著者
光崎,龍子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, 1999-11-20

ドクダミ茶加工の採取時期としては,一般に花のような白い総ほうが終わる頃が適していると言われている。そこで,ドクダミの成長期を「萌芽期」,「結実期」,「本葉期」と名付け,この3期と,結実期の「葉部」,「花部」の2種類の無機成分含有量を分析した。さらに,採取時期の意義を,相関分析,主成分分析法により解析を試みた。1.ドクダミの無機成分は,カリウムがもっとも多く,カルシウム,マグネシウム,鉄,マンガン,亜鉛は成長とともに増加し、銅は複相単為生殖後の花部に多い。2.カリウムとカルシウムは6:1,マンガンとマグネシウムは80:1ほどの比率で増加し,カルシウム・カリウムと銅では反比例する関係があり,花部,本葉期に認められる。3.主成分分析では第1主成分に,カルシウム,マグネシウム,カリウム,マンガンと銅が抽出され、ドクダミの無機成分を構成する主な成分と複相単為性生殖により増加する成分と考えられ,第2主成分の鉄,亜鉛は複相単為生殖に深く関与する成分と考えられる。4.成長期別の主成分分析法では,2次元布置図から花部の特異性が推測ができる。5.以上のことから,経験的にいわれているドクダミ採取時期は総ほうの終わる頃がよいとされるが、3成長期と花部、葉部に分けることにより明確にできた。ゆえに,昨今の食生活に派生する味覚異常や高齢者の無機成分摂取不足などの改善には,手軽に日常的な飲用が望ましい薬用植物と考えられる。
著者
原田 澄子 深井 康子 守田 律子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.117, 2011

<B>目的</B>:平成21~23年度日本調理科学会の特別研究「調理文化の地域性と調理科学―行事食・儀礼食―」の一環として、行事食の認知度や喫食状況などを調査することにより、富山県の地域性と調理文化を把握し行事食の伝承状況を明らかにした。<BR><B>方法</B>:富山に在住する富山短期大学の学生277名およびその親159名を対象に全国統一様式の調査用紙を用いて行事食の調査を行った。<BR><B>結果および考察</B>:富山県は、東日本と西日本の接点に位置し、関東と関西の両方の食文化を受けている。認知度が高い年中行事は、学生その親ともに正月、節分、上巳、端午、七夕、土用、月見、冬至、クリスマス、大晦日であった。認知度も経験も少なかった行事は、学生その親ともに重陽の節句であった。親が多く学生が少なかった行事は、盂蘭盆、春祭り、秋祭りで逆に親が学生より少なかったのは七夕であった。正月の屠蘇は、親50%に対し、学生が8%と少なかった。雑煮はいずれもほとんど食べており、調味は「清まし」、もちは「角餅」、調理法は「焼かない」が多かった。赤飯は正月料理では食べる習慣が少なかった。月見団子は学生その親ともに食べていたが富山県では小芋を食べる習慣がなかった。<BR>
著者
駒場 千佳子 日笠 志津 高橋 敦子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.229-235, 2000-05-20
参考文献数
11
被引用文献数
1

豚レバーの下処理の方法及び調理による鉄分量の損失及び食味への影響を、屠殺後の時間経過を含めて検討した。1)レバーを水・牛乳にさらすことによって鉄分の減少が見られた。また、茹でこぼしの水分を介した処理方法では、約45%の鉄分の溶出が見られた。2)乾式加熱の焼き物調理では加熱による鉄分の損失はほとんどみられず、湿式加熱の煮物調理では鉄分の溶出が多く見られた。3)屠殺後1日目と3日目のレバーでは、さらし方法に関わらず鉄分の流出に有意差は見られなかった。4)焼き物調理の食味の官能検査では、屠殺後1日目では総合評価の差は見られなかった。屠殺後3日目では牛乳さらしが有意に良い評価を得た。5)煮物調理の食味の官能検査では、下処理は食味に影響を与えなかった。
著者
八木 千鶴 阪上 愛子 澤田 参子 原 知子 東根 裕子 山本 悦子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】平成24年からの日本調理科学会「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」研究から山海に恵まれ商都として栄えた大阪府の1960年から70年頃までに定着した家庭料理・郷土料理のおやつの特徴を抽出することを目的とした。<br />【方法】大阪府の行政区分、日本の食生活全集「聞き書大阪の食事」の分類を参考に8地域(泉南・泉北・南河内・中河内・北河内・大阪市・三島・豊能)に分け、その土地に30年以上暮らしている27名を対象に聞き書きを行った。調査時期は2013年11月から2015年9月、方法等は学会ガイドラインに則ったものである。<br />【結果】春:彼岸にぼたもち、上巳に菱餅、端午に柏餅や笹(葦・豊能)で包む粽、また餡入りよもぎ餅(ゆぐみ餅・中河内)や桜餅も作った。夏:糯米に「つぶし小麦」を加えた半夏生餅にきな粉をまぶし食べた。ところてんに黒蜜や白蜜をかけたもの、わらびもち、アイスキャンディー、しがらき、はったい粉などを家庭で作ったが購入した事もあった。秋:十五夜に手作りの月見団子とすすきを供えたが、餡で巻いた団子を購入する事もあった。秋祭りに大豆や枝豆の餡でくるむ「くるみ餅」、彼岸におはぎを作った。冬:餅入りのぜんざい、節分に大豆を煎り豆にし食べた。丁稚羊羹は山間の豊能の楽しみであった。寒の頃に餅を搗き、青のり、干しえび、漬け紫蘇・大豆(三島)や黒豆(豊能)などを入れかきもち、あられ(きりこ・中河内)やおかきにした。縁日では屋台のソース味のたこ焼き・いか焼きを買うのも楽しみであった。大阪は餅や地域の食材を利用しおやつを手作りしたが、季節の饅頭・団子を購入することも多くあった。心斎橋や難波では洋菓子店が出現し、ドーナツなど既製品を購入し始めた。
著者
青山 佐喜子 橘 ゆかり 三浦 加代子 川原? 淑子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.128, 2011

【<B>目的</B>】平成21・22年度日本調理科学会特別研究として実施された「行事食」の調査結果のうち、昨年度の本大会において年末年始の現状を親子間の伝承の観点から報告した。さらに本年度は年末年始、上巳、彼岸、端午、盂蘭盆、七夕、土用の丑、重陽、月見、冬至、クリスマス、祭りの認知・経験を世代間比較し、行事と行事食の現状と世代間の伝承について明らかにすることを目的とした。<BR>【<B>方法</B>】平成21・22年度日本調理科学会特別研究の全国統一様式の調査用紙を用いた。対象は和歌山県に10年以上在住している大学生・短大生とその親、また和歌山県福祉保健部、教育委員会ならびに関係機関の協力を得、食生活改善推進協議会会員を中心に食育関係団体会員、地域の研修会等に参加した市民とした。若年層(20歳未満・20歳代)182名:Y群、中年層(40・50歳代)240名:M群、高齢者層(60歳以上)266名:O群に分けて分析し、SPSS(Ver.18)でχ<SUP>2</SUP>検定を行った。<BR>【<B>結果と考察</B>】三世代とも認知度の高い行事(90%以上)は正月、節分、上巳、端午、月見、クリスマス、大晦日であった。行事食で三世代とも高い喫食経験であるのは正月の雑煮、黒豆、かまぼこ、節分の巻き寿司、月見団子、冬至のかぼちゃ、クリスマスのケーキ、大晦日の年越しそばであり、行事の認知と経験だけでなく、それぞれの行事食が若年層(Y群)にも伝承されていることがうかがえた。一方、三世代とも認知度の低い行事(50%以下)は重陽と春祭りであり、特に重陽の経験は少なかった。Y群の認知度が低い行事は彼岸・盂蘭盆・冬至・祭りであり、Y群は盂蘭盆の行事食の経験が低く、核家族化が進み、先祖に対する仏事や地域の祭りが伝承されていないことがうかがえた。
著者
佐竹 紀香 田中 美希 浜守 杏奈 佐藤 幸子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p>【目的】漬物は、特徴的な香りを持つことから「お新香」「香の物」といわれている。漬物の中で、近年、市販の糠床や一夜漬けの糠漬けが流通するようになったが、その独特の臭いにより嗜好性が大きく分かれる。そこで本研究では、スパイスを添加した糠床に胡瓜を漬け込み、その糠漬けについて、香気成分分析および嗜好評価を実施し、糠漬けの糠臭軽減効果について検証した。また、スパイスの認知度を検証するために「スパイスの使用頻度等の意識調査」をあわせて実施した。</p><p>【方法】糠床は、生糠に塩、唐辛子、昆布、水を混ぜ合わせ、1か月間キャベツで捨て漬けし、調製した。調製した糠床に各スパイス(八角、ナツメグ、クミン)を混ぜ込み、3種類の糠床を調製した。糠床に12時間漬けた胡瓜をすりおろしたものを香気成分用試料とした。香気捕集はMonolithic Material Sorptive Extrction 法に採用し、undecane(C11H24:東京化成㈱)を内部標準とし、GC/MSおよびGC/O分析を行った。また、官能評価(5段階評価法)を実施し嗜好評価を行った。</p><p>【結果】香気成分分析の結果、糠漬けは胡瓜由来のグリーン様のHexenalと糠臭の3-methyl-butanolが確認できた。スパイスを添加した糠漬けは、いずれも糠臭の香気成分構成割合が半減し、糠臭は抑制された。また、胡瓜由来の匂いはスパイスによる差が顕著であり、八角の添加によって匂いが強調された。官能評価では、ナツメグが最も糠漬けとして好ましい評価を得た。本研究では、スパイス添加による糠臭のマスキング効果が期待できた。今後、食材によりスパイスの種類および添加量を検討する必要があると思われた。</p>
著者
勝田 幸代 田辺 誠 野坂 千秋
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.90, 2004

【目的】手作りうどんは小麦粉と水、塩からなる単純な組成の食品であるが、その作り方にはコツがあり、習熟度によって品質差異が生じやすい。そこで熟練したうどん職人とうどん作りの経験のない非熟練者とを比較し、捏ね動作の違いがうどん生地の組織構造に与える影響について検討を行った。<br>【方法】体重・身長等の身体条件の近いうどん職人及び非熟練者を選定し、同一の条件でうどん生地を調整させた。小麦粉に加水し、なじませた直後の水の分散状態を把握するため、篩で生地の粒子径を分級し、各級の水分を測定した。次に捏ね動作等の作業内容をビデオで記録し、動作の変化と各作業の所用時間を測定した。併せて生地にかけられた荷重をフォースプレートを用いて連続的に記録した。また、捏ねる前及び捏ね動作の過程、調整後に生地を採取し、グルテンの形成状態を染色後、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。<br>【結果】小麦粉に加水し、なじませた直後の生地粒子径について比較したところ、うどん職人は細粒が多くを占めていたが、非熟練者は大きな粒が多くを占めており、小麦粉と水が均一に混ざっていなかった。次に捏ね動作を比較したところ、うどん職人は強い力で一定方向に連続的に捏ねており、非熟練者は不連続的に捏ねており、力の方向性も不定であった。生地の組織構造を観察した結果、うどん職人は手捏ね、足踏みの工程を経ることでグルテンが膜状に発達していく様子を確認したが、非熟練者はグルテンの発達が不十分である様子を確認した。以上の結果からうどんの調整方法は水の均一な分散と連続的に一定方向に捏ねることにポイントがあり、その工程によってグルテンを膜状に発達させ良好な食感を呈することが示唆された。
著者
小板 由美子 宮木 恵美 永島 伸浩
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.15, pp.32, 2003

【目的】 埼玉県比企郡吉見町は、県内の内地小麦・米の生産地の一つである。小麦は製粉後うどん等に利用されているが、生地の弾力性がやや低く、市販の小麦粉のような調理利用はあまり進んでいない。古くより、この地粉に輸入小麦粉を混合し、他の調理加工品も検討されているが、地粉としてのメリットは見出されていない。今回、この地粉に粘弾性に優れたもち米粉を混合し、うどん及びフレッシュパスタへの応用について試みた。【方法】 1)試料は、平成14年度埼玉県吉見町産の小麦(農林61号)及び糯米(みやこがね)を製粉して実験に用いた。2)実験項目;小麦粉及びもち米を製粉後、小麦粉、もち米(生米、加熱調理後を含む)を用いて種々の割合に調製後、うどん及びパスタに調製し、加熱調理した場合の種々の特性について調べた。1 煮溶け率、2 組織観察、3 レオナー((株)山電RE_-_33005型)による破断特性等の測定、4 食味特性について検討した。【結果】うどん生地調製後、加熱前の生地では、強力粉に比べて伸展性が低く、切れやすい特性であった。地粉にもち粉を添加した生地では、加熱前では破断応力が大となるが、加熱後は伸展性が大きくなり、もちもちとした食感が得られた。パスタもうどん生地と同様の傾向が認められ、もち粉を添加することにより地粉の新しい利用が可能となった。
著者
平尾 和子 米山 陽子 濱西 知子 高橋 節子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.24, 2004

【目的】みたらし団子用たれは、一般的に馬鈴薯澱粉などの天然澱粉が用いられており、その保存期間は短い。そこで本研究においては、耐老化性や低温保存安定性に優れた化工小麦澱粉を用いて団子用たれを調製し、馬鈴薯澱粉、天然小麦澱粉を用いたものと、物性ならびに官能評価による食味特性を比較し、保存方法および利用性についても検討した。<br>【方法】試料とした化工小麦澱粉はMidsol 4, Midsol 46の2種を用い、天然小麦澱粉Midsol 50 (ともに米国MGP社製) および馬鈴薯澱粉(ホクレン社製)と比較した。たれの調製は澱粉濃度9%とし、ショ糖は全液量の40%、醤油は10%とした。各澱粉の粘度はラピッドビスコアナライザー(RVA)により求め、糊の物性はテンシプレッサーを用いて測定した。凍結・解凍安定性は、RVAで調製した試料を室温に20分間放冷後、-20℃で22時間凍結、室温で2時間解凍を1サイクルとし、1から7サイクル繰り返した試料について物性測定を行い、調製直後と比較した。官能評価は評点法により検討した。<br>【結果】1)化工小麦澱粉2種は天然小麦澱粉に比べて、粘度上昇開始温度は低く、最高粘度、冷却50℃時の粘度がともに高く、糊の付着性は大きい値を示した。2)化工小麦澱粉は凍結・解凍後の糊の物性変化および離水は認められなかった。3)醤油の添加により、いずれの澱粉も最高粘度は低下した。4)ショ糖と醤油を加えたたれは凍結・解凍に伴い、馬鈴薯澱粉では硬さ、凝集性、付着性、ねばさの値の変化が大きいのに対し、化工小麦澱粉はこれらの変化が少なく凍結・解凍安定性が認められた。5)官能評価の結果から、化工小麦澱粉を用いたたれは、馬鈴薯澱粉および天然小麦澱粉に比べて高い嗜好を示した。
著者
升井 洋至 片寄 眞木子 本多 佐知子 坂本 薫 田中 紀子 富永 しのぶ 原 知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】兵庫県における各種行事食での料理の認知、経験および手作り状況について、学生、親、祖母の三世代間で比較を行い、世代間での伝承状況についての現状を把握することを目的とした。<br> 【方法】平成21・22年度日本調理科科学会特別研究で実施したアンケート調査より、兵庫県内の行事食について検討した。調査資料より対象者を兵庫県内で10年以上居住経験のある学生世代(10,20代)379人、親世代(40,50代)212人、祖母世代(60歳以上)48人とし、調査項目17の行事食とこれら行事食における料理について検討を行った。<br> 【結果】行事食の認知度は親と祖母世代間では大差はみられなかった。秋祭りでは、祖母(71%)、親(51%)、学生(27%)の三世代間で差がみられた。重陽・菊の節句、春祭りの認知率は祖母(41%、50%)、親(24%、28%)であったが、親と学生(24%、24%)の割合はほぼ同じであった。行事食の経験は、祖母の3分の1程度しか学生では経験していなかった。春分の日の行事食経験率は祖母93%と親81%に対し学生30%と小さく、ご飯・だんごの喫食経験率が90、78、26%と顕著な差がみられた。秋分の日の喫食経験も同じ傾向であった。上巳、冬至では学生で行事食の認知率が84%、78%、経験率74%、51%と小さい傾向にあった。行事食の料理で白酒、かぼちゃの喫食経験率も学生は小さく祖母と親では僅かな差で、白酒で親49%が学生14%、かぼちゃで親80%が学生50%とこの世代間で大きな差を示した。冬至のかぼちゃは各年代とも85%以上家庭で調理していた。白酒は家庭で作る割合が多いが、もち・菓子は購入するものが各年代とも86%以上であった。<br>
著者
荒田 玲子 渡辺 敦子 大貫 愛美 金谷 由希 柳生 純代 冨岡 広平 吉田 惠子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.88, 2011

【〈B〉目的〈/B〉】平成21年12月に日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学:行事食」というテーマで行われた茨城県の調査をまとめ、茨城県の特徴を明らかにすることを目的とする。年代別の検討を行うために、回答者を10~20歳代、30~50歳代、60歳以上の3区分にわけ検討した。まず、年中行事の認知度、経験を調べた。調査項目のうち、年中行事の12項目を取り上げ、特に正月料理について詳細に検討した。〈BR〉【〈B〉方法〈/B〉】茨城県の調査員は3名であり、県北、県央、県南に所属する。しかし各大学の学生はこの3区分に分けることは不可能であるので、3地域を合わせて集計し検討した。10~20歳代は241名、30~50歳代は154名、60歳以上は70名であった。質問項目は、その行事の認知、経験、その行事で食べるものの喫食経験、喫食状況、調理状況を中心に解析した。〈BR〉【〈B〉結果と考察〈/B〉】年中行事の認知度、経験について検討したところ、「重陽・菊の節句」が各年代ともに低かった。正月料理の屠蘇は20歳代の80%が、30~50歳代の約半数が「飲んだことがない」という結果であった。黒豆、きんとんは若い年代は「時々食べる」という人の割合が高かった。口取りである「黒豆、数の子、きんとん、伊達巻」については、30歳代から50歳代は購入する人の割合が高かった。「田作り、昆布巻き」は30歳代以上でも購入する人数が多かったが、「煮しめ、なます」は家庭で作るという人が多かった。魚料理、肉料理については若い年代の回答率が高かった。我が国の最大の行事食である「正月料理」も若い年代では喫食経験が低いものも多くあり、年代が高くても、「家庭で作る」より「購入する」ものがあることが明らかとなった。
著者
菊崎 泰枝 梶原 えり子 橘 ゆかり 中谷 延二
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.35, 2004

【目的】カレーリーフはナンヨウザンショウ(<i>Murraya koenigii</i>)の葉で、香辛料としてインド料理や東南アジア料理の香り付けに利用されている。演者らはこれまでにカレーリーフの塩化メチレン抽出物から強い抗酸化活性を有するカルバゾール類を単離・構造決定してきた。本研究では、カルバゾール類よりも高極性の抗酸化成分の解明を目的とした。<br>【方法および結果】カレーリーフの乾燥葉を溶媒抽出し、塩化メチレン抽出物、酢酸エチル可溶部および水溶部を得た。各画分のDPPHラジカルに対する捕捉活性およびリノール酸メチルの加熱通気酸化に対する抑制活性(Oil Stability Index(OSI)法)を測定したところ、酢酸エチル可溶部に塩化メチレン抽出物に匹敵するDPPHラジカル捕捉活性および塩化メチレン抽出物の約50%の抗酸化活性を認めた。酢酸エチル可溶部を繰り返しカラムクロマトグラフィに供して精製した結果、2種の安息香酸類、4種のケイ皮酸類、kaempferol、quercetinの他5種のフラボノイド配糖体を単離した。このうち3種はkaempferol、 quercetinおよびmyricetinの3-<i>O</i>-β-D-glucosideであった。また、2種はグルコースの6位がアシル化されたkaempferol 3-<i>O</i>-(6-<i>O</i>-acetyl)-β-D-glucosideおよびquercetin 3-<i>O</i>-(6-<i>O</i>-<i>p</i>-coumaroyl)-β-D-glucosideと決定した。得られた化合物のDPPHラジカル捕捉活性はオルトジフェノール構造をもつ化合物の活性が強く、OSI法ではcaffeic acid、 protocatechuic acid、quercetinが強い活性を示した。また、OSI法により塩化メチレン抽出物と酢酸エチル可溶部の抗酸化活性の相互作用を測定したところ、相加作用を示した。
著者
佐藤 祐子 桑原 礼子 重田 公子 谷口(山田) 亜樹子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.45, 2011

<B>【目的】</B>柿は日本人に古くから親しまれている果物である。昔から渋柿は「干柿」や「樽柿」に、地域によっては「あんぽ柿」や「枯露柿」にして食べられている。現在、摘果した柿や規格外で販売できない未利用柿を大量に廃棄している現状がある。我々は今回、それらの未利用柿を広く有効利用できないかと考え、現代の若年層の柿に対する嗜好性や認知度を把握する目的で女子大学生を対象にアンケート調査を行った。<BR><B>【方法】</B>調査時期は2010年4月、20歳前後の女子大生132名を対象者に柿に関するアンケート調査を行った。調査内容は、柿の嗜好性や柿の「摘果」や品種の認知度、柿に対するイメージおよび柿の新規加工食品に関するアイディア等の項目である。<BR><B>【結果】</B>柿の嗜好に関しては「好き」と答えた学生が7割程度であった。しかし、他の果物に比べ嗜好意欲が低いことが伺える。甘柿と脱渋した柿では9割の学生が「甘柿」を好んでいた。「軟らかい」柿を好む学生および「硬い」柿を好む学生は双方ともに約5割であった。一方で柿の品種を答えることのできた学生は2割程度で、「摘果」に関して理解している学生は1割以下であった。<BR> 他の果物に比べて柿の嗜好意欲が低い理由には、食べやすさ、水分含量が低い、糖/酸比が低いなどの問題に起因していると考えられる。また、未利用柿の有効利用法としては、サラダ類、ケーキ、ジェラートが上位に挙げられていた。また、「かきフライ」などユーモアに富んだネーミングのものも挙げられていた。大量廃棄される未利用柿の中には渋柿もあるため、柿の加工食品の開発には簡単に脱渋ができ、加工調理しやすいものが適していると考える。
著者
吉田 真美 高橋 恵美 後藤 潔
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.3, 2007

<BR><B>【目的】</B><BR> 豆類は廉価で保存性に優れ、やせた土地でも育ち、何よりもたんぱく質を多く含有することから、古い時代から世界の貴重な食料となってきた。そして世界のおのおのの土地で、それぞれの風土や気候、歴史、食文化にあった豆料理が育まれてきた。1昨年度の本大会での発表にさらに続けて調査をおこない、世界の豆料理の地域による特性を調べることを目的として研究をおこなった。<BR><B>【方法】</B><BR> 調査地域として豆の消費が多い世界の15の国または地域を選択した。それぞれの地域の、英語または日本語で記載された料理本計65册を取得して資料とし、その中から豆料理レシピをさがし877品をみいだした。それぞれのレシピについて、使用される豆の種類、調理法、主材料、副材料、調味法、スパイス等を調べ、エクセルに入力して比較検討し、地域による特性を調べた。<BR><B>【結果】</B><BR> 使用頻度の高い豆の種類は地域によって異なっており、東アジア圏の大豆、中近東のひよこ豆、ヨーロッパのいんげん豆やグリーンピース、南北アメリカ大陸のブラックビーンが特徴的だった。豆の形状は、世界的にはホール状で食べる場合が多いが、東アジア地域のみは豆をペースト状にする場合のほうが多くみられた。全体的には、豆を調理して煮物にして食することが多いが、東アジアの日本は汁もの、中国は炒めもの、朝鮮半島は御飯のものに使用することが多かった。さらに調味料やスパイスの使用も地域によって特徴があり、世界の豆食文化の多様性がみられた。
著者
青木 三恵子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成14年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.56, 2002 (Released:2003-04-02)

昨今では食生活の外部化や個食化·簡便化などにより、味の認識が平坦になり、食行動も「食べる」ことは単に「食品や栄養を摂取する」ことであり、摂取栄養により人体そのものをも操作できるかのような感覚さえ見受けられる。こうした状況においては、味·味わい·おいしさは、教育の対象としていかなければならないのではないかと、教育法について試行した。「食べること」「おいしさ」を広い視野で捉えるために、「食べている情景」を細かく、かつ広い視野で画用紙に描写させ、同時に言葉による描写を行った。また、情景を描く時、学生同士で質問をして見落としている部分に気づくようにした。絵に描く作業により、食べる·おいしさを味わうことには多くのファクターが関与していることに気づいた。
著者
秋山 久美子 山中 健太郎
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.111, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】リンゴのような丸い食材の皮を包丁で剥くという調理操作は、両手の動きを連動・協調させるような高度な運動スキルが必要である。そのため、その技術が巧である者から稚拙である者までの差が大きい。演者らは、丸むき技術の巧拙と包丁操作の関係を明らかにすることで、短時間でも効果的に調理技術を定着させるための要点を見出すことを目的として研究を行ってきた。昨年度の本大会で、包丁の角度、包丁の持ち方、包丁を持つ手の親指の動かし方が、丸むきの巧拙に関係していたことを報告した。本年度は、さらに筋肉活動に着目し、利き手の動きと、リンゴを支える手の動きの関係を明らかにすることを目的として研究を行った。【方法】栄養士養成学科の2年生80名を対象として、スクリーニング調査を実施した。その結果をもとに巧であるもの5名、稚拙であるもの5名を選び出した。それぞれの被験者にモーションキャプチャーの反射マーカーと筋電計を装着し、牛刀を用いてリンゴを丸のまま剥かせた。同時にビデオ撮影も行った。また、昨年度の研究結果をもとに剥き方の教習を行い、その教育効果についても検討を行った。【結果】リンゴの丸剥きが巧である者の腕の筋肉は、右手が包丁の刃を進めるために3~4回動いた後に、左手がリンゴを持ち帰るために1回動く。という、左右が連動したリズミカルな動きを見せていた。それに対して稚拙な者の筋肉活動は、不規則であった。昨年度の結果をもとに剥き方の教習を行った結果、リンゴの丸剥きの速度、完成度ともに効果がみられた。
著者
千代田 路子 藤村 亮太郎 田辺 聖子 右田 京子 山形 徳光 重松 康彦
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1059, 2009

<BR>【目的】日本では少子高齢化が進み、核家族化、女性の社会進出、単身生活者の増大に伴い、調理の簡便化や省力化の傾向が見られ、カット野菜に対する消費者のニーズが高まってきている。カット野菜は微生物制御を目的に次亜塩素酸ナトリウム溶液による浸漬処理が広く行われており、微生物的な安全面や生理的・化学的変化について多くの報告がなされているが、栄養成分についての研究はあまり進んでいない。そこでカット野菜として需要が高いレタスについて、次亜塩素酸ナトリウムによる洗浄殺菌処理と水道水による洗浄処理がカットレタスの栄養成分に与える影響を明らかにすることを目的に本実験を行った。<BR>【方法】レタスの外葉及び芯を除去した後、包丁にて4cm四方にカットしたレタスを試料とし、次亜塩素酸ナトリウム溶液(200ppm)浸漬による洗浄殺菌処理と水道水による洗浄処理(1分間、20分間)を行った。その後、調製したカットレタスの各栄養成分[ビタミンC及びミネラル類(カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄)]について定量分析を行った。実験期間は栄養素の季節変動を考慮し、季節ごとに年4回(2007年秋~2008年夏)と設定した。<BR>【結果】調製したカットレタスの栄養成分データについて比較した結果、いずれの栄養成分においても各調製試料間に有意な差は確認されなかった。以上の結果より、洗浄方法の違いによってカットレタスのビタミンC及びミネラル類(カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄)に有意な損失はないことが示唆された。また、季節ごとの栄養素の変動について一定の規則性は確認されなかった。
著者
島田 淳子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, 1997
著者
人見 哲子 焔硝岩 政樹
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】 「晴れの国おかやま」のキャッチフレーズで知られている岡山県は、自然災害の少ない県である。しかし、平成21年に発生した台風9号の影響により岡山県は大雨に見舞われ深刻な被害をもたらした。このような、背景から岡山県美作保健所勝英支所が主体となって"みんなでつくる災害時の食生活支援ネットワーク"が立ち上げられ、自助・共助・公助の役割を明確にした"災害時食生活支援のための手引き"、献立集 "食事ホッとカード"(以下ホッとカードと記す)を作成した。このカードは、被災現場での炊き出しで健康な方にも提供でき、少しの工夫で乳幼児や高齢者、病気で食事治療を受けている方にも提供できるメニューを検討し、実際の場面で活用できるか住民らと共に検証した。【方法】(1)幼児から高齢者、特別な配慮が必要な方やアレルギー体質の方等、全てに対応できる献立になっているかを、ネットワークのワーキンググループにおいて検討を行い、繰り返し試作を重ねて決定した。(2)小学生を対象とした「つなげよう人の輪 防災体験inつやま」に参加し、ホッとカードの中から、実際に作ってもらい、試食をし、疑似体験した。【結果・考察】ホッとカードは、誰でも、どこでも、作りやすいことをコンセプトに、写真、タイトル、ライフラインの状況を明記し、献立選びのヒントを載せ、区分ごとに色分け、見やすいようにノンブルを配置した。また、ライフラインの状況に応じた調理方法から、献立を選択できるよう配慮し、字体は大きく、被災経験から紙質は耐水性で破れにくく、水害にも対応した献立集ができあがった。防災体験を通して、幼い子供でも作れる献立内容であった。会場ではホッとカードを拡大したものの掲示や、市販されている備蓄食品の展示を行い、実際に体感することで、幼い頃から知ってもらうきっかけになった。。