著者
尾野 薫 山中 英生 中西 雄大
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_859-I_869, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
15

本研究は,自転車の普及や法的整備の歴史から道路通行システムにおける自転車の位置付けと通行実態の変遷を明らかにし,自転車の歩道通行の常態化や双方向通行の要因について一示唆を得ることを目指す.各法制度の変遷から,1970年と1978年の道路交通法改正で自転車の位置付けが変化したことがわかった.次に,1960~85年の自転車通行状況を写した写真や映像資料からデータベースを作成し自転車の道路通行実態の変遷を把握した結果,改正前は自転車の車道・左側走行が浸透していたが,1970年の道路交通法改正後に歩道走行が出現し,1978年の道路交通法改正後に車道走行が減少し歩道走行が増加したことがわかった.最後に,道路通行システムへの理解不足,自転車の車両特性との齟齬が自転車の歩道通行の常態化や双方向通行の要因である可能性を示唆した.
著者
広田 健一 勝尾 伸一 小島 尚人 大和田 勇人 山下 剛史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.II_66-II_77, 2015

本研究は, コンクリート表面のひび割れ点検精度の向上を目的として,ビデオカメラを接続したリアルタイム動画視認性評価システム(VISシステム:VISibility evaluation system of feature composite moving image inducing visual illusion)を拡充し,現場適用効果を示したものである.VISシステムは, FC動画(ネガ,ポジ)とそれに対する視認性評価図をリアルタイムでPC(ノート・タブレット型)画面上に表示し,ひび割れ点検支援を担う.ボックスカルバート, トンネル覆工,橋梁床版等の点検を試みた結果,点検対象から10m離れても幅0.2mm(管理境界)のひび割れを探索・発見でき,さらに,高所作業台からのチョークによる描画記録時のひび割れ見落とし対策としても寄与できることが判った.
著者
田中 皓介 稲垣 具志 岩田 圭佑 大西 正光 神田 佑亮 紀伊 雅敦 栗原 剛 小池 淳司 佐々木 邦明 佐々木 葉 Schmöcker Jan-Dirk 白水 靖郎 泊 尚志 兵藤 哲朗 藤井 聡 藤原 章正 松田 曜子 松永 千晶 松本 浩和 吉田 樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.129-140, 2021 (Released:2021-06-20)
参考文献数
20
被引用文献数
2

本稿ではCOVID-19の蔓延および政府からの社会経済活動自粛要請に伴う,人々の意識行動への影響を把握することを目的にWebアンケート調査を行った.その結果,感染・死亡リスクを,現実の数倍~数千倍過大に評価している様子が明らかとなった.また,接触感染対策として効果的な「目鼻口を触らない」の徹底度合いが他の対策に比べて低く,周知活動の問題点を指摘した.さらに,緊急事態宣言に対する65%以上の支持率や,「家にいる」ことについて,「ストレス」を感じる以上に「楽しい」と感じる人が多いこと,行動決定のために参考にするのはキャスターや評論家や政治家よりも「専門家の意見」の影響が大きいことなどが明らかとなった.
著者
三好 俊康 熊谷 隆宏 清宮 理 松本 正一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.I_10-I_24, 2019 (Released:2019-09-24)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

洋上風力発電設備では着床式としてモノパイル式,ジャケット式,重力式支持構造物が適用され,作用荷重に対する構造安全性に加え,設備全体の安定性の確保が必要である. 主な作用荷重は風荷重,波浪荷重,地震荷重であり,日本では耐震性能の評価が非常に重要である.本研究では重力式支持構造物形式に着目し,主に転倒安全性について模型振動実験と時刻歴応答解析により検討した.転倒安全性評価では,構造物の応答加速度時刻歴に基づく転倒モーメント時刻歴による動的評価方法に着目した.振動実験および応答解析の結果,動的評価の適用性とともに,滑動および転倒に対する動的な安全性は高いことを確認した.また,動的応答に対して1次モードに加え,2次および3次モードの影響も大きいことがわかった.
著者
藤生 慎 大原 美保 中山 晶一朗 髙山 純一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.I_865-I_872, 2015

大規模地震災害時に発生しうる莫大な数の建物被害認定調査を効率的かつ迅速に実施するための遠隔建物被害認定システムのうちスマートフォンを用いた建物被害認定の学習アプリを作成した.アプリの作成にあたり,いくつかの被災住宅を3Dモデル化し,地震動による被害を自動で生成できる建物被害生成システムを開発した.さらに,建物被害生成システムの結果をムービーとして出力し,iphoneやipadなどのモバイル端末で建物被害認定調査の学習ができるアプリを開発した.
著者
宮本 崇 浅川 匡 久保 久彦 野村 泰稔 宮森 保紀
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.1, no.J1, pp.242-251, 2020-11-11 (Released:2020-11-18)
参考文献数
69

深層学習に代表される機械学習の手法は近年に大きな性能の発展を遂げており,防災上の各種タスクへの応用も期待されている.一方で,データ数の本質的な不足やタスク処理過程の説明性・解釈性など,防災上の意思決定に用いる上で計算モデルに対処が求められる課題は多い.本稿では,機械学習モデルにおける研究動向からこの2点へ個別に対処するための方法論,およびそれら2点の課題に同時に対処する数理モデルとデータ駆動モデルを統合したアプローチについて,それぞれの考え方や具体的な手法,応用事例を調査する.
著者
小林 俊一 松本 樹典 西岡 勉 篠原 聖二 譽田 孝宏 長屋 淳一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F1(トンネル工学) (ISSN:21856575)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.39-53, 2013 (Released:2013-03-19)
参考文献数
9

日本の開削工事のうち,大深度掘削に対する土留め設計には,梁ばねモデルを用いたフレーム解析(土留め弾塑性解析)が通常よく用いられる.この方法で予測した土留め壁変位量は,実工事での実測変位量よりも大きく,変位モードも異なり,結果として安全設計になる場合が多い.本研究では,地盤と構造物間の相互作用を考慮した土留め設計法を新たに開発することを最終的な目標とし,実際の開削工事現場で計測した土留め壁変位量と比較し,その妥当性を検討した.その結果,従来モデルや提案モデルによる水平変位量は,実測値より概ね大きい傾向にあるが,提案モデルの方が実挙動をより精度よく表現できることが分かった.またこの傾向は,砂卓越地盤よりも粘土卓越地盤の方で顕著であった.以上のことから,提案モデルの優位性を示すことができた.
著者
河合 真由美 土屋 十圀
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
水工学論文集 (ISSN:09167374)
巻号頁・発行日
no.51, pp.1331-1336, 2007

It is an important subject tomanage sedimentation of dams appropriately so that the continuity of rivers maybe maintained and the influence of the ecosystem on the downstream site may be made to reduce in lateyears. And it is necessary to examine measures of turbid water. In this study, changes of a pollutant load which sediment affects are cleared quantitatively on Siromaru Dam. Relation between turbidity and the diversity of benthic animals are clarified using a stochastic method. <BR>The correlating equation of between turbidityand SS was obtained reliably bycalculation of a pollutant load. And an annual discharge-duration curve on the turbidity has been created. A significant relation is accepted, that is between the non-exceeding probability of 355-day turbidity and the Simpson index using stochastic methods of turbidity and benthic animals. This relation is suiting a convex quadratic curve and having the maximum of diversity. Therefore, it became clear that the suitable non-exceeding probability, namely, moderate disturbance frequency exists.
著者
仲座 栄三 渡久山 諒 稲垣 賢人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_193-I_198, 2015 (Released:2015-11-10)
参考文献数
11

南西諸島に点在する巨大な津波石の特徴が示された後に,それらの起源が推定されている.結果は,過去数千年間に大津波が7回来襲したとする従来の定説を否定し,明和津波が唯一で巨大な津波であったことを示唆している.こうした議論内容は,これまでに仲座らが発掘調査などから指摘している明和津波最大説と軌を一つにしている.実験により,こうした巨大津波石の発生メカニズムが調べられ,津波石への衝撃波圧の発生,津波石の水没と移動との関連が議論されている.巨大津波の流体力や最大遡上高を推定する上で,本研究成果は示唆に富む内容となっている.
著者
山本 司 盛岡 通 尾﨑 平 北詰 恵一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.II_89-II_98, 2012
被引用文献数
3

本研究では,人口減少および低炭素社会への移行の中で,ごみ焼却施設を更新していくシナリオの構築に基づき,広域化とエネルギー回収を評価する手法を開発した.兵庫県を対象に2010年から2030年のコスト,CO<sub>2</sub>排出量,総発電量,リサイクル率,最終処分量を算定した.広域化シナリオは,Bauシナリオよりも収集コストは増大するものの,施設運営・管理にかかるコストを低減できるため,両シナリオには差がないことを明らかにした.また,発電の効果を売電収入およびグリーン電力としてCO<sub>2</sub>削減に計上すると,わずかに広域化シナリオの方が優位となった.総発電量に限って言えば,広域化シナリオでは,Bauシナリオの2倍近い発電量が得られ,地域エネルギー供給施設の拠点となり得ることが示唆された.
著者
國實 誉治 小泉 明 荒井 康裕 稲員 とよの 石田 紀彦 藤川 和久 関田 匡延 村田 諒介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境)
巻号頁・発行日
vol.75, no.7, pp.III_425-III_434, 2019

<p> 本研究では,配水管網ネットワーク内での基幹管路である配水本管に着目して,水需要の経年変化を考慮した更新計画について分析を行った.管路更新後の配水ネットワークの冗長性を確保する目的で,供給点からの管路延長を基準とした3つの区分(上流,中流,下流)に分けて,給水に必要な配水小管上での有効水頭を確保できる縮径の組み合わせを検討した.更新の対象管路は非耐震継手管として,【更新優先度順】【布設年度順】【流量順】の3つの更新シナリオを設定し,配水小管上での最小有効水頭や更新工事費用,更新工事時の逆流の発生,ポンプ増減圧による電力費を指標として比較分析を行い,新たな配水管路の更新計画についてシナリオ分析を行った.この結果,配水本管の縮径更新に関する経済性や安定供給性を考慮した新たな知見を得ることができた.</p>
著者
藤森 真一郎 長谷川 知子 増井 利彦 高橋 潔 シィルバ エラン ディエゴ 戴 瀚程 肱岡 靖明 甲斐沼 美紀子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.II_217-II_228, 2015
被引用文献数
2

Special Report on Emissions Scenarios(SRES)が公表されて以降,気候変動関連研究は主としてSRESを用いて行われてきた.一方,2007年以降に新シナリオプロセスが開始され,新しい社会経済シナリオ Shared Socioeconomic Pathways(SSPs)は気候モデル,影響評価モデル,統合評価モデルで使われ,中核的なシナリオとなることが期待される.また,近年統合評価モデルが提示するシナリオはパラメータの設定等が明瞭に示されずブラックボックスとなっているという批判が存在し,統合評価モデルが抱える大きな問題の一つとなっている.このような背景を踏まえ,本論文は以下の二つの目的を有する.第一にSSPの定量化プロセスについて詳細に記述し,シナリオ定量化作業をオープンにすることである.第二にその結果を既存のシナリオであるSRESとRCP(Representative Concentration Pathways)と比較し,シナリオの特徴を明らかにすることで,今後SSPの主たるユーザーとなる気候モデルや影響評価モデルに対して有用な情報を提供することである.本研究で得た主要な結論は以下のとおりである.第一に大気汚染物質の排出量はRCPで一貫して減少していたが,SSPの一部は増加するシナリオが含まれ,気候モデルにとってエアロゾルの違いの影響を明らかにすることができる.第二に耕作地面積はいずれのシナリオでも21世紀で拡大し,水資源,森林生態系など土地利用に影響される影響評価モデルにとっては土地利用シナリオを考慮することが重要であることが示唆された.
著者
坪田 邦治 中島 啓 西垣 誠
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F (ISSN:18806074)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.323-334, 2007 (Released:2007-08-20)
参考文献数
16

兵庫県北部の豊岡盆地では,沖積粘性土地盤が厚く堆積しており,盆地の中央を北上する1級河川である円山川の築堤工事に際しても,市街地周辺では,近接している民家に対して,築堤盛土に伴う周辺地盤沈下の抑制が大きな課題とされてきた.本論文では,対策工として,深層混合処理工(CDM工法)を選定し,対策工による沈下抑制効果の予測および試験盛土の動態観測結果との対比により,予測計算の有効性および対策工による沈下抑制効果が高いことが確認できた.この結果,対策工の設計に際して,改良深度,改良幅,改良強度と周辺家屋の傾斜角が関連する対策工の最適化設計チャートについて新たに提案するとともに,対策工の施工時の変位抑制のために施工した緩衝孔の効果について論じる.
著者
熱海 孝寿 福田 朝生 福岡 捷二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_619-I_624, 2021

<p> 本研究では,粒径幅の広い石礫河川の移動床現象の理解を深めるため,1オーダー異なる粒径幅を有する粒子群を用いて数値移動床実験を実施し,河床付近で跳躍運動する粒子群について分析を行い河床構造の変化を調べた.その結果,河床表層の全粒径が移動する場合,最大粒径程度の厚さの交換層で強い鉛直分級が生じ,粒径が大きいほど河床の鉛直上方に連続して位置すること,また,跳躍時の粒子運動の軌跡から,小粒径粒子が堆積層内に落下する様子や流体力によって上昇する様子が見られた.最後に本研究から明らかになった課題を示している.</p>
著者
和田 健太郎 臼井 健人 大口 敬 井料(浅野) 美帆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.85-96, 2017

本研究は,需要のランダム到着を考慮して,系統信号路線の総遅れ時間の期待値を評価する手法を提案する.この手法は交通流の変分原理(VT)に基づく.需要のランダム到着を考慮したVTでは,交通流ダイナミクスは時空間領域のネットワークにおける確率的な最短経路問題の解として記述されるが,その厳密な求解は困難である.そこで,以下の二つを組み合わせた近似解法を提案する:(i) 最短経路の持つ特性による解(経路)集合の縮小;(ii) Clark近似による多重積分の解析的な評価.モンテカルロ計算との比較を通して,提案手法が精度よく遅れ時間の期待値を計算できることを示す.また,提案手法の有用性を示す応用例として,駒沢通りにおける信号最適化のケース・スタディを示す.
著者
野村 周平 澤田 洋平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.I_1351-I_1356, 2021 (Released:2022-02-15)
参考文献数
19

陸域モデルは洪水・旱魃予測などにおいて重要な役割を果たす.モデルの精度向上のためには未知パラメータの調整を行い,水・生態系・熱の互いに影響し合う複数の変数を同時に観測値に近づける必要がある.しかし,多変数観測に対する陸域モデルのパラメータ最適化と不確実性推定の手法は未確立である.そこで,本研究では複数衛星による多変数観測を用いることにより,不確実性推定を伴う,多変数観測に対するパラメータ最適化手法を開発した.土壌水分,葉面積指標(LAI: Leaf Area Index),地表面温度の3つに関し,観測-モデル変数間の誤差が3種とも同時に校正されるように最適化を行った.結果として,2地点における観測-モデル変数間での
著者
吉田 昌平 野口 竜也 香川 敬生
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_404-I_412, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
29

1943年9月10日,鳥取県東部を震源として鳥取地震(M7.2)が発生した.現存する地震関連資料から,鳥取市街地またはその周辺に存在した学校建物は場所により被害程度に差が出たことがわかっている.本研究では,学校建物被害が異なる原因を究明することを目的として,地盤構造モデルの構築及び地震動評価を実施した.学校被害サイトを対象に常時微動観測を実施し,3成分単点観測に基づくH/Vスペクトルとアレイ観測に基づく位相速度分散曲線を用いて地盤構造モデルを構築した.推定した構造モデルを用いて統計的グリーン関数法による地震動評価を実施することで,各サイトの地震動特性の違いを評価した.その結果,甚大な被害が生じたサイトでは建物固有周期帯域(0.2-0.4sec)及び中間周期帯域(1.0-2.0sec)の両方で応答値が大きくなる傾向がみられた.
著者
野口 竜也 小林 和生 西村 武 香川 敬生
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.I_617-I_625, 2021

<p> 鹿野・吉岡断層は1943年鳥取地震により現れた地震断層である.両断層では,断層変位箇所の調査としては,トレンチ調査,踏査,住民からの聞き取り調査が行われている.地盤構造調査として,微動探査や重力探査を行っており,さらに断層変位箇所やその近傍においては,稠密な微動観測も行われている.ただし,断層の存在による破砕帯や段差構造などの不整形性による地盤震動特性の違いについては十分な検討がなされていない.そこで本研究では,断層変位箇所やその近傍の稠密微動観測の結果を用いて,断層のごく近傍における地盤震動特性を把握した.その結果,地表変位箇所を境にその前後で微動H/Vの形状に違いがみられた.この要因について,地下構造探査の結果との対応関係より,断層の破砕帯や段差構造が微動の特性に関与していることが示唆された.</p>
著者
野口 竜也 小林 和生 西村 武 香川 敬生
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.I_617-I_625, 2021 (Released:2021-07-22)
参考文献数
12

鹿野・吉岡断層は1943年鳥取地震により現れた地震断層である.両断層では,断層変位箇所の調査としては,トレンチ調査,踏査,住民からの聞き取り調査が行われている.地盤構造調査として,微動探査や重力探査を行っており,さらに断層変位箇所やその近傍においては,稠密な微動観測も行われている.ただし,断層の存在による破砕帯や段差構造などの不整形性による地盤震動特性の違いについては十分な検討がなされていない.そこで本研究では,断層変位箇所やその近傍の稠密微動観測の結果を用いて,断層のごく近傍における地盤震動特性を把握した.その結果,地表変位箇所を境にその前後で微動H/Vの形状に違いがみられた.この要因について,地下構造探査の結果との対応関係より,断層の破砕帯や段差構造が微動の特性に関与していることが示唆された.
著者
吉田 昌平 野口 竜也 香川 敬生
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.I_404-I_412, 2016

1943年9月10日,鳥取県東部を震源として鳥取地震(M7.2)が発生した.現存する地震関連資料から,鳥取市街地またはその周辺に存在した学校建物は場所により被害程度に差が出たことがわかっている.本研究では,学校建物被害が異なる原因を究明することを目的として,地盤構造モデルの構築及び地震動評価を実施した.学校被害サイトを対象に常時微動観測を実施し,3成分単点観測に基づくH/Vスペクトルとアレイ観測に基づく位相速度分散曲線を用いて地盤構造モデルを構築した.推定した構造モデルを用いて統計的グリーン関数法による地震動評価を実施することで,各サイトの地震動特性の違いを評価した.その結果,甚大な被害が生じたサイトでは建物固有周期帯域(0.2-0.4sec)及び中間周期帯域(1.0-2.0sec)の両方で応答値が大きくなる傾向がみられた.