著者
鈴木 勝彦
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.67-102, 1999-06-01 (Released:2016-12-28)
参考文献数
155

Negative thermal ionization mass spectrometry (N-TIMS) has been recently developed as a precise and accurate method in mass spectrometry to determine isotope ratios of some elements, which cannot be measured by positive thermal ionization mass spectrometry (P-TIMS) easily. In N-TIMS, isotopic compositions of elements, such as halogens, chalcogens, boron and platinum group elements with high ionization potentials, are determined as negative atomic ions M-, oxide ions MOx- (x=1-4) or fluoride ions MFx- (x=4). Recent interesting developments in geochemistry is the determinations of rhenium-osmium systematics, redetermination of the relative atomic masses of elements by more precise and more accurate isotope ratio measurements, the determination of isotope variations in geological and cosmic samples and the analysis of trace and ultra-trace amounts of elements in the environment. In this paper, after theory and characteristics of N-TIMS are mentioned, some recent applications of N-TIMS is summarized in the field of geochemistry and environmental chemistry. Among recent topics, (1) application to rhenium-osmium systematics, (2) precise boron isotope analysis and its application to environmental chemistry, and (3) precise iron isotope analysis and its application to biological and medical use are described. Problems involved in N-TIMS are also discussed.
著者
中塚 武 大西 啓子 河村 公隆 尾嵜 大真 光谷 拓実
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2009年度日本地球化学会第56回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.32, 2009 (Released:2009-09-01)

弥生時代末期に生じた倭国大乱や邪馬台国の卑弥呼の登場など、日本の古代社会の変動と気候変化の関係を解析するため、長野県南部で発掘された2個体の埋没ヒノキから、紀元前1世紀~紀元3世紀の1年毎に年輪セルロースを抽出し、その酸素同位体比を測定して、当時の夏季の水環境の経年変動を復元した。変動の周期や振幅は時代と共に大きく変化し、特に2世紀後半の倭国大乱の時期には、長周期の大きな水環境の変動が生じ、その収束と共に、卑弥呼の時代が到来したことなどが明らかとなった。こうした結果は、初期稲作社会からなる弥生時代の日本において、気候、特に水環境の変化が、社会に大きな影響を与えていた可能性を強く示唆する。
著者
大場 武
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2019年度日本地球化学会第66回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.120, 2019 (Released:2019-11-20)

Giggenbach (1986)は,ニュージーランド,ホワイトアイランドの火山ガスを詳細に研究し,火山ガス(噴気)にはマグマに直接由来する成分(マグマ成分)と,熱水系に由来する成分(熱水系成分)が共存していることを発見した.Ohba et al (2019)は,箱根山で噴気を繰り返し採取し,マグマ成分と熱水系成分の比率が火山活動と相関して変動することを見出した.本論文では,箱根山における結果を中心に,マグマ成分と熱水系成分の比率の変動と,火山活動評価への応用を紹介する.
著者
大場 武 谷口 無我 代田 寧
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2017年度日本地球化学会第64回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.141, 2017 (Released:2017-11-09)

箱根山,草津白根山,霧島硫黄山で,火山ガス組成と地震活動の間に調和した傾向が見られた.これは火山ガス観測が火山活動の評価に有用であることを証明している.観測頻度の高い箱根山では群発地震の前兆もとらえることができた.火山における地震は,地殻内の流体圧の上昇により起きると考えられる.流体圧の上昇を引き起こすのがマグマから脱ガスした揮発性成分であり,それを成分として含有する噴気を観測することは,火山活動を評価する近道である.一方で,火山ガスの観測はいまだ人手に頼っており,火山ガスを本格的に火山活動評価に用いるには観測の自動化は避けて通ることができない.
著者
大本 洋
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2017年度日本地球化学会第64回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.162, 2017 (Released:2017-11-09)

生物の発生と進化は、地球表層環境水における種々の重金属の存在量によって規定される。生物にとって重要な重金属元素は、その元素を多量に含む鉱物の溶解度がpO2 にどのように依存するかによって、二つのグループに分けられる。第一のグループは溶解度が酸化的条件で低くなり、岩石の風化の過程で土壌に固定される元素類(Fe, Mn, Ni, Pbなど)。その結果、海水や地表水におけるこれらの元素の存在量は一般的に非常に少なくなる。第二のグループは溶解度が酸化的条件で高くなり、岩石の風化の過程で土壌から溶脱される元素類(Cr, Mo, W, U など)。その結果、海水や地表水におけるこれらの元素の存在量は一般的に 高くなる。太古代の古土壌、堆積岩、及び海底熱水鉱床に伴う変質帯における、第一と第二 グループの重金属元素の挙動は、顕生代のものと基本的には、同じであるが, 海水中の第二グループ元素の存在量は現在より高かった可能性がある。
著者
石村 豊穂 坂井 三郎 鐵 智美 尾田 昌紀
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.62, 2015

微小領域切削装置Geomill326と微量炭酸塩分析システムMICAL3cを用い,微小領域における魚類耳石の安定同位体比分析をおこなった.1歳魚と推定される千葉県産マイワシの耳石を成長段階ごとに,幅30µm前後,最大深度100µmで切削をおこなった.回収したサンプル量はそれぞれ0.6~5.5µgである.安定同位体比分析の結果,成長段階によって同位体組成が明瞭に変動することを確認でき,このマイワシ耳石の同位体比の変動幅から北西太平洋を回遊する群集であることが推測された.そこで回遊経路を照合したところ,黒潮から混合域,そして親潮へ移動した情報が耳石に明瞭に記録されており,実際の回遊経路とも整合性があることが示され,これまでに無い高精度・高解像度での生息環境復元が可能であることを示した.
著者
岩森 光 中村 仁美 吉田 晶樹 柳 竜之介
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.62, 2015

若い玄武岩質溶岩組成の大規模データベースを構築し、多変量統計解析により独立な組成空間基底ベクトルの抽出と化学的解釈を行った。その結果、マントルは、「Dupal anomaly」のような南北分割ではなく、「日付変更線付近を境とする東西半球構造」を持つことが分かった。また、この構造は、2.5~9億年前の間、東半球に分布していた複数の超大陸に向かっての沈み込みと親水成分の集中に関連すること、およびマントル東西半球構造が内核の地震波速度構造と酷似し、マントルの長波長対流パターン・温度分布が、核にまで影響を及ぼしている可能性があることが分かった。大陸の離合集散を含むマントル対流モデルは、大陸集合時の「沈み込み帯のかき集め」が、超大陸下に効率的な親水成分集中と冷却をもたらすことを示している。東半球に濃集する親水成分は、地球ニュートリノの偏在をもたらす可能性があり、これは日本とイタリアの検出器を用いて検証可能である。
著者
海保 邦夫 古賀 聖治 大庭 雅寛 高橋 聡 福田 良彦
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2009年度日本地球化学会第56回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.19, 2009 (Released:2009-09-01)

浅海層の炭酸塩中の硫酸塩の硫黄同位体比変動と、深海堆積物の硫化物硫黄同位体比変動は、大量のH2Sがペルム紀末の100万年間で強還元的海洋に蓄積し、蓄積されたH2Sのほとんどが大量絶滅と同時に2万年間で海洋中深層から海洋表層と大気へ放出されたことを示唆する。また、南中国で、硫酸塩硫黄同位体比の増加期と減少時に、緑色硫黄細菌起源と考えられるアリルイソプレノイドの濃集が認められた。緑色硫黄細菌の存在は、光合成帯が還元環境であったことを示すので、深海に蓄積されたH2Sが表層へ出て来たことを示す。大気化学反応モデルを用いて、H2S 大量放出時のO2 濃度の変化を計算した結果、大気酸素濃度は、硫化水素の大気への放出時に相対的に約40%減少したことになる。硫化水素の酸化に伴うこの大気酸素濃度の急減は、海洋無酸素水塊の発達を助長し、ペルム紀末の生物大量絶滅に加担したかも知れない。
著者
吉村 和久 山本 綾子 中橋 孝博 西藤 清秀
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2004年度日本地球化学会第51回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.24, 2004 (Released:2007-02-23)

シリアのシルクロード最西端のオアシス都市パルミラにおいて地下墳墓から見出された多数の人骨と歯には、高フッ素症の兆候が認められた。冬季に地中海からの水蒸気がレバノン山脈に雨をもたらし、それが地下水となってパルミラで湧出しオアシスをつくる。乾燥地域であるパルミラでは、水の蒸発に伴い溶存成分が濃縮される。パルミラ地域のカナートと、湧泉、浅井戸、深井戸あわせて13の天然水試料について分析を行ったところ、この地域に石灰岩が分布するために、カルシウムイオン濃度が高かった。また、フッ化物イオン濃度は0.3から3.0 ppmであり、ホタル石の溶解平衡によりフッ化物イオン濃度が制御受けていることがわかった。今から約二千年前においても、古代パルミラの人たちは3.0 ppmを超えることはないが、高フッ素症が発症するようなフッ素高濃度の水を飲用としていたものと推定される。古代パルミラ人の歯のフッ素濃度についても議論する。
著者
佐藤 翔一 柵木 彩花 大野 剛 深海 雄介
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>炭酸塩鉱物はどの時代にも地球表層環境に普遍的に存在し、元素・同位体組成が沈殿時の海洋環境を反映することから、海洋古環境情報復元のための試料として広く用いられている。近年、新たに環境情報を復元する指標として炭酸塩鉱物中の二族元素の同位体分別が注目されている。また、固相―液相間で同位体変動が起こる主な要因として、天然の炭酸カルシウムにおけるカルサイトとアラゴナイトといったような結晶系の違い、液相のpH、結晶成長速度の3つが挙げられる。これらの指標から海水組成、二酸化炭素吸収量、風化速度といった古環境情報を復元することができる。そこで本研究では、炭酸カルシウムにおけるこれら3つの指標を制御する無機沈殿実験法を開発し、研究例が限られている各結晶構造における模擬海水-炭酸カルシウム間でのストロンチウム同位体分別の大きさとpH、沈殿速度との関係性について調べることを目的とした。</p>
著者
遠藤 広菜 壷井 基裕
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>化石は海に生息していた貝類の死骸が堆積物中に埋没し、長い年月をかけてできたもので、環境指標としても使用される。本研究では、岐阜県瑞浪市の新第三紀中新世の海成層である瑞浪層群明世累層に含まれる二枚貝の化石貝殻・現世貝殻中の希土類元素の含有量を測定し、明世累層の希土類元素含有量と比較することで化石化過程における元素の挙動について考察した。各希土類元素濃度をCⅠコンドライトで規格化すると現世試料<化石試料<明世累層(炭酸塩鉱物)の順に値が高くなる。また、化石試料は負のEu異常を、現世試料は正のEu異常を示した。さらに、軽希土類元素/重希土類元素(La/Yb)比は化石試料が最も高く、化石試料が生きていた当時の貝殻の希土類元素濃度が現世試料の濃度と同じであったと仮定すると、化石化過程で軽希土類元素が優先的に取り込まれた可能性が考えられる。</p>
著者
鈴木 勝彦 賞雅 朝子 深海 雄介 飯塚 毅 折橋 裕二 新城 竜一
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p><sup>182</sup>Hfは比較的短い半減期890万年で<sup>182</sup>Wにベータ壊変する。Hfは親石元素、Wは親鉄元素であるために、マントルとコアの間で分別が起き,マントルは高いHf/W比,コアは低いHf/W比を持つと考えられる。地球の初期,<sup>182</sup>Hfが消滅する前にコアが分離すれば,Hf/Wの高い始原マントルは高い<sup>182</sup>W/<sup>184</sup>W比を,Hf/W比の低いコアは低い<sup>182</sup>W/<sup>184</sup>W比を持っていることになる。本研究では,東アフリカAfarプルームに由来するエチオピアの玄武岩とアデン湾のMORBに適用した結果,いくつかの試料で,繰り返しの誤差の範囲を超えて負異常が得られた。コアの物質を含んでいる可能性が考えられるか,少なくとも地球ができて間もない頃の化学分別の痕跡を含んでいると考えられる。</p>
著者
前田 歩 吉村 寿紘 為則 雄祐 鈴木 淳 藤田 和彦 川幡 穂高
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>サンゴ礁海域に生息する大型底生有孔虫はサンゴ礁海域の堆積物の主要な構成要素であるため、当該海域の連続的な古環境記録媒体として利用できる可能性がある。水温と大型底生有孔虫殻の微量元素濃度との関係を評価するため、サンゴ礁に生息する二種類の大型底生有孔虫、<i>Calcarina gaudichaudii</i>と<i>Amphisorus kudakajimensis</i>について、21-30ºCの温度制御下で飼育した無性生殖個体を複数用いたMg/Ca、Sr/Caおよび個体ごとのMg, Sr, Na濃度を測定した結果を報告する。Mg/CaおよびSr濃度は両種ともに温度と有意な相関を示した。一方で、Sr/Ca、Na濃度は両種ともに温度によらずほぼ一定の値を示した。</p>
著者
大嶋 将吾 土岐 知弘 満留 由来 原 由宇
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>竹富島の北東沖約1 kmの海底の数箇所から最高温度64 ℃の温泉水がガスを伴って湧出しており,そのガス成分はヘリウム同位体比やメタンの炭素同位体比からマグマ由来と考えられるガスが混入していることが示唆されている(大森ほか,1993)。2019年5月に湧出孔の一つにモニタリング装置を設置した。その結果を用いて,竹富海底温泉の変動要因を解明することを目的とする。2019年5月9日に水深20 mにある湧出孔へモニタリング装置を設置した。また,モニタリング装置の設置・回収に併せ温泉水試料を採取した。モニタリングデータから,潮位に応じて,泉温が変動しており,潮位が低い時に湧出量は増加し,潮位が高い時に湧出量が減少すると推定される。また,温泉の塩濃度は海水と比較し低い値を示しており,泉温とECおよび塩濃度は逆相関の傾向がみてとれることと調和的である。</p>
著者
横田 瑛里 山中 寿朗 岡村 慶 野口 拓郎 土岐 知弘 角皆 潤 大西 雄二 牧田 寛子
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>沖縄トラフ南部、多良間島の北約60kmの海底に位置する多良間海丘で、2017年8月、調査船「よこすか」によるYK17-17研究航海において有人潜水艇「しんかい6500」の潜航調査により、300℃を超える高温の熱水噴出孔が水深1,840m付近の海底についに発見され、YZサイトと名付けられた。この海丘では2009年に実施された潜航調査により山頂付近から周囲の海水温度に比べ約20℃高い熱水の湧出が確認され、その湧水と関連すると考えられる鉄酸化物を主体とした堆積物が認められていたが(Foxサイト)、高温熱水の噴出は確認されていなかった。この海丘は南部沖縄トラフの主たるrifting zoneである八重山海底地溝のやや南に位置し、西表島北北東海底火山にあたる石垣海丘群に東側延長にあたる島弧火山列の一つと推定される。2017年の潜航調査では、両サイトから、熱水、チムニーなどの採取が行われた。本発表では得られたチムニー試料の鉱物組成や元素組成と、熱水の地球化学的特徴について報告する。</p>
著者
菊池 早希子 柏原 輝彦 高橋 嘉夫
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.171-184, 2017-12-25 (Released:2017-12-25)
参考文献数
100

Adsorption chemistry of Fe(III) oxyhydroxides is one of the important topics because of their considerable impacts on trace element geochemistry in the surface environment. Although inorganic Fe(III) oxyhydroxides have been used as an absorbent for laboratory studies, there is a growing recognition that biogenic iron oxyhydroxides (BIOS) are dominant in the environment. The microbial organic materials in BIOS can dramatically change mineralogical and adsorptive characteristics of Fe(III) oxyhydroxides, but the details and their differences from inorganic Fe(III) oxyhydroxides have not been specified well. In this review, we introduce our recent findings of BIOS especially focusing on their crystal structure, mineral transformation during early diagenesis, and trace element adsorption. The microbe-mineral interactions in BIOS (i) change the mineral structure of ferrihydrite, (ii) limit the ratio of BIOS reduced under anoxic condition, and (iii) enhance adsorption of cesium cation whereas inhibit anion adsorption of selenate and selenite ions compared to inorganic Fe(III) oxyhydroxides. These results will provide new insight into the geochemical role of BIOS and also contribute to other scientific fields such as environmental engineering, environmental microbiology, and ore geology.
著者
菅原 春菜
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.77-96, 2016-06-20 (Released:2016-06-20)
参考文献数
122

Comets are most pristine materials in the solar system, which were formed by accumulation of icy dusts from the solar nebula or molecular clouds. Comets mainly consist of water ice, silicates, and organic refractory materials, and also contain abundant organic molecules. The astronomical observation revealed that more than 27 different organic molecules exist in comets. It also revealed the isotopic compositions of some organic molecules. In addition, in situ analyses of comets by cometary explorers and the analyses of returned cometary samples have provided further information about cometary organic molecules. These findings showed that comets contain important biomolecules and their precursors such as amino acid, amine, and hydrogen cyanide. On the other hand, the new knowledge raised new questions about the distinct isotopic compositions of comets. In this review, I summarize the latest knowledge about cometary organic molecules from astronomical observation and two recent successful space missions: Stardust mission and Rosetta mission. Then, I discuss the role of comets in molecular evolution of organic molecules that lead to the origins of life on the early Earth, with special emphasis on the effect of impact shock on organic molecules at comet impacts.
著者
井上 章 村松 康行 松崎 浩之 吉田 聡
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2011年度日本地球化学会第58回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.136, 2011 (Released:2011-09-01)

C-14は銀河宇宙線と窒素の(n,p)反応によって大気上層で生成し、光合成によって植物中に取り込まれる。C-14生成量は銀河宇宙線の地球への入射量と相関を持ち、太陽活動の変動と関係する。よって古木などの植物試料中C-14同位体比を測定することで過去の太陽活動の変動を推定できる。一方近年は核実験や原子力発電所の事故等人為的に放出されたC-14の寄与が大きい。したがって近年の植物試料中C-14同位体比を測定することで人為的放出による大気中C-14濃度変動への影響を調べることができる。本研究ではAMS(加速器質量分析計)を用いて樹齢1139年の屋久杉年輪中C-14同位体比を測定し、オールト極小期(AD1000~1100)における太陽活動の変動を調べた。また近年に採取された日本の穀類や、原子力施設周辺で採取された植物試料中C-14同位体比を測定し、人為的に放出されたC-14の影響を調べた。
著者
山本 正浩 中村 龍平 笠谷 貴史 熊谷 英憲 鈴木 勝彦 高井 研
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2017年度日本地球化学会第64回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.146, 2017 (Released:2017-11-09)

深海熱水噴出孔では海底面から熱水が噴出し、周囲の海水によって冷却されることで鉱物が沈殿し鉱体が形成される。我々はこの鉱体の主要成分である硫化鉱物が導電性を持つことを明らかにしている。鉱床下に存在し、海底に湧出する熱水は還元的な化合物(硫化水素、水素、メタン)に富み、海底面から浸透し鉱床近傍で接する海水は酸化的な化合物(酸素、硝酸、硫酸)を含む。我々は、熱水中の還元剤の持つ電子が硫化鉱物を介して海水中の酸化剤に受け渡される放電現象の存在を提唱し、実際にこの現象が深海熱水噴出域の海底の広域で起きていることを現場電気化学計測によって明らかにした。また、この放電現象を人為的に制御することで発電技術として利用可能であることも明らかにしている。本発表では、上記について説明するとともに、今後の深海底発電技術の開発、およびその模擬として行っている陸上温泉での発電試験の結果についても紹介する。