著者
松崎 哲也 小島 淳 北 逸郎 長谷川 英尚 千代延 俊 佐藤 時幸 林 辰弥
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.85, 2010

カリブ海バハマ沖と湧昇地域である東太平洋ペルー沖およびインド洋オマーン沖で掘削された第四紀堆積物コア中の石灰質ナンノ化石の上部透光帯種と下部透光帯種の相対量に連動した堆積有機物の窒素炭素同位体比及び水銀含有量の変動関係を検討した。バハマ沖では30‐130万年前の全期間で両同位体比と水銀含有量の変動領域に変化は見られない。一方、現在から50万年前までのペルー沖およびオマーン沖の堆積物からは、各々25万年前と20万年前を境に両同位体比と水銀含有量に明確な変化が観測された。これら両海域の結果は、25万年前と20万年前を境に透光帯の水塊構造変動を支配する海上風強度に大きな変化があったことを示唆している。このような堆積物コアの微化石量と同位体比および水銀量変動と気候変動との関係について発表する。
著者
ダニエラチェ セバスチアン
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2013

硫黄には質量数32, 33, 34, および36の四つの安定同位体が存在する。この比は大気や水中では蒸発や凝集といった物理変化や化学反応により、変わるがその変化は質量依存の法則に従う。地球史の前半をしめる20億年前以前の硫化鉱物は上述の質量依存則に従わない同位体分別を被っていることが知られている。この非質量依存同位体分別の原因は二酸化硫黄(SO<SUB>2</SUB>)の光解離反応に由来すると一般的に考えられている。紫外線光解離反応により生成された硫黄化合物と元素状硫黄は海水中に沈着し、最終的にBaSO<SUB>4</SUB>とFeS<SUB>2</SUB>として堆積したものと見なされる。SO<SUB>2</SUB>分子の紫外吸収断面積を用いると光解離時の同位体分別係数が求まる。本発表では理論計算による振動‐回転識別したSO<SUB>2</SUB>紫外線スペクトルを計算して古大気におけるさまざまな圧力と温度条件による自己遮蔽と同位体効果についてディスカーションをする。
著者
佐藤 圭 田中 友里愛 李 紅 小川 志保 畠山 史郎
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.145-153, 2007
参考文献数
26
被引用文献数
2

To study long-range transport of organic aerosols from East Asian countries to the East China Sea, 3- to 7-ring parental polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) in aerosols collected at Cape Hedo, Okinawa, Japan (128.3°E, 26.9°N) during 2005-2006 were analyzed by high performance liquid chromatography. The total PAH concentrations were 0.00-16.0 (av. 1.22) ng m<sup>-3</sup> during the entire period. The seasonal average of total PAH concentration increased between winter and spring and decreased in summer. It is interpreted that the pollutants are transported to Cape Hedo by the monsoons from the Asian Continent between winter and spring, whereas oceanic air mass is transported by the monsoons from the Pacific in summer. The benzo[a]pyrene to benzo[e]pyrene ratios were 0.23-0.98 (av. 0.48) in winter and were lower than that measured in East Asian cities, showing that PAHs observed at Cape Hedo are aged by the photochemical reactions proceeding during long-range transport. The average total PAH level measured at Cape Hedo was only 1/10-1/20 of those measured in Japanese cities, but a total PAH level comparable with the average levels in Japanese cities was recorded during a long-range transport event in March, 2006.
著者
宮﨑 雄三
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2019年度日本地球化学会第66回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.13, 2019 (Released:2019-11-20)

海洋表層に由来する大気エアロゾルは雲凝結核や氷晶核として大気の放射収支や雲・降水過程に影響を与えるほか、大気-海洋間における生元素の循環にも影響を及ぼす。これまで海洋表層の微生物活動が活発な海域(亜寒帯西部北太平洋、亜熱帯東部太平洋)において、国内外の研究船による海洋大気観測を重点的に実施し、エアロゾルと表層海水中の微生物活動指標との系統的な比較など、海洋大気エアロゾルの主要成分である有機物の起源や変質過程に関わる研究を行ってきた。本講演では、上記の海域において明らかになってきた、海洋表層と大気のインターフェースにおける有機物を介した生物地球化学的なリンケージに関する研究を紹介する。
著者
西尾 嘉朗 塚原 弘昭
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2009年度日本地球化学会第56回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.193, 2009 (Released:2009-09-01)

松代群発地震域の湧水のリチウムとストロンチウムの同位体比に正の相関を発見した。松代湧水のLi濃度から計算すると,本地域のLi同位体比は表層水混入の影響はなく,深部水の値とみてよい。つまり,今回発見されたLiとSrの正の相関は,非表層水と表層水の2成分混合の結果ではなく,従来1成分と思われていた非表層水成分が少なくとも2成分あることを意味する。
著者
西尾 嘉朗 塚原 弘昭
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.193, 2009

松代群発地震域の湧水のリチウムとストロンチウムの同位体比に正の相関を発見した。松代湧水のLi濃度から計算すると,本地域のLi同位体比は表層水混入の影響はなく,深部水の値とみてよい。つまり,今回発見されたLiとSrの正の相関は,非表層水と表層水の2成分混合の結果ではなく,従来1成分と思われていた非表層水成分が少なくとも2成分あることを意味する。
著者
丹 秀也 関根 康人 渋谷 岳造 宮本 千尋 高橋 嘉夫
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p>木星の衛星エウロパは、表面を氷地殻に覆われており、内部には内部海を持つことで知られる。近年の望遠鏡観測により、木星の衛星イオ由来の硫酸がエウロパの公転後面を汚染している一方、汚染の少ない公転前面にはナトリウム塩などの内部海由来の物質が存在していることが示された(Ligier et al., 2016)。これは内部海での化学反応により硫酸が消費されている可能性を示すが、その反応や温度・pH 条件はよくわかっていない。本研究は、エウロパ内部での熱水環境における硫酸還元反応が消費過程として働く可能性を室内実験で検証し、温度やpH条件を制約することを目的とする。エウロパ海底条件1300気圧下で溶液のオンライン採取が可能なオートクレーブ装置により硫酸還元反応の速度のpH依存性を調べた。また、硫酸還元の反応率はpHが小さいほど速くなることから、エウロパ内部海では熱水環境が硫酸濃度とpHを安定化させる、負のフィードバック作用が働く可能性がある。</p>
著者
佐藤 佳子 熊谷 英憲 岩田 尚能 柴田 智郎 丸岡 照幸 山本 順司 鈴木 勝彦 西尾 嘉朗
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.72, 2011

3.11の巨大地震の後、福島第一原発の事故により放射性希ガス放出が予想された。そこで、放射性希ガスを四重極質量分析計で測定し、希ガス存在度の変化の検証を試みた。Ar-41, Ar-39, Kr-85, Xe-133などの希ガスが安定な希ガス同位体に対して10倍以上に増加したことが地震後の測定で明らかになりつつある。地震による安定な希ガス同位体の放出を差し引いて、放射性希ガス存在度の変化について報告する。
著者
山方 優子 田中 佑樹 平田 岳史
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, 2014

海洋環境において海水に含まれる鉄は非常に微量であるため、本研究では、鉄濃度情報に代えて鉄の同位体比情報(56-Fe/54-Fe, 57-Fe/54-Fe)を用いることで海洋生物の鉄代謝効率および海洋環境中の生物学的鉄循環に関する知見を引き出す。陸上動植物中では、栄養段階に応じて鉄同位体比が系統的に変化する(Walczyk and Blanckenburg,2002,2005)のに対し、海洋生物では、陸上生物と比較して大きく変化しないことが報告されている(Jong et al., 2007; Bergquist and Boyle, 2006; Walczyk and Blanckenburg, 2002)。そこで本研究では、これまでに測定されてこなかった高栄養段階に位置し、かつ鉄の局所的な酸化・還元の影響を受けない遠洋性の生物から鉄安定同位体比を分析した。分析対象とした試料は、カズハゴンドウ、マカジキ、ビンナガ、メバチの血液、筋肉、肝臓である。本発表では、分析結果を発表する。
著者
智原 睦美 福嶋 彩香 川幡 穂高 鈴木 淳 井上 麻夕里
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p>熱帯域における過去の気候変動に関する情報は、全球的な気候システムを理解する上で重要である。しかし、熱帯域における気象観測データは少なく、1950年以前からの連続的なデータはほとんど存在していない。そこで本研究では西太平洋に位置するフィリピンのサンゴ骨格試料についてSr/Ca比の分析を行い、約2ヶ月の時間分解能で1778年から1890年までの過去110年分に相当する海水温を復元した。Sr/Ca比の測定にはICP-OESを使用し、測定誤差は0.5%未満であった。今回の発表では、サンゴ骨格中のSr/Ca比から復元した海水温の記録とその時系列解析に基づき、西太平洋周辺の海水温と気候イベントとの関係について考察していく。</p>
著者
橋本 燎 亀山 宗彦 佐藤 孝紀 小川 浩史
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.67, 2020

<p>雷放電は大気中では窒素の酸化を促し、自然起源の窒素酸化物の主要な生成要因となる(Wang et al., 1998)。雷放電は積乱雲を形成しやすい陸域で多く発生するが、海洋域でも定常的に見られていることが分かっており、気候変動等による将来の雷放電の増加が予想されている(Romps et al., 2014、Thornton et al., 2017)。本研究では、気相中・液相表面において、プラズマ放電を人工的に起こすことで、自然界における雷放電や海面への落雷を模擬し、窒素酸化物の生成・消費とその質の変化について定量的に評価する事を目的とした。本研究では、雷放電による窒素酸化物の生成を定性的に評価するための項目と定量的に評価するための項目に分けて、実験を行った。実験には、北太平洋亜熱帯域で採水されたキャリア海水を用いた。その結果、窒素酸化物は主に気相で生成され、それらの生成量は湿度、パルス長、電圧、気圧等によって変化することが分かった。</p>
著者
藤谷 渉 古川 善博 菅原 春菜 馬上 謙一 Nancy L. Chabot 小池 みずほ 三浦 弥生 Frederic Moynier Sara S. Russell 橘 省吾 高野 淑識 臼井 寛裕 Michael E. Zolensky
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2020年度日本地球化学会第67回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.88, 2020 (Released:2021-01-29)

火星衛星探査計画(MMX)は火星衛星フォボスからのサンプルリターン計画であり、2024年に探査機打上げを予定している。本計画では、コアリングおよび空気圧サンプリング機構により表層レゴリス試料を10 g以上回収することを目標としている。試料分析ワーキングチーム(SAWT)は現在、回収試料の分析プロトコルを作成中である。まず、試料の岩石鉱物学的観察、全岩化学組成および同位体組成から、フォボス材料物質の起源に関する情報を得る。フォボス表面で起こるプロセスは、希ガスの同位体比や試料表面の宇宙風化組織の詳細観察によって明らかになる。さらに、放射性核種による年代測定は、フォボス物質の変成作用など重要なイベントに時間的制約を与える。また、フォボスレゴリスには小天体衝突によって火星から放出された物質が少量含まれると予想されている。フォボス表面に存在するであろう火星物質は極めて貴重な試料であり、そうした物質をキュレーションの段階において発見するための手順・方法についても議論を進めている。
著者
大浦 泰嗣 本田 雅健 海老原 充
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.157, 2009

Gibeon鉄隕石中の宇宙線生成安定核種<SUP>45</SUP>Scを放射化学的中性子放射化分析法にて定量した.本研究では0.0064ppbまでの<SUP>45</SUP>Scを定量することができた.ブランク値は0.001ppb以下であると見積もられる.<SUP>45</SUP>Sc濃度は宇宙線生成核種<SUP>4</SUP>He濃度と高い相関があり,Gibeon以外の鉄隕石で観測されている相関とよく一致した.Gibeon鉄隕石では,希ガス同位体を用いて2つの異なる宇宙線照射年代が観測されている.照射年代の異なる破片を分析したが,<SUP>4</SUP>He濃度との相関に系統的な相違は見られなかった.よって,Gibeon隕石で観測される短い照射年代は希ガスの損失によるものではないと結論できる.
著者
高橋 嘉夫
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-28, 2018-03-25 (Released:2018-03-25)
参考文献数
131
被引用文献数
2

Geochemical and environmental-chemical studies based on speciation mainly using X-ray absorption fine structure (XAFS) spectroscopy by the author have been reviewed in this manuscript. These studies revealed that we could understand physico-chemical processes behind the distribution and isotopic data obtained in various geochemical studies by this approach, which can be called as molecular geochemistry. This approach allows us to interpret geochemical cycles of various elements from atomic and molecular scale levels, which in turn enables us (i) to extract more information from geochemical data related to earth history and (ii) to predict environment in future more accurately. The studies introduced here include environmental chemistry of rare earth elements and actinides, behavior of toxic elements at earth surface, environmental impacts of speciation of various elements in aerosols, enrichment of various elements to ferromanganese oxides and its application to paleo-environment studies, understanding of isotope fractionation based on speciation data, and migration of radioactive nuclides emitted by the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant accident. It was also shown that development of X-ray spectroscopic methods applied to geochemistry and environmental chemistry has opened new fields in environmental geochemistry and trace element geochemistry. Through these various topics, I would like to emphasize that systematic studies on behavior of various elements in environment in terms of physico-chemical viewpoint can provide various new ideas in wide fields in geochemistry as was suggested by Prof. V. M. Goldschmidt. The basic knowledge of various elements can be a firm basis to use geochemistry to obtain more general information in earth and environmental sciences. The attractiveness and importance of molecular geochemistry indicated in this manuscript suggests that this field can be one of drivers to develop new geochemistry in 21st century.
著者
堀川 恵司 西田 絵里奈 小平 智弘 張 勁
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p>1973年~1974年の南半球の夏期に,熱帯太平洋から南極海にかけて実施されたGEOSECS航海では,南太平洋広域で表層海水が採取され,海水の酸素同位体比が報告されている(Ostlund et al.1987)。本研究では,2014年~2015年の南半球の夏期に,GEOSECS航海と同じ観測点で表層海水試料を採取し,海水の酸素同位体比を分析した。1973-74年と2014-15 年の酸素同位体比組成の比較を通して,(1)過去40年間について温暖化の影響の有無を考察することと,(2)1973-74年はラニーニャ年に相当し,2014-15年はエルニーニョ年にあたるため,酸素同位体比組成の比較から大気海洋循環の影響について考察することも目的とした。</p>
著者
南 雅代 若木 重行 佐藤 亜聖 樫木 規秀
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2020年度日本地球化学会第67回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.168, 2020 (Released:2021-01-29)

大阪府松原市立部遺跡出土蔵骨器に納められている火葬骨の年代測定・同位体分析を行ない、被葬者の死没年、死没地、食性等を探った。蔵骨器内の骨片は、黒色から白色までさまざま存在し、焼成温度にかなりのムラがあったと考えられる。X線回折分析から、黒色骨片は600−700℃の被熱を受けたこと、白色骨片は750℃以上の高温の熱を被り、高いアパタイトの結晶度を有することがわかった。白色骨片と黒色骨片は異なる87Sr/86Sr値を示し、黒色骨片は埋没時に土壌間隙水とSr同位体交換反応を生じてSr同位体組成が変化していることが明らかになった。白色骨片4試料の14C較正暦年代は770−900 cal ADとなり、奈良時代後半という考古学知見と一致した。また、安定Sr同位体比 (δ88Sr)から、被葬者は比較的栄養段階の高い食性であったことが示唆された。
著者
河野 尊臣 平野 直人 森下 泰成
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2016年度日本地球化学会第63回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.220, 2016 (Released:2016-11-09)

南鳥島は無数の海山列が存在する西太平洋上にあるが、地形的に見てどの海山列にも属さず、成因はわかっていない。本研究では、岩石学的、地球化学的手法を用いて溶岩の観察と分析を行い、島を形成した火成活動の起源を明らかにする。南鳥島山麓海底で行われた潜航調査では溶岩流地形、火山丘地形、リッジ地形の3地域で潜航動画の撮影と溶岩の採取が行われた。今回、溶岩の産状・形態の観察、薄片観察を行い、更に岩石のXRF、ICP-MSを用いた全岩組成を分析した。各3地域では枕状溶岩が観察されたが、産状には明確に違いが見られた。岩石はすべてアルカリ玄武岩に分類され、微量元素分析から周囲の海山列とは成因が異なることがわかった。さらに薄片観察、HFS元素を用いた比較から、これら各火山地形の3地域の違いも見られた。以上から、南鳥島では3種類の火成活動があり、ホットスポット火山に見られる盾状期、再生期といった成長過程を示している可能性がある。
著者
石川 晃 下條 将徳 鈴木 勝彦 Collerson Kenneth D. 小宮 剛
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2012年度日本地球化学会第59回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.55, 2012 (Released:2012-09-01)

マントル中の親鉄元素の過剰を説明するレイトベニア仮説は広く知られるが、真偽のほどは未だ研究者間で異論がある。最近のタングステン同位体比を用いた研究から、現在の地球マントルに含まれる親鉄元素の大部分が40-38億年前の「後期隕石重撃期」にもたらことが提案されているが、本研究によると、38億年前の超苦鉄質岩は太古代以降のマントルとほぼ同程度の強親鉄性元素を含んでいることがわかった。この事実はレイトベニア成分が「後期隕石重撃期」よりかなり以前に地球に付加し、その後均質化したことを示唆するため、タングステン同位体比による考察と明らかに矛盾している。
著者
市山 祐司 相馬 伸介 華房 康憲 田村 芳彦 川畑 博 布川 章子
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.106, 2010

海洋研究開発機構(以下JAMSTEC)では、平成19年にデータ・サンプルの取り扱い方針を定めて、JAMSTECの船舶で採取されたデータ・サンプルを一元的に保管・管理し、一定の公開猶予期限を経たのち公開を行っている。岩石サンプルについては、深海底岩石サンプルデータベース「GANSEKI」<SUP>*</SUP>において岩石サンプル情報の公開を行っている。本大会では、岡別府ほか(2006)によってGANSEKIの構築の前段階における概要が紹介されていたが、その後2006年10月の外部公開より本格運用が開始され、幾度かの機能改修を経てデータベースとして軌道に乗りつつある。本発表では、GANSEKIの現状と今後の展望についての紹介を行う。<BR> JAMSTECは四半世紀にわたり、島弧周辺域(伊豆・小笠原など)、中央海嶺(太平洋、大西洋、インド洋)、海洋島(ハワイ諸島など)といった様々なテクトニックセッティングから火成岩や堆積岩、チムニー、マンガン酸化物などを船舶・潜水船を用いて採取してきた。現在GANSEKIでは、これらのサンプルのメタデータ18700件、分析データ11200件、アーカイブサンプル7300試料を公開している。<B>アーカイブサンプルについては、研究・教育・展示目的であれば随時無償提供を行っている<SUP>§</SUP></B>。<BR> GANSEKIでは、サンプルを採取した航海名、船舶(潜水船)、緯度・経度・水深、海域、岩石名などのメタデータによる検索や地図上にプロットした潜航またはドレッジ地点からの検索が可能である。検索結果にはサンプルのメタデータが表記され、分析データとアーカイブサンプルの有無が確認できる。アーカイブサンプルがあるものは、サンプル写真やサイズ・重量を閲覧することができる。分析データは、「JAMSTEC深海研究」や一般学術誌の掲載データや研究者の未公表データなどから収集した全岩組成と鉱物組成が登録されており、CSVファイルでダウンロードが可能である。<BR> 昨年度からは、国際的岩石化学ポータルサイト「EarthChem」<SUP>**</SUP>との連携を開始した。これにより、GANSEKIに登録されている分析データを持つサンプルをEarthChem上で検索することが可能となった。今後は海外の研究者からのアクセスやサンプルリクエストの増加が期待される。また、今後は薄片写真や記載情報の公開、分析データの収集、堆積物コアサンプルデータや地球物理データとの統合などを視野に入れ、データベースのさらなる質の向上を目指していく。<BR><SUP>*</SUP> http://www.godac.jamstec.go.jp/ganseki/index_jp.html<BR><SUP>**</SUP> http://www.earthchem.org/<BR><SUP>§</SUP>問い合わせ先:dmo@jamstec.go.jp<BR>
著者
薮田 ひかる アレクサンダー コーネル フォーグル マリリン キルコイン デイビッド コーディ ジョージ
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.169, 2010

未分類C2コンドライトのWIS91600隕石は、その反射スペクトルがD- 又はT-タイプ小惑星のものに似ていることや、鉱物学的特徴がTagish LakeおよびCIコンドライトに似ていること 、その一方で熱変成を受けた証拠を有すること が報告されており、その起源や進化について共通の見解が得られていない。そこで本研究では、WIS91600 隕石が経験したプロセスに関する情報を引き出すために、WIS91600隕石中の有機物の同位体・構造分析を行い、それらの結果を他の隕石有機物の特徴と比較した。その結果、WIS91600 隕石の有機物は、種々の分類に属するコンドライトの有機物とは異なる独自の化学特徴を持っていることが明らかとなった。各分析から得られた知見を総合すると、WIS91600 隕石は、Tagish Lake 隕石が経験したものに似た水質変成を受けた後、500℃より低い"穏やかな"衝撃熱変成を受けた可能性が示された。