著者
小川 勇二郎 黒澤 正紀 平野 直人 森 良太
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2008年度日本地球化学会第55回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.303, 2008 (Released:2008-09-06)

陸上のオフィオライト・スイーツには島弧のシグネチャーを持つものが含まれ、また現在の島弧前弧域にもオフィオリティックな岩石が現出することから、オフィオライトの多くは島弧で形成されたものと信じられている。ある条件下で島弧の前弧域がスプレッディングを起こし、そこに拡大軸ができていわゆる拡大海嶺的なまた島弧的なセッティングが生じる、とのモデルは多いが、その実体に関しては推測の域を出ない。SSZ ophiolite, forearc ophioliteなどとされるものは次のどれかに属するか、その組み合わせである。1)沈み込みが開始した部分のかつての大洋プレートのリムナント(つまり島弧のできる前の大洋プレート)、2)島弧がその火山フロントから裂けて発達するときに、前弧へ押しやられた古い島弧部分、3)島弧そのもの、特にその発達初期に活動を停止したもの、4)別の場所にあったものが、島弧の発達とともに前弧域にもたらされたもの、5)島弧とは全く無関係の大洋側のプレートが、沈み込み帯へトラップされたもの(オブダクションを含む)、6)拡大海嶺の沈み込みやロールバックによって前島弧その場所に、in situで噴出・エンプレイスしたもの。7)背弧のもの。これらにエンプレイスメントのプロセスやメカニズム、発達順序などを組み合わせると、さまざまなセッティングがありうる。たとえば、島弧の火山フロントからはかけ離れた場所にある例(タイタオ;Espinosa et al., 2005 Island Arc)や、拡大海嶺近傍から次の沈み込みが始まって、結果的に拡大軸に島弧のものが重なった例(オマーンなど)もあり、改変(あるいは改編)という用語は適当だろう。われわれは房総半島嶺岡帯の例について以下のような知見を得たので、伊豆島弧の発達史からのアナロジーを展開したい(Hirano et al., 2003 GSLondonSpecPub; Ogawa & Takahashi, 2004 Tectonophysics; Mori et al., 2008 GSASpecPap, submitted)。房総沖には世界的にもまれなTTT-type triple junction(房総三重点)が存在し、それに関連した島弧-島弧の衝突が生じていると考えられる。このセッティングは”trinity clastics”(オフィオリティック、島弧、大陸由来の三者混合の砕屑岩)(Mori et al., 2008 GSASpecPap, submitted)の存在から、中期中新世からのものであろう。それはまた、四国海盆の拡大末期における日本海の観音開き、南部フォッサマグナの火山活動、伊豆弧の衝突開始などに符号することから、日本列島が現在の形となった時期に一致する。嶺岡帯は、基本的には四万十帯の延長であろうが、そのオフィオリティックな岩石と付随する地層・岩石群は、西南日本の一般の四万十帯に現れるものとは、産状などが根本的に異なっている。玄武岩はtholeiiteを主とし(MORBを主とするが、IATもある。すなわちフラットなスパイダーグラムで特徴的ないわゆるMORBタイプが多いが、一部にNb-Taがネガティブなアノマリーを示す島弧的なものが含まれる)、またwithin plate (A)のドメインに入るalkali basalt(petit spotかもしれない)もある。玄武岩は枕状溶岩からなり白亜紀(80Ma)から中新世(20Ma)までにわたる。斑レイ岩の大半は島弧的であるがMORB的なものもあり、ほかの玄武岩質岩類とともに熱水変質、マイロナイト化、ブレッチャ化など、拡大軸やトランスフォーム(コアコンプレックス)などに類似する変形・変質を受けている。時代的変化としては、明らかに島弧的な岩石は40Maころから普通になり(トーナライト、安山岩、ボニニティック(28.6+/-5.1Ma)など)、最後は15Maころののフォッサマグナ・グリーンタフと共通の安山岩のパミスフォールで終了し、相前後して形成される付加体である中新世前期(23Ma)以降の保田・江見層群には伊豆島弧由来の火山岩が顕著となる。以上のような状況からは、嶺岡帯のオフィオリティックな岩石は白亜紀から古第三紀のある時期までの大洋プレート(Ogawa & Taniguchi, 1988 Modern Geology; 佐藤暢ほか, 1999地学雑らの「嶺岡プレート」)と、40Ma以降の島弧的な玄武岩ほかの混合したものである蓋然性が高い。また、結晶片岩ブロック(4個)の存在も見逃せない。現在の伊豆・マリアナ弧には、1)30Ma以前のトランスフォーム断層(四国・パレセベラベイスンの最初の境界)に沿う大町海山には片状アンチゴライト蛇紋岩に伴って角閃岩相の結晶片岩が産する(Ueda et al., 2004 Geology)。2)島弧最前縁には、蛇紋岩ダイアピルが多産し、ブルーシスト、チャート(白亜紀)などが産する(Maekawa et al., 1995 AGUGeophMonog)、3)母島海山には、蛇紋岩、斑レイ岩、玄武岩などいわゆるforearc ophioliteが産する(Ishiwatari et al., 2006 Island Arc)。以上のような現在の産状をすべて組み合わせると、嶺岡帯の岩石を説明可能かもしれない。今後、すべての岩石の徹底的なケミストリー(同位体を含む)、年代測定、産状の考察が必要である。
著者
益田 晴恵 武内 章記 石橋 純一郎 松島 健
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2019年度日本地球化学会第66回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.122, 2019 (Released:2019-11-20)

水銀は地圏では活動的な元素であり、マグマ活動と関連する熱水活動に伴って移動する。しかし、西南日本ではマグマ活動が顕在しない地域で水銀が10mよりも浅い井戸水に観察されることがある。霧島連山硫黄山で得られたマグマ水中の水銀の挙動と比較して、大阪平野の地下水中水銀の起源について考察した。マグマ水中ではヒ素がイオウと親和的に挙動するのに対して、水銀は気体になりやすい傾向が明らかであった。大阪平野では水銀検出井戸は大部分が活断層に平野周辺の活断層に沿った3ヶ所に集中して出現する。20〜30kmの深度の深部低周波地震の発生地点と水銀検出井戸出現地域が一致することと水銀同位体比から、水銀は地殻下部の脱水現象と関係していることが推定される。
著者
則末 和宏 松原 由奈 中川 正親 小畑 元 岡村 慶 永石 一弥 石川 剛志
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>現代の海洋には人間活動によって負荷されたPbが存在しており,多くの海域で人為起源Pbが天然由来のバックグラウンドを大きく上回っている。人為起源Pbの発生源は様々であり,発生源に応じて特徴的な同位体比を示す。このため,海水中のPb同位体比を調べることにより,大気から海洋表層へもたらされた人為起源Pbの供給源を推定することができる。また,海水中のPb濃度と同位体比の時系列データがサンゴの骨格に記録されており,現在の海水中のPb の挙動を解析する上で有用な情報となる。このように,Pb同位体比は,人為起源の汚染物質の指標として重要であるのみならず,海洋物質循環の理解にも有用である。このような学術的な特性を有するPb同位体に着目した海洋化学研究を行う。</p>
著者
中塚 武 大西 啓子 安江 恒 光谷 拓実 三瓶 良和
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2010年度日本地球化学会第57回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.78, 2010 (Released:2010-08-30)

享保の飢饉は、享保17年(1732年)に起きた江戸時代の西日本最大の飢饉であり、虫害という特異的な背景を持つ。原因となったウンカは、東南アジアから中国南部を経て、毎年風に乗って日本に飛来する、日本では越冬できない昆虫であり、当時の大発生の背景には何らかの大気循環の変化があったことが推察できる。本研究では、江戸時代の日本全国における樹木年輪セルロースの酸素・炭素同位体比の時空間変動パターンを解析して、当時の大気循環の特徴、及びその日本社会の変動との関係を解析した。
著者
山根 雅子 横山 祐典 三浦 英樹 前杢 英明 岩崎 正吾 松崎 浩之
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.329, 2008

近年開発された表面照射年代測定法は、二次宇宙線の作用により岩石の石英中に生成される宇宙線照射生成核種 (TCN) の濃度から、地表面が宇宙線に被爆した期間を直接求める手法である。この手法によって、これまで不確定性が高かった、南極氷床の最終退氷の時期が明らかになりつつある。発表者の研究グループは、東南極リュツォ・ホルム湾の露岩域から採取された岩石試料の石英に含まれる<SUP>10</SUP>Beと<SUP>26</SUP>Alの定量を行ない、この地域における氷床変動の研究を進めている。東南極のマック・ロバートソンランド、西南極のマリー・バードランド、南極半島においても、この手法を用いた最終退氷の時期に関する研究が行われている。TCNを用いたこれらの研究結果から、(1) 南極のどの地域も最終退氷の時期は完新世であること、(2) 東南極氷床は西南極氷床や南極半島氷床より気温の変化など、氷期の終焉によりもたらされた環境変化に対して、相対的に安定していたことが示唆された。
著者
荒岡 大輔 西尾 嘉朗 真中 卓也 牛江 裕行 ザキール ホサイン 鈴木 淳 川幡 穂高
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.222, 2011

リチウム(Li)は、比較的流体相に分配されやすい元素である。加えて、Liは2つの安定同位体(6Liと 7Li)をもち、その相対質量差の大きさゆえに、Liの安定同位体比である<sup>7</sup>Li/<sup>6</sup>Li比は、変質や風化等の水を媒介してLiが動く際に大きな同位体分別が起きる。そのため、Li同位体比は水・岩石反応の指標として注目を集めている。中でも、河川水のLi同位体比は風化反応の指標としての可能性が期待されている(Kisakurek et al., 2005など)。例えば、ケイ酸塩中でMgイオンを置換することで Liは6配位であるのに対して、水溶液中では4配位である。そのため、岩石中のLiは水より高配位である故に、一般的には岩石に比べて共存する水の<sup>7</sup>Li/<sup>6</sup>Liは高い。上記から、Li濃度や同位体比は、温度や流量による風化量の変遷や、河川が流れる地質の違いを反映しているのではないかと考えられている。このように、新しい大陸風化の研究ツールとして期待されるLi同位体指標であるが、河川水中のLiは数ppb から数百pptレベルと低Li濃度であるために研究は遅れていた。近年の分析機器の進歩により、数nmolと極微量のLiの高精度同位体比測定が可能になったため(西尾嘉朗, 2010)、河川水等の極めてLi濃度の低い水試料のLi同位体比の報告が2005年頃から急激に増加してきている。 そこで、本研究では、河川水中のLi濃度および同位体比の規定要因を明らかにするために、世界的な大河川であり、かつ河川毎に異なる成因・地質的背景をもつガンジス・ブラマプトラ水系を例に研究を行った。2011年1月の乾季にガンジス・ブラマプトラ・メグナ川のバングラデシュ国内における上・中・下流域において採水を行った。これらの水試料の各種元素濃度、Li及びSrの同位体比を測定し、考察を行った。LiとSrの同位体測定は、高知コアセンターの分析システムを利用した。特にLi同位体測定に関しては、4ng以上のLiを± 0.3‰ (2SD)の誤差と、世界でも最高レベルの微量Liの高精度同位体比分析が可能となっている。今後は、流量や温度が異なる雨季においても同様の採水、測定を行い、河川水中のLi同位体比指標の確立を目指す。
著者
森井 志織 鍵 裕之 桧垣 正吾
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>福島第一原発事故により環境中に放出された放射性セシウムの形態の一つとして、不溶性セシウム粒子 (CsMPs)が放出されている (Adachi et al., 2013)。本研究では2012年春に福島県の一般市民が日常生活の中で着用した不織布製マスクに付着した放射性セシウム(Higaki et al., 2014)について、CsMPsに特に注目して分析を行い、CsMPsの経時分布の把握、事故由来の放射性セシウムの形態、放出後の再飛散などについて明らかにする。マスク1枚ずつから放射性セシウムの定量測定を行い、1 Bq以上の放射性セシウムが検出されたマスクからCsMPsを探索した。測定した結果、4枚のマスクから1 Bq以上の放射性セシウムが検出され、2019年7月現在までに2つのCsMPsがマスクから単離されている。これらの粒子は2号機由来であると考えられている。</p>
著者
田中 さき Tung―Yuan Ho 長尾 誠也 松中 哲也 Rodrigo Mundo 井上 睦夫 谷内 由貴子 黒田 寛 熊本 雄一郎 滝川 哲太郎 守田 晶哉
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2021

<p>化石燃料やバイオマスの不完全燃焼、および原油を起源とする多環芳香族炭化水素類(PAHs)は、発癌性や変異原性をもつ有害有機物である。東アジア縁辺海と周辺海域において、PAHsの動態や生態リスクに関する研究が必要とされている。本研究は日本近海を中心とした北太平洋における広域的なPAHs水平分布を明らかにすると共に2017年以降のPAHs経年変動を解析した。各緯度帯における平均Σ14PAHs(粒子態+溶存態)は、基本的に中緯度域で高く、高緯度域で低くなる傾向を示した。沿岸海域では燃焼起源PAHsの寄与が高かったのに対し、外洋海域では原油起源PAHsの寄与が高かった。一方、2020年における日本海のΣ14PAHsは、2019年と比べ有意に低下した。塩分や海水シミュレーションの結果を基にすると、2020年における日本海のPAHs濃度減少は、黒潮系海水のPAHs濃度低下と、PAHs濃度の高い浅層海水の寄与の低下によって引き起こされた可能性が示唆された。</p>
著者
植村 立 三嶋 悟 中村 光樹 浅海 竜司 加藤 大和 狩野 彰宏 Jin―Ping Chen Chuan―Chou Shen
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2021

<p>東アジア地域においては、最終退氷期の温暖化の開始タイミング及び気温変動の大きさについて統一的な見解は得られていない。石筍は正確な年代測定ができる点で重要な陸域の古気候アーカイブである。一方で、石筍の炭酸カルシムの酸素同位体比は、滴下水と温度の2つの要因に影響されるために定量的な解釈が困難である。本研究では、東アジア地域の最終退氷期における温暖化のタイミングと気候変動を定量的に復元するため、南大東島で採取された石筍の流体包有物の水の酸素・水素同位体比分析を行った。また、独立した手法により気温復元の妥当性を検証するため、炭酸カルシウムの二重置換同位体比を用いたClumped isotope の分析を行った。本発表では、Heinrich stadial 1 (H1)からBølling-Allerød(BA)期への温度変化とタイミングについて議論する。</p>
著者
相澤 正隆 安井 光大
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2021

<p>東北日本弧では,日本海の拡大期にあたる中期中新世頃に,火山フロントが現在よりも約20 km海溝側へ移動した。青森県の下北半島東部に分布する中部中新統の泊層火山岩は,当時の火山フロントを構成する火山岩層である。リフティングの進行に伴い,全岩化学組成は肥沃的な沈み込み帯火山岩の特徴を示す。一方,下北半島西部の第四紀火山フロント周辺に分布する約20 Ma以降の火山岩は,苦鉄質から中間質岩は泊層火山岩に比べて枯渇的な同位体組成を示し,珪長質岩は下部地殻組成(一の目潟)の組成と類似する。西部地域では,少なくとも20 Ma以降,同位体組成の顕著な時間変化はみられない。また,東部の泊層火山岩は,一部で下部地殻の影響をより強く受けていることが示唆される。※本研究は,2020年度下北ジオパーク研究補助金の交付を受けた。</p>
著者
鈴木 勝彦 賞雅 朝子 土屋 卓久 深海 雄介 折橋 裕二 新城 竜一
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2021

<p>182Wは消滅核種182Hfのβ壊変によって生成される。ハワイ,サモアなどの海洋島玄武岩には現在のマントル値に対して低い182W同位体を持つ。本研究では、地球初期のコア分離において、第一原理自由エネルギー計算により、コア-マントル境界P-T条件においても、Wは液体金属相に強く分配され、Hfは溶融ケイ酸塩に留まることが明らかになった。このようなHf-Wの分別により、コアは182Hf /182W比が低くなり,その結果コアは182Wの低い特性を持つことになる。本研究ではさらに,エチオピア玄武岩のW同位体比組成を分析した。その結果,エチオピア玄武岩は,現在の平均的なマントルに比べてわずかに負のμ182Wを示した。この結果と上記の第一原理計算によるコアの低い182W同位体を考え合わせると,ハワイ,サモアの玄武岩やエチオピア玄武岩は182W同位体値の低いコア成分を含んでいる可能性が高いことを示唆する。</p>
著者
土岐 知弘 中屋 眞司 新城 竜一 新垣 典之 原 由宇 満留 由来 安村 幸真 大嶋 将吾 益田 晴恵 井尻 暁
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2021

<p>竹富海底温泉のホウ素同位体比と,竹富島掘削試料のホウ素同位体比をそれぞれ測定したところ,150℃程度で平衡に達している可能性があることが明らかとなった。SF6濃度から滞留時間は20年程度。水の同位体比からも,地下水と深部流体が混合したリザーバーの存在が示唆された。</p>
著者
米田 成一 山口 亮 小嶋 智子 木村 眞 岡崎 隆司
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>2018年9月26日(水)22時30分頃、愛知県小牧市の民家で大きな音がして、 翌朝調べてみると屋根に大きなえぐれた跡があり、庭やテラスから81gと23gを含む多くの黒い破片が発見された。また、隣家のカーポートの屋根に穴が開き、止めてあった車の屋根にもへこみができていて、玄関前に550gの黒い石が発見された。当日は天候が悪く、隕石落下の火球は観測されていない。ガンマ線測定を行い、宇宙線生成核種Al-26(半減期約70万年)とNa-22(半減期約2.6年)などを検出した。これにより最近落下した隕石であることが確認された。光学顕微鏡や電子顕微鏡による隕石組織の観察と鉱物組成の分析を行った結果、小牧隕石はL6コンドライトに分類された。また、Ne-21による宇宙線照射年代は2510±60万年、K-Arガス保持年代は44±2億年であった。</p>
著者
東 久美子
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.133-148, 2019-12-25 (Released:2019-12-25)
参考文献数
97
被引用文献数
1

Due to global warming, the Arctic has been changing drastically and rapidly. The changes in the Arctic cryosphere affect not only the Arctic climate and environment but also the global climate system. There is an urgent need to improve the projections of future Arctic climate and environment, including mass loss of the Greenland ice sheet, which affects the global sea level, ocean circulation and global climate. To achieve these goals, we need to advance ice sheet and climate modeling. Long-term records of the past Arctic warmings and their impacts, and the understanding of the mechanisms are necessary. Arctic ice cores have been providing us with valuable information on different time-scales from decadal to orbital time-scales. For example, deep ice cores from Greenland have revealed abrupt warming events in the glacial and deglacial periods and their links to global environmental changes. Multiple ice cores from the Arctic have been used to reconstruct the elevations of the past Greenland ice sheet. Shallow ice cores from circum-Arctic ice caps and Greenland have shown anthropogenic increases of acids, toxic metals etc. after the industrial revolution. This paper briefly reviews the history of ice core studies in the Arctic and discusses future prospects.
著者
山田 正俊 鄭 建
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.31, 2007

日本海海水中の<SUP>239+240</SUP>Pu濃度と<SUP>240</SUP>Pu/<SUP>239</SUP>Pu同位体比の鉛直分布の測定から、その主要な起源を解明することを目的とした。陰イオン交換樹脂カラム法によりPuを分離・精製し、アルファ線測定後、SF-ICP-MSを用いて、<SUP>240</SUP>Pu/<SUP>239</SUP>Pu同位体比を測定した。海水中の<SUP>239+240</SUP>Pu濃度は、表層で8から9 mBq/m<SUP>3</SUP>であり、中層で37から39 mBq/m<SUP>3</SUP>と極大となり、底層で26から33 mBq/m<SUP>3</SUP>となる鉛直分布を示した。また、海水柱中の<SUP>239+240</SUP>Puのインベントリーは、85から87 Bq/m<SUP>2</SUP>であり、グローバルフォールアウトから推定される値(42 Bq/m<SUP>2</SUP>)の約2倍であった。<SUP>240</SUP>Pu/<SUP>239</SUP>Pu同位体比の鉛直分布は、表層から底層までほぼ一定の値を示し、ビキニ核実験起源のプルトニウムの存在を示唆していた。
著者
森 康則 井上 源喜
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.43-56, 2021-06-25 (Released:2021-06-25)
参考文献数
24

This paper outlines the usage and background of hot springs in Japan, known as “ONSEN” in Japanese, focusing on the regulatory science approach, and summarizes the definition and development systems of hot springs based on the Hot Springs Law. In accordance with this law, all prefectures receive an annual report on usage status from hot spring companies, which is converted into data by Japan’s Ministry of the Environment. According to the data, hot spring development peaked around FY2006–2007. Since then, the total number of hot springs has leveled off, albeit with a decreasing trend first, and currently a stable trend. In addition, the regional characteristics of volcanic regions such as the Kyushu and Okinawa regions, and non-volcanic regions such as the Kinki, Chugoku, and Shikoku regions, are reflected in the temperatures of the springs and artesian hot spring rates. Unlike other countries where geochemical samples are usually extremely difficult to obtain, Japan’s unique environment makes geochemical samples easily and continuously available. Therefore, Japan can be considered to be an extremely attractive research field for geochemists. However, it is necessary to exercise caution, because the development of hot springs involves not only geological and geochemical natural conditions, but also factors, such as economic conditions and population density.
著者
石川 智子 上野 雄一郎 小宮 剛 吉田 尚弘 丸山 茂徳
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2009年度日本地球化学会第56回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.41, 2009 (Released:2009-09-01)

後期原生代エディアカラ紀から顕生代初期カンブリア紀にかけて、生物進化と地球化学の両面で大規模な変動が起きたと考えられいる。特に先カンブリア紀/カンブリア紀境界(Pc/C境界)前後において海洋の無機炭素同位体比は大きく変動しており、当時の海洋の炭素循環の著しい変化が予想される。一般に、海洋の炭素循環の定量化には当時の海洋の有機炭素同対比の情報も必要不可欠であるが、Pc/C境界前後の有機炭素同対比が無機炭素同位体比と共に一地域で報告された例はほとんどない。そこで我々は、南中国・三峡地域において掘削により採取された連続試料を用いてPc/C境界前後の高時間分解能の有機炭素同位体比化学層序を求めた。得られた無機・有機炭素同位体比の関係性を基に、数値計算を行い当時の海洋の炭素循環について定量的に議論する。
著者
小島 淳 北 逸郎 長谷川 英尚 千代延 俊 佐藤 時幸 林 辰弥
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.40, 2009

カリブ海バハマ沖の深海底コア(130万年-35万年前)の水銀含有量の測定を行った結果、その変動パターンはTOC量とともに下部透光帯種数の変動と相関することが明らかとなった。さらに、アラビア海オマーン沖の深海底コア(現在から50万年前)では、透光帯種数と比較して下部透光帯種数の割合が高い比較的成層化した期間において、湧昇強度が高い期間よりも堆積水銀量が高いことが明らかになった。このようなカリブ海バハマ沖とインド洋オマーン沖の深海底コアの水銀含有量変動のメカニズムと気候変動の関係等について報告する。
著者
南 浩紀 北 逸郎 長谷川 英尚 佐藤 時幸
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.64, 2007

湧昇流地域であるインド洋オマーン沖深海底コアの過去108万年間の有機窒素・炭素および無機炭素の同位体比を測定した。これらの同位体比と石灰質ナンノ化石量の変化には、共通した10万年の周期があることが明らかになった。これらの結果とすでに報告したバハマ沖など異なる湧昇流地域の深海底コアとの同様な同位体変動の関係を比較し、世界的な湧昇流地域の深海底コアから得られる古地球の環境変動について報告する。