著者
溝口 哲郎 齋藤 雅元
出版者
麗澤大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

公職に携わる人々が私益のために職権を濫用する腐敗・汚職の問題は,資源配分に歪みをもたらす.本研究は,腐敗・汚職が国家・市場制度にもたらす影響の度合いを,①オークション理論,②不完全競争市場を想定した経済理論モデルを用いて分析した.本研究では①に関する研究に進捗があり,国際的な査読誌であるPacific Economic Reviewに2014年に掲載された.具体的には,官僚に裁量権があり賄賂の対価に再入札を認める場合に,非効率な企業が政府調達を勝ち取る可能性がある.その解決策として海外部門への輸出を導入することで,効率的な企業が高品質な商品を提供する状況になることを示した.
著者
邉 英治
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

研究年度第4年目にあたる今年度は、本研究プロジェクトのとりまとめに向けて、追加的な一次史料および二次資料の収集を進めるとともにデータ分析を行い、それらをもとにして論文化及び著作化を進めた。一次史料の収集と関わっては、イギリス・エディンバラのRBSアーカイブに出張し、金融エリートとして日本の銀行業の近代化に多大な影響を与えたアレクサンダー・シャンドが、晩年に(執行)役員を務めたパース銀行の各種委員会の日誌を中心に収集した。そして、総支配人から異例の昇格を果たしたシャンドをはじめとする執行役員陣が、どのように健全性を確保しつつ、日々の産業金融業務を遂行していたか、検討を進めた。二次資料の収集と関わっては、財閥系銀行及び有力地方銀行の役員を務めた金融エリートの自伝・伝記類を中心に国立国会図書館などで収集し、日本の銀行業の近代化にどのような影響を及ぼしていたか、検討した。例えば、横浜銀行の伊原隆は、公共部門の金融と産業金融とのバランスをとることで、健全性と収益性の両立を図っていたことが明らかとなった。なお、これらの研究成果の一部は、共著書に採録される予定である。国際比較の観点からは、金融エリートの役割の日本的特徴を明らかにするため、スウェーデン金融史を専門とされるウプサラ大学のヴェンシュラーク博士と打合せを行い、スウェーデンの金融エリートとの比較分析を進めた。なお、本研究成果の一部は、国際ジャーナル(Social Science Japan Journal)に投稿済みであり、査読の結果を待っている状況である。
著者
飛田 あゆみ
出版者
(財)放射線影響研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

1.全員が原爆被爆者である、長崎Adult Health Study集団を対象としてシェーグレン症候群に関する調査を行った。1)男性432例、女性662例、計1094例から同意を得られた。平均年齢は71.8歳だった。2)眼球乾燥症状は168例(15.4%)で陽性、口腔乾燥症状は283例(25.9%)で陽性、いずれかの症状をもつものは358例(32.7%)だった。3)涙液分泌量検査(シルマーテスト)は992例で実施し、涙液分泌量が低下していたのは369例(37.2%)だった。4)唾液分泌量検査(サクソンテスト)は990例で実施し、唾液分泌量が低下していたのは198例(20.0%)だった。5)涙液または唾液いずれかの分泌量が低下していたのは484例(48.3%)だった。6)血清学的検査は1094例で行い、抗SS-A/Ro抗体は40例(3.7%)で陽性、抗SS-B/La抗体は14例(1.3%)で陽性だった。7)ローズベンガル染色検査は283例で実施し、3点以上は142例だった。8)唾液腺エコー検査は389例で実施し、55例でシェーグレン症候群を疑う所見があった。9)唾液腺MRI検査は180例で実施し、11例でシェーグレン症候群を疑う所見があった。また、耳下腺に脂肪沈着を証明できたのは50例だった。2.上記検査の結果を総合してシェーグレン症候群と診断されたのは33例で、調査参加者1094例の3.0%だった。統計学的に放射線被曝線量との有意な関係はなかった。3.唾液分泌量と放射線被曝線量に統計学的に有意な負の相関があった。
著者
伊藤 尚子 木下 康仁 金 永子 文 鐘聲
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、在日コリアン高齢者と韓国人高齢者の抑うつにかんする要因を明らかにすることである。研究初年度にあたる本年度は、研究の全体像を把握するため文献等資料収集を行った。その結果をまとめ現在、論文投稿の準備を行っている。文献収集に合わせて、収集した量的データから、研究に関する新しい知見を得ることを目的に、在日コリアン高齢者の抑うつ傾向の関連因子の再分析を行った。結果として、抑うつ傾向者が47.8%にみられた。抑うつ傾向者は、朝鮮半島で生まれ日本に移民した在日コリアン1世高齢者(65.6%)が、日本で生まれた在日コリアン2世高齢者(42.0%)に比較して有意に高く、年齢、性別、出生地、治療中の疾患と婚姻状況に関係なく、家族親戚と電話などの間接的なやり取りをする頻度、友人と直接会う頻度、友人と電話など間接的なやり取りをする頻度、外出頻度、また、趣味を楽しむ機会が少ない群ほど抑うつ傾向の割合が有意に高くなる傾向がみられた。在日コリアン高齢者の精神的健康の保持増進のためには、在日コリアン高齢者が家族友人と交流を持つ機会を作ることや、高齢者が近隣で社会活動を確保できる場所づくりが必要であることが示唆され、この結果は論文にて研究報告を行った。しかしながら、これらの傾向が、在日コリアン独自の結果なのかを明らかにするには、日本人高齢者、韓国人高齢者との比較をするなど再検討する必要がある。そのため、日本人高齢者との量的な調査データの比較を行いつつ、在日コリアン介護施設における参与観察、インタビュー等質的な調査も同時に行い、研究2年目には韓国にて質的、量的調査を行うため、関係機関と研究計画など調整を行っているところである。研究結果は随時学会等で発表を行う予定である
著者
有賀 早苗 有賀 寛芳
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1)DJ-1の機能解析-ドパミン生合成におけるDJ-1の機能DJ-1はTH, DDCに直接結合し、活性を正に制御することを明らかにした。パーキンソン病患者で見られるDJ-1変異体にはその活性がない。また、ヘテロ変異体は野生型DJ-1に対し、dominant negative効果を示し、ヘテロ変異も発症の一因となることが示唆された。H_2O_2,6-OHDAなどで細胞に酸化ストレスを与えると、DJ-1の106番目のシステイン(C106)が、-SOH, SO_2H, SO_3Hと酸化される。軽度のC106酸化はTH, DDC活性を上昇させ、過度の酸化は逆に活性抑制を示したことにより、弧発性パーキンソン病発症におけるDJ-1機能が類推された。2)DJ-1とDJ-1結合化合物による神経変性疾患治療薬への応用虚血性脳梗塞モデルラット脳へのDJ-1注入により顕著に症状が抑制された。DJ-1結合化合物は、DJ-1のC106への過度の酸化を抑制することで、DJ-1活性を維持することを明らかとした。更に、DJ-1結合化合物の更なる活性上昇を狙って、in silicoで構造改変した。また、250万化合物ライブラリーを使ったin silico大規模スクリーニングで、DJ-1結合化合物を複数単離した。
著者
日下 九八
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.2-12, 2012 (Released:2012-04-01)
参考文献数
12
被引用文献数
10 4

ウィキペディアは,誰でも編集できる,フリーなオンライン多言語百科事典である。多くの人に利用されているが,信頼性についての疑問が示されてきた。本稿では,まず,その信頼性について,先行する調査を概観していく。百科事典の性質や,ウィキペディアの記事内容に関する「検証可能性」「独自研究は載せない」「中立的な観点」という重要な方針が促す改善と常に発展過程にあるという性質による限界を論じる。また,あらゆる人に知識を提供するオンライン百科事典の果たす社会的な役割についても検討する。誰もが専門的な知識を理解しなければならない知識基盤社会/高度情報化社会において,検証可能な信頼できる情報源を示したオンライン百科事典は,すべての人を専門的な知識へと導くことを可能にする。
著者
吉田 暁
出版者
経済理論学会
雑誌
季刊経済理論 (ISSN:18825184)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.15-25, 2008-07-20 (Released:2017-04-25)

I have advocated the endogeneity of money supply following the views of M. Nishikawa and J. Itakura as well as those of N. Kalldor and B. J. Moor. As Moor appropriately wrote, "Currently the standard paradigm, especially in the United States, treats the central bank as determining the money base and thence the money stock. / Modern monetary theory has inherited an approach to money that was more appropriate in a world where money was a commodity, usually gold or silver, without fully recognizing the fundamental differences between commodity and credit money." These views, however, have not been widely accepted, especially among Japanese Marxian economists. Some of them have criticized the endogenous money supply theory. This article is a counter-criticism of some most criticizing arguments, mainly those of professor H. Noda and professor T. Itoh Marxian economists quite often express their views based on what Marx said, especially in "The Capital". Marx introduced capitalistic money through the logical developments of the value form, and said that gold would become the main material of money due to its physical characteristics. Then, it is not strange that their views on credit money are based on gold. They have regarded that the gold convertibility is the essence of credit money. They do not attach greater importance to the causes of issuance or withdrawal of credit money, that is, the connection between the supply of credit and the supply of money. In the modern world gold as money does not exist. But they tacitly regard fiat money as a replacement of gold, in other word, exogenous money. Another point I stressed in this article is that those who are severely critical to the endogenous money supply theory misunderstand Marx's logical way of writing. In "The Capital" vol. 1 and 2, there are no credit systems, no credit money. There is only commodity money (gold) introduced at the money theory (vol. 1). At the reproduction charts (vol. 2), his premise is each capitalist has a certain amount of money which is needed for the purchase of materials and the payment of wages etc. Credit system and credit money are the problems of vol. 3, and unfortunately Marx could not complete the credit theory. But some of those who criticize the endogenous money supply theory quote from vol. 1 or 2 where, actually, only commodity money (gold) exists. I also stressed that Phillips-type credit creation theory (multiplier theory)is not valid, especially in the world of credit money. Revival of Macleod or Hahn=Schumpeter type theory is very important. Today's monetary policies of major central banks are not money supply control, but money market interest rates control that affects the public demand of funds. The starting points of the credit creation are loans of banks to firms and household by crediting to their deposit accounts. At this point banks do not need surplus money. Monies are created by the action of banks, that is Macleod-type credit creation. When the cash demand increases, central banks should accommodate. If a central bank worries about the level of the economic expansion and the increase of prices, it can affect demand of funds and then affect prices by interest rates control policy. Today's monetary policies of major central banks are money market interest rates control. Lastly, I stressed the importance of the independence of central banks. Some people might question that the central bank independence is against the democratic procedures of policy determination. But, in my opinion, there is a big difference between the monetary policy and other policies of the governments. While monetary policies are executed through financial transactions in the market, other governmental policies are executed as an exercise of administrative powers.
著者
渡辺 澄夫
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.211-219, 2003-12-05 (Released:2011-03-14)
参考文献数
41
被引用文献数
1 1

人工的神経回路網に代表される多くの確率的推論モデルは, フィッシャー情報行列が特異となるパラメータを持つため, 統計的正則モデルではないことが知られている. 現在でも, その学習の数学的な性質の多くは謎のままであるが, 近年の研究の進展により, ベイズ学習については多くの事実が解明されるようになってきた. 本論では, 特異モデルにおけるベイズ学習について, 数学的な美しさと実世界問題における有用性を解説する.

87 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1940年05月01日, 1940-05-01
著者
大髙 瑞郁 唐沢 かおり
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.49-59, 2010 (Released:2010-08-19)
参考文献数
18
被引用文献数
2

帰属と援助の先行研究は,貧困者が政府に援助されるに値するか否かの判断(Zucker & Weiner, 1993)や,貧困者を援助する社会政策に対する態度の規定因(Applebaum, 2001)を検討してきた。しかし,政府に援助されるに値しないと判断した人々も,社会保障政策を支持するかもしれない。なぜなら,彼らが貧困者に貧困を解決することが不可能であると判断すれば,政府に援助する責任があると判断し,社会保障政策を支持する可能性が考えられるからである。そこで本研究は,社会調査データの二次分析を行って,人々が社会保障政策に対する態度を決定する過程を解決責任(Brickman, Rabinowitz, Karuza, Coates, Cohen, & Kidder, 1982; Karasawa, 1991)の観点から検討した。結果は,低所得者は高所得者よりも,社会保障の対象となる人々の生活を保障する政府の責任を重く判断し,社会保障政策を支持することを明らかにした。考察では,格差が拡大しつつある日本社会に,本研究が与える示唆について議論した。