著者
新澤 祥惠 中村 喜代美 川村 昭子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の石川県における調査として実施したもののうち、穴水町、金沢市、白峰村のものを報告する。<br>【方法】平成25~27年、穴水町は80歳女性、金沢市は85歳男性、70歳女性、白峰村では74歳、69歳、67歳女性より、特別研究ガイドラインに沿って聞き取り調査を行った。<br>【結果】1)穴水町は能登内浦海岸に位置し、新鮮な魚介類が入手できる地域であり、魚介類が多様に利用されていた。特にイワシは漁獲に時期には釜でゆで、酢醤油で一人8~9尾も食べ、冬は糠漬けにしたコンカイワシに大根を加えて鍋物にしている。この他特産のぼらやいさざの料理、トビウオから作られたアゴだしが使われた。さらに、もずくやかじめ、テングサからところてんを作るなど海草の利用も多かった。 2)金沢市は地物や遠所物など多様な食材が得られる所である。主食は白飯であるが、冷やごはんを利用した大根飯や夏主食の残ったソーメンとなすを合わせた煮物が夕食に供された。夏はドジョウのかば焼きや、色つけ、いかの鉄砲焼きを購入した。じぶ煮は鴨肉や鶏肉ばかりではなく魚も使った。刺身では昆布締めや鱈の子つけにした。漬け物では蕪ずしのほか大根ずしがよく作られていた。 3)白峰村は白山麓地域のひとつで、山間部としての食文化が育まれているところである。昭和30年代以降は米を作るようになったが、それ以前は雑穀、おからなどを入れたおかゆや麦飯が主食であった。米粉に雑穀を入れた団子やかまし粉を番茶で掻いたものも食べていた。藁縄で括っても崩れない堅豆腐があり、狩猟で得た肉を熊鍋、熊汁、うさぎ汁にしていた。 4)以上、海岸部、都市部、山間部の地域差が示唆された。
著者
星 睦水 井上 かほる 桑山 弓枝 岩森 大 山崎 貴子 伊藤 直子 村山 篤子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成21年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.2052, 2009 (Released:2009-08-28)

【目的】食肉は、たんぱく質の良い供給源である。しかし、加熱した食肉は、咀嚼能力が低下している高齢者にとっては、食しにくい食材の一つである。これまでに、我々は、マイタケのプロテアーゼと低温スチーミング調理と併用することにより効果的に肉を軟化することを報告した。しかし、マイタケ処理した肉は、軟らかいものの食感が悪く、好まれなかった。そこで、本研究では、マイタケ処理液の濃度調節を行い、調味することにより風味の改善を試みた。 【方法】マイタケの重量に対して2倍量の水を加えてホモジナイズ後濾過した液(A)、4倍量の水を加え同様に処理した液(B)、Bに1%食塩を添加した液(C)を作成した。牛もも肉は一定の大きさに切断し、ナイロンポリバッグ中に上記マイタケ抽出液とともに真空包装し、低温スチーミング装置(AIHO ATS-10A)を用いて、70℃2時間加熱した。破断応力、テクスチャーはクリープメーター(山電レオナーRE-3305S)にて測定した。プロテアーゼ活性は、カゼイン消去法を用いた。官能評価は、20歳代の男女18名(若者群)および50-70歳代の男女22名(高齢者群)をパネルとして行った。 【結果】A液と比較して、B液で処理したところ、破断応力には有意差は見られなかった。また、カゼイン分解活性は、B液とC液では変化がなかったことから食塩によるカゼイン分解活性の阻害効果はないと考えられる。官能検査ではB液、C液で処理した肉は、A液で処理した肉と比較して、苦み、口中残留感が有意によかった。特にC液で処理した肉は、軟らかさを保ちつつ、風味を改善することができた。C液で処理した肉を用いた料理を作成し、若者群および高齢者群に対して官能検査を行ったところ、通常の肉を用いた場合と比べ、どちらのパネルでもやわらかく、噛み切りやすく、飲みやすいと評価された。総合評価においては、高齢者群ではC液で処理した肉の評価が高かったが、若者群では差がなかった。

1 0 0 0 ワニ料理

著者
山崎 妙子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.155-159, 1996-05-20
参考文献数
9
被引用文献数
3

1 0 0 0 OA ワニ料理

著者
山崎,妙子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, 1996-05-20
著者
中塚 康雄 天野 正明 垂井 健 坂本 守行 前川 明俊
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】大麦高含有食パンの普及のためには,低コストでふっくらとおいしく調製できる製パン技術の構築が喫緊の課題である。そのために大麦高含有食パンにおける製パン性支配因子とそのメカニズム,特にグルテンネットワークと食物繊維間の相互関係を検討し,大麦高含有食パンの調製技術に反映させた。</p><p>【方法】リテイルベーカリーで使用されている製パン機器類を使用して,山型食パンを調製した。基本配合は大麦粉0〜50%/小麦粉100〜50%の範囲で変化させた。それ以外の調製材料は,塩1.5%,砂糖8%,液種酵母8%のみとした。大麦粉は4品種(うるち性2種,もち性2種),小麦粉は2品種(強力粉,超強力粉)を用いた。大麦の製粉はピンミルを用いた。食物繊維と澱粉粒の解離状態をみるために,最初の製粉後に53μmメッシュの篩で分級し,53μmメッシュを通過しない粗大粒子群を再度製粉し,53μmメッシュの篩で分級し,それぞれに分級された大麦粉を用いて製パン試験を行った。次に製パン性改善の試みとして,dough ミキシング時に酵素製剤を微量添加した。大麦粉の物性評価として,食物繊維量,粒度分布,SEM形態観察を行った。製パン後の物性評価として,膨化率,表面割れ性,パン内部構造を比較し,併せて食味評価を行った。</p><p>【結果および考察】大麦品種の影響として高アミロース含量のうるち性品種が高膨化率を示した。小麦品種の影響として高蛋白質含量の超強力粉が最も高膨化率を示した。製粉〜分級の繰り返し試験では,分級後の微粒子群で膨化率の顕著な回復が見られ,食物繊維と澱粉粒の解離が進んでいた。酵素製剤の微量添加によってグルテン無添加型大麦30〜40%含有大麦パンの調製が可能となった。</p>
著者
伊藤 美穂 成田 亮子 赤石 記子 色川 木綿子 宇和川 小百合 大久保 洋子 香西 みどり 加藤 和子 佐藤 幸子 白尾 美佳
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」に基づき、昭和40年頃に食べられていた東京都における家庭料理について聞き書き調査を実施した。今回は、主菜について、23区、都下、島しょの特徴を明らかにすることを目的とした。<br>【方法】東京都に40年以上居住している70歳以上の都民を対象に、昭和40年頃に食べられていた家庭料理について聞き書き調査を実施した。主な調査時期は平成24、25年であるが、随時追加調査を行った。東京都を23区の東部、西部、南部、北部と都下、島しょの6地域に分け、当時食されていた主菜について肉、魚、卵、豆・豆製品、その他に分類して考察した。<br>【結果】肉料理は、23区で多く出現し、中でもすき焼き、とんかつ、ロールキャベツ、餃子などが挙げられた。その他、ステーキやメンチカツ、カレー、ハンバーグなどの洋風料理がみられた。魚料理は、23区では鮭の塩焼き、あじの干物、身欠きにしんの他、種々の魚介を刺身や焼き魚、煮魚、ムニエルにして食していた。都下では、多摩川や浅川などが近いため、川魚のやまめやあゆの料理がみられた。島しょでは、くさやが食されており、伝統的な魚料理の伝承がみられた。その他にもあおむろ、とびうお、ぶだいなど他地域ではみられない魚を使った料理が挙げられた。卵料理は、卵焼き、目玉焼きなどが挙げられ、23区ではオムレツもみられた。納豆や豆腐が23区の日常食に多くみられた。その他の料理として、天ぷらが多くの地域でみられた。23区の東部と北部と比較して、西部と南部に洋風料理が多くみられた。これらの地域では高度経済成長期の中で、食生活が変化していく様子が推察できる。一方、都下や島しょでは、地域の食材に根差した伝統的な食生活がみえた。
著者
春日 敦子 藤原 しのぶ 菅原 龍幸 青柳 康夫
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.201-206, 1996-08-20
参考文献数
30
被引用文献数
1

椎茸の旨味成分の一つである5'-ヌクレオチドは一連の酸素反応により、RNAから生成され、無味のヌクレオシドに分解される。この過程に於いて、昇温速度の違いが5'-ヌクレオチドの生成に影響を及ぼすことは既に報告されている。そこで、実際に家庭で調理を行う場合を想定し、熱付加の様相や組織の損傷方法を変えた時の、5'-ヌクレオチドの蓄積量について検討した。熱付加方法の違いでは、昇温が短時間である沸騰した湯で加熱や500Wのような高出力電子レンジ加熱の場合。5'-ヌクレオチド増加量は少なく、出力の小さい100Wレンジ加熱や水から加熱した場合は多く蓄積された。また、組織に損傷を与えると、自己消化能は高まり5'-ヌクレオチドは増加するが、包丁の柄で叩くより組織の損傷の度合が大きいと考えられる。一晩冷凍し組織を損傷させてから加熱した方が5'-ヌクレオチドは多く蓄積された。また、冷凍後の解凍操作として、冷蔵庫内自然解凍、電子レンジ解凍、解凍なしの3通りについて水から加熱し、5'-ヌクレオチド含量を比較検討したところ、冷蔵庫内自然解凍は蓄積が少なく、解凍なし、電子レンジ解凍の順に増加した。また、試料を-40℃ブリーザーに保存し、経時的に冷蔵庫内自然解凍、電子レンジ解凍し、それぞれ水から加熱したときと加熱操作を行なわない場合のRNAと5'-ヌクレオチドを測定した。冷蔵庫内冷凍又は電子レンジ解凍し加熱した場合、5'-RNA、5'-UMP、5'-CMPは30日以降若干減少している傾向にあったが、5'-GMP、RNAはいずれの場合もほとんど変化が認められなかった。
著者
竹中 真紀子 三宅 紀子 三好 恵子 長田 早苗 小野 裕嗣
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.14, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】アクリルアミド(AA)は、食品を120℃以上で加熱したときにメイラード反応によって非意図的に生成する有害化学物質である。これまでに、炊飯時のAAの生成については、玄米や発芽玄米は精白米よりもAAを生成しやすいことなどが報告されているが炊飯条件による影響等の詳細は不明であった。そこで本研究では、玄米について加圧調理を含む様々な条件で炊飯し、炊飯後のAA濃度に関係する要因を見出すとともに、AAの低減に資する知見を得ることを目的とした。【方法】各種調理器具(圧力鍋(146、80、0 kPaG(常圧)の異なる加圧条件が可能、内鍋を使用可能)、炊飯器(マイコン式、IH加圧式)、土鍋)を用いて、4℃で16時間以上浸漬した玄米を炊飯した(n=4)。炊飯時に鍋内側底面および米(飯)中央部の温度を測定した。炊飯後、飯全体を攪拌し、一部を採取してAA濃度を測定した(検出限界 0.2 μg/kg、定量下限 0.5 μg/kg)。【結果】炊飯玄米中のAA濃度範囲は2~8 μg/kg、各種炊飯中の中央部の最高温度範囲は100~125℃であったが、AA濃度と最高温度の間に明確な相関は認められなかった。内鍋を使用した圧力鍋での炊飯を比較すると、加圧(146 kPaG)条件では常圧条件よりも炊飯玄米中のAA濃度が有意に高くなり、加圧による高温がAAの生成に与える影響が確認された。また、調理器具の種類や炊飯時の水量など、鍋肌でのおこげの出来やすさとも関連する複数の要因がAAの生成に少なからぬ影響を与えていることも示唆された。炊飯の際の加水量を増やすと、検討した全ての圧力条件においてAAの生成量は有意に減少したことから、玄米の炊飯でAA生成量を低減させるポイントとなりうることが示唆された。※農林水産省の委託研究事業を活用して本研究を実施した。
著者
湯川 夏子 飯塚 真由 岡田 利子 昆布 睦育巳 明神 千穂
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】料理活動は認知症ケアや予防に効果があるとして「料理療法」を提唱し実践研究を進めている<sup>1)</sup>。また現在、地域包括ケアが推進され、地域における介護予防の推進が重要である。本研究では高齢者地域サロンにおいて、健常または軽度認知障害(MCI)の高齢者に対して料理活動を行い、その効果の検証を目的とする。<br><br>【方法】2017年9-10月、高齢者地域サロンにおいて料理活動を合計5回実施した。参加者は1回10-17名、スタッフは4-6名であった。介入前後に参加者に対し、質問紙調査(基本属性、料理に対する意識、主観的QOL)およびMCI検査(タブレット型の物忘れ相談プログラム・日本光電社製)を行った。毎回の活動後には感想用紙の記入を求めた。また、スタッフによる参加者の観察記録(筆記、ビデオカメラ)を行うと共に、「料理療法グループ全体評価表」<sup>1)</sup>に基づく各回の評価をおこなった。<br>【結果】参加者は独居者が多く、集まって料理や食事をすることに対する満足度が高かった。4回以上参加した7名(うち1名男性)は、全員健常な高齢者であり、MCI検査結果に変化はみられなかったが、主観的QOLは、4名が向上した。また、回毎に対人関係が向上したという感想が増加し、協調する姿がみられる等、料理活動により人間関係の構築がなされた。一方、既存の全体評価表では満点になることが多かったため、毎回目標を立てて実施・評価するPDCAサイクルの構築が重要であると示唆された。また今回の結果を受けて、健常な高齢者を対象とした活動に沿う評価表改良案を作成した。以上より、料理活動を介した居場所づくりは、高齢者のQOLを高め、介護予防に寄与すると期待される。<sup>1) </sup>湯川, 前田, 明神:認知症ケアと予防に役立つ料理療法, クリエイツかもがわ (2014).
著者
柴田 圭子 渡邉 容子 安原 安代
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.411-419, 2007-12-20
参考文献数
26
被引用文献数
3

スープストックの呈味と呈味成分における動物性抽出材料の組合せ効果と野菜の添加効果を検討した。試料ストックは動物性材料30%(牛すね肉,鶏がらを単独または組合せ)と野菜10%(玉ネギ50%,人参25%,セロリ25%)により調製した。更に,標準試料(B20-C10-V;20%牛すね肉,10%鶏がら,10%野菜)を実験試料および市販品と比較し,標準試料の性質の検討と市販品との比較も行なった。研究室の熟練パネルにより評価したところ,鶏がら単独のストックは牛すね単独のストックより好まれ,混合ストックは牛すね単独のストックより好まれた。ストックへの野菜添加は,甘味・うま味・総合評価で有意に向上し,特にストックのうま味程度が程よいMSG等価濃度65mg/100mlあたりで向上した。更に,主成分分析より標準ストックの食味はバランスがとれていた。
著者
由良 亮 浜野 純 萩原 勇人 楠瀬 千春
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】包丁技術の育成は、栄養士養成において必須の課題である。この技術は調理経験によって、比較的誰でも習得できるものである。しかし、近年、入学までの調理経験が少ない学生が増加している。そのために、卒業までに十分に期待されるだけの練度を積むことができない状況にある。<br />こうした、練度を要する技術は、無意識・無自覚で行う所作に違いがあると考えられる。しかし、無意識・無自覚であるために、熟練者も学習者もその違いに気がつくことは難しい。そのため、技術向上につながる的確なアドバイスが難しいと考えられる。そこで、包丁操作を詳細に記録する方法を検討した。これにより、その人の包丁操作の特徴を見出すことができれば、それを熟練者との違いを明確にすることできると考えられる。そして、その人の上達を促すアドバイスが可能となる。<br />【方法】本研究では、その方法として6軸モーションセンサー(3軸加速度,3軸角速度)を利用した。近年これらのセンサーは非常に小型化しており、包丁操作を妨げることなく、その状況を記録することができる。<br />このセンサーを、包丁の柄の両端に取り付けて、キュウリの小口切り,人参と大根のイチョウ切り,大根の桂むきの動作を記録した(サンプリングレート 200 Hz)。その記録を高速フーリエ変換にかけ、周波数解析を行った。そして、切り方および被験者について比較を行った。<br />【結果】どの切り方および被験者においても、包丁操作のパワースペクトルは概ね15 Hz 未満の周波数領域に集中していた。また、両端のセンサーが検出した加速度は、信号強度に差異が認められた。しかし、角速度ではわずかな違いしか認められなかった。<br />それぞれの材料・切り方において、パワースペクトルに明確な違いが認められた。キュウリの小口切りでは,加速度・角速度のパワースペクトルに明確な倍音成分が認められた。人参のイチョウ切りでは,包丁の切断動作に伴う軸方向で,加速度・角速度スペクトルに特徴的なピークが確認された。大根のイチョウ切りでは一定の傾向は認められなかった。<br />また、被験者間においても明確な違いが認められた。違いについては、解釈を検討する必要があるものの、特徴点を見出すことが可能と考えられる。
著者
西澤 千惠子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】大分県直入郡入田村(現大分県竹田市)で大正3(1914)年8月の5日間、岡山県小田郡在住の講師を招き料理講習会が開催された。一般の人々の食の変遷に関する研究の一環として、このとき使用された冊子「和洋料理の枝折」に注目し、料理の再現を試みた。<br>【方法】冊子「和洋料理の枝折」の原文はカタカナ表記なのでひらがな表記に改め、分量も尺貫法表記からメートル法表記に換算した。記載されている全91項目のうち調理法が81項目と最も多かった。この中から材料が入手可能な料理を再現し、さらに一食献立を作成して栄養価を評価した。<br>【結果】調理法は日本調理78項目、西洋調理12項目、中国調理1項目である。日本調理が多いが、西洋調理の中には「赤ソース」、「ジャム」、「カツレツ」、「コロッケ」という記述があり、一般の人々の中にこれらの言葉が浸透しつつあることが推察された。「茄子のみそ和え」、「南瓜の丸蒸料理」、「泡雪まんじゅう」、「甘藷ようかん」、「ゼリー(砂糖と食塩で和えたポテトサラダ)」「巻きコロッケ(ロールキャベツ)」は、現在、食されている料理とよく似ていた。「豆腐にて鰻の蒲焼き」、「豆腐のかまぼこ」は模造食品がこの時代に作られていたことを示唆している。「折衷花カツレツ」は初めての料理であった。これらの料理を試食したところ、現在の若者にも受け入れられるものであった。さらに油の使用量が少ないために熱量を低く抑えられることが判明した。今後は、このような講習会の時代背景や、現在食されている料理との関係などを調べていく予定である。
著者
萱島 知子 武富 和美 副島 順子 橋本 由美子 成清 ヨシヱ 西岡 征子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p>【目的】九州北部にある佐賀県は、北は玄界灘、南は有明海という異なる海に面し、肥沃な佐賀平野では二毛作が盛んに行われてきた穀倉地帯である。また、世界的に知られている有田焼のように陶磁器の産業も発展してきた。これまで、昭和35〜45年頃の家庭料理について「主食」、「おやつ」、「主菜」、「副菜」の聞き取り調査の内容を報告し、地域特性にあわせた暮らしぶりを明らかにしてきた。今回は、さらに「行事食」について報告し、次世代に伝え継ぐ家庭料理として、その特徴を考察する。</p><p>【方法】調査時期は、平成24〜26年度である。対象者は地域の食文化に精通し、現地居住歴が長い方とした。地域毎に聞き取り調査を行い、一部の料理は実際に調理してもらった。調査地域は、地理的特徴から県内を7地域に分け、松浦郡有田町、武雄市山内町、杵島郡白石町、鹿島市、唐津市、佐賀市、神埼市を対象とした。</p><p>【結果・考察】まず、正月料理として、焼き物の里として知られる有田地域にて、窯元ならではのエピソードが「鏡餅」や「にらみいわし」といった料理にて語られた。また、1月7日には、「七草の味噌おつゆ」という味噌汁を、無病息災を祈願し朝食で食べていた。さらに、6月1日は山登りの日とされ、仲間と一緒に「えんどう豆のおにぎり」を食べていた。次に、秋のおくんち料理として、有田地域では「栗入りせっかん」、「煮ごみ」、「鯛の煮ふたち」といった料理が、色鮮やかな有田焼の大皿に盛り付けられ、振る舞われていた。「煮ごみ」は、山内地域でも作られ地域による相違点がみられた。以上より、年中行事を大切にし、人々の交流と共に食を楽しむ様子がみられ、地域特性にあわせた豊かな暮らしぶりがうかがえた。</p>
著者
石井 貴子 宮澤 節子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.122, 2011

【<B>目的</B>】従来,行事食や儀礼食は各家庭において親から子へと伝承され,ハレの日の食事として共に祝ってきた。しかし近年では家庭から行事食等が消えつつあり,子の代に伝承されなくなってきた様に思われる。そこで食や栄養について学んでいる本学学生が,行事や儀礼およびそれらにまつわる食についてどれだけ認識・経験しているか,その現状を調査した報告を行う。<BR>【<B>方法</B>】2009年12月~2010年2月,本学学生およびその家族を対象に自記入式のアンケート用紙(調査用紙は日本調理科学会作成全国統一様式を使用)を配布し,後日回収した。今回はその中より本学学生190名(全体の82%)を調査対象とし,行事17種,儀礼13種の認知度等について集計を行った。<BR>【<B>結果と考察</B>】認知度の高い行事は大晦日,正月・節分・クリスマスであり,これらの行事を認知している人の90%以上が経験もしていた。逆に認知度の低い行事は,重陽の節句であった。また喫食経験率の高いものは,クリスマスケーキ,冬至の南瓜,年越しそば,うなぎの蒲焼であった。低いものとして重陽の節句の菊酒の経験が一人だけあった。通過儀礼では七五三,誕生日,成人式の認知度が高く,低いものはお七夜,百日祝いであった。儀礼食では,お赤飯(小豆飯)が祝い事の席ではよく食べられていた。また誕生日のケーキ,千歳飴の喫食率が高かった。行事・儀礼いずれも認知度・喫食率の高いものは,各家庭や各種教育機関等での経験,食材や料理の調達しやすさ,マスコミュニケーションの影響が考えられる。またお七夜や百日祝いは対象が生後間もない頃の儀礼のため,本人の認知度が低かったと考えられる。
著者
高塚 千広 村上 陽子 川上 栄子 新井 映子 市川 陽子 伊藤 聖子 神谷 紀代美 清水 洋子 中川(岩崎) 裕子 竹下 温子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】 静岡県に伝承されてきた間食や行事食に関する家庭料理の中から、次世代に伝え継ぎたいおやつのあり方や特徴について考える。<br />【方法】「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の調査ガイドラインに基づき、静岡県東部(沼津市、富士宮市、伊東市)、中部(静岡市、焼津市、藤枝市)および西部(袋井市、浜松市)の各地域において居住歴が30~81年の男女61人を対象に聞き書き調査を実施した。<br />【結果】昭和35~45年頃の食料事情と聞き書き証言を踏まえると、家庭では「おやつ」の習慣は定着していなかったと解釈される。日常食として、さつまいもや小麦(粉)の料理が静岡県全域にあり、ときには間食に用いられていた。その他、魚介 (イカ嘴、イワシ等の稚魚、貝類)、寒天、小豆、落花生、雑穀(キビ、ソバ)、種実類(トチ)等が間食になることがあった。炒ったソバやアズキを石臼で挽いた「たてこ」や、複数の穀類と豆を組み合わせた「とじくり」は西部特有である。もち米(餅)・うるち米(団子)の菓子は、正月や五節句、仏事用で、柏餅に材料の地域差があり、大福の形状や名称に変形が見られた。屋外の遊びの場面で、子どものおやつに通じる食事があり、川で採った小魚を河原の焚き火で加熱したり、山野で果実を摘んだり、駄菓子屋では、薄いお好み焼き、おでんこんにゃく、アイスキャンデー等があった。中部では明治以降から製餡業が盛んで、現在も県内に製餡業者が多く存在する。以上のことから、静岡県では、おやつに適する様々な農水産物の保存技術や料理が様々な形で伝承されてきたことがわかる。これらの食材は、噛みごたえ等の食感、色や香りを味わうことができ、デンプンやカルシウム、食物繊維等の補給にも役立つ。
著者
秋吉 澄子 原田 香 小林 康子 柴田 文 川上 育代 中嶋 名菜 北野 直子 戸次 元子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p>【目的】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」において、地域に残されている特徴ある家庭料理を、地域の暮らしの背景とともに記録し、各地域の家庭料理研究の基礎資料、家庭・教育現場での資料、次世代へ伝え継ぐ資料などとして活用することを目的に、聞き書き調査を行った。【方法】熊本県内を6地区(阿蘇、県北、熊本近郊、県南、天草、球磨)に分類し、昭和35〜45年頃に各地域に定着していた家庭料理について、11名の協力者を対象に聞き書き調査を行った。その調査結果や参考文献を基に、熊本県の行事食の特徴を検討した。【結果】正月には「雑煮」、「辛子蓮根」、「のっぺ」の他、「吉野ずし」、「このしろの姿ずし」、「ねまりずし」などが各地域で作られていた。御正忌にはお寺で「こしょう大根」が作られ、参拝者に振る舞われた。ひな祭りには「ひともじのぐるぐる」や「みなみそ」が、6月中旬の田植えを終えた頃には「さなぼりまんじゅう」が食べられた。7月や8月の盆には「あんこかし」、「棒だら」が作られ、それ以外にも人が集まる際には地元で採れる山菜を使ったおこわや煮しめが作られた。地域の行事では、2月初午に天草地区で「がね揚げ」、3月上旬益城町木山地区の初市で「市だご」、3/16人吉・球磨地区の猫寺さんの祭りで「お嶽だんご」、5/31〜6/1八代地区の氷室祭で「雪もち」、10/25多良木地区の天神さんの祭りで「つぼん汁」、11/15和水地区の山太郎祭で「がね飯」、その他の祭りや結婚式などで天草地区では「ぶえんずし」が作られた。行事食は地元で採れる四季折々の旬の食材を活用し、地域の人々の楽しみとして暮らしに根付いていることが分かった。</p>
著者
駒田 聡子
出版者
日本調理科学会
雑誌
大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.153, 2008

<BR> 【目的】<BR> 各家庭における食教育能力の低下してきている今日、子どもを預かる保育所の食育実践が非常に重要になってきている。しかしその一方で食育というと何か特別なことを行わなければいけない、何をしたらよいのかわからないという声が保育士から聞かれる。そこで、保育所職員に対しアンケートを行い食育実践の現状・ニーズ等を調査した。<BR>【方法】<BR> 三重県T市公立30園1,2,3,4,5歳児担当保育士と調理担当者の代表を対象とした。配布総数180、回収数154(回収率85.6%)。調査時期は平成17年1月。<BR>【結果】<BR> 食育実践は、約8割が行っていた。食育実践上困難と感じていることには、「食育の内容がわからない」「職員間の意識の差」「クッキング保育が制限されること」などがあがった。食育実践上ほしい情報は、「他園の取り組み」が最も多い。自由記述では、「1歳児からすでに菓子類を食事にしたりして、家庭の食事は簡易・簡単にすませられている(おかずとはパックに入ったものと思っている子がいる)」実態や「子どもの食べる意欲が感じられない」実態、「園の働きかけが理解されない家庭が多い」などの問題と、0-157事件以来、「園での調理体験や収穫物を食べることが行政より禁止され、子どもに生きた食体験を積ませることが困難になった」ことに対する不満・怒りの声が上がった。今後は、園全体で保護者の意識を変容させることに取り組むことや、クッキングから子どもを遠ざけるのではなく、食体験を様々に積む中で食品衛生に対する知識・技術を身につけさせていけるような取り組みを行政も含め考えていく必要があることがわかった。
著者
西澤 千惠子 立松 洋子 望月 美左子 宇都宮 由佳 篠原 壽子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】伝統的な地域の料理が伝承されにくくなっている現在,大分県の次世代に伝え継ぐ家庭料理を暮しの背景と共に記録し,家庭料理研究の基礎研究,家庭や教育現場でも利用可能な資料とする。</p><p>【方法】本研究は,平成24〜26年度に大分県内8地域における昭和35〜45年頃までに定着していた家庭料理について,60歳代以上を対象とし聞き書き調査を行なった結果から,大分県で食されていた副菜とその特徴について検討した。</p><p>【結果および考察】大分県は九州の北東部に位置し,東側は遠浅の瀬戸内海とリアス式海岸の豊後水道に面し,西側が九州山地で,その間に平野や盆地が点在するという自然豊かな地域のため,新鮮で豊富な食材に恵まれている。当時は流通網が発達しておらず,県内全域に食材が行き渡ることは難しく,その土地で季節ごとに入手・収穫した食材を大切に保存して利用していた。これらを先人の知恵に基づいてバラエティーに富んだ料理にしてきた。生産量日本一の干し椎茸を使い「含め煮」や「辛子漬け」に,瀬戸内海で採れる海藻イギス草を固めて「いぎす」にした。内陸地域では,身近にあるドングリを粉状にしてアクを除いて保存しておく。ここに水を加えて加熱しながら練ると,海藻から作った「いぎす」に似た「かたぎの実のいぎす」になる。また,早春に採れる海藻クロメを様々な工夫を凝らして食感と味を保ちながら,目先を変えた料理として食べていた。「きらすまめし」は大豆を余す所なくおいしく食べようとした倹約料理であり,「オランダ」は大分の方言「おらぶ(大きな声を出す)」から名付けられた野菜料理である。現在,家庭で日常的に作られている料理がある一方,ほとんど作られなくなっている副菜も多い。</p>
著者
岡本 洋子 土屋 房江 前田 ひろみ 三谷 璋子 三好 康之 吉永 美和子 井川 佳子 大下 市子 奥田 弘枝 奥山 清美 上村 芳枝 亀井 文 倉田 美恵 杉山 寿美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.160, 2005

<br>【目的】日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学:魚介類」の一環として、広島県において調査を行った。今回は、あなご、かき、まだこ(食品成分表の食品番号10015:10292:10361)の利用実態について調べることを目的とした。<BR>【方法】広島県内の14地域で、質問紙調査を実施した。14地域を島嶼部、都市沿岸部、都市内陸部、中国山地に4区分した。調査項目は、魚介類の種類、入手方法、手作り・購入、調理法、日常食・行事食度等である。調査対象者は20歳代から70歳代の171名である。調査時期は2003年10月_から_2004年2月。<BR>【結果】(1) 記載魚介類は212種類(食品成分表)、総記載料理数は4,684であった。(2) 調査者数に対するあなごの出現比率では、島嶼部83.5%、都市沿岸部80.6%、都市内陸部45.9%、中国山地18.8%であった。調理法では、焼き物と飯料理が多くみられ、照り焼き、ちらしずし、あなご飯、巻きずし、刺身(島嶼部)、雑煮、茶碗蒸し等に調理された。(3) かきの出現比率では、島嶼部63.1%、都市沿岸部91.2%、都市内陸部89.5%、中国山地73.0%であった。調理法では、4地域いずれにおいても、フライ、鍋物、酢がきが多くみられた。殻付き素焼きやグラタン料理もみられた。(4) まだこの出現比率では、島嶼部69.9%、都市沿岸部63.1%、都市内陸部36.3%、中国山地75.3%であった。調理法では、4地域いずれにおいてもなま物(刺身、酢の物)や茹で物(ゆでだこ、ぬた)が多くみられ、揚げ物(島嶼部ではたこ天)、たこの煮物やたこ飯(都市沿岸部)、にぎり寿司、たこ焼き等に調理された。
著者
福田 ひとみ 勝川 路子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的「あん」は和菓子に広く使用されているが、若者世代では和菓子離れが進み、それに伴い「あん」の消費が減少し続けている。「あん」には食物繊維が含まれており、便秘を含む健康問題にも有効な食品である。新しい「あん」の利用法を提案するために「あん」の市場調査と若者世代を対象にした「あん」に関する嗜好調査を行った。<br>【方法】2017年6月にコンビニエンスストア3社の市場調査を行った。販売されているスナック菓子、チョコレート菓子、和菓子コーナーの商品の原材料名を調査した。さらに、本学食物栄養学科学生373名を対象とし、「あん」に関する嗜好調査を自己記入方式で行った。回収率は100%であった。<br>【結果】コンビニエンスストアで販売されていた商品(総数1080)の原材料表示から「あん」が含まれていることがわかった商品は、29品目で全体の2.4%であった。「あん」に関する嗜好調査では、「あん」が好きと答えた学生は98%であった。好まれた「あん」は、こしあん(全体の74%)、白こしあん(65%)、さつまいもあん(65%)が挙げられ、粒あん(34%)は好まれなかった。「あん」が好きな理由は「甘さ」、「味」、「舌触り」と答えた学生が多く、嫌いな理由は「舌触り」、「味」であった。この結果から、若者は均一でなめらかな舌触りをより好むことがわかった。また、「あん」を食べる頻度は月に1回が最も多く、午後の間食として食べていた。好んで食べる「あん」商品は大福、たい焼き、フルーツ大福であり、もちもちとした食感が好まれる傾向が見られた。これらの結果は、健康問題にも有効な食品である「あん」を若者世代により効果的に提案する条件が示唆された。