められている
著者
榎本 知郎
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.25, pp.49, 2009

霊長類の卵管は腹腔から子宮へ続く管系だが,機能も構成も異なる峡部と膨大部の二部分に分かれている。その構造の進化的意義について考察した。ヒトの性行動の研究から,1.女性は,排卵前の妊娠確率の高い数日間に夫とセックスしたあとで愛人ともセックスする傾向がある,2.愛人とのセックスの時オーガズムを経験する傾向がある,3.女性は,オーガズムの反応で夫の精子を子宮から掻き出し,愛人の精子を吸いこむ,4.女性は,一日のうち夫と離れている時間が長ければ長いほど浮気をする頻度が高くなる,5.夫は,一日のうち妻と離れている時間が長ければ長いほど,セックスした時多数の精子を射精する,と主張される。つまり,精子競争が認められるということである。また,受精のしくみは,1.吸引された精子は子宮の粘液の海を泳いで子宮の左右にある卵管峡部に到達する,2.卵管峡部の上皮細胞は精子をつなぎ止め,栄養を与えて生かし,授精能を与え,夫と愛人の精子がここで待機し,排卵すると精子はいっせいに放たれる,3.精子たちは広大な表面積をもつ卵管膨大部の粘膜を泳いでたったひとつしかない卵子を探し求める,4.卵子は透明帯と放線冠によってバリアーを構築しており,これを突破して授精するには多くの精子の共同作業が必要となる。これらのことから,以下のふたつの仮説が考えられよう。仮説1=ヒトの卵管膨大部と放線冠は,元気の良い精子を多数送り込めるオスを選ぶべく進化した。仮説2=ヒトの卵管峡部は精子競争をすすめるよう進化した。
著者
赤見 理恵 高野 智
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.33, pp.72, 2017

<p>日本語では「サルまね」,英語でも「Ape(動詞)」「Monkey see, monkey do.」などの言葉があるように,サルはヒトのまねをするというイメージがあるようだ。多くの霊長類は学習によりさまざまな行動を習得するが,模倣による学習の対象は主に同種他個体である。それではなぜ,ヒトのまねをするというイメージがあるのだろうか。調査1では日本モンキーセンター附属世界サル類動物園の来園者を対象に,霊長類に対して抱くイメージを入園前に調査した。調査に協力した192名の来園者のうち89%が,「サルはヒトのまねをするのがうまい」に〇か×で回答する設問に〇と回答した。調査2では大学生132名を対象に,個体追跡法により行動観察を学ぶプログラムを体験する前と後に自由連想法により霊長類に対するイメージを調査した。「ヒトのまねをする」に類似した回答は見られなかった。「ヒトに近い」に類似した回答は観察前も観察後も約20%で見られた。「賢い,頭がよい」に類似した回答は観察前27.7%に対して観察後6.9%と有意に減少した。一方で「仲間がいる,家族想いだ」に類似した回答が5.3%から37.4%に有意に増加した。「サルまね」のイメージは,ヒトに近く賢い霊長類のイメージから類推されるものだと考えられるが,一部ではテレビや動物園などのメディアが霊長類を擬人的に扱ってきた影響もあるのではないかと考える。しかし本調査により,野生とは異なる動物園の環境であっても,野生に近い群れで飼育し種内関係をつぶさに観察できるようにすることで,霊長類に対するイメージを変えることができる可能性が示唆された。霊長類に関する正しい知識やイメージを伝えていくために,今後も動物園だからできることを模索していきたい。</p>
著者
服部 志帆 小泉 都
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.36, pp.25, 2020

<p>日本の霊長類学の創始者のひとりである川村俊蔵博士(1927~2003年)は、伊谷純一郎博士とともに 1952年と1953年に屋久島で調査地開拓のために予備調査を行った。合計43日の間、合計36人(猟師26人)に聞き取り調査を行った。西部に位置する永田の猟師や屋久島全域に詳しい安房の猟師などを対象に、サル、シカ、狩猟法、狩猟域、利用法、伝承、地名など多岐にわたる情報を聞き取っている。これらの情報は野帳8冊と日記1冊に記載されており、5万6千字をこえる。 本発表では、猟師から得た情報のなかでも最も充実しているヤクシマザルに関するものを取り上げ、1950年代の屋久島において猟師がサルとどのような関わりを持っていたのか、またサルが猟師にとってどのように重要であったのかを明らかにすることを目的とする。 方法は、2013年から解読している川村博士の野帳の情報を分析することであり、川村博士が1950年代に聞き取りを行った猟師の子孫から補足情報を得た。 分析の結果、当時の猟師は個人差があるものの、群れのサイズ、行動域、食性、交尾行動、群れ内外の関係、ソリタリー、猿害などサルに関する広範な知識を持っていることが明らかとなった。また、永田の猟師はそれぞれの狩猟域で牢屋罠という箱型の罠を用いてサルの狩猟を行っていたことや、サルのことをアンちゃん、ヨモ、山の大将、旦那、モンキーさんなどと呼び、頭や胆を薬として利用するという民俗知識を持っていたことがわかった。このような豊かなサルとの関わりは、島外の研究所や動物園からの生きたままのサルに対する高い需要にも影響を受けていたと考えられる。</p>
著者
櫻庭 陽子 友永 雅己 林 美里
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.28, 2012

京都大学霊長類研究所には14個体のチンパンジーが群れでくらしている。そのうち、レオというオトナの男性は、2006年に脊髄炎を発症し、四肢麻痺から寝たきりの生活になった。その後スタッフの懸命な治療と介護の結果、寝たきりの状態から自力で起き上がるまでに回復した。2009年には狭い治療用ケージから広い部屋に移動し、歩行やブラキエーションなどの移動ができるようになった。2009年11月から環境エンリッチメントとリハビリテーションを兼ねた、コンピュータ制御による認知課題を導入した。毎日午前(10~12時)と午後(14~16時)に自動的にPCが起動し、問題に正解すると少し離れたところから食物小片1個が提示される。この報酬をとるためにはモニターから離れて数m歩かなければならない。本発表では、蓄積された2010年と2011年のデータから、このチンパンジーの行動について、特に「正答率」「実施した試行数」「課題を開始するまでの時間」に注目して分析をおこなった。その結果、正答率は2010年では午前と午後の違いは見られなかったが、2011年には午後の方が有意に高かった。また2年間を通して、実施した試行数は午後の方が有意に多く、課題を開始するまでの時間は午前の方が有意に長かった。実施試行数と開始時間からは、午前の方が午後よりも課題に対するモチベーションが低いため、試行数が少なくなり課題が始まってもすぐにおこなおうとしないことが考えられる。それにもかかわらず、2010年では午前と午後で成績に差がなかったことから、モチベーションが成績そのものに大きな影響を与えないことも考えられる。リハビリテーションをおこなう上でモチベーションを維持することは重要である。今後は課題の難易度や食物報酬の質などの操作をおこなうとともに、行動観察をおこない、モチベーションの変動をもたらす要因について検討していく。
著者
山元 得江 清野 紘典 岸本 康誉 西垣 正男 美馬 純一
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.29, 2013

&nbsp;ニホンザルの保護管理計画を策定・運用するにあたり,群れの生息状況は基礎的な情報として必要である.限られた予算のなかで費用対効果が高い群れ生息分布調査を実現するため,サル出没カレンダー調査(日誌形式アンケート調査)から,低コストで広域的に群れの生息分布を推定するプログラムを開発し,その実用性が検証されている(清野 他,2011).サル出没カレンダー調査は,既存の分布のみを把握するアンケート等と比較し,行動圏・個体数・加害レベル等が群れごとに推定できるため,群れ管理が必要とされるサルのモニタリングとしては得られる情報が多く,広域に群れが生息している地域では汎用性が高い方法と考えられる.<br>&nbsp;福井県は,特定計画の策定に向け,サルの生息状況をモニタリングするため嶺南地域においてサル出没カレンダー調査を実施した.嶺南地域の 2市 5町約 850名に 1ヶ月間一斉にサルの出没を記録してもらい 1825件のサル出没情報を収集した.サル出没情報のうち,群れ情報のみを群れ判別プログラムで分析した後,一部の群れで実施したテレメトリー調査の結果で補正し, 36群の行動圏を推定した.推定された各群れの情報から,群れごとの加害レベルと個体数を推定した.加害レベルを 10段階で評価したところ,大半の群れは 6~ 8レベルにおさまり,個体数は約 1200~ 1600頭と推定された.<br>&nbsp;福井県嶺南地域は,連続的な群れの生息分布が確認されている地域ではあったが,群れごとの行動圏と特性がはじめて体系的に明らかにされ,本法が管理計画に資する基礎情報の収集に適していることが示された.また,サル出没カレンダー調査から得られた情報を各地域スケールで GIS解析し,サルの出没や被害状況を可視化した.これらの情報は,被害対策を優先的・重点的に取り組む際の意思決定を支援する資料して活用されることが期待される.
著者
吉川 翠 小川 秀司 伊谷 原一
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.35, pp.59, 2019

<p>タンザニア西部ウガラ地域の乾燥疎開林地帯でチンパンジー(<i>Pan troglodytes</i>)を直接観察した事例をまとめた。疎開林地帯では疎開林が全面積の86%を占め,他に常緑林と草地が点在している。1995年から2012年に収集した観察事例を分析した結果,(1)パーティ(遊動集団)サイズの平均は3.9頭(SD=2.8,Range=1-14,n=53)で,乾季は平均4.4頭(SD=3.1,Range=1-14,n=37),雨季は平均2.6頭(SD=1.3,Range=1-6,n=16) だった。(2)パーティの構成は,オトナオス(以下オス)のみが11.3%,オトナメス(以下メス)のみが1.9%,オスとメスの混合パーティが66.0%だった。オスとメスの混合パーティの内,コドモかアカンボウが含まれるパーティは34.0%だった。(3)1-5頭で構成されるパーティが75.5%と最も多く,次いで6-10頭のパーティが20.8%だった。10頭以上のパーティは3.8%で,いずれも乾季に観察された。(4)チンパンジーと遭遇した際,彼らは樹上を60.4%,地上を39.6%利用していた。また,利用植生の62.3%が常緑林,37.7%が疎開林だった。(5)発見時の行動は,採食35.8%,休息30.2%,移動30.2%,その他(グルーミングなど)3.8%だった。(6)1回の観察継続時間は10分以内が50%以上を占めた。本地域は,他の地域に比べて平均パーティサイズや最大パーティサイズが小さかった。また5頭以下のパーティの割合は他の地域の2倍だった。疎開林地帯では雨季よりも乾季の方がわずかにパーティサイズは大きくなるが,相対的にパーティサイズを小さくすることで,限られた果実量の採食競合を回避していると考えられる。また,ライオンやヒョウなどの捕食者の存在が,チンパンジーのパーティサイズや警戒心の強さに影響していると考えられた。</p>
著者
饗場 葉留果 小林 修 湊 秋作 岩渕 真奈美 大竹 公一 岩本 和明 小田 信治 岡田 美穂 小林 春美 佐藤 良晴 高橋 正敏
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.29, 2013

&nbsp;日本,世界各地には道路や線路で分断されている森が非常に多く,野生動物の移動,繁殖,餌の確保等が困難になっている.そのため我々の研究グループは 1998年から森を分断する道路上に樹上動物が利用できるための橋を研究し,建築してきた.これまでに山梨県に 3ヶ所,栃木県に 1ヶ所,愛知県に 1ヶ所建設された.<br>&nbsp;1998年,山梨県の有料道路上に道路標識を兼ねたヤマネブリッジの建設を提案し,実現させた.建設後,ヤマネを初め,リス,ヒメネズミ,シジュウカラの利用が確認された.建設費用は約 2000万円であった.<br>&nbsp;しかし,2000万円という高額なものでは,この技術を「一般化」し,普及していくことが難しい.そこでより安く,簡易な設計にし,建設できる樹上動物が利用しやすい「アニマルパスウェイ」(以下,パスウェイ)の開発研究を 2004年から行った.2004年の材料研究,2005年には構造研究を実施し,森林を分断している私道上に実験基を建設し,モニタリングを実施したところ,2006年,リスとヤマネの利用を確認した.<br>&nbsp;2007年に北杜市の市道にパスウェイの建設をし,そのモニタリングの結果は 2008年のポスターにて発表した.その後,2010年には,北杜市に.号機が,2011年には栃木県,2013年 4月には愛知県でパスウェイの建設がされた.栃木県では,モモンガの利用が確認され,これで樹上性の小型哺乳類はほぼ利用するということが証左された.山梨県の.号機と.号機では継続的にモニタリングを実施しており,ヤマネの利用は,.号機と.号機では 2割程であり,ヒメネズミは,両機とも 8割程であり,ヒメネズミの利用頻度が高かった.また,パスウェイの利用部位に関しては,ヤマネでは床面とパイプ面を,ヒメネズミとテンでは床面を,多く利用することが確認された.今後,これらのデータを元に,より効果的なパスウェイの普及を行っていく.
著者
荒川 葉
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.36, pp.51, 2020

<p>スクールカーストはクラス内で起こる順位性だが,その決定要因ははっきりしていない。本研究では,ヒトの性格や所属の観点,文化的な観点,そして霊長類学、人類学の観点よりはっきりと定義付けられていないスクールカーストの現実を評価し,負の側面があれば、その解決策を考えることを目的に行った。国分寺高校生100名:(男子42名 女子58名)に自身の性格や所属に関するアンケートを,東京外国語大学( 以下外大) の留学生(14名: 出身国はそれぞれ異なる) には自国の学校生活やスクールカースト,いじめ問題に関するアンケートを実施した。加えて,大学の先生やいじめの経験のある国分寺高校の生徒,教員へのインタビュー調査および文献調査を行い、研究を進めた。高校生のアンケートでは、男子はスクールカーストがあったと答えた生徒の中で上位に所属していると思う生徒は、自分自身の性格を明るく皆を笑わせる、異性ともよく話すと分析している。それに対して女子は委員などクラスの中心的な役割を担っているにも関わらず、自分自身はスクールカーストの上位にいるとは評価していない。外大生のうち順位があると答えた人は、上位にいるのはお金持ちと答えた。個人で自分の意志に従って行動することが多いのでカースト的なものはなかったと日本との違いが見られた。なぜ順位付けが起こるのかをアイブル=アイベスフェルトは,高い地位を持つものは餌場や繁殖行動において優位に経つことが出来るために集団で生活する全ての霊長類に見られ、特にチンパンジーでは誇示行動によって順位を獲得し維持すると述べている。また、キャンプに行った折にメンバーの中で順位付けが起こる事例も上げている。順位は高校の事例でも集団をまとめるのに、必要な役割分担的なものでもあるが、それがいじめに発展する事例も友人や大学の先生などからも得た。人間の社会的本性も理解しながら、男女の違いも含めて順位というものをどう考えたらよいかを発表する。</p>
著者
高田 優 前田 敦子 谷崎 美由記 柳川 久
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.29, 2013

&nbsp;北海道十勝管内の芽室町にある湧水域(約0.78ha)には,大小複数の湧水池と湿性林が存在し,農耕地の中に取り残されたコウモリ類のオアシスのような場所である.この湧水域は高規格幹線道路「帯広広尾自動車道」の経路上に位置し,道路造成の際にはコウモリの採餌場所となる池やねぐらとなる樹林の一部が消失するため,いくつかの保全措置が講じられた.道路造成後,コウモリ類の移動経路確保のために設置された門型カルバートの壁面および湿性林内にbat box(コウモリ用巣箱)を設置しコウモリ類による利用の確認調査を行なった.2002年の調査ではヒナコウモリ,カグヤコウモリおよびモモジロコウモリの 3種のコウモリ類による bat boxの利用を確認し,また湿性林内の樹洞ではカグヤコウモリの繁殖集団が確認された.その 10年後の 2012年 5月の時点で,調査地には約 10個のbat boxが設置されたまま残っていた.それらの古いものと取り替えて,出入口の下部に設けた着地場所の長さが異なる 2種類(5cm,15cm)の bat boxを各々 20個ずつ,合計 40個を新たに設置した.新しい bat boxの利用確認調査では,キタクビワコウモリ,カグヤコウモリおよびモモジロコウモリの 3種による利用が確認された.装着していた標識の確認から,利用個体の中には 10年前の bat box利用個体や近隣の建造物を利用していた個体などが含まれていた.また 10年前に樹洞を利用していた個体を含んだカグヤコウモリの集団も bat box内で確認された.これらのことから bat box設置後の10年の間にこの湧水域にコウモリ類が定着し,bat boxを利用し続けたことが示唆される.また 10年前の調査では確認されなかった幼獣と成獣の混成集団による利用が,キタクビワコウモリにおいて確認されたため,本種が bat box内で出産および哺育を行なった可能性が示唆される.また着地場所の長さが異なる 2種類の bat boxの比較においては,その利用例数に有意差は見られなかった.
著者
上野 将敬 山田 一憲 中道 正之
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.31, pp.41-42, 2015

集団で暮らす霊長類は、様々な相手と毛づくろいを行いあって利益を得る。近年の研究では、彼らが利益をより大きくするために2個体間で駆け引きを行っているのか、それとも、相手をかえながらより大きな利益を得られる相手を選んでいるのかが議論されている。本研究では、相手と親密であるか否かを考慮して、毛づくろいの催促が失敗し、相手から毛づくろいを受けられなかった時に、ニホンザルがどのように行動するのかを調べ、毛づくろい交渉における短期的な行動戦術を検討した。勝山ニホンザル集団(岡山県真庭市)における17頭の成体メスを対象に個体追跡観察を行った。普段の近接率をもとに、親密な相手と親密でない相手を区別した。
著者
中村 美知夫
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.35, pp.35, 2019

<p>チンパンジーのメス同士の挨拶交渉について,タンザニア,マハレのデータを元に概観する。一般に,野生チンパンジーのメス同士は没交渉的で「非社会的」とすら言われてきた。こうしたステレオタイプなイメージはこの10年ほどの間に変わりつつあるが,それでもメス同士の社会交渉についてはオス同士やオスメス間の交渉に比べて圧倒的に情報が少ない。チンパンジーの「挨拶」と呼ばれるものの典型例はパント・グラントという音声である。パント・グラントは,劣位者が優位者に発すると考えられており,実際,オス間ではパント・グラントを用いて線形的な優劣序列が決められることが多い。メス間でもパント・グラントはおこなわれるものの,その頻度が低いため,パント・グラントだけでオス間のような線形的な優劣序列が確認できることは稀である。マハレで1994年から2018年にかけて断続的に収集したメス同士の挨拶データを分析した。出会ったりすれ違ったりする際に,明示的な交渉(音声を発する,触れる等)が生じたものを広く「挨拶」と捉えた。これらの挨拶には,挨拶をする者とされる者の方向性が明確なものに加えて,双方向的なものも含まれる。3700時間あまりの観察で405回の挨拶が観察され,うち242回ではパント・グラント等の音声が発せられた。ざっと計算すると100時間あたり10.9回の挨拶,6.5回のパント・グラントということになる。実際にはメス同士が出会っても「何も挨拶しない」ことがほとんどなのである。挨拶が生じる場合は,大まかには年少のメスから年長のメスに向けられることが多かったが,中年以上のメス同士で一定の方向性があるかどうかは微妙である。チンパンジーの「挨拶」と「優劣」はしばしば同義のものとして扱われるが,メス間の挨拶データからその妥当性について検討する。</p>
著者
吉川 泰弘 長谷川 寿一 赤見 理恵 落合 知美 倉島 治 斎藤 成也 数藤 由美子 高見 一利
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.20, pp.vi, 2004

「大型類人猿情報ネットワーク(GAIN)」は、その前身である「チンパンジー研究利用に関するフィージビリティースタディ(ナショナルバイオリソースプロジェクトの一環)」が培ってきた大型類人猿由来の研究リソース配分ネットワークとその理念を引き継ぎ、動物園などの飼育施設や研究者とのネットワークの拡大、大型類人猿死亡時のリソース分配をおこなってきた。本集会では、GAINがおこなってきた調査(研究リソースのニーズ調査、国内飼育下大型類人猿の飼育状況調査など)の結果や、リソース配分の具体例などについて報告したい。またGAINをとりまく様々な立場(資源の利用者側、飼育施設側など)からの話題提供も予定している。そのうえで、大型類人猿研究の現状と将来展望、資源配布を中心とする研究支援システムの問題点やこれからの展開について検討したい。
著者
深谷 もえ
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.20, pp.86, 2004

従来、霊長類の混群に関する研究は、混群形成によって生じる利益を大きく分けて採食効率仮説、対捕食者仮説の2つの仮説によって説明しようとしてきた。その一方で、混群形成による利益ではなく、現象そのものを明らかにする必要性が提唱されている。ウガンダ共和国のカリンズ森林には6種の昼行性霊長類が生息している。なかでもブルーモンキー (<i>Cercopithecus mitis</i>) とレッドテイルモンキー (<i>C. ascanius</i>) の2種は、他地域において頻繁に混群を形成していることが知られている。そこで、2種の群れがどのように移動し混群を形成しているのか、そのプロセスを明らかにすることを目的として以下の研究を行った。2003年8月~10月、カリンズ森林内の同一地域を利用しているブルーモンキーのS群とレッドテイルモンキーのR群に属するオトナメス個体を対象に、終日個体追跡をした。その際、同日における2種の移動ルートを明らかにするために、2人の観察者によって同時にそれぞれの種を追跡した。2種の地図上の位置は観察者が携帯しているGPSによって、1分間隔に記録した。また、2種が森林内の林道を横断する際には、1分ごとに横断した種とその個体数を記録した。林道を横断する際、ブルーモンキーが先に横断を始め、その後をレッドテイルモンキーが横断することが多かった。また、終日個体追跡の結果、2種が混群を形成している際には、ブルーモンキーがレッドテイルモンキーよりも進行方向に対して前を移動していた。林道のような特別な状況だけではなく、森林内においてもブルーモンキーの後をレッドテイルモンキーが移動していた。これらの結果から、2種間には先導と追従の関係があると考えられた。また、ブルーモンキーの後をレッドテイルモンキーが移動していることから、レッドテイルモンキーが積極的に混群を形成していると考えられた。