著者
村井 信彰 加藤 聰彦 伊藤 秀一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NS, ネットワークシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.195, pp.33-36, 2005-07-14
被引用文献数
1

モバイルネットワークの普及に伴い, Mobile IPがその基本プロトコルとして注目されている.IETFでは, IPv6アドレスに対応するとともに, 経路最適化やイングレスフィルタリングを行うバックボーンルータへの対処などを考慮したMobile IPv6を標準化している.しかしMobile IPv6には経路最適化を行う際の制御メッセージ転送のオーバヘッドが大きいなどの問題点がある.そこで本論文ではこのような問題を解決するために, 移動した際に入手する気付アドレスをホームアドレスとして用いて発信し, 通信中にさらに移動した場合は, 気付アドレスを割り当てたアクセスルータにHA機能を実現することにより, そのアクセスルータ経由でIPパケットをフォワーディングするMobile IPv6方式について, 詳細設計を行った結果を述べる.
著者
伊藤 賢次
出版者
日本生産管理学会
雑誌
生産管理 (ISSN:1341528X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.117-122, 2007

タイとインドネシアの自動車市場 (生産及び販売台数) は、日系自動車メーカーが大半を占めているが、1990年前後に、タイがインドネシアを逆転して、以後タイがインドネシアを大きく引き離していく。その理由は、まずそれぞれの国内市場の伸びの違いである。タイ経済は、プラザ合意のうねりを受けて、1987年から高度経済成長を開始し、翌年から3年間2桁以上の成長を続ける。国内販売台数は1990年には30万台 (1995年には50万台) を突破する。インドネシア経済は、タイより少し遅れて、1989年から高度成長の波に乗り始めるが、1990年の27万台をピークに伸び悩む。両国にとっては、国内市場とは別に、BBC (アセアン域内の自動車部品相互補完協定) のメンバーとしても、比較された。タイのほうが、国産化政策でもインドネシアより先行し、現地部品メーカーも育ってきていた。加えて、両国の政権の安定性、政策の一貫性、為替の安定性、政策立案能力と実施能力など、総合的にみて、タイのほうがインドネシアを上回っていた。こうした様々な点から総合的にみて、1988年前後から、日系自動車メーカーは、タイの生産能力を一気に拡張し (全体としては50万台規模の構想)、インドネシアを大きく引き離すこととなった。こうした事例は、企業が海外進出先を選定する際に、多くの示唆を与えている。
著者
長浜 正道
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.303-304, 1995-09-20

前回は、「情報化が形式的に進展しているわりには情報の活用がされていない」と言われている点に着目し、その原因を追求するとともに対応策を考察し、「考え方」や「ひらめき」、「感性」の重要性を強調した。今回は、このような能力を養成・強化するためのやや異端的な演習事例を紹介する。
著者
大泉 さやか
出版者
京都大学
雑誌
東南アジア研究 (ISSN:05638682)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.235-266, 2015-01-31

Abstract This study investigates how the collection and study of folklore in socialist Vietnam contributed to the Communist Party of Vietnamʼs and the governmentʼs cultural policy. It focuses on the Sino- Vietnamese terminology used in the folklore studies of socialist Vietnam and explains their changes in relation to cultural policy. From the end of the 1950s, the collection of folk literature (van hoc dan gian) was promoted in provincial areas because of the Partyʼs mass cultural policy. There, both politicians and scholars recognized that the collection of folk literature could not be separated from the collection of folk arts. This led them to introduce the term van nghe dan gian (VNgDG), a phrase that combines the terms for folk literature and folk arts, to reorganize the collection. In the late 1970s, the Party strengthened its control over the cultural sphere to abolish traces of the "old regimes." It thought that VNgDG contained many "old" elements that needed to be modified into more appropriate ones. And as China-Vietnam relations critically worsened at the end of the 1970s, VNgDG was finally criticized as being of "no use" because of its Chineseoriented content and methodology. On the other hand, scholars had to highlight the tradition of "Vietnamese culture" in order to confront the "long-lasting Chinese culture, " which led them to approach folklore from a historical perspective. At the same time, some scholars commented that VNgDG had become too "socialized" and emphasized the importance of scientific research on folklore. Consequently, they began to use the new term van hoa dan gian (VHDG), which literally means folk culture, to rejuvenate folklore studies. Currently, after the Law of Cultural Heritage was issued in 2001, the popularization of the concept of "intangible cultural heritage" (di san van hoa phi vat the) has made the status of the term "VHDG" unstable.
著者
和辻 敏子 宮本 悌次郎
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.213-218, 1988-11-20

植物たん白に対するKFプロテアーゼの作用と、調理への応用を検討するために、プロテアーゼ処理した植物たん白からの遊離アミノ態窒素の定量、KF汁入りのクッキー、揚げボールと対照の官能検査、クッキーの硬さ、グルテンにプロテアーゼを作用させた場合のグルテン残存率の測定と、電気泳動等を行い以下の知見を得た。1.植物蛋白に対するプロテアーゼの作用は、KFでは木綿豆腐、高野豆腐、小麦粉に強く、きな粉に弱かった。パパインでは小麦粉に強く、きな粉に弱く、パンクレアチンでは、高野豆腐、豆乳に強く、うずまき麩、小麦粉に弱かった。2.調理へのKF利用として、KF汁入りクッキーは官能検査により、バター、卵が減量できると考えられた。又ドリュールなしでも良い焦げ色が付き、焼く時間も短く、歯ざわりの良いクッキーが出来たが、焼き上がりの形はシャープさに欠けていた。3.KF汁入りクッキーとコントロールのクッキーの硬さは、硬度計により有意水準0.5%でコントロールのクッキーが硬かった。4.揚げボールの官能検査結果からKF汁入り揚げボールは、BPを使用しなくても統計的に有意においしく、又さっくりとして、砕けやすかった。5.グルテンに対する作用をKF汁としょうが汁のプロテアーゼについて調べた結果、KF汁の方がしょうが汁よりも、グルテンに対する作用が強く、官能検査結果と一致した。6.電気泳動結果から、KFとグルテンとの反応〓液では、標準牛血清アルブミンの2量体付近及び標準アルドラーゼ付近にバンドが見られた。
著者
松本 美鈴
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】明治期に日本に紹介されたハンバーグステーキ(以下ハンバーグとする)は、幼児から高齢者まで幅広く好まれる料理である。挽肉にいもや海藻などさまざま食品を添加した多様なハンバーグが作られている。近年は、イソフラボンをはじめとする機能性を期待した大豆加工食品を加えたハンバーグも一般的である。しかし、これら大豆加工食品がハンバーグの品質に及ぼす影響を調べた研究は多くない。そこで、本研究では、おから、豆腐、高野豆腐を添加したハンバーグの品質を機器測定および官能評価により検討した。【方法】基本ハンバーグ配合割合は、挽肉100、鶏卵10、加熱玉ねぎ24、食塩1、白胡椒0.1とした。大豆加工食品添加量は、おからは肉重量に対して25、50、100%、裏ごし豆腐は50、100、200%、水戻しみじん切り高野豆腐は25、50、80%とした。なお、挽肉には、鶏胸肉と合挽肉(牛:豚=2:3)を用いた。ハンバーグ調製方法は、挽肉に食塩を加えて粘りが出るまで混ぜ、残りの材料を加え、均質になるように混ぜ合わせた後、ハンバーグ種25gを厚さ16㎜の円柱状に成形し、230℃のオーブンで8分焼成した。5分放冷後、測定に供した。加熱重量変化、色(色差計)、多汁性(テクスチュロメーターによる圧縮試験)、かたさ応力および凝集性(クリープメーター)を測定し、順位法による官能評価を行った。【結果】おから添加により、いずれのハンバーグも色が薄くなり、多汁性の値が減少し、官能評価ではジューシー感が失われた。豆腐添加により、ハンバーグのかたさ応力が減少し、官能評価でもやわらかくなることが認められた。高野豆腐添加により、ハンバーグがかたくなることが機器測定および官能評価より分かった。
著者
岡本 隆司
出版者
東洋史研究会
雑誌
東洋史研究 (ISSN:03869059)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.611-645, 2015-03

This paper aims to examine the diplomatic negotiations relating to Mongolia's "independence" and international status after the 1911 Revolution and clarifying the Chinese notion of the world order and its transformation. I first trace the process of the tripartite negotiations between Mongolia, Russia and China from the conclusion of the Russo-Mongolian Agreement in 1912 to the Kiakhta Treaty in 1915. Secondly, I focus on the language and actions of the Chinese and reexamine the correlation between Chinese interests and wording in the negotiations by chiefly conducting an special analysis of some Western concepts translated into Chinese, such as zizhu 自主/zizhi 自治[independence/autonomy], zhuquan 主權/zongzhuquan 宗主權[sovereignty/suzerainty], lingtu 領土/fanshu 藩屬[territory/ dependency], and so on. As a result, I clarify that although Russia and China recognized Outer Mongoliaʼs autonomy as a Chinese territory and Mongolia recognized Chinaʼs suzerainty in the treaty, both the Chinese and the Mongols were dissatisfied and imposed their own interpretations on such concepts as zongzhuquan [suzerainty], zizhi [autonomy], and so on. In addition, I point out that this not only necessitated Chinaʼs investiture, cefeng 册封, of "Bogd Khaan" and the abolition of Outer Mongoliaʼs autonomy only a few years later in 1919, but also brought about the conditions leading to the Mongolian Revolution in 1921. This historical process cannot be said to be unrelated to the concepts of "sovereignty" and "territorial integrity" that govern foreign relations in contemporary China. It can be regarded as a key source in examining the formation of nationalism in China and surrounding countries.
著者
畠 進
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.51, no.468, pp.1897-1905, 1985-08-25
被引用文献数
1

モーダル解析で高次モードの応答を静的応答で近似して補正する手法の有効性がすでに確認されている.本報では,この手法をモード合成法やフリーフリーの系へ拡張するために一般化座標の形で提示する.この一般化座標の意味あるいは解釈について述べた後,この一般化座標の計算アルゴリズム,この一般化座標を用いた場合の外力項の誤差の評価方法を示す.最後に,外力項の誤差が零になることを2種類の計算モデルで確認する.
著者
岸田 典子 上村 芳枝
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.211-218, 1992
被引用文献数
1 2

近年, 日本家庭に伝承されている料理 (以下, 伝承料理とする) が健康面から見直され, その摂食回数も増加してきた。本研究は, 伝承料理 (さしみ・焼き魚・煮魚・高野豆腐の含め煮・煮豆・白和え・ごま和え・酢の物・煮しめ) の世代による意識の違いをアンケート調査により, 女子学生468人, 母親426人を対象として, 比較検討したものである。<br>1) 伝承料理に関する情報を母親から得る割合は, 学生約70%, 母親60%で, 世代間で有意差が認められ, 学生のほうが高かった。学校, テレビ, 本などから得る割合は, 両者とも約15%で, 同一であった。<br>2) 摂食回数の得点は, 酢の物・煮しめ・ごま和え・煮魚について世代間で有意差が認められ, 学生のほうが摂食回数は少なかった。嗜好の得点でみると, さしみを除いた8種の伝承料理は, 学生のほうには好まれていなかった。伝承料理をつくる際のイメージに関しては, 白和えを除く8種の料理について, 母親に比べて学生のほうが面倒であるととらえていた。<br>3) 伝承料理の手づくり割合では, 煮しめ・高野豆腐の含め煮・さしみについて世代間で有意差が認められ, 学生のほうが低かった。今後消費を増やしたい意向の強い料理は, 学生では焼き魚・煮しめ・煮魚, 母親では高野豆腐の含め煮・白和えであった。
著者
岸本 千佳司 Chikashi Kishimoto
雑誌
AGI Working Paper Series
巻号頁・発行日
vol.2014-05, pp.1-62, 2014-03

本研究の目的は,半導体産業における分業化・専業化およびオープン化・標準化へというビジネストレンドの中で,台湾企業が如何に台頭したかを,日本企業の凋落と対比させながら解明することである。結論を簡単に言えば,「設計と製造の分業」および設計における「モジュール型手法」の普及のトレンドに,台湾企業は,後発組であり(当初は)技術力が限られていたために,かえってスムーズに適応できたと考えられる。無論単なる僥倖ではなく,こうしたトレンドの兆しを見極め,ファブレス(設計専門企業)とファウンドリ(ウェハプロセス受託製造企業)の垂直分業という新たなビジネスモデルの推進役を戦略的に担ったのであり,1つのイノベーションである。自身の弱みを自覚し,オープンネットワーク活用と関連アクターとの連携でそれを補い,これが産業の技術的潮流とマッチして,徐々に先発組の先進国企業に追いつき追い越していったのである。他方,日本企業は,分業化とオープン化という大きな趨勢の中で,かつての成功体験に執着したためか,垂直統合と総花主義,自前主義とカスタム化体質から抜け出せなかった。またコストを含めた全体最適化を軽視し,ひたすら高性能・高品質を追い求める盲目的な「匠の呪縛」に捕われ,ズルズルと衰退していったと言える。このことを示すために,本研究では,先ず,世界の半導体産業の発展経緯,および基本的な技術潮流とビジネスモデルの変容について解説する。それを踏まえ,台湾半導体産業の垂直分業体制(とりわけファブレス-ファウンドリ分業モデル)の実際の構造と運営について詳述する。即ち,分業モデルの一方の主役であるファウンダリ(うち代表的企業であるTSMC)に注目し,プラットフォーム・ビジネス(顧客IC設計企業等へ設計支援を含めた包括的サービスを提供するプラットフォームを構築し,分業であるにもかかわらず緊密なパートナーシップと効率的な調整を実現する仕組み)とそれを支える技術的・組織的背景について検討する。次に,分業のもう一方の主役であるIC設計企業(ファブレス)の競争戦略についても注目する。台湾企業がモジュール型設計手法に順応し,標準品志向,ソリューション・ビジネス,選択と集中,海外・中国拠点の活用といった特徴を有していることを明らかにする。さらに,随所に日本半導体企業との比較を織り込み,上述のような技術潮流と産業構造の変化に,何故台湾は順応でき,何故先発組であった日本企業がかえって不適応であったのか,具体的に探っていく。