著者
猪俣 孟
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1991

本研究はフォークト・小柳・原田病の病因と発症機序について、臨床および実験病理学的に明らかにし、本症の予防および治療法の確立に寄与することを目的としたものである。1)平成3年度フォークト・小柳・原田病患者の眼球を病理学的に検討した。夕焼け状眼底になっている状態でも脈絡膜にはリンパ球の浸潤があり、炎症は持続していることを明らかにした。残っている脈絡膜のメラノサイトにはHLAクラスII抗原が発現し、メラノサイトが炎症の標的になっていた。フォークト・小柳・原田病患者では脳波に異常があることを明らかにした。視細胞間結合蛋白(IRBP)を構成するペプタイドの一部(R4)をラット足蹠に注射して、実験的自己免疫ぶどう膜炎モデルを作成した。2)平成4年度フォークト・小柳・原田病患者皮膚白斑を免疫病理学的に検討した。皮膚ではメラノサイトが減少し、血管の周囲にリンパ球が浸潤していた。その多くはTリンパ球で、CD4陽性細胞とCD8陽性細胞の比は約3:1であった。皮膚の白斑でも活性化Tリンパ球が病変の形成に重要な役割を演じていた。実験的自己免疫ぶどう膜炎では、角膜内皮細胞の表面に細胞接着分子(Intercellular Adhesion Molecule-1:ICAM-1)が発現していた。3)平成5年度実験的に眼内炎症を繰り返し起こさせることによって脈絡膜新生血管が発生した。そこで、臨床的および実験病学的に眼内血管新生の機序について検討した。ベーチェット病患者の23例25眼の摘出眼球を病理学的に検討し、眼内血管新生が鋸状縁から起こり易いことを明らかにした。フォークト・小柳・原田病の臨床所見および病理学的特徴を総説にまとめた。
著者
桑谷 善之
出版者
九州大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

ベンゼンの炭素-炭素結合にsp炭素を2個ずつ挿入することによる設計される1,2,4,5,7,8,10,11,13,14,16,17-ドデカデヒドロ[18]アヌレン1は、等価な極限構造式の間の共鳴によりベンゼンと同じD_<6h>の対称性を持つと考えられ、分子軌道の縮退や芳香族性などの観点から興味が持たれる新奇な共役系化合物である。本研究では、対称的に置換基を持った誘導体を合成しその基本的性質を明らかにした。合成に当たっては、3,9,15位にフェニル基、6,12,18位に置換基Rを持った誘導体2を標的化合物として選択し、18員環骨格を構築した後にブタトリエン結合を還元的に導入するという方法による合成を検討した。具体的には4,10,16-トリメトキシ-4,10,16-トリフェニルシクロデカ-1,7,13-トリオン(3)を鍵中間体として合成し、そのカルボニル基に求核的に置換基を導入した後塩化スズを用いて還元することにより、ヘキサフェニル体(2a)をはじめ三種の誘導体(R=Ph,4-^tBuC_6H_4,^tBu)を得ることができた。驚くべきことにこれらはかなり安定な結晶として得られ、いずれも200℃以上の高い融点を示しその温度でもあまり分解しなかった。また、^1H NMRにおいて反磁性環電流による低磁場シフトが見られ、例えばフェニル基のオルト位のプロトンでは通常より約2ppmも低磁場に観測された。その他の分光学的データも、[18]アヌレン骨格が等価な極限構造式の間の共鳴によって良く表現されることを示しており、2が高い芳香族性を有することがわかった。さらに2aのX線結晶構造解析により、[18]アヌレン骨格がほぼD_<6h>の対称性を持つことが明らかとなった。化合物1は拡大されたベンゼンとして様々な応用が期待される。また本研究で用いた分子設計は非常に単純な考えに立脚しており、同様の方法で新しい化合物群が設計でき、今後それらに対する様々な展開も期待できる。
著者
中島 寛
出版者
九州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

本研究では、界面層制御した高品質な絶縁膜/Ge構造形成技術を確立すると共に、Ge-On-Insulator (GOI)チャネル層の物性を解明することを目的としている。平成21年度は、(1) 絶縁膜/Ge構造形成、(2) GOIチャネル層の結晶性評価、の研究を実施し、以下の成果が得られた。(1) Ge-MOS構造として、Ge表面をSiO_2/GeO_2の2層膜でパッシベーションする手法を検討した。GeO_2及びSiO_2膜の役割はそれぞれGe表面のダングリングボンド終端化及びGeO_2中への不純物(水や炭化水素)混入防止にある。この2層パッシベーション膜を大気暴露無しで形成する手法を開発した。この新規な界面層形成手法を用いれば、低い界面準位密度(4×10^<11>cm^<-2>eV^<-1>)のMOS構造が実現できる。この独自技術は良質なGe-MOS界面構造形成のための手法として有用であることを実証した。(2) Ge濃度が15~90%のSiGe-On-Insulator (SGOI)およびGOIを酸化濃縮法で作成した。これらの試料にリン(P)を固相拡散してソース/ドレインを形成し、バックゲート型MOSFETを作成した。試料の電気特性から閾値電圧を求め、イオン化アクセプタ濃度(NA)を算出した。その結果、NAのGe濃度依存性は、Hall効果法で求めた正孔濃度(p)の依存性と異なることを示した。即ち、低Ge濃度領域では、NAが10^<16>cm^<-3>以上であるのに対して、pは約2桁低い。一方、高Ge濃度領域では両者はほぼ一致する。この相違は、酸化濃縮過程で生じる欠陥が深いアクセプタ(A)として働き、Ge濃度の増加に伴い、Aのエネルギー準位が価電子帯側ヘシフトする事で説明できる。このエネルギーシフトをホール効果の温度依存性から明らかにした。
著者
堀 憲次
出版者
九州大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

本研究では、モデル化合物N-formylaziridine及びそのプロトン付加体に関して極限的反応座標(IRC)を含めた詳細な非経験的分子軌道(MO)計算を行い、1-アシルアジリジンの異性化反応機構を理論的に検討することを目的とした。これに関連して、N-formylaziridineと同じくアミド部分を有するアジリジン誘導体、1-(R)-α-methoxy-α-trifluoromethylphenyl-acetyl-(S)-2-methyl-aziridineにおいて実験を行い、MO計算結果と比較検討を行った。その結果以下のことが判明した。(1)強い求核種が存在しない反応条件では、低い活性化エネルギー(38.9kcal mol^<-1>)の遷移状態(TS)を経て反応は進行する。このTSを経る反応は、反応前後でアジリン環の不斉炭素の立体を保持するS_Ni機構であることが、IRC計算により確認された。(2)スキーム1に示す反応では、メチル基ヲ持つC-N結合が選択的に解裂する。このモデル反応えは、28.2kcal mol^<-1>、置換基の無いC-N結合の解裂には、39.8kcal mol^<-1> の障壁があると計算された。両者の結果は良い一致を示している。(3)強い求核種(本研究ではCl^-をモデルとした)によるアジリジン環の開環と線型中間体の生成反応の活性化エネルギー(14.0kcal mol^<-1>)は、S_Ni機構のそれに比べて小さいと計算された。従って、強い求核種の存在下では、線型中間体の生成がS_Ni機構に優先して進行する。しかしながら、カルボニル酸素による2回目のS_N2反応は、高い活性化エネルギーを有する(45.4kcal mol^<-1>)と計算された。この結果は、実測された最終生成物の遅い反応速度と良い一致を示している。
著者
下田 慎治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

原発生胆汁性肝硬変(PBC)は慢性非化膿性破壊性胆管炎を病理学的特徴とする臓器特異的自己免疫疾患である。今回胆管上皮細胞破壊におけるToll様受容体(TLR)リガンドとNK細胞の役割を明らかにした。TLR3リガンド刺激で単球から産生されるIFN-aの存在下で、TLR4リガンドで刺激されたNK細胞が、自己の胆管上皮細胞を破壊する事が明らかになった。実際に肝臓由来の単球からのIFN-a産生はPBCにおいてその他の疾患対照群と比較して亢進していた。また免疫染色の結果から破壊された胆管周囲にCD56陽性のNK細胞がPBCでより多く散在している事が明らかとなった。次にマウスモデルを用いて、病初期の免疫誘導にNK細胞のような自然免疫攻撃細胞の果たす役割を明らかにした。NK細胞を除去すると抗ミトコンドリア抗体の産生や自己抗原反応性T細胞からのサイトカイン産生が抑制された。しかし門脈域の炎症は対照群と比較して大きな差は認め得なかった。これらの結果は、PBCの病因病態は多段階あり、NK細胞は免疫寛容の破綻に関与している事が示唆された。
著者
周 金枝 (2007) 周 金枚 (2006)
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究では、防火服着用時の生体負担軽減の方策を探求するため、異なる防火服等着衣時の生体負担の相違について検討することを目的に、消防隊員及び学生を対象に、暑熱ストレス軽減及び活動性の向上をめざした改良試作防火服、試作冷却装置および半ズボンなど異なる着衣条件下で、高温に設定された人工気候室内でトレッドミルによる運動を行った際の温熱負担について、生理・心理的指標の両面から検討した。さらに、改良した防火服、冷却装置及び半ズボンなど異なる着衣条件における着脱衣感、快適性、動作性について質問紙等を用い検討した。トレッドミルによる運動負荷実験では、試作防火服及び試作PCMの着用により、平均皮膚温の上昇がやや抑制されるこが示されたが、直腸温、心拍数及び体重減少量においては着衣条件間に有意な差は見られなかった。一方、心理反応においては、現防火服は、試作防火服及び試作冷却装置の着用よりも、主観申告は、「暑い側」、「不快側」、「湿っている側」になった。さらに、試作防火服、試作冷却装置及び半ズボンにおける活動性について評価したところ、消防訓練活動を行った際に、足の上げやすさの項目で、試作防火服、試作PCM、半ズボン着用条件の方が評価が高かった。しかし、運動負荷テストまたは消防訓練活動を行った際の動作性は、現防火服着用時に比べ、試作防火服、試作冷却装置、半ズボン着用時は、上半身の動きにおいて評価が悪く、脱衣感のアンケートにおいても現防火服の方が軽いという評価であった。これらのことから試作防火服及び試作冷却装置の使用が運動時の身体的温熱負担軽減に大きく関与することはなかったが、心理的な暑さ、不快感の軽減には効果があることが示された。
著者
高崎 講二
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究では、非定常噴霧燃焼におけるNOx制御方法として、水添加燃料を提案し、まず燃料噴射システムの改良と、燃料と水の噴射率測定装置の製作を行った。燃料噴射システムは、着火に至るまでは燃料のみを噴射し、着火後に水添加した燃料を噴射できることが必要である。本研究では、等圧吸い戻し弁付きの燃料噴射ポンプを用意し、毎サイクルの燃料噴射終了後、噴射ノズルホルダーの燃料通路に水を送り込む装置をそれに付加した。これにより、燃料通路からノズル先端までの燃料が先に噴射され、その後に水添加された燃料が噴射されるようにした。燃料と水の噴射率測定装置は、ボッシュ式の噴射率測定装置では燃料と水の区別ができないため、まったく新しい発想のものが必要となる。本研究では、東工大方式回転円盤形噴射率測定装置が適当と考え、それを改良した回転スリット式のものを製作した。この装置で噴射率を測定した結果、噴射期間中、水が好ましい形で燃料中に分布していることが予想されるデータが得られた。さらに、実際のディーゼル機関のような高温・高圧の燃焼室内では、水添加による噴霧の到達距離の違いが燃焼に大きな影響を及ぼす。そこで、大型のディーゼル機関を使用して燃焼の可視化を行い、噴霧の運動量と到達距離の関係を明らかにした。以上の実験から、この方法による燃焼制御の有用性が明らかとなった。
著者
藤崎 清孝
出版者
九州大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

Ka帯を用いた大容量・高速な衛星通信を簡易なシステムで実現するための基礎研究として,昨年度に引き続き,今年度も以下の研究を行った.(1)伝搬路中の媒質を不均質乱流媒質とみなし,ランダム媒質中の多重散乱理論を適用して,ビーム波がスポットダンシング状態にある状況下で伝搬路媒質がビット誤り率に及ぼす影響の解析を行った.これまでに電離層媒質がKa帯に与える影響は少なく,主に大気乱流が影響を与えることが明らかになっているが,今回,より詳細に解析を行った結果,地上のアンテナの仰角が低くなるほどに,大気媒質中を伝搬する距離が長くなるため,乱流媒質の影響がより顕著となり,この大気乱流による損失を十分に考慮した回線設計が必要であることが示された.また,数値解析で用いる大気乱流の揺らぎ特性を評価する相関関数として,ガウス分布モデルとコロモゴルフ型乱流モデルの二つのモデルを用いて解析を行ったが,2つの結果は大きく異なっており,この伝搬問題の解析を行う場合には,大気乱流を表現しているコロモゴロフ型の乱流モデルを用いることが重要であることが明らかになった.実際の伝搬では,これ以外にも様々な要因が入り込んで来るため,今後,これらの影響を加えたより詳細な解析が必要となる.更に,(2)本研究室の所有する複数の衛星通信システムを用いて,様々な気象条件下のKu帯の伝搬データおよびひまわりやアメダスなどの気象情報を取得し,気象と電波伝搬状況との相関について評価を行った.実験で取得されたデータは膨大な量であり,現在も解析を進めている状況であるが,これまでに得られた結果より,気象データより伝搬状況を予測できる可能性があることが示された.これらのデータの解析は今後も引き続き行い,電波伝搬環境の気象予測の可能性について検討していく.
著者
小黒 康正 浅井 健二郎 小黒 康正 杉谷 恭一 小川 さくえ 増本 浩子 桑原 聡 恒吉 法海 東口 豊 恒吉 法海 福元 圭太 杉谷 恭一 小川 さくえ 坂本 貴志 増本 浩子 濱中 春 山本 賀代 岡本 和子 北島 玲子 桑原 聡 クラヴィッター アルネ オトマー エーファ
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ドイツ現代文学は、言語に対する先鋭化した批判意識から始まる。とりわけホーフマンスタール、ムージル、カフカの文学は、既存の言語が原理的機能不全に陥っていることを確信しながら、言語の否定性を原理的契機として立ち上がっていく。本研究は、ドイツ近・現代文学の各時期の代表的もしくは特徴的な作品を手掛かりとして、それぞれの作品において<否定性>という契機の所在を突き止め、そのあり方と働きを明らかにした。
著者
長田 博文 舟木 直久 種村 秀紀 白井 朋之 香取 真理 乙部 厳己 篠田 正人 矢野 裕子 矢野 孝次
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、2次元クーロンポテンシャルに対しても適用可能な,干渉ブラウン運動の構成に関する一般的構成定理とSDE表現定理を確立した.その結果をGinibre点過程, Dyson点過程, Bessel点過程というランダム行列に関する代表的な測度に対して適用し,無限次元確率力学系を記述する確率微分方程式を求めて,解いた. Ginibre点過程のPalm測度の特異性を研究し,通常のGibbs測度と異なる興味深い結果を得た.更に、2次元ヤング図形の時間発展モデルを構成し,そのスケール極限を求めた。
著者
末 勝海 中尾 博美 陶山 正憲
出版者
九州大学
雑誌
九州大学農学部演習林報告 (ISSN:04530284)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.235-269, 1973-03
被引用文献数
1

Serious damages occurred in the area of headwaters of Hitotsuse River in Miyazaki prefecture extending 10,000 ha., which areas are those including the Miyazaki District University Forest of Kyushu University caused by the typhoons No. 19 and No. 23 in 1971. Land slide damages as much as 400 places were recognized by means of aerial photographic interpretation. Total amount of the landslides was estimated about 200,000 m^3, countless forest roads were cut, and two check dams were destroyed. It is thought that most of these damages are due to the unprecedented storm rainfalls amounting to 1,300 mm and 700 mm in No. 19 and No 23 typhoons respectively, but it is recognized remarkable difference of damaging degrees in various districts and it is construed from the difference of natures in various soils. Damages are developed remarkably in the area of topographic features where gradients show the angle of 30~40 degrees. From our investigations on land slides occurred in cutting slope of forest road between Okochi and Ozaki, we recognized most of land slides tend to arize in newly earthworked zones and within 50 m from line of valley center. Considering roadway diagraph problem, failure percentage has been increased at the places such as the length of cutting slope of 4.77m, gradient of ground surface of 31.5 degree and cutting area of 13.54 m^2. Highest failure percentage was recognized in the conditions as follows: length of cutting slope 8.50 m, gradient of ground surface 42.5 degree, cutting area 32.5 m^2. In the Iwaya valley consisted of granite bed mostly, a land slide occurred in the scale such as inclines of 300 m, width of 50 m and soil amount of 50,000 m^3. Land slide flew down as debris flow having velocity of 4~11 m/sec and it caused considerable erosion at the place of steep slope of valley floor, but at gentle slopes contrary made the debris depositin. One check dam seemed to have been damaged gradually for several years, another was thought damaged by single attack of debris flow, and our two dimension calculation of stability indicated the area of cross section was insufficient for debris flow.
著者
末 勝海 垣内 重三郎
出版者
九州大学
雑誌
演習林集報 (ISSN:03760707)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.13-26, 1955-03
被引用文献数
1

To investigate the landslide and mud-and-rock flow damages caused by Nos.5,12 and 15 Typhoons of 1954, a on-he-spot survey was made of the bar{O}k bar{o}chi District, Sh bar{i}ba-mura, Miyazaki Prefecture.(Fig.1). The area of this district is 5700 ha, and the geological formation is of the mesozoic system. The relief-grade per l km square has a mean value of 360 m (Fig.2). The damages were mainly due to the rainfall of Typhoon No. 12, which amounted to 1411.1 mm. Phtos 1-7 and Figs.3 and 4 show the traces of mud-and-rock flows. The total volume of debris produced by the landslides shown in Photos 8-13 was about $2-3 \times$10^5$ $m ^3$, and it was deposited on the bed of the ravine as shown in Photos 7 and 14. Fifteen lives and thirty-four houses were lost in the flood.
著者
重松 敏則 朝廣 和夫
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

過疎により閉校となった、福岡県八女郡黒木町の笠原東小学校を事例として、自然体験や農山村生活の体験、農林作業体験、ならびに、地域資源を活用した循環型共生生活を実体験する、滞在型環境教育の拠点として活用することを意図し、地域社会および都市域の教育機関やNPO等と連携した拠点形成プログラムの開発と、その過程のビデオ記録等による情報発信システムの制作を目的に行った。まず、地域の自然資源を活用した環境共生施設として、五右衛門風呂およびオガクズ・バイオトイレを建築廃材や間伐材を活用して設置するとともに、薪ストーブの設置、ならびに、グリーンファンドの助成による太陽光発電パネルおよび小型風力発電機を設置した。教室を宿泊室、家庭科室を炊事室、職員室を食堂兼交流談話室等として活用し、以上の環境共生施設を使用する2泊3日の農林体験プログラムを、小・中・高校生、ならびに、大学生、社会人を被験者として、計8回実施した。農林体験メニューとして、・スギ・ヒノキ林の間伐と枝打ち、竹林の伐採と竹細工、稲刈りや菜種の播種、苗の定植等を用意して行った。これらの体験プログラムの前後にアンケート調査を実施するとともに、写真やビデオカメラで撮影記録した。調査・分析の結果、1.里山や棚田に囲まれた木造の廃小学校は、地元住民の協力を得られやすいことからも、環境共生教育の拠点として打ってつけであること、2.小・中・高校生や大学生、社会人ともに、2泊3日の農林体験合宿を楽しんだこと、3.同世代だけよりも、異世代が混合して参加するほうが好評で、作業能率も高まったこと、4.ほとんど全ての被験者が、参加したことや農林体験をしたことに満足し、充実感を得ていること、5.機会があれば再度参加したいと希望していること、さらに、6.参加体験することによって、農山村や農林業に対する興味や理解を深めていることが明らかとなった。また、7.航空写真の解析と現地調査により、研究対象地で活用できる森林・農地等の地域資源の評価と分布を明らかにした。以上の成果に基づき、農山村の地域資源を活用した環境共生教育に関する拠点形成プログラムを策定するとともに、撮影記録の編集によるDVDへの録画と、ホームページの開設による情報提供のシステムを構築した。
著者
平松 和昭 黒澤 靖 原田 昌佳 森 牧人 福田 信二 黒澤 靖 原田 昌佳 森 牧人 福田 信二
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,窒素・リンを対象に,都市化・混住化が進むアジアモンスーン地域の農業流域における流域水環境統合管理モデルの開発を目指した.流域モデル構築にはGIS技術を利用し,DEMや土地利用,河川網,点源などの詳細な流域情報を統合することで分布型モデルを開発した.また,定量化が容易でない排出負荷や閉鎖性水域の水質動態のサブモデルには,適宜,人工知能技術や時間-周波数解析手法を導入し予測精度を向上させた.モデルの構築に当たっては,九州最大の河川流域で,流域内に多様な土地利用が拡がる筑後川流域と,福岡市西方に位置し,混住化が進行している農業流域である瑞梅寺川流域という,流域規模・特徴の大きく異なる二つの流域を精査流域と位置付け,個々の素過程の定量化やサブモデルの検討,全体モデルへのネットワーク結合方法の詳細を検討した.
著者
黒瀬 大介
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

日本各地のイタドリ群落において病原菌の探索を行った結果,さび病菌2種,及び斑点病菌1種が優先的に分布していることが明らかとなった.しかしながら,さび病菌2種については,異種寄生性あるいは英国産自生植物に対して病原性を示すことが判明した.一方,斑点病については年間を通した経時的な定点調査に基づき,病斑が初春から群落全体にわたり急速に形成され,梅雨時には激しい病徴を呈し,晩秋には全ての罹病葉が落葉することが確認された.本病原菌の系統分類学的な位置づけを詳細に解析し,新たにイタドリ斑点病菌Mycosphaerella polygoni-cuspidatiとして再記載するとともに,本属関連糸状菌1種を新種(M.shimabarensis)として提案した.さらに斑点病菌の生活環は不完全世代をもたず偽子嚢殻及び精子器のみを有し,群落内で完結することを解明した.子嚢胞子の形成はin vivoで認められず,菌糸体が感染能を示すことから種源としての利用の可能性が想定された.そのため斑点病菌菌糸体のイタドリに対する最適発病条件を提示するとともに,イタドリに特異的に病原性を示すことを実証した.これらの結果について取り纏め,論文発表を行った.また国内学会では、4月に平成20年度目本植物病理学会大会(松江),7月に日本微生物資源学会第15回大会(千葉),3月に平成21年度日本植物病理学会大会(山形)に参加した.また8月には9th International Congress of Plant Pathology(Torino,Italy)国際学会にも参加した。
著者
小川 由紀子
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究ではカーボンナノチューブ(CNT)と糖鎖を分子レベルで複合化させることを目的として、始めに非水系溶媒中での酵素反応による糖鎖合成を検討し、次にCNTと親和性のある両親媒性糖鎖誘導体の合成を行った。オリゴ糖とアゾベンゼンからなる両親媒性糖鎖誘導体を用いることで、CNTの高効率分散と表面の糖鎖修飾を達成した。
著者
高杉 紳一郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

医療介護現場での移乗動作には,複雑で3次元的な身体操作が必要なため,患者や高齢者の転倒リスクと,介護者側の身体負担が問題となっている.我々は安全かつ容易な移乗法を創案するとともに,専用の移乗・移動支援装置を設計し,さらに日常生活活動をも支援できる電動車いすロボットとして開発を進めた.最終年度までに試作機を製作して試乗テストや動作解析を行い,従来製品と比較しつつ,製品化へ向けて改良を行った.
著者
直江 眞一
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

13世紀イングランドで作成された裁判実務書の分析を通して、国王裁判所の訴訟手続と教会裁判所の訴訟手続の比較検討をおこなった。具体的には、『訴訟および法廷の書』(1写本のみ伝来)と「聖俗の法廷における訴訟手続』(3写本が伝来)を詳細に比較分折することによって、在地レベルにおいて聖俗両裁判手続の間で一定の関連性が認められること、また裁判実務書は作成者それぞれの関心に応じて内容が一様ではないことを明らかにした。