著者
小川 朋子 鈴木 唯 萩原 静 五十嵐 絵美 五十嵐 槙 伊藤 直子 岩森 大 山崎 貴子 村山 篤子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成22年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.179, 2010 (Released:2010-08-27)

【目的】枝豆の収穫の際には規格外のはね豆が2,3割を占めている。現在、新潟県では首都圏に県産品をアピールする「にいがたフード・ブランド推進事業」が行われ、その事業の一環にはね豆の有効利用がある。本研究では、はね豆を用いて枝豆の最適な加熱条件及び保存条件を色調、官能評価、成分測定より検討した。 【方法】加熱は予備実験よりゆで加熱(100℃4分)、スチーム加熱(90℃5分)を比較した。スチーム加熱には低温スチーミング装置ATS-10A(AIHO)を用いた。保存条件は、収穫後の放置時間、ブランチングの効果について検討した。色調は色彩色差計(コニカミノルタ)を用いて行い、官能評価はゆで加熱を基準に7段階評価尺度法を用いてSD法による評価を行った。成分はHPLC法にて糖量を、ヒドラジン法にて総ビタミンC量を、ヤマサグルタミン酸キットによる比色法にてグルタミン酸量を定量した。 【結果】ゆで加熱した枝豆よりスチーム加熱した枝豆の方が糖が多くなったが、ビタミンC、グルタミン酸には差が見られなかった。色調及び官能評価においてもゆで加熱よりもスチーム加熱の方が高い評価を得た。収穫後放置すると、ビタミンCに大きな減少はなかったが、糖は時間が経つにつれ、減少した。収穫直後の生の枝豆とブランチング処理をした枝豆を-23℃で60日間保存し比較すると、ブランチング処理を行ったほうが色調、風味ともに優れていた。以上のことから、枝豆をおいしく食したい場合には収穫後1日以内でスチーム加熱をすることが望ましく、すぐに食さない場合には生で冷凍保存するよりもブランチング処理をして保存をするほうがよいことが分かった。
著者
冨田 晴雄 竹森 利和
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】炊飯米の保存による老化を抑制するために、保存方法の制御や添加材の投入、炊飯プロセスによる老化低減などが行われてきた。本研究では、炊飯手法による老化低減を目指し、日本を中心に用いられている炊飯法である炊き干し法と東南アジアを中心とした湯とり法について、米飯の老化傾向の違いについて評価し、微細構造や成分比較などにより老化原因の特定を試みた。<br>【方法】湯とり法の沸騰時間を7分~15分で変えた4種類の米飯及び炊き干し法の米飯を試料とし、SEMによる微細構造観察とテクスチャー測定を行なった。それぞれの米飯について、炊飯直後及び冷蔵庫(5℃)保管3日後の米飯の老化度合いを調べるため、XRD解析による結晶構造評価及びDSCによる再糊化に伴う吸熱エンタルピーの評価を行った。さらに、高温環境(70℃)下での水分保持率及び米飯の成分を比較した。<br>【結果】湯とり法では10~12分の沸騰時間の米飯が炊き干し法と同等の微細構造及びテクスチャーを示した。これらの米飯に対し、XRD及びDSCにより老化度合いを評価した結果、湯とり法の米飯の方がXRDのピーク及び吸熱エンタルピーが小さく、老化が遅いことが分かった。さらに、湯とり法の米飯は水分保持率が高く、3日経過後も初期の95%以上の水分を維持していた。米飯の成分を比較した結果、湯とり法の米飯は還元糖や遊離アミノ酸が検出されなかったが、それ以外は炊き干し法の米飯とほぼ同じであり、成分の違いが老化に及ぼす影響は少ないと考えらえる。また、湯とり法の米飯は沸騰時間に依存して老化が遅くなり、水分保持率も高くなったことから、沸騰時間に対する各種成分の変化を見たところ、米飯に含まれるスクロース量の増加及びデンプンが低分子化していることが分かった。
著者
北山 育子 熊谷 貴子 真野 由紀子 中野 つえ子 澤田 千晴 下山 春香 安田 智子 今村 麻里子 花田 玲子 竹村 望
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.86, 2011

【目的】近年、行事食を家庭で作る機会が減り、伝統的な行事食の伝承が少なくなっている傾向にある。そこで、平成21,22年度の日本調理科学会特別研究として行事食の認知状況および摂取状況等の実態調査をすることにより、青森県の行事食の現状を把握するとともに、世代間による違いを明らかにすることを目的に研究した。【方法】調査は全国統一様式による調査票により、青森県在住の学生324名とその家族及び一般306名(50~60歳代56.1%)の計630名を対象に選択肢法と自記式でアンケート調査を実施した。調査期間は平成21年12月から平成22年5月までとした。【結果】学生の行事の認知については、重陽の節句(25.2%)、盂蘭盆(48.6%)、春祭り(44.2%)、秋祭り(22.9%)は低かったが、他はほとんどが90%以上であった。また。経験については正月・クリスマス(99.4%)、大みそか(98.7%)、節分(94.6%)が高く、重陽の節句(2.6%)、秋祭り(19.5%)は極端に低かった。喫食経験についてはクリスマスのケーキ、大みそかの年越しそば、土用のうなぎの蒲焼き、冬至のかぼちゃの煮物が非常に高く、行事に食される特徴ある料理が根付いている結果となった。一般と比べてみると、行事の認知・経験ともにほとんどが低い傾向にあるが、仏事の行事(盂蘭盆30.9%、秋分の日65.2%、春分の日66.9%)の経験が特に低かった。喫食経験においては一般に比べて正月の屠蘇、上巳の白酒、七夕の煮しめなどが低かった。一般の回答も同傾向であるが、その割合はほとんどの行事において高かった。
著者
志和 睦 武智 多与理 畠中 芳郎 高村 仁知
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.141, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】コールドプレスジュースはスロージューサーで作成したジュースで、摩擦や熱で失われやすい酵素やビタミンなどが残っているほか、固形物が取り除かれているので胃への負担が少ないなどの理由で人気が高まっている。家庭用ジューサーの普及に伴い、コールドプレスジュースを家庭で製造する機会が増えたが、残渣などの廃棄部分が多く出るという問題がある。しかし、残渣には様々な機能性成分が含まれているため、食品としての利用価値が高い。本研究では、コールドプレスジュース製造残渣を増粘多糖類として利用したグルテンフリー米粉パンの開発を試みた。 【方法】柑橘系の果物からコールドプレスジュースを製造して得られたジュース残渣を試料とし、増粘多糖類として、グルテンフリー米粉パン製造の際に添加した。未乾燥のジュース残渣はパン生地の水分量に影響するため、まず、添加時の形状と添加可能な上限量を検討した。その後、ジュース残渣を添加した食パンを調製し、物性値(生地の膨化度、生地の粘度、比容積、パン断面の観察など)の測定および官能評価を行い、最適添加量を検討した。 【結果】ペクチンなどの食物繊維が豊富なジュース残渣の添加量を増やすには乾燥状態とすることが望ましいため、家庭で可能な乾燥法を検討し、自然乾燥と電子レンジ加熱を組み合わせて乾燥・粉末化する方法を見出した。米粉比約2%までの添加で、パン生地の粘度上昇と膨化が確認できた。焼成後のパンの品質も、対照として用いたグルテンを添加した米粉パンに近いものが調製でき、ジュース残渣が増粘多糖類として利用できることが示唆された。また、ジュース残渣の添加により、果物風味のおいしいパンが作成できた。
著者
佐藤 幸子 織田 佐知子 新藤 一男 本西 晃 花里 匡史 数野 千恵子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成23年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.38, 2011 (Released:2011-08-30)

【目的】川魚として代表的なアユ(鮎)は、生育環境により香りが異なるため、味覚にも影響を与える。そこで、環境によるアユの不快臭を軽減する目的で、多摩川中流の河川水で飼育したアユとその河川水に炭(多摩産杉間伐材)を使用したろ過水で飼育したアユの香気成分を比較検討し比較を行なった。またそれらの官能評価を行い炭の効果を検証した。【方法】飼育アユ:約15gの養殖アユを多摩川中流の水および炭でろ過した水のそれぞれの水槽で約2週間飼育し約25gのものを使用した。餌:多摩川中流の水および炭でろ過した水に石を投入し藻を付着させたものを適宜アユの飼育槽に投入した。試料の調製:試料は1尾を細切後、10gをバイヤル瓶(20mL容)に密閉し、SPME法で香気成分を捕集しGC-MSおよびGC-O分析を行った。さらに、アユはオーブンで焼いた後、匂いの強さと味について官能評価を実施した。【結果】多摩川中流水で飼育したアユの香気成分から2,6-Nonadienal(キュウリ様の臭い)やPentadecene(メロン様の臭い)等のアユ固有の匂いに関与する物質やMethyl vinyl keton(カビ臭)等の不快臭に関与する物質が検出された。ろ過水で飼育したアユでは原水で飼育したアユに比較してMethyl vinyl ketonが少なくなった。官能評価では、加熱調理後の匂いは、原水で飼育したアユに比較してろ過水で飼育したアユの香りを弱く感じた人が多かった。しかし味のよさやアユの匂いは個人的な食経験により良否が左右された。なお、本研究は東京都産業労働局農林水産部島しょ農林水産総合センターの委託事業によるものである。
著者
露口 小百合 明神 千穂 村上 恵 和田 珠子 伊藤 知子 今義 潤 江口 智美 久保 加織 高村 仁知 中平 真由巳 原 知子 水野 千恵
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

<b>【目的】</b>揚げる・炒める分科会ではこれまで揚げ種重量の10倍程度の油を用いた一般的な揚げ方法での様々な研究を行なってきた。しかし、最近では環境問題や健康への配慮から少量の油で揚げる「シャロウフライ」と呼ばれる方法が注目されている。そこで今回は揚げ種が浸る程度の少ない油量で揚げた場合の揚がり具合について検討した。<br>&nbsp;<b>【方法】</b>試料として豚カツ(業務用冷凍豚一口カツ)およびサツマイモ、揚げ油はキャノーラ油を用いた。油の量は「ディープ」(油の深さが揚げ種の厚さの2倍)、「シャロウ1」(同1倍)、「シャロウ1/2」(同1/2倍)とした。温度調節付きガスコンロと26cm径のフライパンを用い、豚カツは180℃、5分間、サツマイモは160℃、6分間揚げた。揚げ操作中に揚げ種の中心温度と油温の変化を測定し、揚げ操作後の重量変化より吸油率と脱水率を算出した。官能評価はパネル6~8名で、評点法(外観、油臭さ、におい、味、揚がり具合、テクスチャー、総合)と順位法で行った。<br>&nbsp;<b>【結果】</b>脱水率は、豚カツ、サツマイモともに「シャロウ1/2」で低かった。吸油率は、豚カツでは油量による差はみられなかった。中心温度は「シャロウ1/2」では温度上昇が遅かった。官能評価の評点法は、豚カツ、サツマイモともに外観、におい、揚がり具合、テクスチャーおよび総合において「シャロウ1/2」が有意に低い評価であった。順位法では、豚カツは、「ディープ」、「シャロウ1」、「シャロウ1/2」の順に好まれた。サツマイモの「シャロウ1/2」では仕上がりが不均一で水っぽく感じられ、脱水率の結果と一致していた。以上の結果から、油量の違いは揚がり具合に影響を及ぼすことが明らかになった。
著者
中平 真由巳 水野 千恵 明神 千穂 村上 恵 和田 珠子 安藤 真美 伊藤 知子 今義 潤 江口 智美 久保 加織 高村 仁知 露口 小百合 原 知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

<b>【目的】</b>近年、簡便な揚げ調理として、少量の油で揚げる「シャロウフライ」が注目されている。前回、「シャロウフライ」は通常の揚げ調理に比べて、官能評価が低いことを報告した。しかし、これは官能評価に影響を及ぼす要因である脱水率が統一されていない条件下であった。そこで今回は、脱水率を統一して「シャロウフライ」の再評価を実施した。<br><b>【方法】</b>試料は豚カツ(業務用冷凍豚一口カツ)、揚げ油はキャノーラ油を用いた。油量は、通常の揚げ調理である揚げ種の厚さの2倍の深さ(D)、厚さの1倍(S1)、および厚さの1/2倍(S1/2)とした。温度調節付ガスコンロを用いて180℃で揚げ調理を行い、揚げ種の中心温度と油温の変化を測定した。揚げ油の物理化学的性状値として、酸価、カルボニル価、粘度、極性化合物量、および色を測定した。揚げ種について脱水率を算出し、分科会のメンバーをパネル(n=18)として官能評価を評点法(外観、油臭さ、におい、味、揚がり具合、テクスチャー、および総合)により実施した。<br><b>【結果】</b>通常調理(D、揚げ時間5分)と同じ脱水率を得るために、S1は6分、S1/2は8分を要した。官能評価の評点(外観、におい、揚がり具合、テクスチャーおよび総合)において、S1とS1/2は揚げ時間の延長により、有意に高い評価が得られた。揚げ油の化学的性状値は、カルボニル価、極性化合物量、および色においてS1/2では揚げ時間の延長とともに上昇した。以上の結果から、シャロウフライは的確な揚げ時間の延長と揚げ作業の継続により、Dと同等の風味評価を確保できることが明らかとなった。一方、シャロウフライでは、使用油の劣化は大で、油の劣化に繋がることが明確になった。
著者
松葉佐 智子 甲野 祥子 鍵屋 慎一
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2016

【目的・概要】揚げ物はカロリーが高く、揚げ油の後始末が面倒という印象を持たれおり、家庭で揚げ物を作る頻度は減少傾向にある。一方で揚げ物が好きという人の割合は7割弱という調査結果があるため、実状は揚げ物に対する嗜好は高いと考えられる。本研究では家庭で行っている揚げ方の違い(油量の違い;深油揚げ、浅油揚げ、ノンフライ)による脂質含有量を測定するとともに食味官能評価を行った(実験1)。また揚げ物は温め直して食する機会も多いため、家庭で良く用いられる、電子レンジ、オーブントースターで温め直した揚げ物の食味官能試験を行い、揚げたての状態とのおいしさの変化を明らかにした(実験2)。<br>&nbsp;【結果】(実験1:揚げ方)食材全体が油に浸かる油量で揚げる方法(深油揚げ)、1cm程度の深さの油量で裏返しながら揚げる方法(浅油揚げ)、油をほとんど使わないノンフライの3種類の揚げ方で調理した鶏むね肉のから揚げを比較したところ、深油揚げよりも浅油揚げのから揚げの方が1個当たりの脂質含有量が有意に高かった。また、ノンフライでは深油揚げ、浅油揚げのどちらの揚げ方と比較しても有意に少なく、約半分程度であった。一方、食味官能試験においては深油揚げ、浅油揚げの間に差は見られなかったが、ノンフライよりも外観、味ともに有意に評価が高く、総合評価で「おいしい」という結果が得られた。(実験2:温め直し)揚げてから6時間経過した鶏むね肉のフライを電子レンジ、およびオーブントースターで温め直したもの、および揚げたてのものについて食味官能試験を行った。その結果、総合評価ではオーブントースターと揚げたての間に有意な差は見られなかったものの、評価項目中の「肉のジューシーさ」、「肉のやわらかさ」において揚げたての方が有意に高い評価が得られた。
著者
山澤 和子 荒井 七海 井田 有香 稲垣 花歩 犬飼 陽南子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.128, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】昨今,緑茶は利便性の高い加工飲料の頻用が一般化し,日本の緑茶文化「急須でお茶を淹れ風味を味わいながら寛ぐ」に接する機会は減少してきている。愛知県の伝統工芸「常滑焼」産地では「常滑焼急須で淹れた緑茶は苦渋味が弱く,口当たりがまろやかで美味しい」と言い継がれている。本報告は,急須材質が緑茶浸出液の呈味成分含量に及ぼす影響について検討した。【方法】試料緑茶葉:1mmの篩上の煎茶葉(静岡県産)を用いた。急須:容量500ml程度の常滑焼(赤(A)および黒(B))・有田焼(C)・鉄製(D)・銅製(E)・ステンレス製(F)・ガラス製(G)を用いた。緑茶浸出液の調製:AからGの急須に,試料緑茶葉 2gを入れ,85℃のイオン交換水100mlを注ぎ1.5分間浸出した後,濾過液を分析に供した。成分分析:ポリフェノール(PP)量は酒石酸鉄法,抗酸化能はDPPH法,アミノ酸量はニンヒドリン比色法で測定した。なお,糖量は糖度,有機酸量はpH値で検討した。【結果および考察】A とDで淹れた浸出液100ml中のPP量(73mg)は,その他急須の場合に比し顕著に少なかった。これはPPが急須材質中の鉄と結合体を形成した結果と推察され,苦渋味が弱まる一因と考えた。ラジカル消去能はPP量の多少と概ね同傾向であった。アミノ酸量は,Dで淹れた場合が最も多く,A・BのそれらはDの約80%,Cでは約70%であった。糖量や有機酸量に著しい差はなかった。以上から,鉄を含む朱泥を原材料とする常滑焼急須で淹れた緑茶は,PP量の減少により苦渋味が弱まり,アミノ酸による旨味が程よく保たれて味質バランスが整ったことが「まろやかで美味しい」の評価と関係すると推察した。
著者
堀口 恵子 神戸 美恵子 永井 由美子 阿部 雅子 高橋 雅子 渡邊 静 綾部 園子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.220, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】日本調理科学会平成24~26年度特別研究で、群馬県各地域の家庭料理について、次世代へ伝え継ぐ資料として聞き書き調査を行い報告した。その後の追加調査や刊行資料調査も含め、群馬県の家庭料理のおやつの特徴について報告する。【方法】平成 25 年 10 月~27 年 2 月に群馬県内の8地域において,各地域 2 名以上(60 歳~80 歳代,居住年数 40 年以上)の調査対象者に対して面接調査を行った。面接は特別研究の方法に従い,調査の同意を得た上で,調査票に沿って対話したものを記録した。その後、嬬恋村において追加調査を行った。【結果】群馬県は,冬期の日照時間が長く、乾燥した気候で、水はけのよい土地であるため、小麦の生産に適し、平坦地では米と麦の二毛作が行われている。小麦粉はおっきりこみやうどんなど主食として食するほか、いろいろなおやつが作られている。中でもまんじゅう類は種類が多く、炭酸まんじゅう(ふかしまんじゅう)、ゆでまんじゅう、すまんじゅう、そばまんじゅう、焼きまんじゅうなどがある。焼きまんじゅうは、すまんじゅうを竹串に刺し、たれ(赤みそ、砂糖、水)をつけて香ばしく焼いたもので、祭りや縁日の屋台で売られ、群馬のソウルフードともいえるおやつである。また小麦粉に野菜などを入れた焼いた焼きもち(ふちたたかっしゃい、もろこしおべった)や、たらし焼、じり焼き、甘ねじなどもある。米粉を使ったものでは、あんぴんもち、草だんご、きびもち、すすり団子などのもちや団子も喜ばれた。また、いも類のおやつでは、さつまいもを蒸して干した乾燥いもや油焼き、里芋をゆでて串にさしたれをつけたいも串、じゃがいもでは、いも餅やいも串などがある。様々なおやつの工夫がみられる。
著者
石川 伸一 猿舘 小夏
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.71, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】昨年度の本大会によって、エルヴェ・ティスの考えに基づき料理をマクロレベルとミクロレベルの双方から式化、分析し、料理を構造によって分類できることを示唆した。「料理の式」を確立するためにはより多くの式の作成、料理構造観察、定義の見直しを繰り返し行う必要があると考える。よって本研究では①レシピに基づいた料理の式の作成と②構造観察に基づいた料理の式の作成を行うこととした。また料理の式の応用例として新しい料理の開発が期待できるため、③新規料理開発方法の提案を行うこととした。 【方法】①森永乳業株式会社のウェブサイトに掲載されている「乳製品を使ったレシピ」から、主食・主菜・副菜あわせて380品を対象とした。②揚げ物の構造に着目し揚げ油の浸透具合を観察した。実験試料として鶏ささみを用い、脂溶性色素であるスダンⅣによって油を染色した。③料理式の改変パターンを考え、実際に「酒盗のピザ」について式を改変することにより料理を作成した。 【結果】①要素数を比較したところ、固体S、液体W、油脂O、併存+、包合⊃、重層σの数が「NHKきょうの料理」よりも「乳製品を使った料理」において有意に多い結果となった。これらのことから、乳製品の使用が料理の構造を複雑化している可能性を示した、②天ぷらのレシピに基づいた式はS1⊃(O/S2)であるが、観察に基づいて新しい基準に従うとS1⊃S2⊃(O/S2)に変化した。このことから構造観察に基づいた式は料理式の定義を見直す手がかりになることが考えられ、油の浸透割合など数値を用いることでより正確な構造を表現できることが示唆された。③式の改変方法には様々なパターンがあり、これらを組み合わせることで料理式は多様に変化すると考えられ、料理の開発への利用が期待できる。
著者
李,利
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, 2007-06-20

本研究は,中国明朝に李時珍によって編纂された『本草綱目』(1587年)と,この書を学び,日本の食生活にあわせて編纂した食物本草書『本朝食鑑』(人見必大著 1697年刊)の分類上の比較を通して,両国の食文化の特徴を明らかにすることを目的としている。その結果, 『本草綱目』で取り上げられなかった食品が, 『本朝食鑑』で多く取りあげられていたものは魚介類であり,逆に『本朝食鑑』で積極的な解説がなく,わずかな種類しか取りあげられなかったものは,獣類や虫類である。その取りあげ方を見るだけでも両国の食文化のちがいが明確になる。また,獣畜類に着目すると, 『本朝食鑑』では,胆,皮などは薬として扱っているが, 『本草綱目』のように,血,心臓など多くの内臓については紹介していないのも食文化のちがいを示す特徴の一つといえる。
著者
畑江,敬子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, 2012-04-05

煮物の味は冷めるときにしみ込むという言い伝えを検証するために,ジャガイモ,ダイコン,コンニャクを2cm角の立方体に成形し,1%食塩水中で食べられる軟らかさまで加熱後,0, 30, 50, 80, 95℃で90分まで保温し,30分後と90分後に外層部と内層部の食塩濃度を測定した。温度降下条件を各設定温度に試料を加熱した鍋のまま移す緩慢条件と,氷水に鍋をつけて設定温度まで下げた後保温する急速条件の2種とした。いずれの条件でも,保温温度が高いほど,食塩の内部への拡散は犬さく,このことは官能評価でも確認された。これらの結果から冷めるときに味がしみ込むということは見いだせなかった。ソレ効果についても検討したが,ソレ効果で煮物の調味料の拡散を説明することはできないことがわかった。冷めるときに味がしみ込むというのは,冷める時間に調味料が内部へ拡散することを言っているのではないかと考えられる。
著者
吉田 真美 内田 優 吉田 佑美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成18年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.19, 2006 (Released:2006-09-07)

[目的]ショウガはプロテアーゼ活性を有するため肉への軟化作用があるとされ、また6-ジンゲロールなどの抗酸化物質を多種類有することにより抗酸化作用をもつことが報告されるなど、その機能性が評価されている食品である。しかし、その簡便性ゆえに一般に普及している市販のチューブ入りショウガ、瓶入りショウガや粉末ショウガなどのショウガ関連商品についての報告はほとんどない。そこで、これらの商品の抗酸化性とプロテアーゼ活性ついて測定し、生ショウガと比較した。[方法]生ショウガはおろして使用した。それぞれの商品の水分を測定して、水分量を一定に調製した後、豚ひき肉に対する抗酸化性をTBA法で測定した。 また、試料を遠心分離して上清を得て、Sephadex G25を用いてゲル濾過クロマトグラフィーを行った。各溶出各分の280nmにおける吸光度を分光光度計で測定、たんぱく量をLowry法で測定、プロテアーゼ活性をカゼインを基質をして測定した。[結果]チューブ入りショウガ、瓶入りショウガは抗酸化性を有したが、生ショウガに比べてその機能はごく弱かった。粉末ショウガは、生ショウガの約半分の抗酸化性を示した。 プロテアーゼ活性については、チューブ入りショウガ、瓶入りショウガにはたんぱく質自体が存在せず、活性は全く無かった。粉末ショウガには若干の活性が認められた。これらの結果から、粉末ショウガにはある程度の機能が認められたが生ショウガには劣り、生ショウガの機能性が最も高いことが確認された。
著者
友竹 浩之
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.144, 2018 (Released:2018-08-30)

【目的】そばタンパク質は必須アミノ酸含量とバランスが優れた良質のタンパク質とされてきたが、消化性が低いことが欠点であると指摘されてきた。一方、そばに含まれる消化抵抗性タンパク質(レジスタントプロテイン)は、脂質代謝改善作用などの有用な機能性をもつことが明らかにされている。本研究では、そば加工品に含まれる消化抵抗性タンパク質(レジスタントプロテイン)を定量し、加工方法がタンパク質の消化性に及ぼす影響について調べることを目的とする。【方法】そばの実、そば粉またはそば製品を試料として用いた。各試料のタンパク質含量を、ケルダール法にて測定した後、2gをトリス緩衝液に懸濁し、耐熱性アミラーゼ、タンパク質分解酵素で数時間処理した。遠心分離後、沈殿を蒸留水で2回洗浄し、熱風乾燥した。ケルダール法にて沈殿物のタンパク質含量を測定し、未消化タンパク質の割合を算出した。【結果と考察】そばの実やそば粉を試験管内でタンパク質分解酵素と反応させた結果、全タンパク質のうち、約10~20%が未消化、不溶性のタンパク質(レジスタントプロテイン)として、残存していた。全体的には、タンパク質含量が高い製品ほどレジスタントプロテインの含量も高かった。また、そば加工品の中では、蒸し加熱したそば実よりも焙煎したそばの実の方が、消化性が低くなっていた。以上のことより、そばレジスタントプロテインは、加工処理方法によって影響を受ける可能性が示唆された。
著者
北尾 悟 籾谷 奈保子 安藤 真美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成20年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.48, 2008 (Released:2008-08-29)

【目的】 近年、様々な食品や食品素材の抗酸化能が評価されている。食品に調理操作を施し料理になる過程において抗酸化能は変化すると思われるが、その詳細を検討した事例は比較的少ない。また、砂糖は一般調理で最も使用頻度の高い甘味料であるが、調理過程における抗酸化能への関与については明らかにされていない。そこで、砂糖を用いた料理としてりんごのシロップ煮を取り上げ、その調理過程の抗酸化能の変化を調べた。さらにそこで得られた知見から、スクロースによるアスコルビン酸の抗酸化能保護効果についても検討した。 【方法】 りんごのシロップ煮の各調理過程における抗酸化能の変化を、AAPHペルオキシルラジカルのルミノール化学発光に基づくAAPH-CL法にて測定した。さらにモデル系として、アスコルビン酸添加の有無、スクロース濃度(0、30、60%)、加熱時間(0分、10分、20分)の組み合わせを変化させ抗酸化能を測定した。 【結果】 りんごのシロップ煮の各調理過程において、シロップとりんごそれぞれの抗酸化能の和と比較して、りんごのシロップ煮の抗酸化能は約3倍となった。一方、モデル系の場合、アスコルビン酸単独溶液は、加熱とともに顕著に抗酸化の減少が見られたが、同濃度のアスコルビン酸にスクロースが共存すると、抗酸化能の減少が有意に抑制された。スクロース自身も弱いながら加熱により抗酸化能は上昇するが、このスクロースによる抗酸化能の減少抑制効果は、相乗的かつ濃度依存的であった。以上の結果、スクロースは加熱により影響を受けやすい抗酸化成分に対してその保護効果を有することが示唆された。
著者
村山 篤子 古田 和浩 金子 慶子 田中 照也 伊藤 直子 山崎 貴子 岩森 大 堀田 康雄
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.174, 2007

<BR><B>【目的】</B><BR> 生体活動により、生物内に強い酸化作用を有する過酸化物(ラジカル)が発生する。野菜は、この過酸化物を打ち消すために、体内で還元力の強いビタミンCを生成する。一方、野菜を厳しい環境ストレス化におくことで、それに対抗するために、酵素の働きを活性化させて、抗酸化物質「ビタミンC」をより多く生成して体を守ろうとする。今回、これらのメカニズムを応用した低温スチーム調理方法を考案した。<BR> <B>【方法】</B><BR> ビタミンCを有する野菜として、春菊およびほうれん草を用いた。これらの野菜を、スチーム機能を有する家庭用オーブンレンジを用いて、庫内温度を40℃程度にコントロールし、低温スチーム調理にて加熱をおこない、ビタミンC含有量の差を測定した。<BR> <B>【結果】</B><BR> その結果、春菊では低温スチーム調理温度が約37℃~47℃で10分、ほうれん草では約38℃~48℃で27分の加熱で、野菜内のビタミンC含有量が増加する結果を得た。これは、この温度帯において、野菜が環境ストレスを受け、それに対抗してビタミンC生成酵素の働きが活性化されたためであり、37、38℃未満では十分な環境ストレスを与えられず、また47、48℃より高温になると生体活動が抑制されてしまうためであると考える。また、これらの野菜を電子レンジ加熱調理すると、生の状態から電子レンジ加熱した場合に比べて、低温スチーミングによって一旦ビタミンC含有量を増加させた後に電子レンジ加熱をした場合の方が、調理後のビタミンC残存量が多かった。<BR> このことより、40℃程度で短時間の低温スチーム調理を施すことで、春菊やほうれん草のビタミンCを増加させることができ、より多くのビタミンCを摂取することができる。
著者
三宅 紀子 酒井 清子 五十嵐 歩 鈴木 恵美子 倉田 忠男
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.189-192, 2007-06-20
参考文献数
13
被引用文献数
1

エダマメ中の呈味成分やビタミンCは水溶性や不安定な化合物であるためゆで加熱中に分解したり,溶出したりすると考えられてきた。本研究の目的はエダマメ中の呈味成分およびビタミンC含量に対するゆで時間(3-10分)の影響を調べることである。主要な呈味成分であるスクロース,グルタミン酸,アラニンなどの糖および遊離アミノ酸含量は7分間以内のゆで加熱では著しい減少は認められなかったが,10分間ゆで加熱では総遊離アミノ酸とアラニンが有意に減少した。総ビタミンCは7分間以内のゆで加熱では90%以上が残存していたが,10分間加熱では85%に減少した。従って7分間以内のゆで加熱時間ではエダマメの呈味成分およびビタミンC含量はあまり影響を受けないことが明らかになった。
著者
福永 淑子 船山 敦子 高崎 寿江 永嶋 久美子 臼井 照幸 蓮沼 良一
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成20年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.11, 2008 (Released:2008-08-29)

【目的】 冷蔵庫を用いて強性通風した庫内において肉、魚および野菜を低温で乾燥させることより新鮮さを保ちつつ保存性が高まった美味しいセミドライ食品製造する方法を開発した。セミドライ食品は一般には野外の通風のよい所にさせるものであるが、本開発技術では冷蔵庫内の低温乾燥した空気より食材を乾燥させてセミドライ食品を製造する方法であり、この方法を冷風乾燥法と名づけた。 【実験】 材料としては、肉類、魚類、野菜類、キノコ類および果物類を選び、その効果を検討した。今回は市販(日立R-SF60XM型)に強制通風させて8~12℃に設定した、約25cm×15cm×12cmのプラスチック性箱を製作し、この中に網棚を設けた。上記の食材をこの網棚に並べ約一日から二日間乾燥させた。 【結果および考察】 この操作により、個々の食材によって風味や色および味が異なるが、従来の常温乾燥セミドライものと比べて全体的に以下のような優れた特徴を持つ食品を製造できることが明らかになった。_丸1_常温乾燥のものと比べて、全体的にも元の生の色に近く、肉類については特に透明感と光沢感が強いこと、_丸2_特に肉類では生臭みはなくなり、野菜類ではその特有の風味が強まること、_丸3_一部の食材では熟成作用もあることが感じられ、果物と野菜では濃縮した美味しい味とともに、テクスチャーが変わり、新たな食感の食品となること、_丸4_キノコ類では水で戻すと速やかに旨味成分が溶出し、しかも濃いだしがとれること、エノキ茸ではそのまま食すると非常に美味しい新たな食品となることが、わかった。以上のように低温乾燥セミドライ法により新しい特徴を持った加工食品・食材が製造できることがわかった。