- 著者
-
田村 美恵
- 出版者
- 日本グループ・ダイナミックス学会
- 雑誌
- 実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.1, pp.37-48, 2010 (Released:2010-08-19)
- 参考文献数
- 43
本研究では,自己や内集団他者,及び,外集団他者に関する手がかり情報が,内集団や外集団における合意性推定にどのような影響を及ぼすのかについて検討した。その際,最小条件集団パラダイムを用いて内集団―外集団状況を作り出し,自己,内集団他者,外集団他者のいずれかの課題遂行の「結果」(成功または失敗)をフィードバックすることで,手がかり情報の内容を実験的に操作した。その結果,「自己」の結果に関する情報がフィードバックされた場合には,自己と同一の結果に対する合意性をより高く推定する「フォールス・コンセンサス効果」が,内集団においてのみ見出された。一方,「内集団他者」に関する情報がフィードバックされた場合には,これとは異なり,内集団に関する推定と外集団に関する推定との間で,「対比的」な合意性推定パターンが見出された。具体的には,提示された内集団他者と同一の結果に対する合意性が,内集団において高く推定される一方,外集団においては低く推定される傾向が見出された。また,「外集団他者」の結果がフィードバックされた場合にも,同様に,「対比的」な合意性推定パターンが見出された。この場合には,提示された外集団他者と同一の結果に対する合意性が,(当該他者の所属集団である)外集団において高く推定され,(当該他者の非所属集団である)内集団においては低く推定されていた。これらの結果を,自己に関する情報と他者に関する情報の属性の差異に注目して考察した。