著者
大塚 宜一 清水 俊明 永田 智
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

食物アレルギーや炎症性腸疾患の病態を解明する目的で、食物の未消化産物との関連を検討した。その結果、未消化産物の明らかな抗原性は確認できなかった。一方、それぞれの消化管粘膜の生検標本を用いmicroarray法、RT-PCR法、免疫組織染法などの検討を行ったところ、新生児・乳児消化管アレルギーにおいてCCL21、CXCL13の、また、小児炎症性腸疾患においてCXCL9、CXCR3などの発現亢進を認め、それぞれの病態に食物の侵入経路であるリンパ濾胞との関わりが示唆された。
著者
大塚 宜一 清水 俊明 鈴木 竜洋
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

新生児一過性好酸球性腸炎(NTEC)、食物過敏性直腸炎(FPIP)、小児炎症性腸疾患の粘膜をMicroarray、RT-PCR、免疫組織染色法を用い解析した。NTEC, FPIPではCCL11、CXCL13の関与が、小児クローン病ではCXCL-9,-10,-11、小児潰瘍性大腸炎ではMMP-1,3,7,10の関与が示唆された。両者で発現亢進が確認されたCXCL13は、B細胞を誘導するリンパ濾胞形成因子であり、新生児期からの食物に対するIgA産生や寛容誘導に深く関わっている。その発現亢進は、小児に欠かせない免疫応答であると考えられる一方、炎症増強に関わっている可能性が示唆された。
著者
大塚 宜一 清水 俊明 藤井 徹 工藤 孝広
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

H.pyloriに感染した小児と成人の胃粘膜に発現する免疫・癌関連分子を、microarrayなどを用いて網羅的に比較検討した。対象は各種消化器症状に対して消化管内視鏡検査を施行した患者とし、H.pylori感染小児群、非感染小児群、感染成人群、非感染成人群の各々6症例、合計24症例の胃粘膜(前庭部・胃体部)を検討した。その結果、成人感染群でより強い発現のもの(OLFM4)、成人・小児感染群で同等に発現するもの(PIM2,REG3A,LCN2,CXCL13)が確認された。発癌の機序として、H.pylori感染に伴う小児期からの癌関連分子の発現の亢進及び慢性炎症性変化の関与が示唆された。
著者
安岡 顕人
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.891-896, 2012-12-01 (Released:2013-12-01)
参考文献数
36

食品に含まれるポリフェノールのなかには何らかの生理活性を示すものがある.多くの場合,その作用機構は抗酸化活性で説明されてきたが,特定のタンパク質との相互作用が報告されているものもある.本稿では,特に食品ポリフェノールによる核内レセプターの活性化と,その結果生じる代謝調節作用について概説する.
著者
狭間 諒多朗 Hazama Ryotaro ハザマ リョウタロウ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科 社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
no.34, pp.1-22, 2013

本稿の目的は地域における文化活動の担い手を探ることである。かつての行政主導であった地域文化の時代は住民主導の新たな地域文化の時代へと変貌を遂げた。この新たな地域文化の時代において、地域文化活動は地域活性化の切り札として期待されている。地域文化活動の担い手を把握することはひいてはその活性化につながると考えられる。これまでの研究から、I ターンやU ターンと呼ばれる地域移動を行った人々やパーソナルネットワークサイズの大きい人が地域文化活動の担い手であるという仮説を立て、分析を行った。その結果、I ターン者が興味を持って活動に参加し、また参加頻度が高く、活動での役割も重要であるという傾向がみられた。U ターン者が活動に参加しているという結果はあまりみられなかったが、U ターン者かつ居住年数の長い人が活動を立ち上げるというI ターン者とは違った傾向がみられた。パーソナルネットワークについては多くの結果がみられ、パーソナルネットワークサイズの大きい人ほど積極的に地域文化活動の担い手となっていることがわかった。
著者
斎藤 里美
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.410-420, 2017-12-31 (Released:2018-04-27)
参考文献数
25
被引用文献数
1

本稿の目的は、人工知能とエンハンスメントの汎用化が「学ぶ意味」や「学力」をどのように変容させるのか、教育学にもたらす課題は何かを考察することである。人工知能による教育への影響については、すでに内閣府(2017a)が言及している。そこでまずはこの資料を分析し、有用性の観点から学習を意味づけることの限界を指摘した。次に倫理学研究からのエンハンスメント批判を援用しながら、人工知能とエンハンスメントの時代においては、有用性と対極の「現在的レリバンス」や「教養」「学びへの信頼と希望」によって「学ぶ意味」と「学力」を再定義する必要があることを示した。
著者
落合 利佳
出版者
京都女子大学発達教育学部
雑誌
京都女子大学発達教育学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Development and Education (ISSN:13495992)
巻号頁・発行日
no.17, pp.1-11, 2021-02

公立保育所の3 ・4 ・5 歳児および異年齢クラスを担当している保育士を対象に「気になる子」への意識と支援に関する実態調査を行った。各クラスに占める「気になる子」の割合は36. 5~42. 8%で,年長クラスで一番多かった。「気になる内容」は平均13項目(21項目中)で,多動や不注意など集団場面で支援を必要とする内容や年長児では就学後の学習に関与する手指の巧緻性に関連した項目で高い割合を示した。全ての「気になる子」に支援はされていなかったがその理由として,人的資源や時間的余裕の問題の他,支援の方法がわからない,支援のニーズの低さなどが挙げられた。
著者
村部 義哉
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.39-48, 2022-04-01 (Released:2022-04-01)
参考文献数
17

要旨 本稿は,患者の身体機能や日常生活動作能力の向上,そして行為の再獲得を目的とする理学療法介入に関して,生命の有機構成の論理化を目的としたシステム論であるオートポイエーシスを導入し,身体哲学的な観点から理学療法介入の定式化を試みるものである.システム論は,構成要素の関係性の組織化によって,構成要素の総和以上の特性が創発されるとする概念であり,要素還元的な機械論とは異なる.理学療法においては,関節可動域,筋力,感覚などの部分的要素への個別的介入が要素還元的な治療介入であるのに対して,患者を身体システムとして設定し,それらの構成要素の関係性の組織化によって,行為の創発を促進するといった治療方針がシステム論的な治療介入となる.本稿では,こうしたオートポイエティックな理学療法介入における身体システムの構成要素を「感覚」に設定し,その関係性の形成に関する患者の認知機能や情動,意識などの機能的役割および実践的活用方法の論理化を行う.理学療法学が医学分野に属する学問領域である以上,理学療法の臨床実践は科学的根拠に準拠するものでなければならない.しかし,自然科学分野の研究成果に過剰に依存した臨床実践は,患者の個別性(動機,環境,来歴など)を無視する結果となる.オートポイエティックな理学療法の実践とは,患者の個別性を最大限活用するものとなる.
著者
大屋 周期 山崎 嘉孝 中村 剛之 森重 聡 山口 真紀 青山 一利 関 律子 毛利 文彦 大崎 浩一 内藤 嘉紀 大島 孝一 長藤 宏司
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1605-1610, 2020 (Released:2020-12-08)
参考文献数
15

多中心性キャッスルマン病は,リンパ節病理像によって特徴づけられるリンパ増殖性疾患でIL-6高値を特徴としている。症例は17歳の日本人男性,発熱,頭痛,倦怠感,体重減少を伴っていたが,血圧は正常であった。臍下部に可動性良好な腫瘤を触知し,血液検査所見は小球性貧血,低アルブミン血症,IL-6高値,sIL-2R高値,VEGF高値を示した。造影CT検査で55 mm大の骨盤内腫瘤と腸間膜周囲のリンパ節腫大を認め,多中心性キャッスルマン病を疑い骨盤内腫瘍を摘出した。術後,血圧が緩徐に上昇し可逆性後頭葉白質脳症による痙攣を発症した。高血圧の精査で,術前の血中ノルアドレナリン,ノルメタネフリン高値が判明し,摘出標本でIL-6およびクロモグラニンAが陽性であることから,IL-6産生パラガングリオーマと診断した。多中心性キャッスルマン病に類似した発熱,貧血などを来す病態の鑑別診断として,血圧上昇を伴わない症例でもIL-6産生褐色細胞腫・パラガングリオーマを考慮する必要がある。
著者
荒川 秀俊
出版者
東京帝国大学
巻号頁・発行日
1939

博士論文

1 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1900年08月01日, 1900-08-01
著者
香川 里美 名越 民江 粟納 由記子 松岡 美奈子 南 妙子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1_61-1_70, 2013-03-20 (Released:2013-04-09)
参考文献数
20

目的:本研究では,熟練看護師が長期入院統合失調症患者に対し,退院を意識して患者に関わり始めた時期から退院支援が終了するまでの,看護実践のプロセスを明らかにすることを目的とした.方法:研究協力者13名を対象に半構成的面接を行い,質的帰納的分析を行った.結果:本研究で見出されたカテゴリーは,《患者を捉え直すことで見えてきた退院可能性》【心の奥底にある退院への希望を引き出す】【退院支援に消極的な主治医との意思統一】【退院に賛同できない家族の心情と背景を理解する】【プライマリーナースが主体となるネットワークの構築】【安心を提供するプライマリーナースの役割遂行】【1対1の関わりから自信を持たせる】の7カテゴリーであった.《患者を捉え直すことで見えてきた退院可能性》は他のすべてのカテゴリーに影響を与える中心的現象と考えられ,本研究のコアカテゴリーに位置づけられた.結論:長期入院統合失調症患者の退院支援に関する看護実践のプロセスには,継続的に患者を捉え直しながら可能性を広げる柔軟な臨床判断と,失いつつある希望を引き出し,わずかな変化にも即応できる看護介入が必要である.
著者
堺 淳一 運上 茂樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.306-316, 2009 (Released:2011-04-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

被災発見後に速やかに被災診断を行い,余震の影響を適切に考慮して残存耐震性能を評価する手法とともに,即効性のある復旧工法を用いて迅速かつ合理的に機能回復を図るための応急復旧技術の開発が必要とされている.本研究では,柱基部で曲げ破壊する鉄筋コンクリート橋脚を対象として,被災後の余震の影響を調べるとともに,迅速な応急復旧工法に対する要求性能を整理し,即効性のある応急復旧工法を提案し,その効果を評価するために振動台加震実験を行った.即効性のある復旧工法としては,速乾性の材料を用いた炭素繊維シートによる修復と機械式に定着された繊維バンドによる修復を提案し,これらの工法により,被災前の状態に比べて剛性は低下するが,曲げ耐力,変形性能ともに損傷前と同程度またはそれ以上の性能が確保できることを示した.

1 0 0 0 OA 山水生活

著者
活人社 編
出版者
活人社
巻号頁・発行日
1914