著者
吉原 貴仁 杉山 敬三 中尾 康二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.17, pp.13-18, 2000-04-21
被引用文献数
1

(Simple Network Management Protocol)などの網管理方式(以下, 集中管理方式と呼ぶ)では網管理処理が管理ノードに集中し, また, 網管理情報収集の際のポーリングに必要な帯域が被管理ノード数の増加とともに増大するため, 大規模網への適用に限界があるなどの問題が指摘されている.このため, 網管理処理の一部を記述した管理スクリプトを被管理ノードに投入して実行する管理方式(以下, 分散管理方式と呼ぶ)の提案がある.しかしながら, 分散管理方式では被管理ノードの処理負荷を考慮せずに管理スクリプトが投入されるため, 特定の被管理ノードに処理負荷が偏り, 必ずしも網全体で処理負荷の均衡が保てない問題点がある.本稿ではこの問題点を解決するため, 管理ノードや被管理ノードの処理負荷および管理スクリプトの実行にともなうポーリングや通知に必要な帯域に基づき, 管理ノードや被管理ノードなどで網管理処理の動的な負荷分散を図る, 動的負荷分散アルゴリズムを提案する.また, アルゴリズムを実装し, 実環境評価を行う.
著者
久保田 秀和 黒橋 禎夫 西田 豊明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.600-607, 2003-08-01
被引用文献数
4

本論文では,知識カードを用いた分身エージェントの実現手法を提案し,EgoChatシステムとして実装した.分身エージェントとは作成者本人の代理として任意のユーザと会話可能なエージェントである.提案手法では分身エージェントの会話コンテンツを知識カードと呼ばれる意味的なまとまりをもつ文章断片を用いて構築し,分身エージェントの発話とユーザの発話とを同様の扱いが可能な知識カードとして扱う.知識カードを用いた会話生成は文章断片の組合せによって行われるため,分身エージェント作成者にとってエージェントとユーザとの間で行われる会話内容を予測することはたやすく,会話生成のためのコンテンツ作成作業が容易である.また,会話型エージェントが実社会で利用されるためには利用者からの反応や状況の変化に応じた会話コンテンツの継続的な改訂作業が必要となるが,提案手法では分身エージェントがユーザとの間に行った会話を会話ログとして記録し作成者本人ヘフィードバックすることによって,会話コンテンツの改訂作業を支援する.
著者
丸山 純一 長谷川 剛 村田 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.151, pp.31-36, 2006-07-06

本稿では,悪意あるユーザによって不正に改造され,利己的な挙動をするTCP(tampered-TCPと呼ぶ)がネットワークに与える影響を評価する.具体的には,tampered-TCPの中でもウィンドウサイズの上げ幅と下げ幅を変更したものを対象とし,数学的解析手法を用いて,TCP Renoコネクションとtampered-TCPコネクションが共存する環境における,tampered-TCPコネクションの平均スループットを導出する.さらに,シミュレーション評価によって数学的解析手法の妥当性を検証するとともに,以下の3点を明らかにする.(1)上げ幅が3以上の場合,再送タイムアウトが増加することによってスループットが低下すること,(2)下げ幅を小さくすることでスループットが増大すること,(3)下げ幅を小さくすることの効果より,上げ幅の増加によるスループットの低下の影響の方が強いこと.これらの結果を通じて,tampered-TCPの有効範囲がごく狭い領域に限られることを示す.
著者
星 洋輔 小林 貴訓 久野 義徳 岡田 真依 山崎 敬一 山崎 晶子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.764-772, 2009-11-01
被引用文献数
1

我々は,美術館での学芸員と観客の相互行為を,言葉と身体の動きの連動に焦点を当て,エスノメソドロジーの観点から調査・分析してきた.その結果,ロボットが作品の説明を行う場合でも,文の切れ目などの適切なタイミング(TRP)で,観客の方向へ正しく振り向くことが,観客の反応を増加させることが分かった.このような観客の反応の増加は,観客をロボットの説明に引き付けることができたためと考えられるが,これまでの知見は実験室での実験によるものであるため,実際の美術館においても同様の結果が得られるかどうかは確認できていない.そこで,本論文では,実際の美術館において実施した実験とその結果について述べる.まず,実際の美術館では観客に対して立ち位置の指定などはできないため,説明対象者の頭部を検出・追跡して正しくその方向へ振り向くことができるロボットを新たに開発した.そして,実際の美術館において,実験目的やロボットの動作に関する知識を一切もたない一般の観客に対して,ロボットによる作品の説明実験を行った.その結果,これまでの実験室での実験結果と同様に,高い割合で観客の同期的な反応を促すことができた.
著者
鎌田 智也 李 仕剛
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.375, pp.67-72, 2005-10-21

本論文では, 球面モデルに基づいた魚眼カメラによる頭部運動追跡について述べる.狭い視野のカメラを用いて部分的なシーンしか観測できず, カメラの運動により観測される特徴が消えたり, 新しい特徴が現れたりすることで, 観測誤差が累積し, 正確なカメラの運動追跡が困難である.そのため, 我々は, 広い視野の魚眼カメラを用いて, 部屋の天井に配置されているマーカを観測する手法を提案する.まず, 半球視野をもつ魚眼カメラに対して, 球面カメラモデルでカメラから見える周りの点を一様に表現する.次に, その球面射影モデルを利用して, 拡張カルマンフィルターで空間の特徴点からカメラの運動を推定するアルゴリズムを提案する.最後に, 部屋の天井に同一平面に配置している特徴点から, 魚眼カメラによる頭部運動追跡を行う実験を行い, その有効性を示す.
著者
宮川 勲 若林 佳織 荒川 賢一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.5, pp.1120-1132, 2004-05-01
被引用文献数
14

本論文では,魚眼カメラが取得した画像系列から平面運動と3次元形状を同時に復元するための因子分解法を提案する.ただし,光軸を平面に垂直とした魚眼カメラが平面運動することを前提としている.本手法は,この平面運動で画像系列を獲得する魚眼投影モデルに基づいている.実験では,撮影ロボットを使って取得した室内画像に本手法を適用し,平面運動と3次元形状を同時に,かつ,高精度に復元する手法として有効であることを示す.更に,形状復元の精度評価から,形状復元の精度は仰角に依存することを確認し,本手法の適用範囲を明らかにする.
著者
上野 弘 宣 麗 遠山 毅 宮下 哲哉 内田 龍男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EID, 電子ディスプレイ
巻号頁・発行日
vol.97, no.337, pp.29-34, 1997-10-24

ラビングした高分子配向膜上の液晶分子の配向機構に関して様々な研究報告がなされているが、いまだに十分に明らかになっていない。本研究ではFT-IR法を用いて赤外吸収異方性を測定することにより、配向膜表面の液晶のオーダーパラメータを決定し、ラビング強度と表面のオーダーパラメータの関係を求めた。その結果、筆者らはははじめて液晶のオーダーパラメータは表面に近づくにつれて減少し、表面ではラビング強度が十分大きくてもバルクに比べて著しく低いことを明らかにした。
著者
末吉 敏則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. VLD, VLSI設計技術
巻号頁・発行日
vol.96, no.425, pp.111-118, 1996-12-13
被引用文献数
37

書換え可能なFPGA (Field Programmable Gate Array)の可変構造性を積極的に利用しハードウェアによって適応性を求める試みとして,リコンフィギャラブル・コンピューティング・システムと呼ばれる新しい計算機システムの研究・開発が行われ注目を集めている.本稿では,リコンフィギャラブル・コンピューティングを実現するFPGAの機能について説明すると共に,必要に応じて計算アルゴリズムやデータ処理機能をFPGA 内に実装するリコンフィギャラプル・コンピューティング・システムの現状と,それらが抱える課題について報告する.また,21世紀におけるLSI集積度向上にも無理なく対応できる将来のプロセッサアーキテクチャとして,データ駆動とコントロール駆動の側面を合わせもつ新しいコンピューティングパラダイムに基づくリコンフィギャラプル・プロセッサを提案する.
著者
高橋 正和 畔柳 功芳 末広 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ITS (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.695, pp.155-160, 2001-03-15

完全相補系列パイロット支援型CDMAは、多重化データ信号から干渉を受けないパイロット信号伝送技術による、ほぼ理想的な伝送路推定を用いる方式である。しかしながら、その受信性能は伝送路の状態と雑音に影響されるパイロット応答行列の特異値に依存する。模造パイロット応答挿入によりパイロット応答行列の性質を改善できることが報告されている。本稿では、完全相補系列パイロット支援型CDMAに対し上記の原理を適用し、パイロット応答行列の特異値と誤り率特性の関係を明らかにする。さらに、フェージング環境下の伝送特性を検討することにより、周波数利用効率の向上が可能であることを示す。
著者
真鍋 厚 常盤 耕司 奈良 修 三好 清司 粟田 豊 小泉 伸和 伊戸川 寛昭 大友 尉央
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1997, no.2, 1997-03-06

インターネットやPHSの普及に伴い, DSUやPHS基地局等に搭載されるディジタル加入者線終端装置の需要が増えている。これらの装置は加入者系装置であることから使用されるLSIには小型化・低消費電力化が要求され, また高度な伝送技術を要することから安定した特性も要求される。そこでディジタル加入者線伝送装置の主機能を実現するピンポン伝送用ディジタル加入者線終端LSIについて, 従来アナログ回路で構成していたフィルタをディジタル化し, また送信ドライバ等をLSI内部に取り込むことにより, 外付け回路を削減し, 小型化・低消費電力化・特性安定化を実現したので, その構成と伝送特性を報告する。
著者
木原 弘一 内野 健一 奥野 幹史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1996, no.2, 1996-03-11

ディジタル伝送線路の回線等化機能は,その高速性及び経済性から専用ハードウェア(LSI)により実現される場合が多いが,設計パラメータや処理アルゴリズムの変更,及びシステム側とのインタフェースに対して柔軟に対処するためには,DSP(Digital Signal Processor)による実現が望ましい.そこで,DSPによる実現に適した時間領域回線等化アルゴリズムとしてDPLL(Digital Phase Locked Loop)制御を可能とするプリカーソル法を採用し,ラインビットレート320kbpsピンポン伝送の実験を行った.本文では,実現構成,機能構成,実験結果について述べる.
著者
佐竹 一孝 田所 嘉昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.93, no.453, pp.115-122, 1994-01-28

濃霧といった視界制限状態での船舶同志の衝突事故が後を絶えない.現在,衝突事故を防止するものとして,レーダーシステム等があるが,それらは,大型で高価なものとなるため,中小型船舶には塔載していない場合が多い.そこで,船長が12[m]以上の船舶には取り付けが義務付けられている汽笛に着目し,汽笛を利用して他船の相対位置を知る船舶衝突防止システムを提案してきた。汽笛をピンポン方式で送受信することで他船までの距離を測定し,マイクを回転させて汽笛音を受信することで,その到来方向を測定して,他船の位置を求めるシステムである.本システムを用いて,ピンポン方式による距離測定,及び方位角測定の性能評価を行ったので,システムの構成と合わせて上記の結果について報告する.
著者
阪本 秀樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OFS, オフィスシステム
巻号頁・発行日
vol.96, no.380, pp.7-12, 1996-11-21
被引用文献数
1

学術研究用として大学や研究所間を細々と接続することから始まったインターネットも, ここ2〜3年で爆発的な発展を遂げており, その通信環境を利用した様々な分野での実ビジネスが展開されている. 本報告では, それら多くのインターネットアプリケーションの中で, 特にディジタル写真, 電子新聞, ディジタルミュージック等のようにディジタル化されたコンテンツをインターネットを通じて流通させるビジネスに焦点をあて, 実ビジネス企画者の立場から, その分類と事業性, 通信方式, 著作権保護機構等について報告する
著者
笠原 伸元 前山 利幸 Laksono TESILA Heru 池上 文夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会秋季大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1994, no.1, 1994-09-26

室内無線LANにおいて10Mbps程度の高速、高信頼伝送を実現する方法の1つとして、円偏波の利用が考えられる。その理由の1つは円偏波により、室内の奇数回反射波を抑制して空間的フェージング及び多重波遅延歪みを軽減することにある。もう1つの理由は円偏波で送信し、受信側では垂直、水平の直交偏波で別々に受信して、2つのチャネルをフェージング相関の小さいダイバーシチ枝とすることである。室内の見通し内伝搬においては上記の効果が確認されたが、本稿では見通し外伝搬の実験結果と併せて述べる。
著者
土肥 智弘 奥村 幸彦 安達 文幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム
巻号頁・発行日
vol.97, no.31, pp.17-24, 1997-04-25
被引用文献数
31

広帯域コヒーレントDS-CDMA(W-CDMAの野外伝送実験を行い、チップレート(拡散帯域幅)と送信電力の関係、チップレートと誤り率特性の関係を明らかにした。チップレートの高速化によりマルチパスの分解能力が向上し、RAKE受信後の受信電力の変動幅が小さくなり、低レベルへの落ち込み確率が減少するため、チップレートが高速になるほど送信電力は低減されることを実証した。また、アンテナダイバーシチ受信により誤り率特性が約3dB改善されることも明らかにした。
著者
星野 兼次 長手 厚史 藤井 輝也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SIP, 信号処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.439, pp.13-18, 2008-01-18

次世代移動体通信では,ワイヤレスブロードバンド環境の実現に向けて,セル全体のみならずセル端におけるスループット向上が大きな課題として挙げられている.特に,次世代通信方式の変調方式の有力候補であるOFDMにおいて,セル端におけるスループット向上を実現する手段として,複数基地局から異なるサブキャリアのOFDM信号を周波数多重で直交させて送受信するマルチリンク伝送が検討されている.マルチリンク伝送では,複数基地局分の帯域と送信電力を同時に利用できることから,セル端スループットを向上させることができる.しかし,マルチリンク伝送の課題として基地局毎の同期が取れていない場合,OFDM信号が直交しないため隣接チャネル干渉が生じる.そこで本稿では,各基地局からの受信信号間の相互干渉(隣接チャネル干渉)をキャンセルする干渉キャンセラについて検討する.