著者
吉岡 健 坂本 登 川口 浩二 永井 紀彦 仲井 圭二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_808-I_813, 2016 (Released:2016-08-30)
参考文献数
5

北九州市沖海域では現在,洋上風力発電設備の合理的な計画・設計に資することを目的とした実証研究が進められている.本稿では特に他海域(ナウファス各地点)との比較に主眼を置き,洋上風車の維持管理に重要となるアクセス性すなわち静穏度について,太平洋側と日本海側で季節によって大きな違いがあることを示す.続いて,支持構造物の耐波・耐風設計に重要となる両作用の同時生起性について,擾乱毎の有義波高と10分平均風速の相関係数を調べるとともに,両作用の簡易な組合せ方法を提案する.
著者
山田 利紀 藤田 凌 田上 雅浩 山崎 大 平林 由希子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.I_27-I_32, 2021 (Released:2021-12-23)
参考文献数
15
被引用文献数
2

近年, 気候変動に伴う洪水リスクの将来予測が様々な研究において行われているが, それらには不確実性が存在する. 既往研究では気候モデルやシナリオの違いによる洪水リスクのばらつきが指摘されているが, その他にモデルによる不確実性の評価も必要である. 本研究では河川モデルCaMa-Floodの感度実験を行い, 近年の衛星観測や数値計算法の発展による全球河川氾濫モデルの更新や標高データの改善が世界の洪水予測や全球の洪水リスクの推定にどの程度影響するか調査した. その結果, 衛星観測の誤差に起因する標高データの違いが浸水分布に大きく影響することが判明した. また, モデルの物理過程では, 洪水流が河川高水敷を一時的に流れる過程が最も浸水面積の違いに影響を与え, 多いところでは約5.5%の違いを示した. また, 全球の洪水に暴露される人口は, モデルの物理過程や入力データの違いで最大14%異なることも判明した.
著者
神谷 大介 赤松 良久 赤星 拓哉 吉田 護
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.143-149, 2021
被引用文献数
1

<p> 豪雨災害時に避難行動を起こす一つの重要な情報に避難勧告等の避難情報がある.また,近年の災害では高齢者等の要配慮者が利用する施設の被災が報告されており,この対応が喫緊の課題である.要配慮者利用施設においては,福祉避難所等の他の施設への避難もしくは垂直避難を行う必要がある場合も存在する.本稿ではコロナ禍において発生した令和2年7月豪雨を対象に,防災気象情報と避難情報の関連を整理し,要配慮者利用施設における避難の実態を調査した.この結果,避難準備・高齢者等避難開始情報はあまり発表されていないこと,河川水位を避難の判断基準としていた要配慮者利用施設では避難の判断に苦慮していたこと,避難には自治会や自治体との話し合いが重要であること等が明らかになった.</p>
著者
周藤 浩司 杉恵 頼寧 藤原 章正
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
no.15, pp.655-662, 1998

フレックスタイム制度の導入に伴う通勤者の交通行動は時間的に変動することが予想され, その過程を明らかにするには交通行動の動学的分析が必要となる. 本研究は通勤者の時間選択行動の変化を時間軸に沿って分析することを目的とする. まず広島市のある企業で実施されたフレックスタイムシステムの導入前後で2時点パネル調査を行い, 会社到着時刻選択行動を2時点で比較した. その結果会社到着時刻の変化は交通所要時間, 交通手段, 配偶者との帰宅時間差が大きく影響を及ぼすことが明らかになった. 次に会社到着時刻の1年間の時系列データを用いて, 制度導入後の交通行動の時間変化を分析した結果. 通勤者は新しく導入されたフレックスタイム制度に対して交通一活動パターンを調整するのに約3ヶ月を要することが示された.
著者
相原 良孝 木村 一裕 溝端 光雄 高宮 進 前川 佳史 清水 浩志郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
no.18, pp.963-970, 2001

心身機能の低下した高齢ドライバーにとって, 道路案内標識は, 認知や判断の正確性, 迅速性を最も厳しく求められる標識である。本研究では, 高齢ドライバーの標識判断時間を評価するとともに, CG映像を用いて, これを推定する方法について検討することを目的としている。本研究では, 地名判断と方角判断という2種類の判断時間の計測を行った。地名判断とは, 標識上にある地名から進行方向を判断するものであるのに対し, 方角判断とは, 標識上にない目的地の方角を判断するものである。<BR>分析の結果, 以下の点が明らかになった。(1) CG映像を用いた実験により, 各種の判断時間の推定が可能であること。(2) 方角判断は地名判断に比べ, より多くの時間を要すること。ではまずはじめに実物の標識を用いて行われた既往研究との比較により, CGによる実験結果との対応関係を明らかにするとともに, CGの長所である複雑な交通場面における標識の判読性について考察し, 高齢ドライバーが複雑な判断を伴う状況において, 非高齢ドライバーよりも多くの時間を要することを明らかにした。
著者
野村 哲郎 外井 哲志 清田 勝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.625, pp.125-133, 1999-07-20
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

本研究は, 道路網における案内標識の最適配置に関して, ネットワーク上における迷走の最小化をはかることを目的とし, その数理モデルの提案およびアルゴリズムの開発を行ったものである.<br>目的地の案内方法としては地名または路線番号方式および併用型とし, その設置箇所は交差点流入部に限定している. 運転者の迷走度の表現として到達迷走度を導入している. 最適化の考え方としては, すべてのODの到達迷走度の和を最小化する立場を提案している. 最適化の数理モデルでは, 運転者の迷走度に関する指標を目的関数とし, 標識設置リンク数および案内1方向あたりの表示数を制約条件として, 解法には動的計画法を適用し, 計算例により地名, 路線および併用型案内の性質を示している.
著者
岡田 幸子 樋口 明彦 仲間 浩一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
no.23, pp.381-388, 2006

維持管理の時代である今、再使用やリサイクルされる建設材料が増えている。建設材料である石材は、石垣や路盤舗装材などに使われてきた。しかし、文化財などの石造構造物の研究はあるが、石材の流通や再使用に焦点をあてた研究は少ない。本研究は、土木事業における石材の流通や再使用に着目し、北九州市では西鉄路面電車の敷石の生産から利用技術及び別用途での再使用に到る経緯を調査したものである。<BR>その結果、併用軌道における舗装技術と舗装に関する歴史的な経緯・過程、敷石の生産・流通・施工・補修の技術、ある時代の流通やストックの方法の全貌を解明した。また、現在77ヵ所 (39ヵ所確認) で再利用の情報を把握した。
著者
木村 晃彦 柿沼 太郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_61-I_66, 2015 (Released:2015-11-10)
参考文献数
5

砕波を考慮した数値解析に基づき,サーフィンにおいてテイクオフが可能となる条件に関して考察した.まず,水平方向において,サーファが波頂に追い越されないために必要な,パドリングスピードの水平方向成分を検討した.これより大きな水平方向成分を有するパドリングスピードが実現されるとき,テイクオフが可能となる.次に,鉛直方向に関して,水面から力を受けるサーファに働く,波前面に沿う方向の力を検討した.この力が0,または,下向きである位置でテイクオフが可能である.そして,水平及び鉛直方向のテイクオフ可能条件を総合し,各地点でテイクオフが可能な時間内において要求される,パドリングスピードの水平方向成分の時間変化として,対象とした巻き波型及び崩れ波型の砕波型式を示す2種類の波に対するテイクオフ可能条件を示した.
著者
田井 明 藤井 健太 服部 敬太朗
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_1441-I_1446, 2018

<p> 平成29年(2017年)7月5日から6日にかけての豪雨は,筑後川中流部右岸域に位置する福岡県朝倉市,東峰村,大分県日田市を中心に甚大な被害をもたらした.本研究では,被災地全体を対象とした人的被害の特徴と発生要因・死亡原因の詳細な分析と赤谷川と桂川水系妙見川を対象に河川中・下流域での被害拡大要因の検討を行った.今次災害においては,自宅待機中ならびに洪水流による被害者が非常に多かったことが特徴であると考えられる.また,多くの河川では,土砂崩れにより河川に流れ込んだ土砂が河道を埋塞したことにより,流路の変更,川幅拡幅が生じ,洪水流のみでは,被害の出なかったと考えられる場所にも被害が拡大したと考えられる.</p>
著者
福留 脩文 有川 崇 西山 穏 福岡 捷二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.490-503, 2010 (Released:2010-10-20)
参考文献数
14

高堰堤式落差工の存在は,多くの場合,魚類の遡上や降下を妨げ,瀬や淵の環境を失わせてきた.著者らはこの問題を改善するため,渓流に見られる天然段差をモデルに,福岡県岩岳川の河床に大小の転石を組む低い分散型落差工群を試作した.その基本形に石造アーチと,流体中の静止物体の安定理論を応用し,施工には日本の伝統的な石垣工法を用いた.完成後,洪水前後の河道状況を調査し,施工した石組み構造の変化について観察した.その結果,構造の要となる大石が安定すれば,大石間に組んだ石礫は変化しても,上流から石礫が補給されて段差は復活または新たに再現されていた.自然から学んだ河床構造と簡単な解析の設計法による試験施工の結果,分散型落差工を設置した河床は,洪水で変形しつつも安定し,瀬と淵も河床高も維持されたことを確認できた.
著者
馬場 弘二 伊藤 哲男 佐野 信夫 谷口 裕史 杉山 律 福留 和人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.285-295, 2006 (Released:2006-04-21)
参考文献数
17

トンネル覆工コンクリートの耐久性向上を図る上で,ひび割れの発生を低減することが重要である.本研究では,覆工コンクリートの乾燥収縮に起因するひび割れの抑制手法を検討することを目的に,ひび割れ発生に影響を及ぼすと考えられる要因のうち,養生条件,使用材料および拘束条件を取り上げ,覆工コンクリートを模擬したモデル試験体を用いたひび割れ発生程度の比較試験による評価を行った.その結果,養生条件では,散水養生が,使用材料では,膨張材がひび割れ抑制に有効であること,また,防水シート敷設による拘束低減効果が大きいことも明らかとなった.さらに,覆工コンクリート背面および脚部の拘束条件の違いによる影響について,実トンネルを模擬した2次元FEMによる応力解析を行い検証した.
著者
福留 和人 古川 幸則 庄野 昭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E2(材料・コンクリート構造) (ISSN:21856567)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.18-27, 2011 (Released:2011-01-20)
参考文献数
11
被引用文献数
3 2

コンクリート構造物が硬化後,所要の強度,耐久性,ひび割れ抵抗性等の性能を発揮するためには,硬化初期において適切に養生を行うことが重要である.本研究では,湿潤養生期間および給水養生の実施がコンクリートの性能改善に及ぼす効果を把握するために,普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートを種々の湿潤養生条件下で養生し,圧縮強度発現特性に及ぼす影響を調査した.さらに,保水状態の差異がセメント鉱物の水和反応に及ぼす影響を定量的に評価し,水和生成物の生成量の観点から圧縮強度発現特性を評価した.その結果,保水状態がセメントの水和反応に及ぼす影響を考慮することで,種々の湿潤養生条件下での強度発現特性を評価可能であることを明らかとした.
著者
田中 輝彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集H(教育)
巻号頁・発行日
no.1, pp.7-14, 2009

土木系学生の初学年オリエンテーション授業,高校生や親子教室,ロータリークラブなど一般対象の教室において土木技術をわかりやすく解説するための教材開発に取り組み,その考え方と教育効果を紹介する.教室で進める授業では身近な事例を示すことによって理解を深めることに留意し,簡単な実験を目の前で行う,あるいは受講者自らが実施することによって各種構造物の機能や土木工学の基礎知識を教育する効果が実証的に確認された.
著者
井本 治孝 定木 啓 服部 進
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.367-376, 2006

原子力施設の高放射線環境下で稼動中の機器の多くは定期的に交換される.機器は配管により相互接続されており,機器の交換の際には関連する配管も交換される.配管の交換においては,現地にて取り合い位置を高精度で計測し,現場調整が不要な配管を製作することが必要である.従来,専用の取り合い寸法計測装置を用いて計測を行っていたが,計測後の装置が大量の放射性廃棄物となる,作業員が被ばくする,工期が長いといった問題点があった.そこで今回,デジタルカメラを用いた三次元画像計測手法による遠隔保守システムを開発し,ガラス溶融炉の遠隔交換工事に適用した.その結果,前述の問題点が解決されるとともに,日本では初めてロボットを用いた完全遠隔操作による20tクラスの大型機器の交換に成功した.
著者
柴田 優作 日比野 直彦 森地 茂
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_461-I_474, 2019
被引用文献数
1

わが国では,地方創生に資する重要施策の一つとして,訪日外国人旅行者の増加策が着目されている.訪日外国人旅行者数は近年顕著な増加を示すが,宿泊数に着目すると,民泊やクルージングの増加は宿泊施設での宿泊数の増加にはあまり繋がらず,地域への経済効果は限定的となっている.観光消費の4分の1以上を占める宿泊費を増加させることは地域にとって重要であり,宿泊実態を定量的に把握することは,インバウンド観光による地域活性化を考える上では重要である.本研究では,宿泊旅行統計の施設データを用い,訪日外国人旅行者の宿泊実態を市町村別に把握することを試みる.公表された都道府県別のデータではなく,約1600の市町村のデータを作成し,外国人宿泊者数,外国人比率,稼働率等より,各市町村の特徴を整理したことが本研究の特徴である
著者
梶原 大督 菊池 輝 藤井 聡
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1-8, 2014 (Released:2014-01-20)
参考文献数
31

人々が,政府の基本政策に対して如何なる態度を示すかは,土木における諸政策を検討する上で重要な問題である.この認識の下,これまで「政府に対する批判」の原因を探る様々な研究が行われてきたが,これらが明らかにしてきた諸要因だけでは,政府に対する態度全般を完全に説明しているとは必ずしも言えないのが現状であり,政府に対する態度の要因を探る研究は未だ必要である.本研究では,政府や政府の政策方針に影響を及ぼす基礎的な変数の一つとして「人は皆,純粋なる利己主義者である」という信念,「利己主義人間観」が存在しているという議論に着目し,アンケート調査により,政府に対する否定的態度の形成に関する理論仮説を検証した.その結果「政府に対する批判」の背景に利己主義人間観が一つの要因として存在している可能性が示唆された.
著者
足立 茂章 高見 淳史 原田 昇 是澤 正人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.73-84, 2017
被引用文献数
2

近年,首都圏の鉄道路線においてホームドアの導入が進んでおり,設置路線においては軌道内転落事故や列車接触事故が減少している.一方,ホームドア導入時の列車運行計画では,従来の停車時間にホームドアの稼働時間を付加するため,各駅の停車時間は増加し所要時間も増加することになる.朝ラッシュ時間帯に着目すると,ホームドア導入により,車側付近の旅客接近や混雑が解消され,停車時間の安定化が確認された.また,車側の安全確認が人的作業から支障物センサーに代わり,ワンマン運転化すると,停車中の安全確認時間に変化が確認された.<br> 本稿では,ホームドア導入による運転形態及び駅の特徴を分類することで,その特徴にあった停車時間変化と安定性効果を分析すると共に,ホームドア導入時の列車運行のあり方を考察する.