著者
斎藤 卓也 町中 裕昭 間瀬 憲一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.239, pp.63-68, 2012-10-10

低炭素社会の実現及び高齢化社会の移動媒体として,超小型電気自動車(ミニEV)が,従来のガソリン車に代わり普及していくと考えられている.EVには大容量のバッテリーを搭載していることから,災害時電気供給インフラになると考えられている.さらにミニEVに通信機能を持たせることにより,無線アドホックネットワーク(EVANET)を構築し,災害時通信インフラとして活用するなど,様々なアイデアが提案されている.本稿では,災害時モニタリング・システムとしてミニEVを電気ヘリコプター(EH)の航空母艦として利用することにより,災害現場を上空から撮影し,災害状況をより広範囲に渡り把握するなど,各々単体によるシステムでは実現できなかった,新しい機能を持った災害地モニタリング・システムを提案する.
著者
田中 正行 奥富 正敏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.11, pp.2200-2209, 2005-11-01
被引用文献数
21

複数の低解像度画像より一つの高解像度画像を復元する方法として超解像処理がある. 再構成型と分類される方法が広く利用されている. この再構成型超解像処理では, まず初期の高解像度画像を設定し, そこからカメラモデルに基づき観測画像である低解像度画像の各画素値を推定する. 推定された画素値と実際の観測画素値の誤差を最小にするように高解像度画像を更新する. 収束するまで更新処理を繰り返すことにより, 高解像度画像を求める手法が再構成型超解像処理である. 再構成型超解像処理は, 高解像度画像の画素の数だけの未知数があることや, 1回の更新につき複数の低解像度画像の総画素数分の画素値推定計算が必要であることなどから, 計算コストが大きい. 本論文では, 更新ごとに必要な計算コストを低減させることを目的とした高速化アルゴリズムを提案する. 提案手法は, 高解像度画像空間に離散化点とそれに対応する近傍領域を設定し, その近傍領域内に含まれる複数の観測画素値の平均値を利用し, その平均値と離散化点に対する推定画素値の誤差を最小にする方法である. ある近傍領域に対して, 従来法では近傍領域に含まれる観測画素の数の推定計算が必要であるが, 提案手法では1回の推定計算で済む. 合成画像及び実画像を使用した実験から, 提案手法は従来法と比較して約1.4〜8.5倍の高速化が確認できた. また, 推定精度は従来法とほぼ同程度であることも確認できた.
著者
加藤 英之 深井 朋樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.466, pp.31-38, 2000-11-17
被引用文献数
2

Abeles et al.(1993)によるサル前頭葉からの多電極神経活動測定により, 1msec程度の時間幅に集中した神経細胞の集団発火(パルスパケット)が集中度を保ったまま数十段のシナプスを伝わる現象が示唆された.Diesmann et.(1999)はパルスパケットの伝播における集中度の安定性が2次元空間内のアトラクターで表現できることを示した.我々は集中度の変化をFokker-Planck方程式で計算し, 2次元空間での特徴的な流れとそのアトラクターは自発神経活動によるシナプスノイズで決まることを示す.さらに, 伝播するパルスパケット同士の相互作用により, 同期検出や時間競合が可能となることを示す.
著者
岩瀬 亮 鈴木 茂樹 中 貴俊 山田 雅之 遠藤 守 宮崎 慎也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.242, pp.59-62, 2007-09-27

著者らの研究グループではこれまでに解経路探索に基づく知恵の輪の難易度の定量的評価を行ってきた.この研究では知恵の輪の解経路から特徴量を算出し難易度を求め,さらに被験者実験との比較を行い妥当性を検証した.既存の知恵の輪のデザイン手法の多くは試作を重ねるという方法で経験や勘によるところが大きい.そこで,解経路と難易度の関連性に基づく難易度を考慮した知恵の輪デザイン手法を提案する.これは一方の知恵の輪と難易度を考慮した解経路を作成し,その解経路を辿ることにより求められる軌跡からもう一方の知恵の輪を作成するという手法である.
著者
小出来 一秀 柏瀬 俊夫 鈴木 龍太郎 有本 好徳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.527, pp.37-42, 2000-12-15
被引用文献数
1

多数の低高度衛星から構成される低軌道衛星間リンクにおいて, 従来の電波通信の代わりにレーザを用いた光通信を行うことが検討されている.低軌道衛星間リンクでは, 自機の周りの複数機間で光通信を行うことが想定されており, 1衛星に複数の光通信捕捉追尾装置が搭載されるため, 装置の小型・軽量化が必須となる.さらに, 隣接軌道面間リンクにおいては, 相対角速度, 必要駆動範囲が大きくなるため, 捕捉追尾装置の粗駆動機構の高速化, 広駆動範囲化が求められる.これら2つの要求に合致するものとして, クーデパス式光アンテナ結合方式がある.本報告は, 試作したクーデパス式光アンテナの構成, および性能評価試験結果について述べる.
著者
児玉 充弘 多田 和也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.96, no.10, pp.284-289, 2013-10

可溶性をもつ導電性高分子は比較的低い融点をもつが,溶融状態の導電性高分子を電子素子に利用しようという試みはほとんどなされていない.本論文では溶融状態の導電性高分子を電子素子に利用するための予備的な検討として,2枚のITO電極付ガラス基板間に溶融状態の導電性高分子を挟んだ構造の素子(ITO/ITOセル)と,高分子上に真空蒸着法によりAu電極を形成した素子を試作し,特性評価を行った.後者では高分子層の液化に伴い,素子構造を保てなくなることが予想されたが,高分子層とその上に形成する金属電極層が一定の厚さ以上であれば素子構造を保ち,ITO/ITOセルと同様の結果が得られることが分かった.
著者
冨岡 克広 福井 孝志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SDM, シリコン材料・デバイス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.88, pp.59-63, 2014-06-12

近年、ナノメートルスケールの直径を有した半導体ナノワイヤ・ナノロッドが次世代エレクトロニクス・フォトニクス材料として注目されている。有機金属気相選択成長法により集積したSi上のIII-V族化合物半導体ナノワイヤに形成される特異なヘテロ接合界面を利用した、低電圧トランジスタ応用と光電変換素子応用について紹介する。
著者
池田 彩夏 小林 哲生 板倉 昭二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.412, pp.89-94, 2013-01-17

オノマトペとは、音、動き、質感など様々な感覚表現を表す言葉であるが、その一部に複数の感覚に由来するものが存在する。例えば、「ざらざら」は視覚と触覚の両方のイメージを喚起するが、このことを幼児も大人と同じように理解できるかはよくわかっていない。本研究では、視触覚表現を表すオノマトペを対象に、日本人4歳児がオノマトペの示す視覚表現及び触覚表現をどの程度理解しているかをクロスモーダルマッチング法を用いて検討した。その結果、4歳児はオノマトペと視覚及び触覚のマッチング課題に成功し、両課題に正答する幼児も多かった。また課題成績は対象年齢内でも月齢とともに上昇し、その個人差は幼児の語彙力や母親の言語入力との関連を示した。これらの結果から、4歳児はオノマトペの示す視触覚表現とそのクロスモーダルな表現をすでに理解しているが、この時期にそれらの理解をより精緻なものに向上させていることが示唆された。
著者
平岡 隆晴 許 瑞邦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MW, マイクロ波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.78, pp.53-60, 1999-05-21
被引用文献数
4

ストリップ線/マイクロストリップ線直角曲がりを精度良くかつ合理的に解析する手法として、曲がり部を入出力平面導波路部と平面接合回路部に分割して、前者より多線条伝送線路等価回路が、後者よりフォスタ型等価回路が得られることが知られている。フォスタ型等価回路を求めるには、平面接合部の固有モード(固有値, 固有関数)を計算する必要がある。ここでは、正方形平面回路の角を斜めに切断した角斜め切断正方形平面回路を取り上げ、多線条伝送線路表示の多開口理想変圧器を介した等価回路を導出した。この等価回路に基づいて固有モードを計算したので、その結果を示す。
著者
宮田 康志 青山 秀紀 尾関 基行 中村 裕一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.496, pp.19-24, 2007-01-18
被引用文献数
3

本研究では,作業や生活をさりげなく支援するメディアを実現するために,ロボットなどの人工エージェントを画像認識システムとそれを用いる人間の間に介在させる枠組みを提案する.この枠組みでは,物体や人物動作を認識するための認識モジュールと,さりげないインタラクションによって人間を誘導するエージェントモジュールが協調して動作することによって,支援システムが必要な情報を必要な時に十分な精度で得ることを目的としている.本研究では,そのプロトタイプとして大型ロボット(AIBO)をエージェントとしたシステムを試作し,認識誤りが発生しそうな場合や,より詳細な誰識が必要なタイミングにユーザにその対処方法とともにジェスチャで知らせる機能を実装した.試作システムを用いた予備実験において,エージェントを導入することにより認識率が上がること,および,人間に認識位置・姿勢を直接命令する場合に比べてユーザへの負担が減ることを確誰した.
著者
大倉 計美 杉山 雅英 嵯峨山 茂樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, pp.2469-2476, 1993-12-25
参考文献数
17
被引用文献数
34

混合ガウス分布型HMMにおける話者適応方式である「移動ベクトル場平滑化話者適応方式」を提案する.本手法は,話者適応の問題を少量学習音声資料を用いたHMMの再学習による分布の移動問題としてとらえ,学習前後のHMMのガウス分布の平均ベクトルの差分(移動ベクトル)が構成する一つの場(移動ベクトル場)の連続性の拘束条件に基づく移動ベクトルの補間と平滑化により,不十分な学習資料しか得られない場合に生じる(1)未学習モデルの問題と,(2)モデルの推定誤差の問題,に対処するものである.本論文では評価話者に男女各1名を用いた23音素認識実験により,平滑化はモデルの推定誤差を吸収するために有効な手法であることを示した.また,文節音声認識において,本手法の発話様式適応への応用と不特定話者モデルに基づく話者適応への応用を検討し,本手法の有効性を示した.
著者
南 英城 笹岡 秀一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-I, 通信I-情報通信システム・理論 (ISSN:09151877)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.728-737, 1996-11-25
被引用文献数
1

ブロック符号の軟判定復号法には種々のものがあるが,線形符号および非線形符号の区別なしに適用可能で,所要の計算量が少なく特性の優れた方式は少ない.本論文では,受信信号の2値判定系列でユークリッド距離比較を行う符号語の候補をテーブルを参照することによって限定し,最ゆう復号法に近い特性を維持しながら計算量を削減する方式を提案した.非線形符号であるβ符号を対象に提案方式の有効性を確認するため加法的ガウス雑音伝送路およびフェージング伝送路におけるブロック誤り率特性と計算量を計算機シミュレーションで検討した.その結果,加法的ガウス雑音伝送路における提案方式のブロック誤り率特性は,チェイスの第2アルゴリズムの特性とほぼ等しく,最ゆう復号法からの劣化は微小であった.計算量については,最ゆう復号法に比べて大幅に(約1%に)削減が可能であり,チェイスの第2アルゴリズムよりも削減できることがわかった.一方,フェージング伝送路では,提案方式のブロック誤り率特性は,最ゆう復号法の特性に比較してE_b/N_0で1dB程度劣化したが,チェイスの第2アルゴリズムに比較して良好な特性であることが確かめられた.また,BCH符号への適用や4値判定系列に対する候補語のテーブルを用いた擬巡回符号/4値ASKへの適用も検討し,良好な結果が得られた.
著者
岩本 正敏 水谷 好成
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.309, pp.31-38, 2001-09-07
被引用文献数
9

小学生のプログラミング入門教育のために筆者らはロボット教材「梵天丸」を開発した。梵天丸は二輪駆動で、赤外線センサーを持つ自律型ロボットである。このロボットを制御するプログラム言語としてひらがなによる専用の言語「まきもの」も開発した。このロボットを使い、小中学生を対象にプログラミングのワークショップは各地で開催され100回を超えた。
著者
大西 正輝 村上 昌史 福永 邦雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.594-603, 2002-04-01
被引用文献数
42

本論文では,人手を介さずに板書主体の講義を自動的に撮影する手法として,講義の状況を理解することで撮影領域を決定し,得られた複数の映像を評価することで講義映像として最も適している映像にスイッチングを行う知的自動撮影手法を提案する.まず,講義の状況を理解するために,固定カメラによって撮影した講義映像から講義者と黒板の板書に関する情報を抽出し,それらの情報を用いて講義者の行動推定を行う.次に,講義者の行動に基づいて各カメラにおいて撮影領域を決定し,複数のカメラ位置から映像を取得する.最後に,得られた複数の映像をそれぞれ評価することにより,現在の講義状況を最も効果的に表している映像を選択する.実際に講義の自動撮影を行い,本手法の有効性を確認した.
著者
伊藤 雅 佐藤 泰司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.80, no.9, pp.1579-1583, 1997-09-25
参考文献数
7
被引用文献数
2

シフトJISコード (JIS X 0208) の日本語文書圧縮法について提案する. 日本語文字は通常2バイト固定長で表現され, 文書中では連続して出現する傾向にある. そこで, 出現頻度の高い2バイト文字を辞書配列に登録し, これらを1バイトで短縮表現する方法を提案する. 圧縮率については, 既存の圧縮法と組み合わせることで良好な圧縮率を達成した.
著者
武田 昌一 長谷川 優 津久井 勤 桐生 昭吾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CQ, コミュニケーションクオリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.404, pp.141-146, 2015-01-15

競技かるた選手の間で「熟達した競技かるた選手は決まり字の前に来る音素の微妙な違いによって,次に何の字が来るか予測できる」と言われている.このことを,聴取実験と音響分析を組み合わせて,選手が出札を認識する時刻を精密に計測する手法を考案し用いることにより実証した.また,この認識結果を用いて,決まり字直前で出札を認識した音素部の音響的特徴を「た」で始まる首を例として,サウンドスペクトログラムとフォルマント周波数の分析により調べた.その結果,後続音素(子音や続く母音)のフォルマント周波数の特徴に従って,第2フォルマント周波数の時間に対する上昇,下降,不変,高域周波数の増大などの特徴の違いが見られることがわかった.
著者
榎本 忠儀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.296-306, 1996-03-25
参考文献数
17
被引用文献数
14

マルチメディア機器の構築に必須なLSIで重要な性能指標に"信号処理性能"と"動作時消費電力"および"待機時消費電力"がある. 本稿では, まず, CMOSおよびGaAs集積回路の消費電力について解説し, 次に低消費電力化技術を詳しく述べる. 動作時消費電力を低減するにはこれを構成する各ファクタ(電源電圧, ゲート稼働率, 回路規模, クロックおよび動作周波数, 負荷容量, 貫通電流, 等)を削減すればよい. そのための方策, すなわち, アーキテクチャ, アルゴリズム, 回路, 等に関する技術の具体例を詳述する. また, 動作時特性を劣化せずに, 漏れ電流, 貫通電流を遮断して, 待機時消費電力を削減する方法についても検討する. なお, 低消費電力化の基本条件は信号処理性能を維持し, チップ面積を増やさないことである.