著者
佐藤 アヤ子
出版者
明治学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

環境破壊、種の絶滅、遺伝子工学等に警鐘を鳴らすカナダの作家マーガレット・アトウッドは、環境の危機を人間に伝えるには、「理解の神経回路」を作る物語や文学を含む芸術が必要と強調した。この「理解の神経回路」こそ、出口のない従来のディストピア小説とは違う〈新ディストピア小説〉の構想と解釈し、〈マッドアダム〉の物語である三部作Oryx and Crake(2003)、The Year of the Flood(2009)、MaddAddam(2013)で分析し、アトウッドが希求する〈新小説作法〉を考えた。
著者
城戸 浩三 作間 忠道 渡辺 忠雄
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.442-445_1, 1980

かまぼこ製造工場で原料魚から各工程におけるねり魚肉中のホルムアルデヒドの消長およびかまぼこ板から可食部へのホルムアルデヒドの移行の有無について検討した. 板のホルムアルデヒド平均濃度は古板で4.6ppm, 新板で9.4ppmであり, 原料魚のマエソのホルムアルデヒド含有量は222ppmで, マエソ, イシモチおよびメゴチを合わせた混合すり身は41ppmであった. これを水さらしするとその濃度は著しく減少した. 生と蒸かまぼこの上, 中, 下各層の濃度比較から, 板から可食部へのホルムアルデヒドの移行はなく, 上層のホルムアルデヒドの揮散によって, 濃度差ができると推定した.
著者
西田 和広 水谷 浩之 津留 正臣 川上 憲司 檜枝 護重
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MW, マイクロ波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.63, pp.83-86, 2008-05-22
被引用文献数
1

低位相雑音VCOの構成として,線路共振器に能動回路および同調回路をそれぞれタップ結合で接続したデュアルタップ結合型線路共振器を用いたVCOを提案する.共振器の解析式を導出し,数値計算により,外部Qと共振周波数の可変帯域幅とがタップ位置によって独立に設定可能であることを示している.能動回路にGaAs 2um HBTを用い,共振器にアルミナ基板を用いた12GHz帯における試作の結果,能動回路の接続位置により位相雑音が,同調回路の接続位置により発振周波数の可変帯域幅が,それぞれ独立に設定できることを確認している.また,可変帯域幅226MHz(1.88%)において,100kHz離順における位相雑音-117.6〜-114.4dBc/Hzを得,本構成の有効性を確認している.
著者
Zhang Baihao Chikuma Shunsuke Hori Shohei Fagarasan Sidonia Honjo Tasuku
出版者
National Academy of Sciences
雑誌
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (ISSN:10916490)
巻号頁・発行日
vol.113, no.30, pp.8490-8495, 2016-07-07
被引用文献数
133

免疫のブレーキPD-1は、制御性T細胞との役割分担によって自己免疫性膵炎を抑制する. 京都大学プレスリリース. 2016-07-20.
著者
森 英雄 安部 圭祐 竹谷 哲也 依田 一朗 小谷 信司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.587, pp.1-6, 2004-01-16
被引用文献数
1

視覚障害者は通い慣れた駅のプラットホーム等でもしばしば勘違いから事故に遭う.本システムは帽子に着けたビデオカメラ・傾斜計,画像処理装置,位置検出装置,スピーカ,バイブレータ,バッテリから構成する.このシステムは駅プラットホームを認識し,視覚障害者にバイブレータでどの方向に歩けば良いかを伝え,スピーカから音声でランドマークや分岐点等のより複雑な情報を伝える.本システムは単なる道案内システムではなく,利用者を交通事故などから守るシステムである.本稿では4つのサブシステム,すなわち画像処理システム,位置推測システム,経路ベース誘導システム,ヒューマンインタフェースを開発し,駅プラットホームで実験した.
著者
本田 兼基 田中 智久 斎藤 義夫
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2008年度精密工学会春季大会
巻号頁・発行日
pp.1075-1076, 2008 (Released:2008-09-03)

炭素繊維複合材料は,優れた性能を有しているがその製造工程は自動化が難しく,生産性が劣るためにコストが高いという課題がある.安価な製造技術が求められており,インライン化,新しい低コスト成形技術を開発する必要がある.そこで,内部加熱などの特徴を持つ高周波誘導加熱技術を炭素繊維複合材料の成形過程に適用する方法について実験的に調べ,その可能性について検討した.
著者
羽生 京子 ハブ キョウコ Kyouko Habu
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編
巻号頁・発行日
vol.40, pp.283-296, 2000-03

平面構成実習の細目である「女物アンサンブル」の長着と羽織の衿の適合性について究明したのが本研究である。「アンサンブル」は,共布で縫製し,長着と羽織を一緒に着用することを目的としている。当然のことながら,着用した際に長着と羽織の衿が適合することが必要条件となる。この長着の衿肩明きは直線裁ちにするのが一般的であるが,曲線に明ける方法を採用することで,羽織の衿との適合がどの様であるかを把握するために,学生の協力を得て着装実験を試みた。曲線裁ち衿肩明きによる長着を着装した時の特徴は,衿が首にまきつく形になること,背面衿つけ線がゆるやかに弧を描くことである。このため,羽織を着用した際,直線裁ちのものと比較して,やや羽織衿と離れぎみとなるが,支障のない程度であろうと,事前に予備実験で確認している。着装実験は学生自身が授業で縫製したものを,本人が着装して試みた。着装者の体格・体型は,痩身体から大柄で厚みのある体型までと様々である。実験の結果,曲線裁ちによる長着は,直線裁ちと比較して,着用する体型の違いにより着装状態が顕著に異なることを把握した。そして,羽織衿との適合が認められるのは,標準体型までとの感触を得た。そこで標準の範囲でない体型について検討をした結果,衿肩明き寸法を修正することにして,更に着装実験を進めた経緯がある。痩身体については羽織の衿肩明き寸法を狭くする方法,大柄で厚みのある体型には長着の衿肩明きを広くする方法を試みたことで,長着と羽織の衿を適合させるとの課題に関しては,おおむね目的を達したといえる。一方これまでの着装実験は,着装しやすさを追求するために肩山を肩線に合わせることを前提として試みてきたが,肩山を肩線から後方へ移動するといった着装方法を変化させることで,曲線裁ちによる明け方でもある程度有効になることも確認できた。
著者
Ryoma Michishita Takuro Matsuda Shotaro Kawakami Akira Kiyonaga Hiroaki Tanaka Natsumi Morito Yasuki Higaki
出版者
日本疫学会
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.378-385, 2016-07-05 (Released:2016-07-05)
参考文献数
36
被引用文献数
1 31

Background: This cross-sectional study evaluated the association between unhealthy lifestyle behaviors and the prevalence of chronic kidney disease (CKD) in middle-aged and older men.Methods: The subjects included 445 men without a history of cardiovascular disease, stroke, or dialysis treatment, who were not taking medications. Unhealthy lifestyle behaviors were evaluated using a standardized self-administered questionnaire and were defined as follows: 1) lack of habitual moderate exercise, 2) lack of daily physical activity, 3) slow walking speed, 4) fast eating speed, 5) late-night dinner, 6) bedtime snacking, and 7) skipping breakfast. The participants were divided into four categories, which were classified into quartile distributions based on the number of unhealthy lifestyle behaviors (0–1, 2, 3, and ≥4 unhealthy behaviors).Results: According to a multivariate analysis, the odds ratio (OR) for CKD (defined as estimated glomerular filtration rate [eGFR] <60 mL/min/1.73 m2 and/or proteinuria) was found to be significantly higher in the ≥4 group than in the 0–1 group (OR 4.67; 95% confidence interval [CI], 1.51–14.40). Moreover, subjects’ lack of habitual moderate exercise (OR 3.06; 95% CI, 1.13–8.32) and presence of late-night dinner (OR 2.84; 95% CI, 1.40–5.75) and bedtime snacking behaviors (OR 2.87; 95% CI, 1.27–6.45) were found to be significantly associated with the prevalence of CKD.Conclusions: These results suggest that an accumulation of unhealthy lifestyle behaviors, especially those related to lack of habitual moderate exercise and presence of late-night dinner and bedtime snacking may be associated with the prevalence of CKD.
著者
但木 孝一
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.1391-1397, 2008
被引用文献数
3

近年の抄紙マシンの高速化,中性化等の影響でウエットエンドの最適化は,大変重要になってきている。特に大きな問題として古紙に由来するピッチ成分やアニオントラッシュ等の夾雑物による抄紙マシンの汚れトラブルの増加が顕著になっている。また填料の高配合化の影響により歩留りが大きく低下し,操業上問題が生じるケースも増えている。このように抄紙条件は,年々厳しさを増しており,ウエットエンドでの各種添加薬剤の本来の効果を発揮するのが難しくなっている。<BR>弊社では,厳しい抄紙条件下で各種添加薬剤の効果を最大限に引き出すために高機能化した凝結剤として,「リアライザーAシリーズ」を開発してきた。更に微細繊維や灰分の歩留りに効果的な高機能歩留り剤「リアライザーRシリーズ」,「レクサーFXシリーズ」の開発にも最新のポリマー合成技術を導入して取り組んできた。これらの薬剤から構成されるウエットエンド改質システムが「アクシーズシステム」である。今回は,この「アクシーズシステム」による抄紙マシンの汚れトラブルの低減や歩留り,濾水性等のウエットエンド物性の向上について報告する。
著者
里和 スミヱ 海老沼 春世 大城戸 ツヤ子 サトワ スミエ エビヌマ ハルヨ オオキド ツヤコ Sumie Satowa Haruyo Ebinuma Tsuyako Ookido
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編
巻号頁・発行日
vol.35, pp.33-42, 1995-03-31

1. オリーブ油15gまたは50gを1回摂取すると,6日後TGは15gで18%,50gで9%低下。HDL-Chは50gで20%増加した。VLDLは50gで5日後20%低下した。2. オリーブ油を20g毎日摂取すると,14日後T-Chは4%低下,TGは17%低下した。HDL-Chは不変で,VLDLは33%低下した。3. 鰯100gで作ったつみれをオリーブ油15gで調理すると,2日後T-Chは10%低下,TGは8%低下,HDL-Chは15%増加し,鰯のみのときより血清脂質改善作用が増強された。4. 血清過酸化脂質の増加は5.7%と軽度であった。5. 血清脂肪酸組成はいずれもオレイン酸の増加はわずかであった。以上よりオリーブ油にTG低下作用,HDL-Ch上昇作用があることが認められた。
著者
中野 浩志 常盤 直孝
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CdPF1027-CdPF1027, 2011

【目的】<BR>アキレス腱断裂術後の足関節可動域に関する報告や,跛行に関する報告は緒家により様々な報告がなされているが,足関節運動の質が跛行に及ぼす影響についての報告は少ない.今回,アキレス腱断裂術後約10週経過したにも関わらず跛行を呈した症例を経験し,足関節背屈時の距骨下関節に着目して理学療法を行った結果,良好な改善が得られた.今回の報告の目的は,その経験を通して評価体系についての研究を進めることである.<BR><BR>【方法】<BR>対象は20歳代,男性.剣道で踏み込んだ際に左アキレス腱を断裂し,他院にてOpe施行.その後経過良好のため退院するが,術後約10週経過したにも関わらず,歩行時の疼痛と上手く歩けないとの主訴で来院された.初期評価時では,歩行時のinitial contact(以下IC)時に踵骨への疼痛,terminal stance(以下TSt)時に断裂部位への疼痛があり,さらに歩いても前へ進まないという訴えがあった.歩行時の左立脚相では常に距骨下関節(以下ST関節)回内,下腿内旋であり,身体重心は右側へ偏位していた.各関節の可動域において著名な左右差はなかった.しかし,足関節背屈において過度なST関節回内を呈した背屈であり,ST関節中間位にて背屈を行うと可動域制限が著明に現れた.MMTに関しては左側の腓骨筋群,脛骨筋群,殿筋群が3,腓腹筋,ヒラメ筋で2と筋力低下を認めた.activeSLRにおいても,左側で陽性となった.立位アライメントは,左側のST関節回内位,下腿内旋が見られ,骨盤左回旋,体幹右回旋であった.なお,右側のPSISとASISの差2横指,左側のPSISとASISの差1横指と左側の骨盤後傾が見られた.身体重心は右側へ偏位していた.<BR><BR>【説明と同意】<BR>本研究は症例の同意を得て,ヘルシンキ宣言に基づいて行った.<BR><BR>【結果】<BR>理学療法アプローチをST関節内側後方への滑り込み制限に対して徒手療法を行い,ST関節を安定させる目的で後脛骨筋,腓骨筋群の筋力トレーニング行った.その結果,再評価時ではST関節中間位での足関節背屈可動域は改善し,歩行時の疼痛,前方への推進力も改善した.歩行時,左立脚相でのST関節回内,下腿内旋は改善し身体重心の位置も正中位へ近づいた.MMTに関しても左側の腓骨筋群,脛骨筋群,殿筋群が4,腓腹筋,ヒラメ筋で3と筋力が改善し,activeSLRも陰性と改善が得られた.立位アライメントでは,左側のST関節が中間位へ近づき,下腿内旋の改善が得られた.骨盤,体幹の回旋においても改善が得られ,左側のPSISとASISの差も1横指半と改善された.なお,身体重心も正中位へ近づいた.<BR><BR>【考察】<BR>今回,症例の主訴であった歩行時の疼痛,前方への推進力低下をST関節に着目して理学療法アプローチを行った結果,良好な改善が得られた.IC時の疼痛に関しては初期評価時に足関節背屈でST関節の内側後方への滑りが見られず,その結果過度なST関節回内を呈した背屈となっていた.そのため,IC時の衝撃吸収が行えず踵骨部に疼痛が生じていたと考えた.また,TSt時の疼痛においてはST関節回内位であることに加え,ST関節回内位により生じる前足部の不安定性に対して足底筋が過剰収縮する2つの要因により下腿三頭筋に牽引力が生じ,その状態で前方への推進力を得るため,努力性の蹴り出しを行った結果ではないかと考えた.なお,初期歩行時に前方への推進力が得られなかったのは,loading responseからmid stance時に前足部が早期に回内することで重心が正常よりも早い段階で内側へ偏位したためだと考えた.前足部が早期より回内する要因としては,立位時における身体重心右側偏位,長腓骨筋の機能不全により長腓骨筋と筋連結をしている前脛骨筋の筋力低下,さらに,足部から起こる上行性運動連鎖により骨盤後傾位となり,殿筋群の筋力低下によって,右側の骨盤が下制することで身体重心が右側に偏位したことが考えられた.以上のことから,初期評価時では足関節背屈時におけるST関節内測後方への滑り込み制限がダイナミックアライメントに影響を及ぼし,各関節の筋力を低下させ,歩行時の疼痛,前方への推進力低下を招いていたと考えた.したがって,理学療法アプローチによりST関節の後方内側への滑り込み,安定性が改善されたことで,再評価時ではダイナミックアライメントが改善し,各関節の筋力が改善したことなどに伴い,歩行時の疼痛,前方への推進力が改善したと考える.<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>今回の結果から,理学療法評価を行う際には量だけでなく運動の質の評価も行い,他関節への影響も考慮する必要があることを再確認できた.今後の展望としては,各関節の可動性の違いによる筋活動の変化を筋電図等を用いて臨床の場で研究を行っていきたい.
著者
砂原 正和 中川 ふみよ 﨑元 康治 市木 育敏 岩本 周士 佐々木 謙 有田 親史
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cf1506-Cf1506, 2012

【はじめに】 近年、新しいアキレス腱縫合術の報告が散見され、理学療法介入の加速化によりスポーツ復帰までの期間短縮が図られている。しかし、アキレス腱縫合術後では半永続的な筋力低下や運動能力低下が生じることは周知のとおりであり、術後のアキレス腱過伸張(以下、elongation)はこれらの機能不全と関連すると言われている。今回、早期スポーツ復帰が可能であったが、elongationを呈した症例を経験した。術後経過について考察を加えて報告する。【症例紹介】 〈症例〉20歳代、女性。〈競技スポーツ〉バレーボール。〈診断名〉左アキレス腱断裂。〈現病歴〉バレーボールの試合中、後方へ踏み込んだ後に前方移動しようとした際、膝伸展・足背屈強制され受傷。翌日、当院受診され左アキレス腱断裂と診断。受傷3日後、当院にてアキレス腱縫合術施行。〈術式〉主縫合:side locking loop法、補助縫合:cross stitch法。〈術後プロトコル〉術後翌日:自動および他動ROMex開始。足関節背屈0°以上獲得時:部分荷重開始。術後4週:全荷重開始。術後6週:両脚heel raise、下腿三頭筋ストレッチ許可。術後12週以降:徐々にスポーツ復帰。〈評価項目〉足関節背屈ROM、足関節自然下垂角度(腹臥位)、heel raiseの可否、パフォーマンステスト(片脚ジャンプ、立ち幅跳び)、MRI画像判定。【説明と同意】 対象症例に対する倫理的配慮として、発表内容および目的等について十分に説明し文書により承認を得た。【経過】 プログラム立案は介入当初からelongation予防に重きをおき、術創部周囲の皮膚やアキレス腱の滑走性を維持するためのモビライゼーション、膝屈曲位で自動運動でのROMex、歩行時にアキレス腱に伸張が加わることを抑えるために足部外転・股関節外転位接地での歩行指導などの治療介入を行った。足関節背屈ROMは、術後2週に背屈0°獲得し術後3週から片松葉杖による部分荷重を開始。術後4週にはアキレス腱部痛は消失し全荷重を開始した。術後5週で足関節背屈ROM 20°まで順調な回復を認め健患差は消失、足関節自然下垂角度 においても健側、患側ともに35°と健患差は認められなかった。しかし、術後6週以降に足関節自然下垂角度は患側25°まで減少が認められ、術後11週以降には患側足関節背屈ROM 25°と過背屈を呈した。そこで、足底からアキレス腱上を経て腓腹部までのテーピングを施行しアキレス腱の伸張負荷の軽減を図ったところ、それ以降はこれらの進行は認められなかった。筋力回復の指標となるheel raiseは、術後11週で両脚heel raiseの健患差消失し、術後14週で踵挙上距離は健側にやや劣るが、片脚heel raise 20回連続挙上が可能となり足関節底屈MMT5レベルと判定した。術後16週のMRI画像判定にてアキレス腱部の高信号はほぼ消失し、足関節底屈筋力MMT5、パフォーマンステストは各項目で健患差85%以上であったため、スポーツ復帰を許可した。【考察】 elongationは運動能力と関連があると報告されており、本症例のようにスポーツ復帰を目標とする症例にとっては見逃せない所見である。本症例は早期スポーツ復帰が可能となったが、術後経過の中でelongationを呈した。本症例のelongationが生じた時期はトレーニング強度や日常生活などの活動性が増してきている時期に一致している。テーピングによる制動を行った後にはelongationの拡大は認められなかったことから、elongationを予防するという観点からは制動的な処置も考慮する必要があると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 アキレス腱断裂縫合術後のelongation予防という観点からは制動的な処置も必要となり得ることが示唆された。今回の症例報告が治療介入の一助となることを期待している。
著者
藤野 正行 何 普明
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.618-623, 1998-10-15
参考文献数
17
被引用文献数
8 5

食用キノコであるタモギタケの加工にともなって生じる煮汁の有効利用に端を発した研究の一環として,熱水抽出物(煮汁)の血糖値抑制効果を調べた.<BR>タモギタケの熱水抽出物は,経口投与により,II型糖尿病モデルマウスKK-A<SUP>y</SUP>の血糖値上昇を抑制し,耐糖能を改善した.<BR>熱水抽出物をβ-グルカナーゼ処理した後,3倍容のエタノールで処理して得たエタノール処理画分は,KK-A<SUP>y</SUP>マウスの血糖値を一時的に抑制したが,作用は微弱であった.<BR>熱水抽出物を対照動物(C57BL/6Jマウス)に投与したが,血糖値および耐糖能に変化はみられなかった.<BR>今後,有効成分の特定と作用機序の解明が必要であるが,本研究は,副生物の有効利用の可能性を示唆した.