著者
平木 彰佳 菊地 正広
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.34-38, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
20

イオン飲料の多飲によるビタミンB1欠乏からWernicke脳症を発症した2例を経験した. 症例1は1歳3カ月男児で, 頻回の嘔吐が先行し, 意識障害と眼球運動障害, 運動失調で発症した. 症例2は7カ月男児で, けいれん重積で発症した. 2例ともビタミンB1投与で症状は改善したが, 症例2は神経学的後遺症を残した. 本疾患は嘔吐が先行することが多く, 症例1のように初期に胃腸炎と診断されることもある. 胃腸炎の診断でイオン飲料を多用することには注意を要する. 症例2はけいれん重積での発症で, 非典型的であった. 2例はいずれも偏食とイオン飲料の多飲があり, 日常診療では患児の摂食状態の把握と適切な栄養指導が重要である.
著者
Minoru Nakao Mizuki Sasaki Tsukasa Waki Mitsuhiko Asakawa
出版者
The Japanese Society of Systematic Zoology
雑誌
Species Diversity (ISSN:13421670)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.159-167, 2019-07-25 (Released:2019-07-25)
参考文献数
35
被引用文献数
3

Members of the genus Glaphyrostomum Braun, 1901 (Trematoda: Brachylaimidae) are parasites of birds. However, an exception occurs in Glaphyrostomum soricis Asakawa, Kamiya and Ohbayashi, 1988, which was described from the long-clawed shrew, Sorex unguiculatus Dobson, 1890, in Hokkaido, Japan. A recent DNA barcode-based trematode survey of land snails clearly showed that Ainohelix editha (A. Adams, 1868), a bradybaenid snail indigenous to Hokkaido, serves as the first and second intermediate hosts for a species of the genus Pseudoleucochloridium Pojmańska, 1959 (Panopistidae). Its adult stage was furthermore confirmed from S. unguiculatus. A comparison of adult morphology between Pseudoleucochloridium sp. and G. soricis revealed that both should be considered the same species. However, Pseudoleucochloridium soricis comb. nov. cannot be applied because P. soricis (Sołtys, 1952) already exists as the type species of the genus. We, therefore, propose Pseudoleucochloridium ainohelicis nom. nov. as a replacement name for G. soricis.
著者
Tatsuya TSUBOI Hideki WADA Makoto YANAGA
出版者
日本放射線安全管理学会
雑誌
Radiation Safety Management (ISSN:13471511)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.11-18, 2012 (Released:2012-12-21)
参考文献数
9
被引用文献数
3 4 1

Distribution of radioactive Cs was investigated in the surface soils of urban and vicinity areas of Shizuoka city, Japan. Concentration of 134Cs and 137Cs showed values in the range of 37 to 2435 Bq/m2 (1 to 95 Bq/kg) and 57 to 2242 Bq/m2 (2 to 98 Bq/kg), respectively. The original production ratio of 134Cs and 137Cs was estimated to be 1:1. The high activity areas were mainly observed along the Warashina area and southern slope of the Udo Hills. The pollutant fine particles with radioactive Cs released from the Fukushima Dai-ichi nuclear power plant were arrived at Shizuoka city by northwest wind in the morning and southwest wind in the afternoon on March 15, 2011. The radioactive Cs distribution pattern indicates that these pollutant particles were dropped on land surface of the Warashina area and southern slope of the Udo Hills during ascending wind in the afternoon on March 15, 2011.
著者
YOUSUKE KAIFU REIKO T. KONO THOMAS SUTIKNA E. WAHYU SAPTOMO JATMIKO ROKUS DUE AWE HISAO BABA
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (ISSN:09187960)
巻号頁・発行日
vol.123, no.2, pp.129-145, 2015 (Released:2015-08-26)
参考文献数
90
被引用文献数
3 18

Dental remains of Homo floresiensis excavated during 2002–2004 at Liang Bua, Flores, Indonesia, consist of one partial maxillary dentition, two nearly complete mandibular dentitions, and four isolated teeth. We present here morphological descriptions of all these specimens and report aspects of their dentition, occlusion, and oral health condition. This dental assemblage represents probably five but possibly four or six individuals. These different individuals share similar dental characteristics, supporting the view that the Liang Bua H. floresiensis assemblage represents a single population. We also reassess the previous claims for primitive and modern aspects of the H. floresiensis teeth. The previous studies reached conflicting conclusions: some researchers claim that these teeth are fully modern, whereas others highlight premolar and other morphologies that suggest their direct evolutionary link with the African earliest form of Homo or Australopithecus rather than with H. erectus. Neither of these views are supported. The H. floresiensis teeth exhibit a mosaic of primitive, derived, and unique characters, with the reported primitive aspects broadly comparable to the morphologies observed in H. erectus sensu lato. Although a more comprehensive comparative analysis is needed to fully illustrate dental morphological affinities of this dwarfed hominin species, we find no grounds for the hypothesis that H. floresiensis originated from the small-bodied, primitive hominins such as H. habilis sensu lato.
著者
大町 俊司 谷川 力
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.31-33, 2003
参考文献数
5

電気ポット内へのゴキブリの侵入とそこから熱湯とともに排出される可能性について調べたところ,沸騰させたポットからお湯と共にチャバネゴキブリが排出された.さらに,継続してポットの電源を入れたままにしたが,毎回チャバネゴキブリが排出された.電気ポットはチャバネゴキブリにとって快適な潜伏場所であり,それが原因でお湯を注ぐ毎に排出される可能性が高いことが明らかとなった
著者
柴田 勝家
出版者
早川書房
雑誌
SFマガジン = SF magazine
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.24-31, 2016-12
著者
橋本 幸士 富谷 昭夫 野尻 美保子 大槻 東巳 田中 章詞 樺島 祥介 福嶋 健二 今田 正俊 永井 佑紀
出版者
京都大学
雑誌
学術変革領域研究(A)
巻号頁・発行日
2022-06-16

従来、実験と理論の両輪により進展してきた物理学において、理論的な原理や数理の探索と技術の発展による実験の発展が、宇宙と物質の新しい姿を明らかにしてきた。この両方に寄与してきた計算科学では近年、機械学習という技術革新が社会的変革をもたらしている。そこで我々は「学習物理学」領域を創成し、機械学習やそれを含むデータ科学の手法、緩和数理やネットワーク科学等を物理学の理論的手法群と統合し、基礎物理学の根本課題である新法則の発見、新物質の開拓を行う。素粒子・物性・重力・計算物理学のそれぞれと機械学習の融合を、数理・統計・位相幾何の観点から統合的に遂行し、新領域「学習物理学」を勃興させる。
著者
永橋 為介 土肥 真人
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.213-216, 1995-03-29 (Released:2011-07-19)
参考文献数
10
被引用文献数
3 4

わが国でも都心部の公園は野宿者の生活場所として利用されており, 公園管理者との間に摩擦を生じている。本稿は, この事例として大阪市天王寺公園を取り上げ, 都心部における野宿者と都市公園管理に関わる問題を整理, 把握し検討することを目的とした。同公園に関する野宿者への聞き取り調査を実施し, 同公園の野宿者に関する管理方法を公文書, 新聞などから概観し, 1990年の有料化が野宿者排除に与えた影響を考察した。その結果, 同公園の管理方法は野宿者問題と公園を切り離すことには成功したが, 排除された野宿者は外周柵の外に多く存在し, 依然として同公園周辺地域の問題として現存していることが明らかになった。
著者
水越 美奈 下重 貞一
出版者
日本身体障害者補助犬学会
雑誌
日本補助犬科学研究 (ISSN:18818978)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.60-63, 2007-07-01 (Released:2007-10-12)
参考文献数
6

盲導犬は酷使されるので寿命が短い、という話を聞くことがあるが、この話は科学的な根拠はない。今回、日本に9つある盲導犬育成施設のうち8つの施設より、盲導犬として実働していた犬の447例の死亡年齢を調査する機会を得ることができた。その結果、これらの平均寿命は12歳11カ月であり、死亡年齢が15歳を超える割合は28%だった。そのうちラブラドールレトリバーの平均は13歳3カ月、ゴールデンレトリバーでは11歳5カ月であった。死亡年代別の平均死亡年齢は、80年代で11歳、90年代で12歳3カ月、2000年代では13歳7カ月であり、いずれも家庭犬の平均寿命についての調査に比較して高いことが明らかになった。
著者
中村 雅俊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.11-15, 2022 (Released:2022-04-06)
参考文献数
26

「じゃあ今からストレッチしますね」と理学療法士の先生なら一日一回,もしくは複数回,口に出している言葉だと考えられる。このストレッチングに関する知識についてアップデートをするということを目的に第 24 回宮城県理学療法学術大会で講演を行った。今回は,その内容をまとめ,更にその情報よりも新しく情報をアップデートしたものとなっている。しかしながら,医学というものは日進月歩で進んでおり,本稿の内容が最新のものではないと確信しており,今後も新しく情報が追加・更新される。そのため,本稿で期待すべきこととしては,現在のストレッチングに対する知見について現在の情報をアップデートすることだけではなく,新しいエビデンスを確立するための情報を築くための研究や発表を行うため基礎情報となることを楽しみにしております。
著者
安永 遼真 熊谷 雄介 道本 龍
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2P4GS1002, 2022 (Released:2022-07-11)

マーケティング・サイエンスは,科学的な手法を用いてマー ケティングにおける意思決定の質を向上させる取り組みである.マーケティング・サイエンスは,個人単位のデータ(個票) に対する分析と,個票を集計したデータに対する分析とに大別できるが,近年は個票データを用いた手法が特に盛んに研究されてきた.しかし,プライバシー保護の潮流や技術規制に伴い,個票データの収集や分析に対する障壁が高くなりつつある.そのため,集計データのみからマーケティング活動に対する示唆を得られるMarketing Mix Modeling (MMM) に注目が集まっている.MMMは,広告の投対効果を把握し,予算配分を最適化するために用いられる市場反応分析手法の一種である.MMMは1960 年代に提案された問題設定だが,これまで産業界では調査会社や広告会社が独自に構築・提供しており,詳細な技術仕様は各社の独自ノウハウとなっていた.しかし,近年,産業界から論文やオープンソースの実装が多数公開され,新たな潮流が生まれつつある.本論文ではこれをMMMの「再発見」と捉え,その経緯と研究動向,課題について論じる.
著者
板谷 浩男 夏川 遼生 守屋 年史
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.185-191, 2022-10-24 (Released:2022-10-31)
参考文献数
27

都市部における人口増加に伴い,人為活動が都市近郊に生息する猛禽類に悪影響を与えることが懸念されている.本研究では,東京都内の都市近郊に生息するオオタカ Accipiter gentilis の繁殖成功率を調査し,立入制限区域内外での占有巣間の繁殖成功率を比較した.その結果,立入制限区域内の巣では区域外の巣よりもおよそ3倍高い繁殖成功率を示した(63.6% vs. 21.4%).この結果は,都市近郊に生息するオオタカであっても人為活動に対して寛容であるとは限らないことを示唆しており,営巣林での人為活動を制限することが重要と考えられる.
著者
鈴木(堀田) 眞理
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.4, pp.676-682, 2016-04-10 (Released:2017-04-10)
参考文献数
10
被引用文献数
5

神経性やせ症や過食症などの摂食障害は,低栄養や自己誘発性嘔吐や下剤・利尿薬乱用に伴う合併症で救急診療を必要とする場合がある.「摂食障害救急患者治療マニュアル」「神経性食欲不振症プライマリケアのためのガイドライン」について概説し,救急でみられる症状と疾患,栄養アセスメント,内科的緊急入院の適応,重篤な合併症と治療,栄養療法,再栄養に伴う重篤な合併症であるrefeeding症候群の予防について述べる.