著者
日高 洋
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2011年度日本地球化学会第58回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.74, 2011 (Released:2011-09-01)

中央アフリカ・ガボン共和国東部オクロ鉱床は約20億年前に部分的に核分裂連鎖反応を起こした形跡のある「天然原子炉」の化石として知られている。核分裂によって多量に生成された放射性核種は現在ではすべて安定核種へと壊変し尽くされているが、その長期的挙動は安定同位体組成の変動から推定することができる。本研究ではオクロ原子炉関連試料のBa安定同位体組成変動から放射性セシウムの長期的挙動を推測した。
著者
中井 俊一 佐藤 正教 武藤 龍一 宮腰 哲雄 本多 貴之 吉田 邦夫
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.228, 2013 (Released:2013-08-31)

漆はウルシ属樹木であるウルシが分泌する樹液を脱塵,脱水などの処理をした後,空気にさらし,酸化酵素ラッカラーゼの働きにより硬化させ,塗料や接着剤として用いられてきた.ウルシ属の樹木は日本の他,中国,ベトナム,タイなどに自生している.現在,日本の漆工芸で使われている漆は大部分が中国,ベトナム産である.日本では縄文時代早期の遺跡から,漆塗の髪飾り,腕輪などが出土し,古い時期からの利用を示している.漆塗料の産地を決めることができれば,漆文化の起源や,時代による交易圏の変遷を考える手がかりになりうると予想できる.漆の主成分である有機化合物の分析により,日本産の漆をタイ,ベトナム産のものと区別することはできるが,日本産の漆を中国,韓国産のものと区別することはできない.そこで土壌の源岩の年代により変動する87Sr/86Sr同位体比を用いて漆の産地推定を行うことを検討してきた.
著者
奥村 雅彦 中村 博樹 町田 昌彦
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2014年度日本地球化学会第61回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.266, 2014 (Released:2014-09-12)

福島第一原発事故によって環境中に放出された放射性セシウムは、土壌に強く吸着され、住民避難の主な原因となってる。現在大規模な除染が行われているが、除染後の廃棄土壌の減容化手法開発や貯蔵の安定性評価のためにはさらなる科学的知見が必要とされている。このような事情を鑑み、我々は放射性セシウムを選択的かつ不可逆的に吸着することが知られている風化した雲母類粘土鉱物のセシウム吸着海底に付いて密度汎関数法を用いて解析を行った。その結果、風化が進んだ場合にセシウムを吸着する事がわかった。また、雲母類粘土鉱物とセシウムの間に共有結合成分を発見した。講演では、これらの結果を踏まえた減容化手法開発の可能性や貯蔵における安定性等の議論も行う予定である。
著者
安川 和孝 中村 謙太郎 藤永 公一郎 岩森 光 加藤 泰浩
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.171-210, 2018-12-25 (Released:2018-12-25)
参考文献数
130
被引用文献数
2

Since the discovery of rare-earth elements and yttrium (REY)-rich mud in the Pacific Ocean, a variety of research has been conducted to understand its spatial distribution and genesis. In this paper, we review the latest research outcomes on REY-rich mud, including the discovery of “extremely REY-rich mud” containing >5,000 ppm of total REY, a promising deep-sea mineral resource in Japan’s exclusive economic zone surrounding Minamitorishima Island. Then, we introduce a new statistical approach based on independent component analysis (ICA) to clarify the origin of REY-rich mud in the Pacific and Indian oceans, with a theoretical background and a protocol of ICA application on geochemical data. Independent components extracted from a multi-elemental dataset of ~4,000 samples demonstrate distinctive geochemical features, and their spatiotemporal distributions indicate that the sedimentation rate is an underlying key factor for REY-enrichment. We also refer to an important link between the genesis of REY-rich mud and Earth system dynamics. Finally, we focus on some challenges to be overcome. One of the most significant questions concerns the formation mechanism of the extremely REY-rich mud. An important key to this question is the depositional age of the extraordinary sediment layer.
著者
中村 俊夫 緒方 良至 箕輪 はるか 佐藤 志彦 渡邊 隆広
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.61, 2014

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力福島第一原発事故により大量の放射性物質が環境中に放出された.大気粉塵,土壌,植物などの放射能分析から大気中に放出された核種とおおよその量が見積もられている.一方,地質学・考古学試料について約5万年までの高精度年代測定に利用されている放射性炭素(14C;半減期:5730年)の放出に関しては,その放出の形態や数量はきちんと確認されてはいない. 事故のあった福島第一原発付近への立入は制限されており,採取できる試料には限りがあるが,2012年に,福島第一原発から南に20~30km離れた広野町の海岸付近で海産物などを採取した.また,2011年秋には,福島第一原発から北西に約60km離れた福島大学金谷川キャンパスにおいて植物を採取し,それらの14C濃度を測定した.測定結果からは福島第一原発事故の影響は検出されなかった.
著者
城谷 勇陛 御園生 淳 渡部 輝久 宮本 霧子 高田 兵衛
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.65, 2018

<p>核燃料サイクル施設周辺海域における1991年以降の海水および2001–2011年の海産生物の<sup>3</sup>H濃度について2006年からのアクティブ試験や2011年に起きた福島第一原発事故による影響について明らかにすることを目的とし、<sup>3</sup>H分析を行った。アクティブ試験の影響による<sup>3</sup>H濃度の上昇が、海水については2007、2008年に、海産生物では2006、2007,2008年に確認された。一方で、福島第一原発事故の影響による<sup>3</sup>H濃度の上昇は両方で確認されなかった。</p>
著者
廣瀬 勝己
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2007年度日本地球化学会第54回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.30, 2007 (Released:2008-01-18)

2003年南太平洋で観測船「みらい」による観測(BEAGLE)が実施された。その際、放射能観海水試料が得られた。海水試料は量が少ないためICP-MSでプルトニウム濃度を測定した。その結果を、報告する。
著者
三宅 泰斗 松崎 浩之
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2014年度日本地球化学会第61回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.334, 2014 (Released:2014-09-12)

2011年3月に生じた福島第一原子力発電所事故により、多量の放射性核種が環境中に放出された。ヨウ素131や放射性セシウム等の比較的短半減期の核種は被ばくの主な要因として注目され、事故後多くの研究者により測定され多数の報告があった。一方でヨウ素129や塩素36などの長半減期核種は、検出の難しさからこれまでほとんど報告されていない。これらの核種はウラン235の核分裂や中性子捕獲反応で生成したと考えられるため、事故前から炉内に存在し、今回の事故で環境中へ漏洩した可能性がある。また、これらの核種は半減期が長いために、核種の環境中での動態を調べるトレーサーとしても有用であり、継続的な調査が求められる。本研究ではこれまで、事故後に福島第一原子力発電所周囲から採取された表層土壌中のヨウ素129を加速器質量分析により測定し、ヨウ素129とヨウ素131の事故当初の同位体比の推定を行ってきた。この度、ヨウ素129を測定済みの土壌について、新たに塩素36の測定を試みたので、その結果を報告する。
著者
西尾 嘉朗
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.83-96, 2006-05-25 (Released:2017-01-25)
参考文献数
64
被引用文献数
1

The non-traditional lithium (Li) isotopic tracer has a great potential to provide a major breakthrough in the investigation of the material cycle in the terrestrial mantle. Using a developed multiple-collector ICP mass spectrometry method, we revealed Li isotopic systematics of mantle-derived samples. The main significance in our results is the finding of extremely low 7Li/6Li values in several mantle-derived samples. Based on earlier results for eclogites, it had been proposed that subducted highly altered oceanic crust would have extremely low 7Li/6Li values. The significantly low 7Li/6Li values, however, had never been observed in any mantle-derived samples before our finding. We have also proposed that the enrichment of isotopically light Li may be general property of the enriched mantle type 1 end-member component (EM 1). In this scenario, the Li in the EM 1 source mainly originates from Li in the highly altered basalt of the uppermost part of subducted oceanic crust. Thus, the Li isotopic signature is sensitive to the degree of alteration experienced by the basaltic crust and can thus be used to distinguish what part of the basaltic crust was recycled.
著者
上地 佑衣菜 植村 立
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2017年度日本地球化学会第64回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.219, 2017 (Released:2017-11-09)

近年、水のδ17Oの高精度測定が可能になり、δ18Oとδ17Oを組み合わせた指標である17O-excessが提案された。17O-excessは海洋上の蒸発における分子拡散により生じると考えられて、その変動メカニズムはd-excessと同様である。しかし、17O-excessはd-excessよりも降水過程による変質が少ないと考えられている。本研究では、アジアモンスーン地域における17O-excess変動を明らかにするために、沖縄島での降水の測定を行った。沖縄島の降水の17O-excessには季節変動があり、d-excessと強い相関関係を示した。この結果は沖縄島の降水の17O-excessが海洋での蒸発時の分子拡散の強度を反映している事を示唆している。
著者
小宮 剛 山本 伸次 下條 将徳 青木 翔吾
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.242, 2013 (Released:2013-08-31)

太古代初期のテクトニクスと表層環境を解読する為にラブラドル・ネーン岩体の地質と出現する堆積岩の化学分析を行った。本地域に産する最古の表成岩は海洋プレート層序と覆瓦状構造によって特徴付けられ、最古の付加体であることが分かった。その存在はプレートテクトニクスが機能していたことを示唆する。また、本地域には深海成と浅海成の二種の縞状鉄鉱層が産する。Zr濃度との相関を用いて砕屑物の混入の影響を除去した結果、特にその影響の小さなものには希土類元素パターンなどに海水と熱水との混合水の特徴が見られる。そのことは最古の堆積物でありながら、その縞状鉄鉱層には当時の海水の情報を残すことを示す。また、砕屑性堆積岩には炭質物が残されている。
著者
三浦 弥生
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2006年度日本地球化学会第53回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.182, 2006 (Released:2007-11-01)

分化隕石の多くは始源的希ガス成分含有量が少ないため、宇宙線照射起源や核分裂起源希ガス成分を研究するのに適している。講演者がこれまでに多数分析を行ったユークライトやオーブライト隕石(いずれも分化隕石の一種)について、(i) 測定値から宇宙線照射起源や核分裂起源希ガス成分を算出する手法、(ii) 得られた各成分の同位体組成、(iii) 宇宙線照射起源希ガスの生成率(81Kr-Kr法に必要なP81/P83の見積もり法を含む)、(iv) 地球大気起源希ガスの影響、等について検討を行った。これらについて報告する。
著者
吉田 英一 大江 俊昭 山本 鋼志
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2016年度日本地球化学会第63回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.40, 2016 (Released:2016-11-09)

海成堆積岩中に産出する球状炭酸塩コンクリーションの成因について報告するとともに、そのプロセスの応用として、地層処分場などの地下環境での長期的シーリング技術への適用性について述べる。
著者
元川 竜平 遠藤 仁 横山 信吾 西辻 祥太郎 矢板 毅 小林 徹 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2015年度日本地球化学会第62回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.190, 2015 (Released:2015-09-03)

福島第一原子力発電所の事故により環境中へ放出された放射性セシウムが、福島県を中心に広範な地域に対して環境汚染をもたらした。放射性セシウムは、水を介して拡散し、土壌に吸着しているが、その中でも特に風化黒雲母・バーミキュライトといった特定の粘土鉱物に濃縮され、強くとり込まれることが明らかにされている。そこで我々は、X線小角散乱(SAXS)法を用いて、バーミキュライト・風化黒雲母/セシウム懸濁液の構造解析を行い、セシウムイオンの吸着に伴う粘土鉱物の構造変化を明らかにした。
著者
松本 英二
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.27-32, 1983
被引用文献数
13

The aim of this paper is to review the sedimentary environment in the Tokyo Bay. Great emphases were placed to the sedimentation rate and heavy metal and organic pollution to reveal the history of pollution and environmental changes in the Tokyo Bay.
著者
小菅 正裕
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2021年度日本地球化学会第68回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.180, 2021 (Released:2021-12-15)

地殻内で発生する低周波地震は,地震の規模から期待されるよりも顕著に低い低周波の地震波を放射する例外的な地震である。その特徴と,発生場所が主に下部地殻であることから,通常の地震のような断層のずれではなく地殻流体が関与して発生すると考えられているが,発生メカニズムは完全にはわかっていない。低周波地震の波形の特徴として,S波の後に長時間続く振動がある。波動のシミュレーションによれば,そのような振動は地震波速度の低速度域内での波動の共鳴で説明できる可能性がある。最近発見された地殻浅部低周波地震は通常の地震と同じ深さで発生しているので,低周波となることの要因の解明は,地震発生メカニズムそのものの解明につながる課題である。
著者
篠原 隆一郎 古里 栄一
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.159-170, 2017-12-25 (Released:2017-12-25)
参考文献数
56
被引用文献数
6

Phosphorus (P) is one of the most important nutrients for all living organisms. Recently, not only inorganic P but also organic P has been focused because of the development of an analytical technique— 31P nuclear magnetic resonance (NMR) spectroscopy. In the current paper, we reviewed historical backgrounds of the P analysis with the reason for using NMR and the limitation. Furthermore, we discussed the processes of sediment and suspended particles in lakes in the recent studies. The processes are complex, including physical, chemical, and biological aspects (i.e. diffusion, resuspension, adsorption/desorption, and enzymatic hydrolysis). Because P is present majorly as particulate forms, it is affected by physical processes compared with carbon and nitrogen. We shed light on how the processes of physical, chemical, and biological aspects affect P behavior in sediment and suspended particles in shallow and deep lakes.
著者
益田 晴恵
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2021年度日本地球化学会第68回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.124, 2021 (Released:2021-12-15)

地球内部に起源を持つヒ素と水銀の地質学的循環に伴って発生する地下水・土壌汚染について概説する。ヒ素と水銀は火成作用に伴って、マグマやマグマ性流体とともに地殻・水圏・大気圏に移動する。ヒ素は新生代堆積物にも深刻な汚染が発生してきた。降下火山灰と流域母岩に含まれる熱水性・マグマ性のヒ素含有鉱物の溶解が主な原因である。一方、水銀は気体として振る舞う性質が強いことから、大規模な断層に沿って土壌ガスとして地表に放出されることがある。大阪平野の境界断層である、生駒断層・上町断層・内畑断層系の直近で、水銀を含む浅層地下水や土壌中での水銀の濃集が観察される。水銀汚染地下水出現地点は深部低周波地震の震源と重なることも多い。また、和泉山脈では、MTL直近で最大の1200ppbの水銀が検出された。水銀は有馬型塩水と類似の起源を持つことが強く示唆される。