著者
新井 健司 池田 雅名 大森 豊
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.G-86_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに・目的】平成26年度における厚生労働省の調査によると民間企業における身体障害者の雇用は43万人を超え、毎年増加傾向にある。介護保険分野で高齢者を主な対象にしている理学療法士は機能回復や日常生活活動動作の獲得、活動参加に向かったアプローチといった医学的なリハビリテーションに偏りがちであるが、リハビリテーションの概念は職業復帰・就労といった部分も含めた広範囲なものである。特に比較的年齢が若い第2号被保険者などの場合にはそのような観点が必要であると考える。また、介護保険サービスの充実に伴い、そのような対象者も増えてきている現状である一方、必ずしも成功するとは限らないのも現状である。障害者の就労支援には、対象者の身体的側面、精神的側面、知的側面、社会的側面、職業的側面の視点からのアセスメントを要する。そして、職業訓練や適正に応じた職場の開拓、職場定着のための相談などを担う就労移行支援事業の活用が推進されている。しかしながら、就労移行率が低い事業所が多く、その背景には対象者の選定に無理があるという報告が散見される。(朝日、2016)また、これらのアセスメントはリハビリテーション職種が専門職として評価すべき点が含まれている。 したがって、理学療法士が対象者のアセスメントを行い、就労移行支援事業への適切な選定されることは障害者の雇用促進に資すると考えた。今回、訪問看護ステーションにおける理学療法士として、症例を通して、職業復帰・就労を望む障害者が就労移行支援事業の活用に至る要因を分析した。【方法】 平成24年から平成29年に当事業所から訪問理学療法を受けた、職業復帰・就労を希望する身体障害がある者5名を対象とした。まず、対象者の基本属性、家族構成、経済状況、就労移行支援事業への活用の有無を調査した。就労支援に必要な身体的・精神的側面のアセスメントとしてFunctional Independence Measure(FIM)、知的側面として自己決定と判断力に関わる障害の有無、Mini Mental State Examination、社会的側面としてLawtonの尺度、職業的側面として職歴を後方視的に調査し、就労移行支援事業の活用に至る要因を分析した。【結果】 対象者は日常生活・屋外活動が自立されており、職業的側面を除くアセスメント項目に大きな差は見受けられなかった。対象者のうち、就労移行支援事業の活用に至ったものは、独居や未婚などの家族・経済状況を有している3名であった。その他2名は、主婦の専従・生活保護受給といった経済状況の変化に伴い、就労自体を断念していた。【結論】障害者の就労に関して、家族構成や経済状況等の要因が大きく関わる傾向が捉えられた。訪問理学療法士は、障害者の就労支援に関わるアセスメントを理解し、就労移行支援事業への適性を検討していくべきである。【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、本研究の目的を説明し、書面にて同意を得た。
著者
Makoto Miyake Misa Takegami Yuki Obayashi Masashi Amano Takeshi Kitai Tomoyuki Fujita Tadaaki Koyama Hidekazu Tanaka Kenji Ando Tatsuhiko Komiya Masaki Izumo Hiroya Kawai Kiyoyuki Eishi Kiyoshi Yoshida Takeshi Kimura Ryuzo Nawada Tomohiro Sakamoto Yoshisato Shibata Toshihiro Fukui Kenji Minatoya Kenichi Tsujita Yasushi Sakata Tetsuya Kimura Kumiko Sugio Atsushi Takita Atsushi Iwakura Toshihiro Tamura Kunihiro Nishimura Yutaka Furukawa Chisato Izumi for the BPV-AF Registry Group
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-22-0226, (Released:2022-07-08)
参考文献数
28
被引用文献数
2

Background: Current guidelines equally recommend direct oral anticoagulants (DOACs) and warfarin for atrial fibrillation (AF) patients with a bioprosthetic valve (BPV); however, there are limited data comparing DOACs and warfarin in AF patients with an aortic BPV.Methods and Results: This post-hoc subgroup analysis of a multicenter, prospective, observational registry (BPV-AF Registry) aimed to compare DOACs and warfarin in AF patients with an aortic BPV. The primary outcome was a composite of stroke, systemic embolism, major bleeding, heart failure requiring hospitalization, all-cause death, or BPV reoperation. The analysis included 479 patients (warfarin group, n=258; DOAC group, n=221). Surgical aortic valve replacement was performed in 74.4% and 36.7% of patients in the warfarin and DOAC groups, respectively. During a mean follow up of 15.5 months, the primary outcome occurred in 45 (17.4%) and 32 (14.5%) patients in the warfarin and DOAC groups, respectively. No significant difference was found in the primary outcome between the 2 groups (adjusted hazard ratio: 0.88, 95% confidence interval: 0.51–1.50). No significant multiplicative interaction was observed between the anticoagulant effects and type of aortic valve procedure (P=0.577).Conclusions: Among AF patients with an aortic BPV, no significant difference was observed in the composite outcome of adverse clinical events between patients treated with warfarin and those treated with DOACs, suggesting that DOACs can be used as alternatives to warfarin in these patients.
著者
江藤 隆之
出版者
桃山学院大学
雑誌
桃山法学 = St. Andrew's University law review (ISSN:13481312)
巻号頁・発行日
no.24, pp.1-34, 2014-12-22
著者
藤森 馨
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.148, pp.73-83, 2008-12-25

真名鶴神話(真鶴神話・八握穂縁起とも)とは、六月・十二月十一日神今食と十一月中卯日新嘗祭の祭月朔日に、天皇に供進される忌火御饌の起源神話として、神祇官から村上天皇に天暦三年(九四九)に上奏された『神祇官勘文』に見られる神話である。その内容は以下の通りである。倭姫が天照大神を奉じ、伊勢国壱志郡を発し、佐志津に逗留した際、夜間葦原で鶴鳴を聞いた。使者を派遣し、捜索させたところ一隻の鶴が八根の稲穂を守護していた。倭姫はこれを苅り採り、大神の御饌に供えようとし、折木を刺し合わせ火鑚をし、彼の米を炊飯。大神に供奉し、この時から神嘗祭は始まった。そして以後三節祭毎に御飯を供進したという。こうした火鑚を行って鶴が守護した稲を炊飯する儀を忌火といい、宮中の忌火御饌の起源であると神祇官より村上天皇に上奏されたのである。すなわち、この神話伝承によれば、宮中の忌火御饌は、伊勢神宮内宮の由貴大御饌神事と不可分な関係があるという。のみならず、天皇親祭の形式で執行される六月・十二月十一日神今食と十一月中卯日新嘗祭と祭祀構造を同じくする神宮三節祭、すなわち六月月次祭・九月神嘗祭・十二月月次祭との関係を考える上でも、宮中の忌火御饌供進儀と神宮の由貴大御饌供進儀との密接さを窺わせる神話は看過できない。本稿では宮中の嘗祭の延長線上に神宮三節祭があることを検討してみたい。
著者
上紙 航 坂元 太朗 黒田 揮志夫 福岡 順也
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.81-89, 2020-04-20 (Released:2020-05-08)
参考文献数
20
被引用文献数
1

近年,ホールスライドイメージ(WSI)と呼ばれる技術が確立し,モニター上で病理診断を行うことが可能になった.これにより,デジタルパソロジーの応用は今までの病理医の不足した施設のための遠隔診断にとどまらず,日常診断やコンサルテーションなどへと活用が広がっている.こうして病理組織標本のデジタル画像データが蓄積されることで,急速に人工知能(AI)による画像解析の基盤が整いつつある.現時点では未だ研究レベルではあるものの,腫瘍のリンパ節転移を認識するものや腫瘍細胞割合を計測するもの,あるいは腫瘍の遺伝子変異を予測するものなど,様々なAIが開発されている.今後も加速度的な発展が望まれる一方で,病理標本のデジタル化は期待されたようには拡散せず,多くの施設において診療にAIを活用できる環境は揃っていないのが現状である.また,AI開発の面からも,必要な教師データを作成することの困難さや,AIの判断根拠が不明瞭な状態で臨床応用することへのリスクなど,複数の問題が顕在化している.今後こういった課題解決が必要ではあるが,近い将来にAIがもたらす情報は病理診断にとって必要不可欠なものになるとの予想は変わらず,次世代の病理医にはAIをうまく活用するスキルが求められると予想される.
著者
松山 一夫 武田 康人 下田 昌宏 高村 光一 小野 高志
出版者
一般社団法人 日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.273-279, 2011 (Released:2013-03-31)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

八丈島における地熱調査は, 東京電力(株)により1984年度から開始され, 1989年度からは(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による地熱開発促進調査が行われ, 東山南部地域に300℃以上の高温地熱資源が存在することが確認された. この地熱開発促進調査の結果を受けて, 東京電力(株)では地熱発電所立地地点調査を行い, 1995年度に3本の調査井を掘削して蒸気生産に成功し, 発電所建設を経て, 1999年3月25日に営業運転を開始した. 現在, 生産井1本により平均出力2,000kWの発電を安定して継続しており, 八丈島のベース電源として利用され, 地熱発電所の運転により従来の内燃力発電と比較して, 二酸化炭素の排出量が約4割削減されている. 一方, 八丈町は, 地熱発電所の建設と並行して1992年度から温泉開発を進め, 4つの町営有料温泉利用施設を建設し, その利用者は年間約17万人である. また, 冬季間, 地熱発電所の余熱を利用して発電所周辺の温室ハウスへ熱供給を行っている. 本報告は, 八丈島における地熱開発の経過, 地熱資源の分布状況および地熱利用の現況について述べる.
著者
矢野 雅文
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.42-47, 2013-03-05 (Released:2013-05-17)
参考文献数
7
被引用文献数
1

新規環境·新規タスクに対する即興的な運動パターンを生成できる能力を得たことが,哺乳類が恐竜や爬虫類に代わって天下を取ったのだとNicholai A. Bernsteinは,著書「デクステリティ巧みさとその発達」で述べている.大脳新皮質の役割は学習による定型動作を獲得するためでなく,過去の膨大な学習結果は運動の即興性に役に立っていて,環境が予測不可能的にしかもダイナミックに変化する時には本質的になる.現代の制御論に基づいた生体運動制御は運動の即興性に関して無力であり,自律的適応を導入してその解決を図る.
著者
深瀬 聡 丸山 文夫
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.611-619, 1994-11-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
19
被引用文献数
7 7

ベンチスケールの水素化精製装置を用いて, フレッシュおよび実機使用済みのNi-Mo/Al2O3触媒を使用し, 種々の条件下でFCC原料油であるVGOの前処理を行った後, 得られた生成油中のVGO留分についてMATを用いた接触分解試験を実施した。水素化精製の過酷度は, FCC原料油の組成とその接触分解特性に大きく影響を及ぼした。圧力3.9MPa, 温度400°C以上では熱分解の寄与が大きく, 水素化脱窒素がより起こりやすい条件である7.8MPaで水素化精製した時に比べ, VGO留分にはより多くの窒素と多環芳香族が含まれた。このため水素化分解率が高い3.9MPaでの水素化精製の場合には, 生成したVGOの接触分解率は大きく低下した。そして窒素, 多環芳香族, レジン等の原料油の性状とMAT分解率とを関連付ける式を提案した。