著者
市川 竜太郎 小林 秀 小倉 あい
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.141, 2012 (Released:2012-09-24)

目的消費者が行う野菜の冷蔵保存の方法として、購入した状態のまま保存するか、食料保存袋に野菜を入れ替えて保存する方法が一般的に行われている。一方、野菜類は保存中に傷ませた経験のある食材であり、鮮度を保持する方法を知りたい食材として挙げられている。そこで、野菜としてホウレンソウを用い、保存方法の違いが保存後の鮮度に及ぼす影響について検討した。 方法ホウレンソウは東京都内にて購入した市販品をそのまま供試試料とした。重さ約100gのホウレンソウをそのまま保存した場合、食料保存袋に入れて保存した場合、および含水不織布でホウレンソウを包み食料保存袋に入れたものを2週間家庭用冷蔵庫にて保存し試験に供した。保存後のホウレンソウの鮮度は、重量、ガス(O2,CO2)濃度、色差計による色調変化、官能評価(指標として、総合的な新鮮さ・しおれ・傷み・黄変・可食の可否)を行った。 結果各々の条件で保存したホウレンソウの重量を測定した結果、含水不織布で包み食料保存袋で保存したものは、保存前と比較し重量が約10%増加していた。一方、ホウレンソウをそのまま保存した条件では保存前と比較し約17%の重量減少が認められた。食料保存袋にて保存した条件では顕著な重量変化は認められなかった。また、ガス濃度を測定した結果、保存条件の違いによる差は認められなかった。しかしホウレンソウの色調変化では、含水不織布で包み食料保存袋にて保存したものが最も緑色を維持しており、次いで食料保存袋による保存、そのままの状態での保存の順で葉の黄変が認められた。また、各保存条件で保存したホウレンソウの官能評価では総合的な鮮度で相違が認められ、含水不織布で包み食料用保存袋で保存したものが最も鮮度が良いと評価された。含水不織布を利用した保存条件では、葉からの蒸散作用が抑制されるとともに、ホウレンソウが水分を吸収し、鮮度を保持していたと推察された。
著者
成田 亮子 島村 綾 名倉 秀子 峯木 眞知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2016

(目的)<br> 琉球王朝菓子ちんすこうは、豚脂(ラード)を使用し、西洋の焼菓子とは異なった食感と風味に特徴があり、保存性にもすぐれている。ラードの代わりに多種の油脂を用いて調製し、テクスチャーに与える影響を調べた。<br>(方法)<br> ちんすこうはラード(油脂)、薄力小麦粉(日清フーズ㈱)、砂糖(三井製糖㈱)で調製する。油脂は8種(ラード、バター、アボガドオイル、オリーブオイル、キャノーラ油、ココナッツオイル、胡麻油、米油)で、基本配合は予備実験より、小麦粉120g、砂糖90g、油脂58gとした。油脂を60℃に温め、砂糖を加え、みぞれ状態になったら、小麦粉を加えた。それを、&Oslash;3.5㎝の大きさ(各15g)に形成後、150℃で28分焼成した。焼成後の試料は、重量、体積、比体積、水分含有率、表面の焼き色、破断特性を測定し、官能評価を行った。焼成後の伸びを示すスプレッド値は、直径(㎜)/厚さ(㎜)で算出した。製品の水分含有率は赤外線水分計(㈱ケット)で110℃、80分の条件下で測定した。破断特性はレオナーRE2-3305 B-1(山電(株))で測定した。<br>(結果)<br> 8種の油脂を用いた試料では、ラードを用いた試料より、破断応力および破断歪が低く、もろい製品であった。アボガドオイル試料、オリーブオイル試料では、もろさおよびもろさ歪がかなり低かった。キャノーラ油試料ではスプレッド値、比体積、水分含有率がラードに近い値を示した。ココナツオイル試料では、スプレッド値が6.0と最も高く、水分含有率は3.6%で最も高い値を示した。胡麻油試料ではもろさおよびもろさ歪が高く、水分含有率が2.6%で最も低かった。油の種類により、食感の異なるちんすこう製品ができた。
著者
平島 円 奥野 美咲 高橋 亮 磯部 由香 西成 勝好
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.50, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】澱粉のpHを13よりも高くすると,加熱せずに糊化(アルカリ糊化)が起こることはよく知られている。しかし,こんにゃくや中華麺などの食品に含まれるアルカリ性物質の濃度はアルカリ糊化を起こすほど高くない。そこで本研究では,食品中でみられる高pHの範囲内で澱粉の糊化および澱粉糊液の粘度に及ぼすpHの影響について検討した。【方法】澱粉にはタピオカ澱粉(松谷ゆり8,松谷化学工業(株))およびコーンスターチ(コーンスターチY,三和澱粉工業(株))を用い,その濃度は3.0,4.0および20wt%とした。また,澱粉の糊化はNa塩の影響を受けることから,アルカリの影響についてのみ検討できるよう,Sørensen緩衝液を用いてNa濃度を一定とし,pHを8.8–13.0に調整した。アルカリ無添加の澱粉をコントロール(pH 6.5付近)とした。20wt%の澱粉を用いてDSC測定を,また,3.0wt%および4.0wt%の澱粉を用いて粘度測定,顕微鏡観察,透過度測定を行い,澱粉の糊化および澱粉糊液の特性について検討した。【結果】pHを8.8–12程度まで高くすると,タピオカ澱粉およびコーンスターチの糊化温度およびエンタルピーは,コントロールよりもわずかに高かった。すなわち,食品で扱われる高pHの範囲内では,いずれの澱粉も糊化は起こりにくくなるとわかった。その影響を受けて,pHを11程度まで高くしたタピオカ澱粉およびコーンスターチ糊液の粘度はコントロールよりも低かった。しかし,pHを12よりも高くすると,糊化温度とエンタルピーはコントロールよりも低く,常温で澱粉粒子内の結晶構造が壊れるとわかった。したがって,pHを12よりも高くすると,澱粉の糊化は起こりやすくなり,澱粉粒子からのアミロースやアミロペクチンの溶出量が多く,糊液の粘度と透過度は高くなるとわかった。  以上の結果より,食品にみられるアルカリ性の程度(pH12以下)では澱粉の糊化が起こりにくくなるとわかった。
著者
坂本 裕子 桐村 ます美 豊原 容子 福田 小百合 湯川 夏子 米田 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】平成24・25年度特別研究として京都府下の昭和30〜40年代の家庭の食について行った聞き取り調査から,副菜の地域別特徴を探った。</p><p>【方法】京都府下の北部(丹後,舞鶴,丹波),京都市内,南部(京田辺,宇治田原)の地域において,64歳から84歳の計22名を対象として平成25年12月〜平成26年2月に聞き取り調査を行った。これより地域別に副菜の特徴を比較検討した。</p><p>【結果および考察】各地域とも季節ごとに地元で採れる野菜や山菜,芋,豆を中心に,日々の副菜を作っていた。北部や南部では野菜や豆は自給自足,市内では店での購入が多かった。調理法としてはお揚げと炊く煮物,和え物,汁物が多く,大根をはじめ野菜はさらに多様な漬物や干し物にして保存性を高め料理に利用していた。古漬け沢庵はひと手間をかけ,「ぜいたく煮」として府下それぞれで食べられていた。野菜や芋の煮物は全域で「○○の炊いたん」と呼んでいたが,わかめ等の海産物利用は北部の海寄りで多くみられた(料理例「わかめのパ−」)。</p><p>地域別に料理をみると,汁物は北部で「けんちゃん」,京都市内,南部で「粕汁や若竹汁」が,和え物は北部で「白なます」,市内で「ずいきのごま酢和え」,南部で「古老柿なます」が,常備菜は北部で「ふき味噌や黒豆味噌」,市内で「きごしょうの炊いたんや山椒とちりめんじゃこの炊いたん」が作られていた。漬物は「糠漬」が多いが,市内の北では「すぐき漬やしば漬」も作られていた。保存性を増すとともに,多く収穫した時は南部では「きゅうりとお揚げの炊いたん」を作るなど食材の有効利用が図られていた。福知山では豆,京田辺では田辺ナスを利用した料理が多く見られ,京野菜や地域の特産野菜の利用が進められた。</p>
著者
北山 育子 真野 由紀子 澤田 千晴 下山 春香 安田 智子 今村 麻里子 花田 玲子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】本県では大晦日に祝い膳を家族で囲み、年越し料理を食べて祝う風習があり、その行事食も特徴的なものが多い。また、お盆には法界折を墓前にお供えし、下げていただく習慣がある。近年、伝統的な行事食の伝承が少なくなっている傾向にあるが、本研究ではこの風習がどの程度残っているのか、更に青森県の年越しとお盆の行事食の特徴について明らかにすることを目的とした。【方法】調査は平成21,22年度の日本調理科学会特別研究として全国統一様式による調査票とともに配布した独自の調査用紙により、青森県在住の一般240名(50~60歳代57.1%)を対象に集合自記法及び留め置き法にて実施した。また、学生75名(19~20歳)には大晦日における料理、主な材料、写真撮影を課しレポートに記入させた。調査期間は平成21年12月から平成22年5月までとした。【結果】年取りの祝い膳については、認知度、喫食経験率がともに100%であった。喫食経験率の高いものから煮物、茶碗蒸し、数の子、なまこ、昆布巻き、なますであり、特徴的なものとして子和え72.1%、酢ダコ66.7%であった。また、市販品の利用も多く、カニ67.5%、握りずし63.3%、オードブル(各種料理の盛り合わせ)45.0%などが行事食として根付いている様子が伺えた。地域別にみると、津軽はけの汁66.9%やエビ・鯛の雲平59.3%、南部はいちご煮34.6%、南部・下北はくじら汁35.8%が食されていた。お盆の行事食については、喫食率の高いものから煮しめ、赤飯、ところてんであり、その他に季節のものである枝豆、とうもろこしが食べられていた。
著者
三宅 紀子 酒井 清子 遠藤 知江美 笠原 範子 中山 麻世 野口 佳奈 倉田 忠男
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
巻号頁・発行日
pp.64, 2007 (Released:2007-08-30)

【目的】 生活習慣病の予防にビタミン、食物繊維などを豊富に含む野菜の摂取の重要性は高まっている。浅漬けは日本型食生活によく合う調理・加工法であるが、これまで浅漬けのビタミンC(VC)に関する研究はほとんど行われていない。本研究ではキャベツを用いた浅漬けモデル系における浅漬けのVC含量に対する漬け液中の調味料の影響について調べた。さらに漬物製造過程でVCを添加することにより積極的にVC含量を高め栄養性を向上させた浅漬けの可能性についても検討した。 【方法】 調味料の影響については、市販のキャベツを4種類の調味料(グルタミン酸ナトリウム、食酢、ソルビトール、醤油)をそれぞれ添加した漬け液(食塩濃度;5.5%)に4℃で約18時間漬けて浅漬け試料とした。またVC添加の浅漬けについては、漬け液(食塩濃度;5.5%)に0.1~2%のVCを添加して同様に漬けた。浅漬け中のVC量はHPLC法で測定した。 【結果】 漬け液中の各種調味料の影響についてはグルタミン酸ナトリウム、ソルビトール、醤油は影響を及ぼさなかったが、食酢を添加した場合に対照(食塩のみ)と比較してVC含量が約30%減少し、逆に食塩含量は約1.3倍高くなった。食酢を添加した場合、浅漬け後の漬け液中に、キャベツ中のVC含量の約20%に相当するVCが認められた。酢酸が植物組織の構造変化をもたらし、VCの溶出および食塩の浸透を増加させた可能性が示唆された。また、キャベツ浅漬けモデル系で漬け液にVCを添加したところ、1%および2% VC添加により浅漬け中のVC含量はそれぞれ約200 mg/100g 、400 mg/100gに増加した。1%VC添加試料の嗜好性について官能評価を検討中である。
著者
菱田 瞳 安藤 真美 門上 剛 白坂 直輝 北尾 悟
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.37, 2012 (Released:2012-09-25)

【目的】ホスホリパーゼA2(PLA2)は、卵黄に多く含まれるレシチンなどグリセロリン脂質のグリセロール2位のエステル結合を加水分解し、遊離脂肪酸とリゾリン脂質を生成させ、耐熱安定性、乳化性および起泡性の改善などが期待できる。先に検討したカスタードクリームでは、酵素処理卵黄を使用した場合、冷凍耐性の向上などの利点が明らかとなったが、遊離脂肪酸の影響による苦味が残るため官能評価では必ずしも好まれる結果が得られなかった。今回は、苦味による影響を低くするために高温で焼成するスポンジケーキを対象に、酵素処理の有無による比較検討を行った。【方法】Streptomyces属起源の食品添加物として認可を受けたPLA2を使用した。無改質、分解率50%、分解率80%の3種類の卵黄を用いて170℃、25分の条件で作製したスポンジケーキを測定試料とした。さらに生地を調製後1週間冷凍し焼成(以下A)、および卵黄のみを1週間冷凍し解凍後生地調製・焼成(以下B)した場合も検討した。焼成後、高さや比容積などを測定し、物性測定はクリープメーターを用いた。官能検査は評点法にて実施した。【結果】酵素処理卵黄を用いた場合、分解率に関わらず高さおよび比容積が有意に高く破断エネルギーは有意に低かった。官能検査では、「苦味」は無処理卵黄を用いた場合と差がなく、かつ分解率が上がるほど有意に「甘く」感じられることが認められた。A条件でも同様の結果が得られたが、B条件では高さおよび比容積以外有意差は認められなかった。以上の結果からPLA2処理卵黄を用いたスポンジケーキは、生地を冷凍保存してもボリュームアップ効果や食感・食味の向上が期待できると考えられた。
著者
峯木 真知子 棚橋 伸子 安田 翔
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.15, pp.51, 2003

〔目的〕新食料資源として期待されるダチョウ卵を用いて、前報では起泡性を利用したスポンジケーキを調製し、バター添加によって好成績が得られた。本研究では、ダチョウ卵の卵白量の大きいこととその付着性に注目し、バターの多いフィナンシェを調製し、そのテクスチャー、色などを調べ、官能検査を行ってその適否を調べた。〔方法〕ダチョウ卵は茨城県産42ヶ月齢_から_48ヶ月齢、アフリカンブラック種無精卵(1396.2±213.0g)を用い、対照は白色レグホーン種鶏の市販卵とした。試料は予備実験の結果から、無塩バター(よつ葉乳業製)35g、各卵白70g、上白糖(新三井製糖)60g、薄力小麦粉(日清フーズ)25g、アーモンドプードル(ギャバン朝岡)25gを用いた。バッター各40gを180℃、10分で焼成した。バッターの比重、焼成後のフィナンシェの色(日本電色、ZE2000)、体積、重量、膨化率、水分含有率(赤外線水分計、ケット600)、テクスチャー及び官能検査を行った。組織試料はフィナンシェの中央部を5mm角に切り出し、2.5%グルタルアルデヒド溶液、1%オスミウム酸で固定し走査型電子顕微鏡で観察した。〔結果〕ダチョウ卵卵白を用いたフィナンシェは、バッター比重1.13で、焼成後重量及び重量変化率(87%)は鶏卵を用いたフィナンシェと大差がなかったが、体積及び膨化率(160%)、水分含有率は鶏卵製品より低い傾向を示した。ダチョウ卵で作ったフィナンシェのテクスチャーは、かたさ応力、凝集性で鶏卵を用いたものより低値を示した。製品の色では両者で「感知せられるほどの」違いがあった。16人のパネルによる嗜好型官能検査では、きめの細かさを除いて、いずれもダチョウ卵を用いたフィナンシェが良い成績を示した。
著者
五島 淑子 小野 佑輔 広津 理恵 石田 佳菜絵 前田 綾子 村尾 奈美 柏木 享
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1006, 2009

<BR>【目的】近年日本酒の消費量が減少している。日本の食文化のひとつである日本酒について、将来の酒の消費量に影響を与える年齢層の大学生を対象に、日本酒に対するイメージと嗜好について調査を行い、若者に日本酒を普及させる方法を探る。<BR>【方法】(1)酒のイメージ調査 平成20年6月上旬~7月上旬、山口大学学生290名を対象に、SD法によるイメージ調査を行った。(2)実態調査 平成20年6月中旬から7月中旬、山口大学学生353名を対象に、日本酒の飲酒頻度、日本酒についての関心などについてアンケート調査を行った。(3)日本酒の試飲調査 平成20年12月10日~12日に、山口大学学生102名(20歳以上で試飲後運転をしない人)を対象に、山口大学教育学部食物調理科学教室で、4種類の日本酒(純米酒、地酒)から好きな酒を選ばせた。<BR>【結果】(1)大学生は、日本酒を「アルコール度数が高い」「男性的」「年配向き」「高級」「辛い」とイメージしていた。(2)お酒として一番に思い浮かべるのはビールついで日本酒であったが、最も好きな酒はカクテルついで梅酒、ビールであった。(3)日本酒を飲む頻度は「月1回以下」「飲まない」が6割以上を占めた。(4)「料理にあう日本酒」「日本酒の飲み方」「日本酒の種類」に関心が高かった。(5)日本酒離れが進む原因として、「においがきつい」「アルコール度が高い」「値段が高い」「近寄り難い」「辛い」ためと考えていた。(6)試飲調査の結果、純米大吟醸、発泡純米酒、アルコール度数の低い酒が好まれた。(7)若者に日本酒を普及させるためには、若者が好む種類の日本酒の販売、料理にあう酒や飲み方などについて情報の発信など、日本酒の知識と経験が重要だと考える。
著者
宮島 彩
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】近年,若者の味覚は低下しており,食について学ぶ大学生にも同様の傾向みられる。本研究では,食について学ぶ大学生の味覚の現状を把握し,食生活や食嗜好との関連性について検討する事で,味覚低下の原因を明らかにする事を目的とした。</p><p>【方法】平成31年4月に,本学で食について学ぶ大学生60名を対象に味覚試験として,5味識別試験及び濃度識別試験を実施した。更に,同対象者に食生活と食嗜好についてのアンケート調査を行った。</p><p>【結果および考察】五味識別試験の正解率は,甘味71.1%,塩味71.7%,酸味26.7%,苦味33.3%,うま味38.3%であった。苦味は55%,その他の4味については80%の正解率を想定して試料を調製したため,いずれも想定より正解率が低い結果となった。不正解者に着目すると,甘味,酸味,苦味,うま味では,水と認識して回答した人が多く,甘味では47.1%,酸味では34.1,苦味では42.5%,うま味では40.5%であった。水とは異なる溶液であることが識別できていない人の割合が高いため,刺激閾が高く味覚が低下している事が考えられる。塩味では,うま味と認識して回答した人が47.1%と一番多かった。味質の違いを識別できていない人の割合が高いため,認知閾が高くなっている事が推測できる。濃度識別試験の正解率は,甘味71.7%,塩味53.3%,酸味60.0%,うま味81.7%であった。いずれも70〜80%の正解率を想定して試料を調製しており,甘味とうま味は想定通りであったが,塩味と酸味は想定より正解率が低い結果となった。今後は特に味覚試験の正解率が低いパネリストにスポットを当て,味覚低下改善に向けて検討していく必要性がある。</p>
著者
前田 文子 早瀬 明子 蓮沼 良一 永嶋 久美子 黒川 理加 小澤 陽子 大坂 佳保里 陳 美慧 福永 淑子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成20年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.10, 2008 (Released:2008-08-29)

【目的】 今回提案の調理方法はオーブンを使い、60~90℃の範囲に保ち、温度管理を行ってセミドライ食品を製造する方法である。一般にはセミドライとは、常温で乾燥する方法を言うが、今回の提案した方法では、温度70~100℃の中温で乾燥する方法なので、中温乾燥セミドライ乾燥方法と名づけた。今回の発表ではこの方法により、各種の肉・果物・野菜についてその好適な温度設定などについて明らかにするために行ったことについて報告する。 【方法】 食材には肉類として鶏肉、豚肉、牛肉を、野菜としてトマト、キュウリ、ダイコンを、キノコ類としてエノキ茸、しめじ、エリンギを、果物としてりんご、パイナップル、キュウイを選び実験に供した。実験装置としては日立オーブンMRO-BV100型を改造して温度設定が可能ものを使用した。今回は70~100℃に設定し、90~120分間処理した。 【結果および考察】 全般的に生鮮食材の40~50%の水分量にすると、食材の味は損なわれずに旨味を引きだせることがわかった。肉類の好適な温度は水分の多い果物と比べてやや低い温度の方が良質のものが仕上がることが分かった。ささみ鶏肉の場合は添加物を一切使わなくとも冷蔵保存の場合より、数十倍長く保存できることがわかった。一部の素材では食塩で下処理することにより食味の向上、変色防止に効果があることがわかった。 【まとめ】 食材の味をそのまま生かし、旨味を引き出すことができること、温度設定だけで簡単に美味しい加工食品が出来、食塩を添加しなくても日持ちがよいセミドライ加工が製造できることがわかった。
著者
中谷 梢 片寄 眞木子 坂本 薫 作田 はるみ 田中 紀子 富永 しのぶ 原 知子 本多 佐知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】日本調理科学会平成24~25年度特別研究の「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」において実施した「昭和30~40年代に食べられていた兵庫県の家庭料理」の聞き書きで得られた報告に基づいて兵庫県の主菜の特徴を9つの地域ごとに調べた。<br>【方法】美方郡香美町(但馬・日本海沿岸),丹波市氷上町(丹波・山間部),宍粟市千種町(西播磨・播磨山地),姫路市(中播磨・播州平野),小野市(北播磨・平野部),加古川市(東播磨・平野部),明石市(東播磨・瀬戸内沿岸),神戸市(都市部),淡路市(淡路島)の9地域を選定し,聞き書き調査は平成25~26年に行った。収集した料理の中から主菜について地域の特徴を検討した。<br>【結果】香美町では多く獲れる魚介類を使い「さばのじゃう」(すきやき)や「かれいの煮物」,干物などにした。丹波は鶏を飼い「すきやき」にした。千種では山鳥や山うさぎを捕まえて骨ごと青石で叩いて肉団子にした。姫路では生姜づくりが盛んであり「おでん」を生姜醤油につけて食べた。小野では高野豆腐の加工中にできる粉で「高野豆腐粉と野菜の煮物」,また正月には畑で採れた野菜中心の「煮しめ」が作られた。加古川はクジラ肉で「はりはり鍋」を作った。明石ではたこを塩もみし「やわらか煮」などにした。神戸は「ぐっだき」,「牛肉の佃煮」など牛肉料理や洋食を食べていた。淡路はハモをなますや鍋に,卵を産まなくなった鶏を「すきやき」に入れていた。魚介類については,沿岸部は刺身や焼魚,煮魚にした他,干物や小魚は佃煮などに加工したが,山地や内陸部は塩魚や魚の干物を行商などから入手していた。鯖の塩焼きや魚の干物,飼っていた鶏や卵,揚げの煮物などは県内共通して食されていた。
著者
久保 加織 吉田 愛 石川 直美 堀越 昌子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.174, 2010

<B>目的</B> 輸入柑橘類には、防カビ剤としてポストハーベスト農薬が使用されることが多い。本研究では、日本で食品添加物として使用が認可されている防カビ剤のなかの一つであるイマザリルのレモン各部位での残留濃度を調べた。さらに、イマザリルが添加されている米国産レモンを用いて、保存や洗浄、調理によってどの程度その量が変化するかについて調べた。<BR><B>方法</B> 試料には、2005年~2009年に京都市内あるいは大津市内の小売店から購入した国産および米国産のレモンを用いた。イマザリルは、厚生労働省公定試験法に基づいて抽出後、高速液体クロマトグラフィーにより分析した。レモンの保存は、10℃に設定した冷蔵庫内で行った。洗浄は、水洗やゆでこぼしのほか、洗剤や重曹、酢酸、エタノールを用いて行った。レモンの調理として、レモンティー、レモンのハチミツ漬け、レモンのすりおろした皮とレモン汁を加えたマドレーヌを調製した。<BR><B>結果</B> イマザリル使用の米国産レモンからは、イマザリルが基準内濃度で検出され、内皮や果汁に比べると外皮の残留量が高かった。10℃保存では、国産レモンは約1ヶ月で傷みがみられたが、米国産レモンに変化はみられず、4カ月保存後もイマザリル量の減少はなかった。レモンを水洗した後のイマザリル量は47.6%に減少した。レモンをハチミツに漬けたり、紅茶に加えたりすることで、ハチミツや紅茶にイマザリルが溶出し、50ml紅茶に10gのレモンを30秒間浸漬した時の紅茶への溶出は47.1%であった。焼成後のマドレーヌからもイマザリルが検出され、残存率は51.0%であった。以上のことから、洗浄や調理を行ってもかなりの量のイマザリルが食品中に残存することがわかった。
著者
土屋 京子 長尾 慶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.136, 2007

<BR><B>【目的】</B><BR> 紅茶の種類は数多く、その飲み方も様々である。抽出に用いる茶葉や水の種類、抽出温度や使用する茶器など、その入れ方によっても味や香り、水色(すいしょく)が変わってくる。そこで、本学女子大生を対象にどのような紅茶が好まれているか、調査・検討することを目的とした。<BR><B>【方法】</B><BR> 調査対象は本学女子大生209名とした。本調査に先立ち、日常的に常飲している飲料や茶類についてのアンケートを実施した。これにより紅茶の摂取状況を把握し、それを参考にして、様々な条件で抽出した紅茶について、五段階評点法による官能検査を行った。また、抽出前後の水中のイオン量の変化もみた。<BR><B>【結果】</B><BR> アンケート調査の結果、紅茶は、緑茶・ウーロン茶に次いでよく飲まれており、それぞれ、ティーバッグ・急須(ポット)・ペットボトル(缶)が利用されていた。一般的な飲み方ではストレートティーがよく飲まれていた。よく飲む紅茶の種類は、自宅・喫茶店では無糖ストレートティー(41%)、ペットボトル・缶製品では加糖ストレートティー(49%)であった。抽出する時の環境条件や水の種類により、水色や水中のイオン量に変化がみられた。また、抽出条件を変えた紅茶4試料の官能検査において、抽出条件による有意な差はみられなかった。バリエーションティー6試料のうちでは、加糖レモンティーや加糖ミルクティーが好まれていることがわかった。以上の官能検査の結果より、好きな紅茶としては加糖(レモン・ミルク)ティーであることから、日常よく飲まれる紅茶と好まれる紅茶とは必ずしも一致しないことがわかった。
著者
田中 佐知 早瀬 明子 花坂 照彦 粟津原 元子 畑江 敬子 香西 みどり
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
巻号頁・発行日
pp.92, 2007 (Released:2007-08-30)

【目的】 オーブンレンジでは,コンベクションオーブンによる緩慢加熱,電子レンジによる急速加熱,さらにそれらの組み合わせ加熱がある。前報でこれらの中で急速加熱を長くした組合せ加熱が旨み成分をより保持することが明らかになった。本研究ではこれらの3つの方法で加熱した鶏肉の食味評価を行い,鶏肉のおいしい加熱法について検討した。 【方法】 試料である鶏もも肉(170×120×20mm,250g)をオーブンレンジ内の焼き網上に載せ,緩慢加熱(オーブン210℃加熱),急速加熱(レンジ500W加熱),組合せ加熱(急速加熱→緩慢加熱)の3つの加熱方法により,それぞれ常温(20℃)から試料中心温度が90℃になるまで加熱した。そして,それぞれの試料において,重量保持率,面積保持率,水分量,破断強度,多汁性を測定し,物性の違いを測定した。さらに,一般パネル72名を対象に順位法による官能検査を行い,物性と嗜好性の関係を評価した。 【結果】 重量保持率と面積保持率は,急速加熱>組合せ加熱>緩慢加熱の順となり,水分保持量は,緩慢加熱に対して組合せ加熱と急速加熱が1.1倍であった。破断強度は,緩慢加熱>組合せ加熱>急速加熱の順であり,肉の硬さは,急速加熱に比べて組合せ加熱が1.6倍,緩慢加熱が4.2倍であった。多汁性は,緩慢加熱で最も低く,組合せ加熱で最も高い傾向であった。官能評価では,急速加熱が他の2つの加熱調理法に比べ1%有意で好まれない結果が得られ,その理由は「パサパサしている」が多かった。以上の結果から,組合せ加熱では,うまみ成分が保持されて味が濃く,ジューシーで水分が保持されている特性を持ち,3つの加熱調理法の中で鶏肉を最もおいしく調理できることを確認した。
著者
佐藤 幸子 小築 康弘 民谷 万里子 北岡 千佳
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.2082, 2009

<BR>【目的】本学が立地する東京都港区芝界隈は、江戸時代より東京湾の魚場として食産業の中心地である。そこで、芝落語会および芝青色申告会青年部との地域連携により、庶民の食べ物として「蕎麦」をテーマとし、栄養士を目指す本学の学生を対象に食教育を展開した。「蕎麦」という食材について、落語鑑賞による食文化的視点と「蕎麦打ち」による調理科学的視点を通して、食材を生かした料理の美味しさの探究を目指し、その文化および調理性について理解することを目的とした。<BR>【方法】食教育として (1)「落語鑑賞」(2)「手打ちそばの体験」(3)「蕎麦粉を使ったお菓子作り」を展開した。対象は、本学食物栄養科の学生に選択授業として実施した。(1)「落語鑑賞」(2)「手打ちそばの体験」において、食文化的視点では落語家の瀧川鯉之助氏により、演目の「時蕎麦」を鑑賞させた。調理科学的視点では、「蕎麦粉」についての解説と芝地区の蕎麦打ち職人さんの実演を受講させた後、その場で打ち立ての「蕎麦」を試食させた。学生の評価は、「かわら版」としてまとめさせた。また、(3)「蕎麦粉を使ったお菓子作り」では、「蕎麦粉を使ったお菓子」を調理学研究室のゼミ履修学生と試作検討し、芝地区活動として「蕎麦」の普及を目指した。<BR>【結果】体験授業後、意識調査(n=74)を行った結果、「落語を聴いて興味をもった」が約80%を占め、手打ち蕎麦については「打ち立て蕎麦を試食して美味しかった」と、多くの学生が、「蕎麦」の文化・美味しさに関しての意識の向上が認められた。また、蕎麦の風味を生かした焼き菓子を試作し、「第4回ふれ愛まつりだ、芝地区」に参加した。
著者
升井 洋至 濱谷 風香 小泉 采音 黒瀬 真弓 渡邊 光
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】食物繊維は生活習慣病の予防に重要な役割を果たす成分として知られているが,現代の日本人の食物繊維摂取状況は,1日の摂取目標量に対して不足している。今回は,食品への水溶性食物繊維イソマルトデキストリン添加の調理品への影響について,テクスチャー測定,色差測定,官能評価による検討を実施した。<br><br>【方法】試料としては,レシピサイトを参考に作成した牛乳寒天,チーズケーキ,マフィン,マヨネーズを対象とした。食物繊維の栄養強調表示において「含む(3%)・高い(6%)」に相当するイソマルトデキストリン((株)林原)を添加した試料と未添加試料の三種類を作成した。テクスチャー測定はRHEONERⅡ(山電製,RE2-3305B,プランジャー直径20mm)により行った。色差測定は測色色差計(日本電色工業製,NE4000)により行った。<br><br>【結果及び考察】イソマルトデキストリン添加により色差測定では,チーズケーキ,マフィンで*a値が高くなり,焼き色がついた。物性測定では,無添加に対して,マフィンはかたくなったが,それ以外は軟らかくなった。官能評価では,牛乳寒天は添加によって,甘さ,飲み込みやすさが高い評価となり好まれる傾向を示した。マフィンでは,外観は高い評価となり,しっとり感,総合評価はやや評価が低くなった。牛乳寒天,チーズケーキ,マフィン,マヨネーズそれぞれで,イソマルトデキストリンを添加した試料であっても,無添加の試料に比して十分なものが作成できた。<br> 本実験により,イソマルトデキストリンの,幅広い食品への利用可能性が確認できた。
著者
岩村 もと子 三宅 紀子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】タケノコは和食の特徴である旬を感じさせる食材のひとつである。海外からの安価なタケノコの輸入の増加などにより、水煮タケノコの利用はあるものの、家庭での生鮮タケノコからの調理が少なくなってきている。各地で放置竹林も問題となっている。多くの調理書などではタケノコのあく抜きは米ぬかを用いた方法が示されているが、本研究ではタケノコの簡便なあく抜きの方法について検討した。<br>【方法】日本におけるこれまでのタケノコのあく抜き法について文献調査を行い、アジアの国々についても、在留外国人に聞き取り調査を行った。次にあく抜き方法について検討を行った。タケノコは2015年4月、鎌倉市内の竹林で採取し、収穫3日後のものを用いた。10%米ぬか、0.3%重曹、50%牛乳、アルカリイオン水、1.75%そば粉(そば湯)を用いてゆで、ゆで汁に浸漬して冷却し、水洗い後15時間水に浸漬したものを試料とした。20歳代のパネル(女性31名)により、えぐ味の強さ、硬さ、色・香り・食感の好みなどの評価項目について5段階の評点法を用いて官能評価を実施した。<br>【結果】文献調査の結果、日本でのあく抜き法として、何も添加せずにゆでる「湯煮」が長く行われてきたが、明治末期には婦人総合誌に米ぬかを用いた方法が記載されていた。また、アジアの国々においても「水でゆでる」「塩水でゆでる」が多かった。収穫後時間の経過したものはあく抜きが必要となるが、官能評価の結果、いずれの方法においてもえぐ味の強さに差は認められなかったが、色の好みおよび硬さについて有意差が認められ、重曹を用いた試料での褐色化および組織の軟化によるものと考えられた。米ぬかを含めていずれの方法によってもあく抜きが可能であることが示唆された。