著者
西山 孝樹 知野 泰明
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.11-21, 2012
被引用文献数
2 1

江戸幕府の河川技術流派である"紀州流"の出所である和歌山県,その北部を西流する紀の川両岸は河岸段丘が拡がり,近世初頭まで溜池と紀の川に注ぎ込む中小河川に堰を設けて灌漑が行われて来た.本研究では,"紀州流"の原点を見出すことを最終目的とし,紀の川上・中流域において荘園が形成された11世紀末以降から近世中期までの灌漑水利の変遷について研究を行った.本研究の結論として16世紀頃から荘園制度が消滅していき,近世初頭の応其上人による溜池の築堤や改修,紀州藩の事業として紀の川の堤防築堤や用水路開削が行われ,紀の川に対して横断方向の開発から本格的に大規模な縦断方向の新田開発へ転化していったことが明らかとなった.
著者
長尾 和明 山本 浩之 笠 博義 竹津 英二 木村 義弘
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
トンネル工学研究発表会論文・報告集 (ISSN:18849091)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.263-268, 2003-11-17 (Released:2011-06-27)
参考文献数
6

Iiyama tunnel has bored into Tertiary sandstone, mudstone and tuffbreccia which include inflammable gas like methane gas, at boundary of Nagano and Niigata prefecture. For methane gas is very combustible and explode easily, investigation and monitoring of inflammable gas is very important for safety construction of the tunnel. It was reported that horizontal exploratory boring, automated monitoring system and ventilation system for dilution of the gas were applied effectively on this tunneling.
著者
菊池 輝 山本 俊行 芦川 圭 北村 隆一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.503-508, 2001-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

本研究では, 従来より用いられてきたゾーンシステムにおける問題点に着目し, 空間表現技法として直交座標系でトリップ目的地点を表現する座標システムを用いた目的地点選択行動の再現手法を開発した. 巨大となる目的地選択肢集合に対処するため, MCMC法を適用することで効率的なサンプリングを行った. 仮想的な領域を想定したシミュレーションの再現値は, 設定した効用関数より算定した理論値とほぼ一致し, 本研究による計算法の妥当性を確認した. また京都市中心部を対象としたシミュレーションにおいても, 推定したパラメータの影響を反映する再現値が得られ, 目的地選択行動の再現方法として有用な手法であることが示された.
著者
大角 恒雄 福島 康宏
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.I_69-I_78, 2015

西アジアに甚大な地震・津波被害を及ぼしたAD 365年クレタ(Crete)沖地震は,<i>M</i>8.5クラスであったことが言われている.この地震による津波はギリシャ沿岸のみならず,古代都市であるアレキサンドリア(Alexandria),シリア地域に大きな被害を及ぼしたことが伝えられている.AD 365年の地震は,東部地中海地域の代表的地震であるが,Pirazzoli(1986)は東地中海周辺の海岸線の隆起地形に着目し,AD 350-550年が過去2000年に遡ってこの地域で最も顕著な地震の活動期の一つであったことを記述している.当時の痕跡である現地の地盤隆起は今でもクレタ島には存在し,その特徴と数多くの研究者のAD365年クレタ沖地震のパラメータを検証し,統計的グリーン関数法を用いて当時の地震動を推定した.
著者
米田 昌弘 檜尾 洋希
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.752, pp.89-104, 2004-01-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
12
被引用文献数
1

旧タコマナローズ橋が落橋して60年以上が経過した現時点においても, 旧タコマナローズ橋のねじれフラッター特性に関しては完全に解明されていない幾つかの疑問点が残されている. そこで, 本研究では, 出来る限り正確な旧タコマナローズ橋の構造諸元を算出するとともに, 固有振動解析とねじれフラッター解析を実施して, 旧タコマナローズ橋のねじれフラッター特性について考察を加えた. その結果, 旧タコマナローズ橋では, ねじれフラッターの発現時にはセンタースティが有効に機能していなかったこと, もしセンタースティが有効に機能していた場合には, 対称1次のねじれフラッターが発現したとの知見を解析的に提示した.
著者
山崎 文雄 副島 紀代 目黒 公郎 片山 恒雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.507, pp.265-277, 1995-01-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
23
被引用文献数
1 5

釧路沖地震後の釧路市1,000世帯に対し, 日頃の地震対策, 釧路沖地震による家庭での被害やライフラインの停止状況などを尋ねるアンケート調査を実施した. その結果を見ると, 家屋の構造被害が約半数にも上り, 家具の転倒や照明機器の落下・破損が20%を越えるなど, 被害の大きさが明らかになった. また被害発生の比率は傾斜地, 台地, 平坦地の順に大きく, この地震による揺れと地形が関係深いことが示された. ライフラインの停止は, 停電が約半数, 断水が約1/3, ガスの停止が2割強の家庭で発生し, 電話は輻輳状態となった. しかし住民の困惑度は, 停止の有無より継続時間により影響されることが示された. ライフライン停止の許容時間は半日以内という回答が多く, 許容時間は電力, 電話, 水道, ガスの順に短かった.
著者
神谷 大介 赤松 良久 宮良 工
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_13-I_18, 2013

沖縄県は亜熱帯海洋性気候に属し,特に小規模な島嶼では元々水資源に乏しかった.1972年の本土復帰以降,種々の水資源開発により水供給可能量は増加してきたが,人口および観光客の増加により,需要量は増加しており,給水制限の可能性を高めている.本研究では沖縄県の離島地域における渇水を地域社会の問題として捉え,水道事業の課題を整理し,水に関わる問題を地域社会との関係で構造化した.さらに,座間味島を対象に,観光客増加と住民の節水のみによる給水制限の回避というシナリオ分析を行った.この結果,さらなる節水は非常に困難であることが示唆された.さらに,キャリングキャパシティの考え方を援用して,水資源からみた島の観光客受け入れ容量について提示した.
著者
纐纈 一起
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.437, pp.1-18, 1991-10-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
134
被引用文献数
2 2
著者
秋田 宏 藤原 忠司 尾坂 芳夫
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.420, pp.61-69, 1990-08-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
25
被引用文献数
5 14 28

The distributions of water content within mortar specimens were observed when water moved in one direction under three environmental conditions, namely drying, moisture absorption and water absorption. Numerical results were compared with the experimental data in order to examine whether the diffusion theory with non-linear equation is adequate for description of the behavior of the water movement. From the comparison, it is concluded that the diffusion theory is applicable to the above three conditions when diffusion coefficients and boundary conditions are suitably chosen. The mechanism of water movement within mortar is also discussed.
著者
羽藤 英二
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.13-27, 2002-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
81
被引用文献数
1 1

本稿では, ネットワーク上の行動原理とモデルを整理した上で, 今後の研究の方向性を展望してみたい. 交通行動モデル発展の経緯を整理した上で, 行動モデルとネットワークモデルの理論的整合性に留意して, 均衡配分理論の定式化と, 最適性条件, ローディングアルゴリズムをレビューする. 従来のモデルを下敷きに, 新たなモデルの枠組み構築に向けた課題と展望について触れる.
著者
北村 隆一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-15, 2003-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
111
被引用文献数
3 4 3
著者
青木 俊明 星 光平 佐藤 崇
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.43-53, 2006

本研究では集団状況における協力意向の形成機構を検討した.私的利益,手続き的公正,同調圧力を操作した心理実験の結果,以下の知見および示唆を得た.1)集団状況では,私的利益感,同調圧力感が重要な態度形成要因であること.2)同調圧力を作用させた実験参加者の約1割が公的受容を伴う同調で態度を形成していた.3)私的受容による同調と合わせると,4割強の実験参加者が同調圧力の影響を受けて態度を形成していた.4)私的受容と公的受容の分岐要因は,同調圧力感,私的利益感,手続き的公正感と推察される.5)同調を示す場合,私的利益感と手続き的公正感が低く,同調圧力感が高い場合には公的受容が促され,私的利益感と手続き的公正感が高く,同調圧力感がさほど高くない場合には私的受容が促されることが示唆された.
著者
田中 皓介 中野 剛志 藤井 聡
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_353-I_361, 2013
被引用文献数
4 4

人文社会科学において,"物語"は,人間,あるいは人間の織り成す社会の動態を理解するにあたって重要な役割を役割を担うものと見なされてきている.それ故,人間や社会を対象として,公共的な観点からより望ましい方向に向けた影響を及ぼさんと志す"公共政策"においても,物語は重大な役割を担い得る.また公共政策の方針や実施においては,マスメディアが少なからぬ影響を及ぼしていることが十二分に考えられる.ついては本研究では,現在の日本において,政策が決定,採用されてきた背景を把握するにあたり,新聞の社説を対象とし,新聞各社に共有されている物語を定量的に分析することとする.
著者
藤井 聡 染谷 祐輔
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.481-487, 2007-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
17
被引用文献数
1 5 12

本研究では, 交通行動が居住地選択行動に影響を及ぼし, かつ, 居住地選択行動がさらに交通行動に影響を及ぼす, という形で, 交通行動と居住地選択行動に相互依存関係が存在するという仮説を措定した. それに加えて, 交通行動は, 転居を経てもなお, 習慣の効果により, その形態が持続されるであろうという仮説を措定した. 本研究では, これらの仮説より演繹される転居前後の交通行動, ならびに, 居住地選択行動との間の構造的因果関係を, 転居者を対象としたアンケート調査より得られたデータに基づいて検証したところ, その因果関係を支持する結果が得られた. 本稿では最後に, こうした結果の含意を議論することを通じて, 交通施策, 土地利用施策と行動変容施策の三者を一体的に展開することが, 望ましい都市と交通を期するためには重要であることを指摘した.
著者
北島 正章 遠矢 幸伸 松原 康一 原本 英司 宇田川 悦子 片山 浩之 大垣 眞一郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境工学研究論文集 (ISSN:13415115)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.361-370, 2008
被引用文献数
1

ヒトノロウイルスは、細胞培養系が確立されていないため、消毒処理に対する耐性について十分な知見が得られていない。本研究では、ヒトノロウイルスに近縁で細胞培養可能なマウスノロウイルスを用い、水道水中のノロウイルスに対する塩素消毒の有効性を検証した。マウスノロウイルスの塩素消毒耐性はポリオウイルスよりも低く、3mg/L・minの遊離塩素消毒で99.99%(410g) 以上不活化された。また、ヒトノロウイルスとマウスノロウイルスの遺伝子の残存率は同程度であった。これらの結果から、ノロウイルスの塩素消毒耐性は他の腸管系ウイルスと同等以下であり、十分な塩素消毒が施された配水システムにおいてはノロウイルスが感染力を保ったまま末端給水栓まで到達する可能性は低いことが示唆された。
著者
山内 正仁 今屋 竜一 増田 純雄 山田 真義 木原 正人 米山 兼二郎 原田 秀樹
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境工学研究論文集 (ISSN:13415115)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.545-553, 2005

To help develop a technology for the conversion of the solid matter contained in sweet potato shochu lees, which is a food industrial waste, into a new resource, a study was conducted on the use of dried shochu lees as a nutrient material in the culture medium of hiratake mushrooms (Pleurotus ostreatus). Mushroom cultivation could be shortened by 4-8 days by using the shochu lees medium in lieu of the conventional rice bran medium. The mean yield in a test plot with 60% shochu lees was 137g, which was 1.6 times the yield from rice bran medium. Moreover, hiratake cultured in the shochu lees medium contained more protein than mushrooms grown on rice bran medium, indicating that the use of dried shochu lees could make it possible to commercially produce mushrooms with higher protein contents than conventionally grown mushrooms and open a way for large-scale utilization of shochu lees.
著者
森本 浩行 西田 一彦 西形 達明 玉野 富雄 森 毅
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.263-268, 2000-05-01 (Released:2010-06-15)
参考文献数
14

1959 (昭和34) 年の「大坂城総合学術調査」において, 現大阪城が豊臣秀吉創建のものではなく, すべて江戸時代初期の徳川幕府による築造であることが判明した. またこの調査により, 本丸天守台南側で地下深く埋れた石垣が発見された. その後, ガスや水道の埋設管敷設に係わる調査において, いくつかの地下石垣が発見された. 特に, 1984 (昭和59) 年に行われた大手前配水池南側の調査において, 大規模な石垣垣の隅角部が発見された. これらの地下石垣は地上の石垣とは規模も積み方も異なり, 豊臣時代の大坂城ではないかと考えられている. 本研究では, 筆者らが提示している数値評価法を用いて, この地下石垣の特徴について考察するとともに, 石垣構築の技術的な面から構築年を推定した.
著者
古地 祐規 國生 剛治 石澤 友浩 山本 純也
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1007-1010, 2007

2007年3月25日に石川県能登半島沖を震源とするマグニチュード6.9の能登半島地震が発生した. 石川県七尾市, 輪島市, 穴水町で震度6強を観測したほか, 広い範囲で震度5弱以上を観測した. この地震により, 石川県七尾市内の能登有料道路の各所において大規模な盛土の斜面崩壊が多数発生した. 崩壊土は流動距離が大きく, 沢などに到達し河道閉塞をも引き起こしていた. 筆者らは同年4月5日にそれらの斜面崩壊地点で現地踏査を行い, 未崩壊部の盛土から不撹乱試料を採取した. これらの試料について, 物理試験, 繰返し非排水三軸試験, 繰返しせん断試験後の単調載荷試験を行い, 得られた結果について報告する.