著者
小杉 素子 馬場 健司 田中 充
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.I_167-I_176, 2020 (Released:2021-01-18)
参考文献数
19
被引用文献数
1

2017年と2020年のオンライン質問紙調査データを用いて,地球温暖化に対する態度の特徴により回答者を細分化し,人々の関心の程度や態度,対策行動の実施等についてどのような変化があるかを調べた.その結果,危機感が強く対策行動に積極的に取り組む人々(警戒派: 20%),関心が低く明確な意見を持たない人々(無関心派: 33%),懐疑的で対策の必要性を感じない人々(懐疑派: 6%),内容によらず質問全般に同意する傾向の強い人々(肯定派: 10%)は割合に増減があるが3年前と変わらず存在することが示された.他方,質問全般に否定的に回答する傾向の強い人々はまとまりとして抽出されず,警戒派と近い認知や態度を持つが対策行動を伴わない人々(用心派: 30%)が新しく抽出された.最大のボリュームである無関心派は依然として情報提供の重要な対象であると同時に,新しく出現した用心派は回答者の3割を占めており既に関心もリスク認知も高いことから,この人々に対して行動を促すアプローチの検討が重要と考えられる.
著者
西田 修三 中谷 祐介 広瀬 太芽
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_1039-I_1044, 2019 (Released:2019-10-17)
参考文献数
10
被引用文献数
1

港湾など高い閉鎖性を有する都市沿岸海域の水環境再生には,流入負荷の削減だけでなく,浚渫・覆砂などの底質改善や人為的な流動制御による水交換の促進が必要と考えられる.本研究では,高閉鎖性海域である堺旧港を対象に,水質・底質特性の把握と外部擾乱による水質変動の解析を行った. 港内では夏季には密度成層が形成され,表層で過飽和,底層で貧酸素化が生じていた.表層ではCSOの影響により高濃度の有機態窒素・リンが,底層では底泥からの溶出の影響による高濃度の無機態栄養塩が検出された.台風21号来襲時には港内容量に相当する港外水の流入が生じ,暴風と高潮に襲われたにも拘わらず,港内水質の完全混合には至らなかった.この港域の水環境は底質に強く依存しており,水質改善には浚渫や覆砂などの底質改善が最も効果的であると考えられた.
著者
宮谷台 香純 谷口 綾子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.II_798-II_811, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
33

自動運転システム(以下,AVs)の実証実験や運転支援技術の実装に伴い,将来利用者となる人々のAVsに関する議論や課題も多様化していると考えられる.今後,AVsの社会的受容性を検討するうえで,これらを把握する必要がある.そこで,マスメディアの一つである新聞による報道に着目する.新聞は議題設定効果を有していると言われており,新聞分析では人々が抱える議題を明らかにできる.本報告では,AVsについて新聞が社会に提供した議題を明らかにし,AVsの開発・導入の議題の変遷を把握することを目的とする.読売新聞を調査対象とし,「自動運転」の登場よりAVsに関する記事を収集し,質的分析を行った.その結果,国際競争で勝つために開発するといわれる背景にガラパゴス携帯の失敗があること,技術への過信が危惧されていることなどが明らかとなった.
著者
中村 陸哉 神田 佑亮
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.II_241-II_251, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
12

COVID-19の感染拡大による外出自粛に伴い,移動需要が急激に低下している.我が国の公共交通業界は収入が大きく落ち込み,公共交通サービスの提供の継続が困難な状況に直面している.公共交通の受けた影響の規模を把握するために,経営状況への影響度を多面的に把握する必要がある.本研究では,全国の上場交通事業者が開示する決算資料を集計し,営業収益や営業利益・損失の推移,雇用調整助成金の受取状況を分析した.その結果,交通事業者の危機的状況は加速しており,赤字・減収に対する支援も不十分であることが示された.
著者
渡会 由美
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
環境システム研究 (ISSN:09150390)
巻号頁・発行日
no.25, pp.345-354, 1997

In Japanese Islands, the irrigated agriculture, which was the historical turning point for the relation between nature and human, started between the Jomon and Yayoi periods.<BR>The purpose of this article is to study the change of the ancients living and production styles and their society system from the viewpoint of the natural environment especially for the water utilization. Then, the economy system for the modern society will be discussed incomparison to the ancient society system.<BR>Here are summary from this article:<BR>(1) The economy system in the Jomon period was constant economy that people hunt or reap as much as they need, which differs from growth economy that assumes surplus production occurred after the Yayoi period.<BR>(2) The society and economy in the Jomon period balanced as long as the amount of natural resources required was kept within the reproducible one.
著者
柿本 竜治 上野 靖晃 吉田 護
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_57-I_68, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
29
被引用文献数
2

「自然災害に対するリスク認知が高くても,そのリスクへの防護行動を取らない」という自然災害リスク認知のパラドックスの存在が指摘されている.このパラドックスの存在は,自然災害リスクの認知を向上させるだけでは,防護行動を促すことが難しいことを意味する.これまでに,防護意図や防護行動の促進および阻害要因を抽出する研究は数多く行われているが,抽出された要因が防護意図や防護行動に与える影響は結果が異なっている.そこで本研究では,リスク認知のパラドックスの解消に向けて,同じ質問項目内容のアンケート調査を6地区で行い,個人の減災行動の地域性や共通性を検証した.その結果,非常持ち出し品の備えを促す上で,リスク認知改善よりむしろ反応コストに関する対処評価認知の改善が地域に共通して有効であることが示唆された.
著者
柿本 竜治 上野 靖晃 吉田 護
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_51-I_63, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
70
被引用文献数
2 6

「自然災害に対するリスク認知が高くても,そのリスクへの防護行動を取らない.」といった自然災害リスク認知のパラドックスの存在が指摘されている.自然災害リスク認知のパラドックスの存在は,自然災害リスクの認知を向上させるだけでは,そのリスクへの防護行動を促すことが難しいことを意味する.そこで,本研究では,既往研究の中に見られる自然災害リスク認知や減災意識と防護行動との乖離の要因を抽出し,自然災害リスク認知パラドックスの存在を確認する.そして,防護動機理論の枠組みを援用して,研究の視点や枠組みを整理することを通じて,個人の自発的な減災行動の包括的な理解を促すことを目的とする.また,同時に阿蘇市および南阿蘇村で実施された予防的避難の実行状況と自然災害への意識の分析から意識と行動の乖離の要因を探る.
著者
島田 洋子 松岡 譲
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_183-I_191, 2012 (Released:2013-02-13)
参考文献数
38

発展途上国において室内での固形燃料の燃焼により発生するPM2.5による健康影響が懸念されている.本研究では,インド29州の都市域と農村域を対象に,家庭内での燃料の燃焼によって排出されるPM2.5による室内空間滞在中の個人暴露濃度を,家庭内の燃料消費量の用途別の燃料種使用割合,世帯や住居に関する統計情報の地域別の詳細なデータを用いて推計した.その結果,調理に薪を使用する割合の多い農村域の台所滞在中の個人暴露濃度が都市域に比べて大きく,また,35~64歳の無職女性の台所滞在中の個人暴露濃度が他の個人属性集団よりも高く,Rajasthan州農村域での35~64歳の無職女性の暴露濃度が最も高く1033μg/m3との結果を得た.男性は女性より低いが65歳以上の無職男性の室内滞在中の個人暴露濃度は25~34歳の有職女性より高かった.
著者
玉森 祐矢 藤生 慎 高山 純一 西野 辰哉 寒河江 雅彦 柳原 清子 平子 紘平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.2, no.J2, pp.841-847, 2021 (Released:2021-11-17)
参考文献数
18

日本の少子高齢化は世界に類を見ない速度で進展しており,我が国の医療費は増加の一途をたどっている.このような状況が続けば,日本の医療保険制度の維持ができなくなる.また,日本では生活習慣病の急増を受け,「第4次国民健康づくり対策」が策定されている.現在,高血圧症や糖尿病といった生活習慣病が増加しており,そのような生活習慣病を早期発見する機会である特定健康診査受診率が伸び悩んでいることが課題となっている.そこで,本研究では,国保データベース(KDB)を用いて,まず,生活習慣病と健診回数の関係を示し,健診の効果を示唆する.また,生活環境との関連を調べるため,地域の現況や特性を考慮した分析を行い,健康課題・健診率の地域差を明らかにし,地域別の健康課題や健康な地域の特性について把握する.
著者
林 勇朔 浜岡 秀勝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_653-I_663, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
6
被引用文献数
1 2

単路部横断では,高齢者は横断時間が長いため,横断開始のタイミングを誤り,横断後半で車両との事故の危険性がある.そこで本研究では,安全島を用いた二段階横断が有効と考えている.安全島により,横断歩道を一度に横断せずにすみ,安全島で一時停止もできる.また,横断の前半部は右側,後半部は左側のみの確認で良いため,高齢者でも横断タイミングを誤らずに横断しやすくなる.以上より,二段階横断にすることで,歩行者の安全性が向上すると考えられる.仮説を検証するために,調査対象区間にてビデオを撮影し,歩行者,車両の到着時間を取得した.また,これらデータを用いてシミュレーションを行い,その場所に適した制御方法を明らかにした.シミュレーションの結果,5つの制御方法のうち,安全島の設置が有効であると明らかになった.
著者
大口 敬 山口 智子 鹿田 成則 小根山 裕之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_1175-I_1183, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
8

交通信号制御における切替り時の損失時間は,交差点円滑性指標の遅れに影響を与え,また交通安全上も重要である.切替り時における損失時間の開始と終了(有効青時間の終了と開始)のタイミングは,これまでほとんど研究されていない.損失時間を厳密に評価することが,より安全で効率的な交通信号制御に繋がる.本研究では,青丸表示から右折矢印表示への切替り時に着目し,飽和交通流,最終車と先頭車の通過タイミング,および青丸表示時に右折車が停止線を越えて交差点内に滞留するスペース長などの幾何構造を調べ,損失時間と有効青時間を分析する.幾何構造の異なる5交差点の分析から,右折専用現示前には損失時間ではなく有効青時間が重なるゲインが存在することを実証し,このゲインの大きさを交差点形状から推定する方法を提示する.
著者
堺 淳一 運上 茂樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.306-316, 2009 (Released:2011-04-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

被災発見後に速やかに被災診断を行い,余震の影響を適切に考慮して残存耐震性能を評価する手法とともに,即効性のある復旧工法を用いて迅速かつ合理的に機能回復を図るための応急復旧技術の開発が必要とされている.本研究では,柱基部で曲げ破壊する鉄筋コンクリート橋脚を対象として,被災後の余震の影響を調べるとともに,迅速な応急復旧工法に対する要求性能を整理し,即効性のある応急復旧工法を提案し,その効果を評価するために振動台加震実験を行った.即効性のある復旧工法としては,速乾性の材料を用いた炭素繊維シートによる修復と機械式に定着された繊維バンドによる修復を提案し,これらの工法により,被災前の状態に比べて剛性は低下するが,曲げ耐力,変形性能ともに損傷前と同程度またはそれ以上の性能が確保できることを示した.
著者
渡辺 健 中村 麻美 石田 哲也 渡邊 忠朋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造) (ISSN:21856567)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.105-120, 2022 (Released:2022-03-20)
参考文献数
36
被引用文献数
1

コンクリート構造物の様々な設計条件に対応するために,従来指摘されていた配合や外気相対湿度に加えて,混合セメント,骨材収縮ひずみおよび水掛かりの影響を入力可能な,コンクリートの収縮ひずみ予測式を構築した.予測式は,3次元材料-構造連成応答解析システムDuCOM-COM3に基づき定式化しており,構造物を想定した部材厚や,水結合材比の低いコンクリートも含めて,収縮ひずみの長期材齢への適用性を確保している点に特徴がある.また,高炉セメントコンクリート(B種)を用いた供用中のプレストレストコンクリート(PC)桁に生じているコンクリートのひずみおよびPCラーメン橋のたわみなど,コンクリートの収縮が一因とみられる現象が,予測式を用いて説明されることを確認した.
著者
田中 健路
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_386-I_390, 2011

On 15 July 2009, a meteotsunami occurred at Tsushima Strait and with the flood damage at Sasuna community area in the west of Tsushima Island. This study analyzed the meteorological conditions in relation to the meteotsunami event. The baiu front system moved south from Korean Peninsula to the north Kyushu and San-in area in the morning of 15 July, accompanied with the strong cold downdraft. The pressure disturbance occurred by the acoustic gravity mode 100-120 km west from Tsushima Island in the middle of the strait, where the surface moist air from the southwest was lifted by cold downdraft. The cycle of the pressure disturbances were around 10 minutes, which is nearly same as the eigenoscillation of the small bays of the Tsushima.
著者
井山 繁 西岡 悟史 宮田 正史 米山 治男 辰巳 大介 木原 弘一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_809-I_814, 2017 (Released:2017-08-22)
参考文献数
9

船舶が係留施設へ接岸または離岸する際の繋離船作業(船舶と陸上作業員の間で係留ロープを受け渡す作業)は港湾利用を支える基礎的な活動であるが,何らかの要因により係留ロープの切断事故が発生すると,繋離船作業等に重大な危険を及ぼす懸念がある.また,繋離船作業のうち陸上作業員が係留ロープを係船柱に掛け外しする作業では,それらの作業が安全かつ効率的に行われるように改善を図っていくことは重要な課題である.本研究は,繋離船作業の安全性の向上を図ることを目的として,過去の繋離船作業における係留ロープの破断事故の整理・分析を行うとともに,陸上作業員からのヒアリング等を踏まえて,繋離船作業の安全性に影響の大きい係留施設の附帯設備(係船柱,防舷材,車止め等)の設計の際,配慮すべき事項について検討したものである.
著者
渡辺 千賀恵
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.413, pp.97-106, 1990
被引用文献数
1 1

In this paper the causes of decrease in the number of bus passengers are analyzed using the data of public bus enterprises in Japan. Although the spread of private-car owners looks like one of the most important factors, it is nothing but a primary one. The passengers' behavior has been influenced more directly by the fare rises. The passengers decrease consists of the short-term one and the long-term one which have their own mechanism. The latter has begun at a &ldquo;turning point&rdquo; when the fare level overtook the consumer's price level. After that point there is a correlation between the rate of fare rise (<i>X</i>) and the rate of decrease (<i>Y</i>) as shown by <i>Y</i>=1-exp[-0.47<i>X</i>].
著者
平石 哲也 長谷川 準三 黒木 啓司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海洋開発論文集 (ISSN:09127348)
巻号頁・発行日
no.14, pp.275-279, 1998

Long period waves often cause large surging motion of moored vessels by resonance to naturaloscillation of the mooring system composed of the elastic hawsers and ship body. In order to preventthe amplification of long period waves in harbor by the reflection, the wave absorbing beach isproposed. The artificial beach with mild slope can reduce the reflection coefficient. The appropriateinstallation planning for beaches in harbor is discussed on basis of the results of numericalsimulation.