著者
佐川 敦子 笹原 由雅 鎌形 潤一 青木 仁史 大橋 きょう子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】減塩につながる調味方法としては,食品内部に塩味を拡散させず,食べる直前に食品表面に塩味をつける方法がある。これまでに,うま味や酸味を添加することで塩味強度が強まるという報告はあるが,油を添加した場合の塩味の感じ方についての報告は見当たらない。そこで,油添加に着目し,調製時における塩および油添加タイミングの違いによる塩味の感じ方について検討した。</p><p>【方法】塩および油添加タイミングを変えた飯表面に塩味をつけた試料(塩味表面試料)と,塩水で炊飯した試料(塩味均一試料)の塩むすびモデル系試料を調製した。塩添加量は米重量の1.15 w/w%(飯の0.5w/w%),油添加量は米重量の2.0 w/w%とした。試料の形状測定(マイクロスコープVHX-6000),物性測定(レオナーRE2-33005C)を行った。また,官能評価により,同一塩分濃度下における塩味の感じ方について,呈味強度(塩味,甘味,うま味)および味の好ましさを5段階評点法により評価した。</p><p>【結果および考察】1. 形状測定:米飯対角幅,周囲長,面積において,塩味表面試料は,塩味均一試料よりも高値を示した。2. 物性測定:硬さにおいて,塩味表面試料は,塩味均一試料よりも有意に低値を示した。3. 官能評価:塩味表面試料は,塩味均一試料に比べ塩味強度は有意に高かった。また,炊飯前油添加試料は,炊飯後油添加試料よりも塩味強度は有意に高かった。炊飯前に油を添加し炊飯後に飯表面に塩味を付与すると,塩味の感じ方は強くなることが示唆された。官能評価の塩味強度と物性測定の凝集性および付着性で負の相関が認められた。結果,米飯の凝集性,付着性が小さいほど,塩味強度は高くなることが示唆された。</p>
著者
鈴木 結里加 種村 麻美 西堀 すき江
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】当研究室の先行研究で愛知県特産である越津ネギは、血小板凝集抑制作用が強いことを認めている。今回は、越津ネギについて部位(下部、中間、上部)による違い、旬と端境期による違い、生と加工処理における違いについて血小板凝集作用の変化について検討した。また比較として、市販のネギを用いて品種による違いを比較検討した。<br>【方法】試料としては一般市場で販売されている旬(12~3月)の愛知県産 越津ネギ及び山形県産 白ネギ、静岡県産 葉ネギを用いた。血液は11週齢前後のラット(wister系、雄)を用いて腹部大静脈より採血し、遠心分離にかけ得られた多血小板血漿(PRP)と乏血小板血漿(PPP)を用いた。PRPにはコラーゲンを添加しMCM社製のヘマトレーサー313Lを用いて測定し抑制率の強い試料についてはさらにIC50値を求め比較を行った。<br>【結果】越津ネギは、他の野菜と比較して抑制率が強かった。部位別では中間部の抑制率が最も高値を示し、上部、下部の順で低くなった。白ネギ、葉ネギの抑制率は比較的高値を示したが、越津ネギと比較すると30%程度低下した。生と乾燥処理による比較では、乾燥処理の抑制率が生よりも20~40%程度低下する傾向が見られた。<br>【考察】越津ネギでは中間部が最も高値を示した。一般的にはアルキル ジスルフィド等の硫化アリル系物質が多く含有される白色部分が血小板凝集抑制作用は強いと考えられているが、越津ネギのような長ネギでは中間部分の血小板凝集抑制作用が高くなった。今後血小板凝集抑制作用への各成分の寄与を検討していきたいと考えている。いずれにしてもネギの摂取は、血栓予防につながるため積極的に摂取することが推奨される。
著者
小林 三智子 岡田 幸雄 戸田 一雄
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.136, 2004

【目的】味覚感受性の測定にはその目的によって種々の方法が用いられるが、臨床の場では電気味覚計を用いた検査と、ろ紙ディスク法の検査が多く使用される。本報告では、両者の測定法を用い、若年女性の味覚感受性を測定することを目的とした。<br>【方法】健康な19歳から21歳の女子学生を対象とし、口腔内には口内炎やう歯による痛みのないこと、食後1時間以上経過していること、非喫煙者であることを確認した。電気味覚検査は電気味覚計(TR-06)を用い、刺激部位は、舌尖より2cmの茸状乳頭領域の左右舌縁(茸状左・茸状右)、舌縁後方葉状乳頭領域の舌根に近い左右(葉状左・葉状右)の部位の計4箇所とした。ろ紙ディスク法検査には直径6mmの円形ろ紙を用い、試料溶液はスクロース、塩化ナトリウム、DL-酒石酸、硫酸キニーネ及びグルタミン酸ナトリウムの五味とした。刺激部位は、舌尖より2cmの左舌縁とした。<br>【結果】電気味覚検査の結果は、茸状左-1.38dBおよび茸状右-1.59dB、葉状左0.4dB、葉状右0.2dBであった。葉状乳頭と茸状乳頭のそれぞれ同じ部位において、左右の差は認められなかった。しかし、部位が異なると、茸状乳頭と葉状乳頭の左右ともに、舌尖部の茸状乳頭のほうが有意に低い値を示し、味覚感受性が高いことが示された。一方、ろ紙ディスク法により求めた五味の閾値はそれぞれ、甘味(スクロース)160mM、塩味(塩化ナトリウム)320mM、酸味(DL-酒石酸)40mM、苦味(硫酸キニーネ)0.625mM及びうま味(グルタミン酸ナトリウム)160mMであった。
著者
柴田 満 蒲 尚子 杉本 温美 石津 日出子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.14, pp.67, 2002

【目的】大学生は、進学を機に一人暮らしをする者も多くなり、生活スタイルが大きく変化し、偏った食生活になる者が多い。そこで、本学学生に「食生活実態調査」を行い、性別による食品摂取傾向の違いを調べた。【方法】本学食品栄養学科1&sim;3年生302名を対象に、生活環境、身体状況、食生活状況、自覚症状に関するアンケート調査を行った。【結果】比較的よく食べると思われる74食品の摂取回数、間食(18品目)ならびに外食(16品目)の摂取回数を調べた結果、男女間で有意差が認められたものは、ヨーグルト、牛肉、レトルト&middot;インスタント食品、間食では炭酸飲料、外食ではカレー、ラーメンなどであった。男性は外食、レトルト&middot;インスタント食品、ジュース類の摂取が多く、女性は菓子類の摂取が多かった。
著者
松本 真実 石橋 あや 高田 千夏 朝倉 富子 伊藤 圭祐 阿部 啓子 舟木 淳子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.34, 2006

<BR>【目的】ミラクルフルーツの果実に含まれるタンパク質ミラクリンは、そのもの自身は無味であるが、これを味わった後に口に入れた酸を甘く感じさせるという性質を持つ。この効果は数時間持続し、その間、酸はショ糖のように甘く感じられる。このように一時的に味覚を変える物質を味覚修飾物質という。糖尿病や肥満が社会問題になっている先進諸国において、非グリセミック(低カロリー)甘味料は健康面でのベネフィットから注目され、また酸味の強い食品の摂取を容易にするという利点もある。本研究ではミラクルフルーツの甘味誘導効果の基礎的性質を得ることを目的とした。<BR><BR>【方法】ミラクルフルーツの果肉を100mM酢酸緩衝液で十分洗った後、0.5 M塩化ナトリウム溶液で抽出した後、70%飽和硫安沈殿画分を得、10mM酢酸緩衝液(pH5.5)で透析し、凍結乾燥して粗精製ミラクリンを得た。1mg/mlのミラクリン水溶液1mlを口に含んだ後、各種酸溶液、苦味溶液、塩化ナトリウム溶液について官能評価をおこなった。また、甘味誘導効果を消失させるものについても検討した。<BR><BR>【結果】粗精製ミラクリンによって、クエン酸、酢酸、アスコルビン酸、乳酸、リンゴ酸等、各種酸溶液に甘味が誘導された。特にクエン酸溶液やアスコルビン酸溶液は強い甘みを感じ、その味はスクロース溶液の味と類似していた。しかし、苦味溶液や塩化ナトリウム溶液の味の変化はみられなかった。また、塩化ナトリウム溶液で口をゆすいだ時は、蒸留水で口をゆすいだ時よりも甘味誘導効果が減少した。<BR>
著者
秋吉 澄子 小林 康子 柴田 文 原田 香 川上 育代 中嶋 名菜 北野 直子 戸次 元子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」において,地域に残されている特徴ある家庭料理を,地域の暮らしの背景とともに記録し,各地域の家庭料理研究の基礎資料,家庭・教育現場での資料,次世代へ伝え継ぐ資料などとして活用することを目的に,聞き書き調査を行った。本研究では,熊本県の「副菜」の特徴について検討した。</p><p>【方法】熊本県内を6地区(阿蘇,県北,熊本近郊,県南,天草,球磨)に分類し,昭和35〜45年頃に各地域に定着していた家庭料理について,11名の協力者を対象に聞き書き調査を行った。その調査結果や参考文献を基に,熊本県の副菜の特徴を検討した。</p><p>【結果および考察】野菜のおかずでは,本県の郷土料理として全国的にも有名な「一文字のぐるぐる」,大根を使った「こしょう大根」,「煮なます」,「のっぺ」,旬の食材を使った「たけのこのひこずり」,「菜やき」,「どろりあげ」が日常の食事によく作られていた。保存食(漬物)では,阿蘇の「高菜漬け」や「ふさぎり漬け」,県南の山間部で作られる「豆腐のみそ漬け」,もろみ味噌である「しょんしょん(しょうゆの実)」が作られていた。汁物では,大豆を使った「呉汁」や人吉・球磨地方の「つぼん汁」が挙げられた。その他,熊本近郊(西原地区)の「落花生豆腐」や阿蘇(高森地区)の「田楽」,天草の「みなみそ」が副菜として挙げられた。熊本県の副菜の特徴として,地元で採れる旬の食材を使用し,しょうゆ・みそでシンプルに味付けをした料理が多く,油で炒めるなどの方法により,うまみやコクをプラスする工夫が見られた。採れた食材を無駄にすることなく,すべて頂くといった先人の知恵も生かされていた。</p>
著者
東根 裕子 阪上 愛子 澤田 参子 山本 信子 米田 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.129, 2007

<BR><B>【目的】</B><BR> 若い世代を中心に日本人の魚離れが進んでいるとの報告(2006年度水産白書)もあるが、瀬戸内海、太平洋、日本海に囲まれた近畿地方は、昔から豊かな魚介類の食文化を築いてきた。そこで魚介類の種類とその調理方法の現状を明らかにする目的で調査を実施した。本調査は、平成15・16年度日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学-魚介類の調査-」の一環として行ったものである。<BR><B>【方法】</B><BR> 上記特別研究の調査用紙と調査方法に基づき、面接、または自記方式によった。調査項目は、利用する魚介類、入手方法、料理名、調理方法、調味料、季節、行事食等である。調査時期は、2003年9月から2004年8月、調査対象者は近畿2府4県に居住する164名で、居住地域により都市型86名、農村型54名、漁村型24名に分類し集計した。<BR><B>【結果】</B><BR> 記載された料理数の一人当たりの平均値は、都市型84、農村型67、漁村型81であった。魚介類の入手方法については、「大部分を自家の者が漁獲」「大部分を購入」「もらうあるいは調理したものしか買わない」の状況は、都市型(1%,92%,4%)、農村型(0.6%,91%,5%)、漁村型(9%,79%,3%)であった。「もらう、調理したものしか買わない」ものは、いかなごの釘煮・鮎の甘露煮などの加工品であった。利用している魚介類は、どの地域においても出現数が多かったのはいかであり、いわし、えび、さば、あじ、さけ、たい、などが続く。出現数に地域性が見られたものは、都市型のたらこ・めんたいこ、農村型のたら、ししゃも、かずのこ、漁村型では、たちうお、かます、とびうお、えそ、かんぱちなどであった。
著者
西堀 すき江 小出 あつみ 山内 知子 間宮 貴代子 松本 貴志子 森山 三千江 山本 淳子 近藤 みゆき 石井 貴子 小濱 絵美 加藤 治美 伊藤 正江 筒井 和美 野田 雅子 亥子 紗世 菱田 朋香 熊谷 千佳
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】愛知県は尾張地方と三河地方に分かれる。また、名古屋は江戸時代より経済活動が盛んで、昭和の初期には既に人口100万人を擁した大都市で、商業や工業が発展していた。周辺の農村地帯は、豊かな生産性の高い土地で、農村特有の食文化を形成していた。一方、海岸地区では海辺に自生する植物で、奥三河の山里では木の葉でもちを包んだりし、身近な自然からの恵を利用した食文化を形成していた。<br />【方法】愛知県を①名古屋市,②尾張水郷(海部),③尾張稲沢(尾張北部),④愛知海岸(知多,西三河・東三河の海岸,渥美),⑤西三河・安城,⑥東三河・豊橋,⑦愛知山間・奥三河の7地区に分け,聞き書き調査,並びに料理の撮影を行った。聞き書き調査は,平成24・25年,撮影は平成27年に行った。聞き書きは,各地区に長年暮らし,その地域の家庭料理を伝承されている方を調査対象者とした。撮影に当たっての料理作成は,聞き書き対象者が高齢であるため,各地区の伝統的家庭料理の保存活動を行っている団体・個人などに作成依頼を行った。先の調査を収録した『日本の食生活全集(23) 聞き書 愛知食事』を参考にした。<br />【結果】茶の湯の盛んな名古屋地区は、有名な和菓子屋が数軒有り、来客時のお茶菓子や、通常のおやつは店で購入することが多かった。名古屋の和菓子として名高いういろうも購入していた。農村地帯では、稲作や年中行事に関わるおやつが多かった。奥三河地区では、貴重な米を使った五平もちはご馳走であった。また、雪深く、正月は花が咲かないことから作るもち花や、身近なほう葉を使ったほう葉もちと山間部の特徴が見られた。また、米が貴重で、もちを搗く時は、普段は必ず大豆、きび、あわ、よもぎなどを混ぜて搗いた。
著者
宮本 有香 宇高 茜
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】マカロンとは、卵白を泡立てたメレンゲに、アーモンドプードルや粉砂糖を加えて作るフランスの伝統菓子であり、調理工程のマカロナージュ(生地中の気泡量調整)が、パティシエの勘やコツによるため、焼成が難しい。そこで演者らは、マカロンの生地条件を検討し、糖濃度が48%前後の生地は、マカロナージュに関わらず、焼成が可能であることを明らかとした。本研究では、乾燥卵白を使用したマカロン焼成条件を検討し、マカロン焼成に必要なメレンゲ状態について検討を行なった。<br>【方法】10%乾燥卵白液(乾燥卵白)と新鮮卵白を、3~21分まで3分ごとに撹拌時間別メレンゲを調製し、分離液量測定、マイクロスコープによる気泡状態の観察、3h後のメレンゲの状態観察から安定性を比較した。マカロン生地は、全糖割合48%、アーモンドプードル27%、卵白25%(メレンゲ調製時の糖0%)で調製し、メレンゲ撹拌時間ごとにマカロン焼成を行い、焼成状態を比較した。<br>【結果】6分より長い撹拌において、分離液量は、新鮮卵白では増加し、乾燥卵白では減少した。気泡状態は、3分は新鮮卵白よりも乾燥卵白の気泡が小さく、6分は差がなく、9分以降は乾燥卵白にタンパク質の変性部位が認められ、撹拌時間が長くなると増加し、分離液量は減少した。これらのメレンゲを用いたマカロン焼成は、新鮮卵白では全体的に薄く焼成され、メレンゲ調製時の砂糖添加が必要である可能性が示唆された。乾燥卵白は、撹拌時間が長くなるにつれ、ピエが出現し、断面の空洞が大きくなった。すなわち、乾燥卵白メレンゲは新鮮卵白よりも長い撹拌時間を要し、気泡中のたんぱく質変性部位がメレンゲの安定性およびマカロン焼成に関与すると考えられた。
著者
中澤 弥子 吉岡 由美 髙﨑 禎子 小木曽 加奈 小川 晶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】長野県の家庭料理の特徴を探ることを目的として、主菜について分析した。本発表では、その特徴を表し、昭和30年頃から長野県各地で大切に作り継がれている主菜について報告する。<br>【方法】平成25~28年にかけて全県的な現地調査を実施した。調査方法は、主に聞き取り法で行い、可能な場合は、食材や料理、加工品の実物を撮影し、試食を行った。<br>【結果】「海なし県」である長野県の伝統的な主菜に用いる食材には、海水魚、淡水魚や貝、凍み豆腐、鶏肉、馬肉、山肉、昆虫など、種々の食材が利用されてきた。主菜に用いる食材の多くは、単品ではなく、季節の畑作野菜や山菜、茸などと共に煮物にして多く利用された。例えば、身欠き鰊と寒干し大根などの野菜の煮物は、田植えや人寄せ(人が集まる機会)などのご馳走として利用された。海水魚では、年取り魚(大晦日、年越しの食事につける魚)には鮭と鰤が多く利用され、鰯や秋刀魚等がご馳走や日常食で食されてきた。淡水魚では、鯉がうま煮、あらい、鯉こく、から揚げ、すずめ焼きなど様々な料理で利用され、年取り魚をはじめ、行事食としても多く利用されてきた。鮒の甘露煮、わかさぎの甘辛揚げ、たにしの味噌汁なども、季節の日常食として食されてきた。凍み豆腐は、寒冷な気候を利用した保存食として煮物や味噌汁をはじめ、いろいろな料理で食されてきた。家で飼っている鶏をつぶして鶏肉を行事食などに利用した。馬肉は、伊那・飯田で多く食され、馬刺しをはじめ伊那・飯田では馬のモツを醤油や味噌などで煮込んだ「おたぐり」と呼ばれる煮物などで食してきた。猪や鹿、熊などの山肉は、焼き肉や煮物などで利用した。また、魚肉ソーセージや竹輪が煮物やサラダなどに多く利用された。
著者
中澤 弥子 佐藤 晶子 小木曽 加奈 吉岡 由美 鈴木 和江 高崎 禎子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.113, 2011

【<B>目的</B>】長野県では、一年を通じて家の最大の節目を年取りの行事とする傾向が強く、年神棚にご馳走をお供えし、一年の無事の感謝と新しい年の豊作を祈り、家族揃ってご馳走で祝う習慣<SUP>1)</SUP>がある。本研究では長野県の大晦日と正月の行事食の継承の実態と現在の特徴について、平成21~22年度調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学 行事食・儀礼食」で行った調査結果を基に明らかにすることを目的とした。<BR>【<B>方法</B>】アンケート回答者のうち、長野県内に10年以上住み、現在も住んでいる人および現在長野県内に住み、他県に10年以上住んだ経験はあるが、行事食に長野県の影響を受けている人の正月と大晦日のデータ(計686人)を集計し分析を行った。<BR>【<B>結果</B>】回答者の年齢層は、10~20代50%、30~40代33%、50代13%、60~80代4%であった。大晦日の認知度は99%、行事食の経験が98%と高く、年取りの祝い料理については、喫食経験ありが67%で、毎年食べるが53%を占めた。年越しそばは喫食経験ありが90%と高く、毎年食べるが57%、毎年ではないが食べるが19%と高率であった。鮭料理の喫食経験ありは62%で毎年食べるが35%、鰤料理の喫食経験ありは54%、毎年食べるが23%であり、現在も鮭や鰤などの年取り魚が年取りの祝い料理として食されていた。その他、海なし県である長野県において肉料理の回答は少なく、刺身、数の子、握り寿司などの海産物がご馳走として好まれ食されている様子がうかがわれた。<BR><SUP>1)</SUP>「聞き書 長野の食事」、p348、農山漁村文化協会 (1986)
著者
島田 玲子 加藤 和子 河村 美穂 名倉 秀子 木村 靖子 徳山 裕美 松田 康子 駒場 千佳子 土屋 京子 成田 亮子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】日本調理科学会特別研究平成24~25年度『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』の調査を通して,昭和30~40年代に定着した埼玉県の家庭料理について検証し,主菜の特徴を明らかにすることを目的とした。<br>【方法】埼玉県の東部低地:加須市,北足立台地:さいたま市,比企:東松山市,大里・児玉:熊谷市,入間台地:日高市,入間山間部:飯能市,秩父山地:秩父市,川越商家:川越市の8地域9か所における対象者は,家庭の食事作りに携わってきた19名で,居住年数は平均72.3年である。当時の地域環境と共に,食料の入手法,調理・加工・保存方法,日常食や行事食,食に関連する思い出や,次世代に伝え継ぎたいと考える料理について,聞き書き法で調査を行った。<br>【結果】埼玉県は内陸県(海なし県)である一方,荒川や利根川などの一級河川が流れ,川魚を入手するには恵まれた環境であった。そのため,動物性の食材にはコイやフナ,カジカ,ハヤなどの川魚のほか,ウナギ,タニシなど,川で獲れる魚介類を利用している地域が多かった。ウナギは現在でも名物であるが,昭和30~40年頃には,家庭で調理するよりも,中食・外食としての利用が多かった。その他の魚は,家庭で甘露煮や焼き魚,天ぷらなどにしていた。一方,海産魚は缶詰や干物,塩蔵品が利用され,昭和40年頃から家庭で作られるようになったカレーライスには,畜肉ではなく,サバの水煮缶やちくわが用いられていた。日常的な畜肉の利用は少なく,卵を得るために鶏やアヒルを飼育し,特別なときにつぶして食べることが行われていた。昭和40年代になると流通網の発達や冷蔵庫の普及などによりとんかつやハンバーグなどの洋食として畜肉も食べるようになった。
著者
山村 涼子 山下 浩子 眞谷 智美 髙松 幸子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】若い世代への食教育の観点から,栄養士および保育士養成課程の短期大学生における「郷土料理」や「正月料理」の認知度,喫食経験,調理状況,喫食状況等の実態を把握し,食文化の伝承について検討することを目的とした。<br>【方法】久留米信愛女学院短期大学の栄養士(平成23,24年度入学)および保育士(平成23年度入学)課程生を対象にアンケート調査を行った。その内容は,1)「郷土料理」について認知度,調理状況,喫食状況等,2)「正月料理」について喫食状況,調理状況等および具体的な料理内容,各家庭における正月の定番料理や平成25年の正月に実際に食した「正月料理」等について質問した。調査は,集合自記式にて行った。<br>【結果】1)「郷土料理」の認知度は,福岡県居住者64.1%,熊本県居住者87.0%と熊本県居住者の方が高く,認知している料理の種類も多かった。2)「正月料理」の用意率は,『お屠蘇』70.9%,『お雑煮』96.1%,『おせち料理』89.3%であった。『おせち料理』の調理状況は,約3割が購入していた。正月に食べる定番料理として,『寿司』,『刺身』,『鍋料理』,『サラダ』等の料理名が挙がった。今年の正月に実際に食べた「正月料理」は,『おせち料理』60.2%,『雑煮』51.5%,『がめ煮』27.2%,『寿司』10.7%,『刺身』・『オードブル』各6.8%,『お屠蘇』は5.8%であった。将来,栄養士および保育士,さらには母親となる若い世代に対して,地域の伝統食や行事と結びついた食文化を伝承していくためには,今後学校教育の中で,それらの意識を高め,調理実習などの実践教育を継続していく必要があると再認識した。
著者
時藤 亜衣 米田 妙子 山口 祐美 吉岡 慶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.178, 2007

<BR><B>【目的】</B><BR> 肥満や糖尿病患者の糖の摂取制限において、甘味への欲求が強く、その摂取は制御し難いものがある。砂糖の代わりにエリスリトールを使用したカスタードプディングを調製して、食味やテクスチャー特性を比較し、さらに、低脂肪牛乳使用のプディングの嗜好性を検討した。<BR><B>【方法】</B><BR> プディングの調製は(1)エリスリトールの砂糖代替性について、市販ヨード強化鶏卵、牛乳、グラニュー糖(A)、エリスリトール(B)を使用してプディングA、Bとし、160℃のオーブンレンジで30分間加熱した。(2)エリスリトールと低脂肪牛乳を使用したプディングについて、普通牛乳(C)、低脂肪牛乳(D)で同様に各々調製した。テクスチャー、クリープ特性はレオナーで測定、解析した。官能検査は検査員16名で5段階評点尺度法で検査し、Wilcoxonの検定を行い、また、抹茶、コーヒー等を添加したプディングの嗜好順位や食感、食味を検査してTukey法で検定した。<BR><B>【結果・考察】</B><BR> (1)エリスリトールの砂糖代替性について、プディングのかたさではAがBに比し、高値を示した。官能検査では、Aの方が風味がよく、後味がよいと評価された。Bでは、エリスリトールのあっさりした甘味や冷涼感を反映し、また、後味の苦味や渋味については、カラメルソース、抹茶やコーヒー等の添加により改良された。(2)低脂肪牛乳使用については、プディングDがかたさおよび凝集性で低値を示し、凝固力の低下が推察された。官能検査では、甘味、後味、軟らかさ、なめらかさ、口溶けのよさおよび総合評価(p<0.05)の項目でCに比し、Dがよいと評価された。以上のことから、エリスリトールのプディングにおける砂糖代替性が示唆され、エリスリトールおよび低脂肪牛乳使用により、軟らかく、なめらかな食感のプディングとなり、また、エネルギー量および脂質量が共に低減化され、副材料の添加により嗜好的にも良好な食味を呈した。
著者
坂本 薫 三浦 加代子 橘 ゆかり 小泉 弥栄 作田 はるみ 岸原 士郎
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.56, 2004

【目的】砂糖は、調理上大変身近で重要な役割を果たしている食材である。砂糖には、上白糖、グラニュ糖、白双糖、三温糖、黒砂糖、その他いろいろな種類があるが、砂糖は甘味料として使われるだけでなく、その特性を生かした菓子や料理が数多くある。特に砂糖の加熱特性を利用した調理には、フォンダンや砂糖衣、抜絲、カラメルなど興味深いものが多く、温度によって性状が段階的に変化する。カラメルソースは、砂糖溶液を着色するまで加熱して作るソースで、着色や着香、味つけに用いられ、その煮詰め温度は、一般的に160℃–180℃とされていることが多い。しかし実際には、180℃まででは十分な着色が見られないこともある。今回は、カスタードプディングに適したカラメルソースの調製温度について検討するため、2社のグラニュ糖を用いてカラメルソースを調製した。<br>【方法】試料は、市販の2社のグラニュ糖を用い、28メッシュ以下の粒度のものを実験に供した。温度測定には水銀温度計と熱伝対を用い、標準温度計により温度補正を行った。また、pHおよび吸光度を測定し、有機酸の生成状況や着色状況を観察した。<br>【結果】加熱は、通常の調理操作に近い条件となるように熱源や昇温時間を検討し、実験を行った。その結果、一般的にカラメルの調製温度として示されている温度では十分な着色が認められない製品があることがわかった。また、カラメルソースを調製する過程での差異を明らかにするため、昇温過程の一定温度で加熱を止めてpHおよび色調等を比較したところ、明らかに差異が認められ、純度の非常に高いグラニュ糖であっても、製品により調理の上で大きな差があらわれることが明らかとなった。
著者
佐藤 真実 森 恵見 岸松 静代 谷 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.214, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】本州の中央部にあり,日本海に面す福井県は,嶺北と嶺南地区に分けることができる。嶺北は,平野を中心に米づくりが盛んであり,嶺南は,海に面して滋賀,京都に隣接する。日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」で実施した聞き取り調査に基づき,昭和30〜40年代の福井県における家庭料理「副菜」の特徴を明らかにし,現在でも作られている家庭料理について紹介することを目的とした。【方法】聞き取り調査の結果および福井県の食に関する出版物から副菜を抽出し,特徴および地域性についてまとめた。【結果および考察】県内の聞き取り調査によると,昭和30〜40年代の海岸地域を除いた福井県の日常食としては,3食ともに米飯,野菜や山菜料理が主なものであった。日本海に面することから海からの恵みもあったが,魚介類は時々食べるご馳走であった。春には,山菜を収穫し,保存する。秋冬には,だいこんや芋を用いた料理を作った。これらの野菜には,大豆・大豆加工品(打ち豆,油揚げ,豆腐),北前船の影響で入荷される乾燥ニシンなどが組み合わせ食材として使用された。中でも,だいこんは,葉っぱを「あえもん飯」,根を「から大根」「たくあん・たくあんの煮たの」「長寿なます」「こじわり」「みがきかぶし」などに利用した。「だいこんおろし」は,おろしそばや油揚げ飯にも利用される。山菜は,「こごみ」「わらび」「ぜんまい」等を「こごみの胡麻和え」「わらびのおひたし」「ぜんまいの煮物」「ぜんまいの白和え」「にしんと水ぶきの煮もの」などに利用した。とくに「ぜんまい」は現在でも高価であり,ごちそうとして,春祭り,秋祭り,報恩講などに利用される。
著者
永塚 規衣 河村 フジ子 長尾 慶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.15, pp.11, 2003

【目的】煮こごりは日本の伝統的な寄せ物料理であり、煮汁中に種々の成分が溶出する為、栄養的にも優れていると考えられる。本研究では、今までのゼラチンの基礎的研究を土台として、特に煮汁に溶出したコラーゲンの可溶化と調味料との関係に注目し、各種調製条件の違いが煮こごりの物性に及ぼす影響について検討した。<BR>【方法】材料は牛肉、豚肉、鶏肉を用いた。それぞれ約1cm角切り50gに6割の水(30ml)を加えて600Wの電熱器で加熱、沸騰後の火加減を300Wに調節して、10_から_120分の定時間加熱した。加熱終了後、各試料をろ過し、煮汁が30mlとなるように調製した。各試料ゾルの透過色、pH、動的粘弾性、NMRの測定を行った。次いで各試料を内径32mm、高さ15mmのペトリ皿に分注し、冷蔵庫で24時間保存してゲル化させ、破断特性を比較した。上記材料のうち、鍋物調理に一般的な鶏肉を取り上げ、調味料添加の影響を検討した。砂糖、醤油、酢など調味料は内割りで煮汁の10%添加し、測定方法は上記と同様に行った。<BR>【結果】煮こごりの材料によりゲル化の状況に違いが見られ、特に牛肉は煮こごりゲルを形成しにくかった。煮こごりの滑らかな口当たりは、肉基質たんぱく質であるコラーゲンが分解して得られたゼラチンのゲル化強度によるところが大きいといわれていることから、各種材料(牛肉、豚肉、鶏肉)のたんぱく質中のコラーゲンの結合の仕方が異なると推測される。また、鶏肉の加熱実験においては部位による煮こごりのゲル形成に差が見られた。さらに、調味料を加熱初期から添加した場合と加熱途中で添加した場合との間でも煮こごりの物性が異なることが明らかとなった。
著者
佐藤 恵美子 筒井 和美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.91, 2010

「目的」ゴマ豆腐は、痲腐(まふ)と呼ばれ、澱粉と油(ゴマ油)を混ぜた寄せ物である。普茶料理に属し、黄檗料理とも呼ばれ、宇治の黄檗山万福寺に伝わる中国式の精進料理で江戸時代初期に明から隠元禅師によって伝えられた。種々の文献調査およびアンケート調査結果により、ゴマ豆腐の種類、配合割合や調製条件について考察した。「方法」文献調査は聞き書きの食事(農文協出版)により、ゴマ豆腐について記載されている県を検索し、また種々の代表的な文献を10冊選び、材料の配合割合と調製条件について調査した。さらに県立新潟女子短大卒業生19年度39名、20年度39名、21年度35名、郷里山形県庄内地方に居住する女性(20代~60代)44名を対象に調査を行なった。「結果」文献調査から、加熱時間は15分~120分、配合割合は葛に対してゴマは0.5~1.5倍、加水量は6~13倍と幅があった。ゴマ豆腐は比較的多く喫食されて、皮むきや焙煎ゴマを用いられている。山形庄内では、皮付き白ゴマ豆腐が49%、黒炒りゴマ豆腐15%と両方を喫食する。ゴマ豆腐が好きな人が調査者に対して新潟で約半数(50%)、山形庄内では67%と多かった。新潟では喫食頻度が年に1回~2回であるが、山形庄内では月に2~3回喫食されていた。ゴマ豆腐のおいしさは、香り、弾力、軟らかさ、なめらかさが重視されている。山形庄内では、日常食よりも結婚式などの御祝時に喫食され、砂糖醤油あんにおろし生姜をかけて食する。新潟のゴマ豆腐はデザート的な要素で白く甘いお菓子的であり、「たれ」はかけないで食する。ゴマ料理として最も多いのは、「あえもの」である。ゴマ豆腐の調理経験者の50%が、「練りゴマ」を使用していることがわかった。
著者
佐藤 恵美子 松田 トミ子 山田 チヨ 渡邊 智子 山口 智子 伊藤 知子 伊藤 直子 太田 優子 小谷 スミ子 立山 千草 玉木 有子 長谷川 千賀子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』のガイドラインに準じた聴き取り調査結果から、昭和35~45年頃までに定着した新潟県のおやつについて報告する。<br />【方法】村上、新潟、長岡、柏崎、魚沼、上越、佐渡の7地域のおやつについて検討した。<br />【結果】新潟県は米を中心とした主食の豊かな食文化があり、うるち米、もち米、くず米、米粉を使ったものが多く、おやつにも主食と類似した文化がみられた。うるち米を使ったものには、おにぎりに生姜味噌をつけて焼いた「けんさん焼き」(魚沼)、米を二度炊きにしてから搗いた「にたて餅」(村上)があった。もち米を使った「餅」はきな粉や砂糖醤油をつけて頂き、「あんこ雑煮(おしるこ)」や「あられ」・「かたもち」(新潟)にして食された。米麹から作る「甘酒」(新潟)、灰汁に漬けたもち米を笹の葉で巻いた「灰汁笹巻」(村上)も特徴的である。もち米や米粉を使ったものには、新潟県の特産品として親しまれている「笹団子」(新潟・県全域)があり、中に餡を入れたものだけでなく、ひじきやあらめの煮物を入れたものも食された。新潟県のおやつには笹の葉を用いたものが特徴的であり、笹団子の他に「三角粽」(柏崎・県全域)や「笹餅」(魚沼)などがあり、地域により笹の用い方に違いがみられた。くず米の利用として、あんや大根菜を入れた「あんぼ」(魚沼)、「おやき」(柏崎)、「みょうが団子」(上越)などがある。佐渡では米粉を使ったものとして、雛祭りには「おこしがた」、釈迦祭りには「やせうま」、ケの日には「とびつき」が食べられていた。その他のおやつに含まれるものに「バタバタ茶」(上越)があり、糸魚川市で泡立てた番茶をいただく風習があった。
著者
小笠原 靖 岡田 千穂 赤野 裕文 畑江 敬子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1081, 2009

<BR>【目的】食酢を利用した肉の軟化法として、生肉を食酢等の酸性調味料に漬け込む(マリネする)方法については詳細に研究されている。しかし、食酢やレモン等の酸を用いて肉を加熱調理する料理は世界各国にあるものの、加熱調理時の肉の軟化効果に関する研究はほとんどなされていない。そこで、本研究は食酢を用いた加熱調理における肉の軟化効果について調べることを目的とした。<BR>【方法】1.食酢溶液、および、食酢と他の調味料(食塩、砂糖、醤油等)の混合溶液で煮た豚ヒレ肉、豚ロース肉、鶏ムネ肉の硬さをテクスチュアアナライザー分析と順位法による官能評価で調べた。また、加熱後の肉の水分量を測定した。さらに、豚ロース肉を用いてコラーゲン溶出量をアミノ酸分析計で調べた。2.肉の加熱時に食酢と他の調味料の添加順を変えた場合の豚ロース肉の硬さをテクスチュアアナライザーで調べた。また、順位法による官能評価で硬さと味の評価を行った。<BR>【結果】1.食酢溶液で煮た肉は水で煮た肉よりも軟らかかったが、食酢と食塩または醤油の混合溶液で煮た場合にはその効果が低下した。食酢と砂糖の混合溶液の場合にはその効果が保たれた。食酢溶液で煮た場合は肉の水分量、及び、コラーゲン溶出量が多かった。2.最初から食酢と砂糖と醤油で加熱する調理方法よりも、始めに食酢と砂糖のみで加熱し、後に醤油を加えて加熱する調理法の方が肉を軟らかくできた。味の嗜好性には有意差が無かった。また、最初に醤油と砂糖で加熱しておき、次に食酢のみの溶液に移し変えて加熱する調理法も同様に肉を軟らかくできた。これらの調理法を活用することで、食酢を利用し肉を軟らかく美味しく調理できるものと考えられた。