著者
平澤 俊明 多田 智裕 藤崎 順子
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.119, no.7, pp.600-609, 2022-07-10 (Released:2022-07-11)
参考文献数
52

上部消化管領域においても,人工知能(artificial intelligence;AI)の臨床応用は内視鏡診断を中心に増加傾向にある.食道,胃,十二指腸の各臓器で,AIによる病変の指摘,質的診断(良悪性の鑑別),量的診断(範囲・深達度診断)などが報告され,いずれも高い精度である.当初は静止画での検討であったが,動画での検証へ進み,さらにAIと医師との比較,AIの使用の有無による医師間の成績の比較が行われ,中国では大規模なランダム化比較試験も行われている.現在は,研究から臨床導入のフェーズに入ってきており,今後どのようにAIが臨床現場で使われ,医療が変化していくかが注目されている.医師がAIの利点と欠点を理解して使用すれば,AIは医師のよいサポートツールとなるであろう.
著者
桑原 崇通 原 和生
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.119, no.7, pp.610-625, 2022-07-10 (Released:2022-07-11)
参考文献数
86

胆膵疾患は膵管癌や自己免疫性膵炎,胆管癌など多彩な疾患が存在し,その治療方針は異なる.人工知能(AI)アルゴリズムの1つであるdeep learningは,特徴量を抽出することなく直接画像を解析することが可能である.今回われわれはTORIPOD声明などを参考にAI文献の評価チェックリストを作成し,胆膵領域のAI文献を評価した.胆膵領域AIの報告は膵腫瘍・膵囊胞・膵炎診断や検出,予後予測や病理グレード予測など多岐にわたる報告を認めたが,evidenceが高い外的検証を行った報告は少なかった.AIを日常臨床で使用するために薬事承認が必要であるが,それを得るためには前向きに大規模な多施設データを収集する必要がある.
著者
西田 直生志
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.119, no.7, pp.626-641, 2022-07-10 (Released:2022-07-11)
参考文献数
99

医療は複雑化しており,医療情報の誤認識は重大な結果を招く.この認知ステップを人工知能(AI)が提示する情報で補うことで,ヒューマンエラーを回避できる.現在,さまざまな医療データを学習させたAIの開発が進められ,肝臓病分野においても肝炎,脂肪性肝疾患,肝硬変,肝腫瘍の診断,あるいは疾患の転帰予測や治療法選択に関するAIの報告が認められる.本稿では,肝疾患に関するAIを取り上げ,さらに筆者らが中心となり開発している肝腫瘤の超音波診断支援AIについても紹介する.これらのAIの一部は専門医を凌駕するパフォーマンスが報告され,出力が秒単位であることを考えると,診療をサポートする十分なポテンシャルを持つ.
著者
益川 弘如 白水 始
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.4K3GS105, 2022 (Released:2022-07-11)

本報告では,学習科学を題材に授業などの学習環境をどうデザインするかという知が対話で生まれ,対話を通して能動的に使われ伝わる様を描き出し,以て「対話するAI」のモデルを構想したい。ある単元における特定の授業法がどのような学習成果を生むかという因果関係が一挙に理論化されていた学習研究に比べ,学習科学はそうした無理な一般化を避け,各状況での実践を関係者の対話を通して協調吟味し,対話を通して「デザイン原則」と呼ぶ仮説的実践指針を抽出し,次の現場の関係者が主体的に(まさに一人称的に)使って結果をさらに次の対話に活かすというデザイン研究の枠組みを採用している。ここでは知が対話の中で生み出され,それぞれの主体が自らの状況にあわせて使って,次の知を生み出す臨床の知が生成されているとも見てとれる。果たして主体を各AIに変えたときに,こうした社会システムをいかに実現できるか―人間研究者の立場から話題を提供したい。
著者
中嶋 彩乃 古屋 正貴
出版者
宝石学会(日本)
雑誌
宝石学会(日本)講演会要旨 2022年度 宝石学会(日本)講演論文要旨
巻号頁・発行日
pp.13, 2022 (Released:2022-07-08)
参考文献数
2

昨年の宝石学会でミャンマー産のピンク・ジェダイトの着色原因について調査を行った。以前のミャンマー産だけでなく、国石でもある日本産でもピンクのジェダイトはないかと考えた。しかし、市場で糸魚川産のピンク・ジェダイト(ひすい)として販売されているものも見られたが、実際それらは翡翠ではなく着色された処理石を除くと、チューライトかクリノチューライトであり、ジェダイトは見られなかった。文献ではこれらのピンク色の石について、ピンクのゾイサイトであるチューライトとしているものもあれば、ピンクのクリノゾイサイトであるクリノチューライトと記載されているものも見られた。そこで、市場で販売されている糸魚川近郊から産出したとされるピンク色の石を5石ほどラマン分光や FT-IR の検査を行ったところ、1石はチューライトで、4石はクリノチューライトであった。FT-IR では反射のスペクトルを計測すると、ゾイサイトとクリノゾイサイトはかなり近いスペクトルだが、 1046cm-1の付近のピークに違いがあり、今回のチューライト、クリノチューライトでも同様に違いが確認された。また、直方晶系のゾイサイトと単斜晶系のクリノゾイサイトは、結晶系の違いによる分類であるが、 G. Funz(1992)によると、それはAl3+と置換した Fe3+が多くなると、クリノゾイサイトになると説明されていた。今回のサンプルは少ないながらも、蛍光 X 線による成分分析で Fe2O3 がチューライトのものでは1.17wt%であるのに対して、クリノチューライトのものは 1.88~2.51wt%と違いが見られた。糸魚川近郊を産地とするピンクの翡翠は見つけられなかったが、天然の鉱物としてはチューライトやクリノチューライトが見られ、それらがピンクの翡翠と勘違いされていることが確認された。
著者
Hiroshi MIKASHIMA Shuzo TAKEHARA Yoshito MURAMOTO Takako KHOMARU Michio TERASAWA Tetsuya TAHARA Yutaka MARUYAMA
出版者
The Japanese Pharmacological Society
雑誌
The Japanese Journal of Pharmacology (ISSN:00215198)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.387-391, 1987 (Released:2006-09-15)
参考文献数
13
被引用文献数
10 9

The antagonistic effect of etizolam, an anti-anxiety drug, on platelet-activating factor (PAF) was investigated in rabbit platelets in vitro. Etizolam inhibited PAF-induced aggregation in a dose-dependent manner, with an IC50 of 3.8 μM, about one tenth that of triazolam (IC50=30 μM). At 300 μM, it inhibited both ADP and arachidonic acid-induced aggregation only slightly, while the other anti-anxiety drugs tested had no effect on PAF-induced aggregation even at this concentration. Etizolam and triazolam inhibited the specific binding of 3H-PAF to PAF receptor sites on washed rabbit platelets with IC50 values of 22 nM and 320 nM, respectively. Diazepam and estazolam were inactive even at 1 μM. These results indicate that etizolam is a specific antagonist of PAF.
著者
北田 祐平 安室 喜弘 檀 寛成 西形 達明 石垣 泰輔 井村 誠孝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F3(土木情報学) (ISSN:21856591)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_257-I_264, 2014 (Released:2015-04-08)
参考文献数
21

レーザスキャナは詳細で広範囲の3次元座標データを取得できるため,多くの現場で導入されCIM(Construction Information Modeling)の普及においても有効な手段として期待されているが,現実的な作業量で実用的なデータを取得するには計測位置の選択が難しく,専門作業者の経験に任されることが多い.本研究ではSfM(Structure from Motion)を導入することにより,通常のカメラで現地を撮影するだけで,詳細な植生や地形等を考慮した最適なレーザスキャン計画を立案する手法を提案する.また,本手法による計画に基づいた実地計測を行い,GSA(General Service Administration)ガイドラインで定義される計測漏れを可能な限り防ぎ,最小回数で計測できる最適な計測計画を立案できることを示した.
著者
相原 玲二
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2022-IOT-58, no.9, pp.1, 2022-07-05

インターネットの幕開けとともに多くの大学等でキャンパスネットワークが構築され,当初はインターネットそのものが組織内に展開する構成により,初期のインターネットの普及発展に大きく貢献した.その後,組織境界ファイアウォールと DMZ の設置,ネットワーク利用時の利用者認証機能の追加,SDN やマイクロセグメンテーションの導入,高密度な端末接続にも対応する無線 LAN 設備など,キャンパスネットワークは新技術実践の場となった.本講演では,広島大学を例に,これまでのキャンパスネットワークの発展状況を紹介し,技術動向を概観するとともに,今後の展開について述べる.
著者
高橋 知世 北神 慎司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.136, 2015 (Released:2015-10-21)

本研究ではインフォグラフィックスを対象として、美しいものほど使いやすそうだと思ってしまう現象である美的ユーザビリティ効果の抑制に、実際の利用経験が与える影響を検討した。参加者はインフォグラフィックスから情報を読み取る読解群と、数独に取り組む数独群に分けられ、両群とも課題の前後にインフォグラフィックスの美しさと使いやすさを2 回評定した。その結果、美しさと理解しやすさの相関は、どちらの群でも2 回目の評定の方が 1 回目の評定より強いことが明らかになった。この結果は、接触回数の増加によって流暢性が上昇したためであると考えられる。ただし、1 回目の評定から 2 回目の評定への相関係数の増加分は、数独群より読解群の方が小さかった。これは接触回数の増加による流暢性の上昇が読解によって抑制されたためだと考えられる。したがって、実際の利用経験は美的ユーザビリティ効果の抑制に一定の効果を持つと言える。
著者
大歳 英征 中原 崇 波多 悠輔 前田 達哉 小林 孝史
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2022-IOT-58, no.8, pp.1-8, 2022-07-05

SSHは,認証と暗号化の技術を用いて安全に遠隔サーバへのアクセス環境を提供し,UNIX 等の OS で広く用いられている.しかし,その目的がサーバへの直接的なシェル操作であることから,企業の機密情報などを狙う攻撃者からの標的となりやすい.日常的に SSH サーバのログを監視・分析することは,それらの脅威に対処することに有用であるが,監視・分析作業は管理者にとって労力がかかることである.そこで,本稿では,グラフ理論を用いた SSH サーバログの統合管理およびリアルタイムに可視化するシステムを提案する.
著者
井村 岳男
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.21-25, 2020-05-31 (Released:2020-09-01)
参考文献数
12
被引用文献数
2

奈良県の露地ナス圃場から採集したタバコノミハムシ成虫に対し,31種の殺虫剤について常用濃度での殺虫効果を調査した。その結果,効果が認められた殺虫剤は,アセフェート,MEP,ペルメトリン,エトフェンプロックス,ビフェントリン,イミダクロプリド,アセタミプリド,ジノテフラン,クロチアニジン,スルホキサフロル,スピノサド,クロルフェナピル,インドキサカルブ,メタフルミゾン,シアントラニリプロールおよびフルキサメタミドだった。露地ナス圃場では,5回の成虫発生ピークが認められ,年4世代を経過していると考えられた。また,ナス株内において成虫は最下位葉に最も多く,慣行の栽培管理で実施される下葉のかき取りによる耕種的防除ができる可能性が示唆された。
出版者
防衛省
巻号頁・発行日
vol.平成25年版, 2013
著者
轟木 皓平 近堂 徹 相原 玲二
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2022-IOT-58, no.7, pp.1-8, 2022-07-05

近年,広域に分散した IoT デバイスが生成するセンサデータの収集などに Pub/Sub メッセージングシステムが利用されるようになってきている.需要の増加に伴い,メッセージングシステムの性能評価ツールがいくつか開発されているが,これらは障害が発生していない状態での測定を目的としており,障害発生時の挙動を定量的に検証することは難しい.メッセージングシステムは分散システムの中核になることから,単一障害点を排除し可用性や耐障害性を向上させるための検証技術が重要になる.本研究では,コンテナ技術を利用してメッセージングシステムを任意のサーバ上に展開し,Chaos Engineering ツールを用いて指定した障害を発生させることで,メッセージングシステムの耐障害性を検証可能なツールの実装を行った.本ツールではクライアントを分散配置した上で,コンテナ停止によるインスタンス障害時の測定,ネットワークエミュレーションを利用したネットワーク障害時の測定,負荷ツールを利用したリソース障害時の測定を可能にする.実装したツールを用いて,複数のメッセージングシステムに対して障害を注入した場合の挙動について評価を行った.
著者
高橋 朋也 渡邉 英伸 西村 浩二
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2022-IOT-58, no.6, pp.1-7, 2022-07-05

音声認識技術や自然言語処理技術の向上により,スマートスピーカを利用して音声による家電の操作やショッピングが可能となっている.現在のスマートスピーカは,1 名あるいは特定の数名がプライベートな空間で利用されることを前提としており,音声プロフィールや確認コードによる発話者の識別やスキル・アプリと呼ばれる機能を用いた音声操作を制御することが可能である.一方で,利用者が多数になる場合や利用者の申請を責任者が許可する承認プロセスなど,関係者の上下関係を考慮した操作を可能とするには不十分である.今後パブリックな空間への利用拡大が見込まれることも考慮し,音声アシスタントの認証認可機能を高度化する必要がある.本研究では,スマートスピーカが置かれている環境やその他のシステムから得られる情報との連携を行う外部連携システムの開発を行っている.本稿では,買い物スキルを対象に利用者の認証や関係者の上下関係を考慮した承認プロセスを追加する手法を提案する.評価結果より,提案手法を追加することによる処理時間の増加が数秒程度で実現できることを示す.
著者
小出 あつみ 山内 知子 横濱 道成 大羽 和子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.67, 2007 (Released:2008-02-26)

【目的】走鳥類のエミュー卵(E)は、(株)東京農大バイオインダストリーの企画により、どら焼きの皮に使用されているが、食材としての利用はまだ少ない。本研究ではEの起泡性と熱凝固性を中心に調理特性を明らかにし、スポンジケーキへの応用を試みた。【方法】色差は色差計で測定した。卵白と全卵を10分間電動ハンドミキサーで撹拌する間の泡の比重と離水量を経時的に測定した。卵黄と卵白の熱凝固性を55℃~100℃間の5℃間隔でクリープメーターを用いて測定した。鶏卵(K)とE(卵黄/卵白:K割合)でスポンジケーキを調製(卵液150g・砂糖90g・薄力粉90g,焼成温度E:180℃,K:170℃)し,物性の測定と官能検査を行った。【結果】Eの全卵重量はKの9.8倍、濃厚卵白:5.4倍、水溶性卵白:4.7倍、卵黄:18.7倍であった。卵白/卵黄はE卵:1/2.1、K卵:1/0.5と,卵黄割合はEでKの4.2倍であった。卵白及び全卵の泡の比重から,卵白はEで、全卵はKで泡立ちがよかった。泡の安定性はKよりEで高かった。卵黄と卵白の色差L*、a*、b*値はEでKより有意(*p<0.05)に低かった。熱凝固した卵黄と卵白の固さは、KよりEで有意(*p<0.05)に低く、ガム性ではE で有意(*p<0.05)に低く、卵白の凝集性では両者に差はなかったが、卵黄の低温加熱でEの凝集性はKより有意(*p<0.01)に低く、高温加熱でKより有意(*p<0.05)に高かった。Eで調製したスポンジケーキの固さは有意(*p<0.01)にKより高かった。官能検査の味・香り・色・総合ではKで調製したものより有意(*p<0.01)に好まれなかった。