著者
田中 英輝 熊野 正 後藤 功雄 美野 秀弥
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.81-117, 2018-02-15 (Released:2018-05-15)
参考文献数
40
被引用文献数
1

NHK はインターネットサイト NEWS WEB EASY で外国人を対象としたやさしい日本語のニュースを提供している.やさしい日本語のニュースは日本語教師と記者の 2 名が通常のニュースを共同でやさしく書き換えて制作し,本文にはふりがな,難しい語への辞書といった読解補助情報が付与されている.本稿では NEWS WEB EASY のやさしい日本語の書き換え原則,および制作の体制とプロセスの概要と課題を説明した後,課題に対処するために開発した 2 つのエディタを説明する.1 つは書き換えを支援する「書き換えエディタ」である.書き換えエディタは先行のシステムと同様に難しい語を指摘し,書き換え候補を提示する機能を持つが,2 名以上の共同作業を支援する点,難しい語の指摘機能に学習機能を持つ点,また,候補の提示に書き換え事例を蓄積して利用する点に特徴がある.他の 1 つは「読解補助情報エディタ」である.読解補助情報エディタは,ふりがなや辞書情報を自動推定する機能,さらに推定誤りの修正結果を学習する機能を持つ.以上のように 2 つのエディタは,自動学習と用例の利用により,読解補助情報の推定の誤り,やさしい日本語の書き方の方針変更などに日々の運用の中で自律的に対応できるようになっている.本稿では 2 つのエディタの詳細説明の後,日本語教師および記者を対象に実施したアンケート調査,およびログ解析によりエディタの有効性を示す.
著者
久住 真也
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.109, no.6, pp.1143-1164,1256-, 2000

There are only a few studies written about the Choshu War at the end of the Tokugawa period from the view point of political history. The War finally deprived the Bakufu of its influence, and should be recognized as an important event in the political process between 1864 and 1866. It has been generally understood as a war between the Bakufu and Choshu, but one of the major purposes was to punish Choshu as traitors to the imperial court in Kyoto. Therefore, it is necessary to analyze the war as a political affair involving the court, the Bakufu and the clans. In this paper the author analyzes the process of Shogun Tokugawa Iemochi's departure from Edo on June 16, 1865 in order to attack Choshu, for the purpose of viewing the war as the result of contradiction and opposition in the form of government at that time. He conculdes that the Shogun's departure was created by political conflict among the court, the Bakufu and the clans, and also had another purpose to hold a meeting between the Shogun and the Emperor in Kyoto. It was Choshu that legitimized that Shogun'sdeparture. On the other hand, the Hitotsubashi, Aizu and Kuwana clans, which promoted political cooperation between the court and the Bakufu, thought that a meeting between the Shogun and the Emperor would be effective and urgent. They persuaded the court to approve the Shogun's departure meeting with the Emperor in Kyoto. The policy toward the ChoShu would be decided by the form of government. It would also produce a great effect on the Bakufu and the form of government.
著者
伊藤 一成
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.47-61, 2018-06-06

本論文では,人型ピクトグラムを用いたプログラミング学習環境「Pictogramming(ピクトグラミング)」を提案する.PictogrammingはPictogramとProgrammingを合わせた造語である.ピクトグラムは表現の抽象度の高さから,それを見た人物が自分自身や本人に関わる人物事物を想起させる効果があるといわれている.人型ピクトグラムを人間の動作に模倣して動かす,今回実装したプログラミング学習環境は,構築主義の提唱で知られるPapertが重要視する同調的学習の概念と相性が良い.人型ピクトグラムを変形する“ピクトアニメーション”コマンドと移動の軌跡を図として表示する“ピクトグラフィックス”の2種類のコマンドを併用することで,コンパクトな命令セットで,かつスモールステップ学習可能な環境のため,短時間でピクトグラムのデザイン指針に準じた多様な作品を作成することができる.実際に100人程度の中学生を対象とした実践授業を行い,提案アプリケーションの有用性や教育現場での利活用の展望について観察,アンケート,理解度テストの3点から評価・分析した.観察の結果,“ピクトグラフィックス”を学習した授業で,人型ピクトグラムの動作を学習者自身が模倣する動作が見られた.またアンケート,理解度テストいずれも概して良好な結果を得,同調的学習を喚起させたと思われるアンケート回答もいくつか見られた.ただし,条件分岐を学習する授業については,他の授業よりアンケート,理解度テストともに有意に低い結果となっており,検討・改善の余地がある結果となった.
著者
江種 伸之 姜 学妍 峠 和男 西田 憲司 平田 健正
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.297-304, 2011-06-30 (Released:2011-07-01)
参考文献数
11

土壌汚染対策法の施行規則では,原位置封じ込めが地下水汚染を経由した健康被害を防止するための標準的措置になっている。しかし,同法の主な対象と考えられる市街地では,原位置封じ込めの適用条件を満足する不透水層があまり存在しないことが明らかになってきた。そこで本研究では,より多くの現場に適用可能な原位置封じ込め措置として地下水揚水併用型を考え,数値解析を実施して汚染拡散防止効果を考察した。その結果,薄い難透水層しか存在しない現場においても,地下水揚水の併用によって,原位置封じ込め措置を適用できることが確認された。また,汚染拡散防止に必要な難透水層内の上向きの地下水浸透量は,封じ込め区域900m2あたり0.1m3/d程度でよいことも推察された。これは,遮水壁の性能が十分であれば,地下水揚水量が難透水層内の浸透量と同程度の少量で済むことを示唆している。
著者
荻原 廣
出版者
佛教大学国語国文学会
雑誌
京都語文 (ISSN:13424254)
巻号頁・発行日
no.23, pp.276-298, 2016-11-26

個人の語彙量(使用語彙、理解語彙)についての調査は、現在に至るまで決して多く行われてきたとは言えず、中でも使用語彙についての調査は、調査方法が確立しておらず、ほとんど行われていない。そこで本稿では、まず先行研究について述べた後、今回、大学4年生を対象に行った日本語の語彙量調査にて試みた内省法を使った使用語彙の調査方法について解説し、その後、調査結果及び考察について述べる。
著者
新原 俊樹
出版者
日本体操学会
雑誌
体操研究 (ISSN:18835872)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-9, 2018 (Released:2018-02-06)
参考文献数
45

2015年に大阪府内の中学校で起きた組体操事故を契機に、各地で組体操を規制する動きが広がった。一連の議論や動きの前提となった「組体操が学習指導要領に位置付けられていない」という認識について、組体操の呼称の変遷と学習指導要領の改訂経緯を調査した。 戦前、運動会で披露されるピラミッド等の運動種目は「タンブリング」等と呼称されていたが、「タンブリング」は1980年代までに体操競技の用語に変化し、1990年代以降、この運動種目の呼称として「組体操」が辞書で紹介されるようになった。 組体操の学習指導要領への位置付けについては、学習指導要領が手引書であった年代には「タンブリング」等の語が明記されていた。1958年の改訂時、基本的事項に重点を置いて内容を精選する過程で明示されなくなったが、現行の学習指導要領は「体育的行事」の中で「規律ある集団行動の体得、責任感や連帯感の涵養、体力の向上」に資する活動を求めている。

15 0 0 0 OA 岩倉公實記

著者
香川敬三 總閲
出版者
[皇后宮職]
巻号頁・発行日
vol.上卷, 1906
著者
堤 純
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.721-740, 1995-11-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
28
被引用文献数
1

本研究は前橋市の市街地周辺地域を対象に,土地所有者の土地利用に関する意思決定の過程をミクロスケールで分析することにより,土地利用の転換過程,すなわち都市域形成過程の一側面の解明を課題とした.事例地区における土地所有者は,土地利用変化に関する諸要因に対し,個別に意思決定を行なった.意思決定により選択された行動は,大別して売却・活用・放置の3つであった.主要道路沿線などの好交通条件の場所では,土地所有者自身による土地活用が卓越した.これらの土地はマンション・事務所・店舗・駐車場などへ変化した.一方,相対的に交通条件の悪い幹線道路の周囲では,土地売却が集中した.これらの土地は不動産業者の仲介により,住宅に変化したものが多い.市街地周辺地域では,都市的土地需要が多いため,売却された土地と活用された土地のいずれも,都市的土地利用へと転換される傾向が強く,それらの結果,既成市街地が外延的に拡大している.
著者
小林 誠人 甲斐 達朗 中山 伸一 小澤 修一
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.652-658, 2007-09-15 (Released:2009-02-27)
参考文献数
7
被引用文献数
2 1

JR福知山線列車脱線事故における初動期の現場医療活動について報告し, 災害医療の観点から検証する。事故概要 : 2005年4月25日9時18分JR福知山線で列車脱線事故が発生した。死者107名, 負傷者549名 (重症139名) の多数傷病者発生事案であった。現場活動 : 我々は事故発生から約40分後の10時01分に現場到着した。先着医療チームとして2次トリアージと応急救護所における緊急処置に従事した。また医療チームが順次現着した後は医療チームのcommanderを担当し, 現場医療活動の統括にあたった。検証 : ドクターカーシステムが整備, 認知されており発災早期に医療チームの現場派遣が可能であった。また医療チームは統制がとられ適切にトリアージ, 現場治療がなされたと評価される。その結果, 科学的に証明することは種々の理由により困難ではあるが, preventable deathが回避できたと推測している。しかし, 初動期において各機関は十分な情報収集と共有化が行えなかった。その結果, 詳細な事故状況, 通信手段, 患者搬出の動線, 搬送手段 (救急車, ヘリなど) の状況, 搬送医療機関の選定, 医療チームの要請状況などの把握, 整備, 確立に時間を要した。今後は現場指揮本部を通じて消防, 警察と早期から十分に情報共有を行い, トリアージ, 処置, 搬送の一連の連鎖が途切れることなく行われることが期待される。まとめ : 災害医療は日常業務の延長にあり, 本事案で明らかとなった課題を検証し, 本邦における災害医療システムの構築, 整備, 啓蒙が望まれる。
著者
劉 建 辺 嘉賓 塩津 文隆 GHOSH Subhash Chandra 豊田 正範 楠谷 彰人
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.326-332, 2008-07-05
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

日本型水稲4品種の幼植物を50mMのNaClストレス下で16日間水耕栽培し, 品種の耐塩性を調査した. 生育にはグロースポーチを使用し, 画像解析を用いて根の直径別の根長と根表面積を測定し, 根系形態と耐塩性との関係を解析した. 対照に対する塩処理の全重と相対成長率の低下程度から, 農林18号の耐塩性が最も高いと判断された. 処理別, 両処理込みにかかわらず相対成長率は葉面積比ではなく純同化率に一義的に規定されていた. 純同化率は個体当たり根長および根表面積と正の, 茎葉部Na含有率および葉面積/根表面積比(LA/RA比)と負の相関関係にあった. 茎葉部のNa含有率は個体当たり根長や根表面積が増加するほど指数関数的に減少し, LA/RA比とは正の相関関係にあった. 塩ストレス下において農林18号は直径0.169mm以下の2次根や3次根, および直径0.5mm程度の冠根の減少程度が少なかったため, 個体当たり根長と根表面積は他品種よりも多かった. 塩ストレス下において農林18号の根系の減少程度が小さく, LA/RA比が低いことは他の品種より吸水能力に優れていることを示唆している. このことから, 農林18号は塩ストレス下でも蒸散速度が高く, 蒸散流中のNa排除機構が効率的に作用したために茎葉部のNa含有率が低く抑えられたと推察される. また, 体内の水分含有率の低下を抑えたことにより高いNARを維持し, その結果高いRGRを達成したと推察された.