著者
生駒 俊英
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

我が国では、2007年に「離婚時年金分割制度」が導入され離婚の際に年金を分割する事が可能となった。しかし現在当初予想された程、利用が行われていない。そこで本研究では、我が国が制度導入にあたり参考とした、ドイツにおける「年金権調整制度」が、2009年から新たな制度へ改正された点に焦点を当て、示唆となる点を探ることとした。ドイツの制度を踏まえて、まず我が国の制度を社会保障法上の制度と捉えて、分割割合を一律二分の一にすべきであるとの結論に至った。さらに、本制度により分割は可能になったものの、それより生じる結果に対して制度的な対応が必要不可欠である。
著者
堀田 香織
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、離婚母子家庭の子どもの成長における、別れて暮らす父親との関わりについて、調査研究を行った。父親との関わりの有無と時期によって3群に分けられ、父親との有効な関わりを続ける群の心理的特徴として、子どもが肯定的な父親像を有していること、父子の良質な関わりの継続、精神的な独立とともに、父母の関係や父親の存在を再評価し、父親との関わりを選び直せること、子どもと共に父親が成長していることなどが重要であることが見出された。
著者
剣持 久木 西山 暁義 川喜田 敦子 中本 真生子
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

2006年秋からフランスとドイツの教育現場に導入された、共通歴史教科書を、教科書成立に至る過程、歴史的背景から教科書の内容の分析、仏独両国での教科書の評価、現場での使用状況、さらには東アジアなど他地域への応用可能性を研究した。その結果、実際の使用状況は、二言語学級での使用など限定的であるという実情が明らかになったものの、ドイツ・ポーランド間でも同様の計画が具体化するなど、仏独の事例は限界をもちつつも国際歴史教科書対話のなかで一つのひな形の役割を果たしていることが確認された。
著者
渡邊 法美 小澤 一雅
出版者
高知工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

日本の公共発注者に必要な「発注力」を明らかにし、今後の技術調達モデルの方向性を検討した。今後も維持すべき発注力とは「信任」の精神であり、具体的には技術者の良心、Win-Win、規準作成、自己管理、努力者評価である。向上すべき発注力は、透明性の向上である。そのためには、リスクとコストの関係明確化、プロセスマネジメントシステムの構築・運用、利用者・納税者への説明、発注者に不足する機能を補完する新しい職能の創設・導入、各リスクを最も適切に取ることが出来る主体を選抜する仕組みの構築が必要である。
著者
石田 厚 原山 尚徳
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

今まで細胞膜は単なる半透膜と言われていたが、近年アクアポリンと呼ばれる膜タンパク質が細胞膜の水の透過性を決めることがわかってきた。アクアポリンはすべての生物の生体膜上に存在し、水分子を超高速輸送する物質であり、アクアポリンの存在によって、生体膜の水透過性は数十倍にも増加する。またアクアポリンの活性や量は、環境ストレスによって変化することも知られているが、今まで作物を用いた遺伝子レベルでの研究が中心であった。また近年、葉内の水移動経路の通りやすさ(葉の通水性)が、気孔開度や光合成速度に影響を及ぼすことが明らかになってきている。この課題では、樹木の葉の水移動経路の重要な部分を占める葉脈部分の通水性の変化と、アクアポリンの活性や量で制御される葉細胞の生体膜(細胞膜や液胞膜)の通水性の変化が、葉全体の通水性や光合成特性に与える影響を明らかにした。水利用様式の異なる樹種において、いくつかのパターンで葉脈の通水を遮断し、葉の通水性と気孔コンダクタンスの変化を調べた。いずれの樹種においても、葉の通水性の低下に従い、気孔は閉鎖した。このことは、葉脈道管のエンボリズム(閉塞)の生じやすさが、気孔開度や光合成速度を大きく律速することを示す。またアクアポリンの阻害剤である塩化第二水銀を葉に吸わせて、葉の通水性、気孔コンダクタンス及び光合成速度の変化を、常緑広葉樹2種と落葉広葉樹2種で調べた。アクアポリンの機能を阻害すると葉の通水性が10-30%、気孔コンダクタンスは5-20%低下し、葉の通水性の低下割合が高い樹種ほど気孔コンダクタンスや光合成速度の低下の割合が高かった。また気孔コンダクタンスの高い樹種で、アクアポリンがより多く機能していた。すなわち水消費の多い樹種で、葉内アクアポリン活性の変化により積極的な水分調節を行っていることが示唆された。
著者
藤田 一彦 安田 直彦
出版者
岐阜工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

MPB(Morphotropic Phase boundary)濃度相境界近傍で育成したリラクサー型強誘電体固溶体単結晶は、優れた圧電特性を示し、工業的な価値が高い。中でも非鉛系の強誘電体固溶体材料として、特に優れた特性を示すリラクサー系のビスマス化合物(Na_<1/2>Bi_<1/2>)TiO_3や(Na_<1/2>Bi_<1/2>)TiO_3-BaTiO_3系固溶体に着目し、その固溶体単結晶をBridgman法により育成することができた。更に、育成された単結晶を用いて、その圧電特性、誘電特性を偏光顕微鏡によるドメイン構造の観察、および圧電応答プローブ顕微鏡によるナノ領域における電界誘起歪み特性の評価を行って、優れた圧電特性を生ずる基となるナノドメインの構造について調べた。
著者
レヴィ アルヴァレスC 町田 宗鳳 中坂 恵美子 材木 和雄
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ヨーロッパの統合が進行するにつれて、各国において移民若しくはマイノリティに対して「差別」と「排他」のメカニズムが徐々に弱まっていると言える一方、各国の固有の事情によって、そうした流れに対する抵抗も多く存続している。こうした状況をマクロとミクロの両面から分析した結果は、本年度書籍として出版される予定だが、今後の日本における移民政策にも大いに役立つと期待できるであろう。
著者
小澤 正直 神保 雅一 松原 洋 西村 治道 浜田 充 ブシェーミ フランチェスコ
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

量子測定理論と量子集合論を軸に量子計算量理論と量子符号理論に新しい数学的方法を開発した.本研究代表者が確立した小澤の不等式と呼ばれる普遍的な不確定性原理の研究を発展させ,世界で初めて測定誤差と擾乱に関するハイゼンベルクの不等式の不成立を実験的に観測し,小澤の不等式の成立を確認した.また,量子計算の実現に伴う様々なモデルに対して,計算量,デコーヒーレンス,必要な物理的リソースなどを明らかにした.更に,誤差を回避するための新しい符号化法を開発した.これらの成果により,量子情報技術の開発,関連産業,文化などにも幅広いインパクトを与えた.
著者
泉水 宏臣
出版者
(財)明治安田厚生事業団体力医学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、精神疾患患者への運動療法の効果を検討した。まず、様々な種類の運動(動的運動、静的運動、競技的要素を含む運動)が精神疾患患者の感情状態に及ぼす効果を検討した結果、いずれの運動も心理教育と比較して感情状態改善効果が高かった。次に、運動(ヒップホップダンス)による感情状態改善効果を気分障害患者と統合失調症患者において検討した結果、どちらも感情状態が改善した。さらに、長期的な運動の効果を検討した結果、デイケア施設にて実施した運動プログラムに定期的に参加した精神疾患患者は、そうでない患者と比較してメンタルヘルスが向上した(精神科症状の軽減、自己効力感の増加)。統合失調症患者に限って同様の検討をした結果でも、定期的な運動参加がメンタルヘルスを改善した(自己効力感の増加)。よって、精神科の治療として運動は有効であることを示すことができた。
著者
三谷 研爾 中村 真
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究課題は、ナショナリズム対立が深刻化だったボヘミアを対象とし、1890年代から両大戦間にかけて書かれた同地の文学史的・民俗誌的記述を検証したものである。ザウアー、ハウフェンなどのドイツ系知識人による、地域性を重視する文学史は、理念においては国民文学史を相対化する契機を含みながら、具体的記述としてはナショナリズム的な本質主義の思考を強く主張する結果となった。他方、チェコ系知識人ホスチンスキーもまた、その民族芸術論をとおして、文化の移動の生産性に注目しながら、民族文化の恒常性に固執した。同地における文化的越境現象は、人文学的ディスクールのこうした構造と並置して理解すべきことが明らかとなった。
著者
丹羽 公雄 中野 敏行 森島 邦博 朴 ビョン渡
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

1. OPERA実験の解析に向けた、原子核乾板超高速自動飛跡読取装置の開発・実用化を行ない、OPERA実験解析の準備を行なった。2. ニュートリノ実験以外の用途(ダークマターの直接検出、ミュー粒子を用いた火山、溶鉱炉の透視、ガンマー線望遠鏡など)への応用研究などを行い、原子核乾板を用いた手法の有効性を示した。これらの開発により、現在主力のOPERA のみならず原子核乾板を用いた将来の基礎研究、応用研究へ広げてゆくための基礎を構築できた。
著者
孫 飛舟 中橋 國藏 古沢 昌之 原 敏晴 崔 圭皓
出版者
大阪商業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

日本、韓国と中国の多国籍企業によるグローバル展開に関する比較を行い、それぞれの組織体制と経営戦略の違いを明らかにした。特に、新興国の市場開拓において、韓国企業に比べて日本企業が現地の消費者のニーズをうまく捉えていない局面が多い。近年、中国企業による海外進出が活発化し、日本企業が中国企業に買収されるケースが増えている。しかし、中国企業は情報公開が不十分で、経営ビジョンも不明確なケースが多く、今後改善していく必要がある。
著者
飯高 敏晃 池田 隆司 土屋 旬 星 健夫 宮崎 剛
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

原子分子の視点に基づいたシミュレーションにより、含水鉱物の新高圧相の予測、高温高圧下の水の水素結合状態、氷高圧相のプロトン伝導の解明、水素ハイドレートの高圧相転移、水素化物の高温超伝導、多結晶ダイアモンドの破壊シミュレーションなど、いままで知られていなかった高圧下での水(水素)の振る舞いの一端を明らかにした。今後の中性子散乱実験との協業により一層の解明が進むことが期待される。
著者
浜名 恵美
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

異文化主義(interculturalism)および異文化パフォーマンスに関する問題点を重点的に検討し、異文化パフォーマンスの実地調査、国内外の関連学会への参加と研究者との意見交換、インターネットを含めた情報収集、映像資料分析、文献調査、国内外で発表された論文および口頭発表をとおして、相互理解促進に資する上演のヒントを見出すと同時に、今後のシェイクスピア演劇の異文化パフォーマンスのあり方に有意義な提言を行なうことができた。
著者
井本 逸勢 中屋 豊 二川 健 田嶋 敦
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

Wistar系ラットから樹立された高運動習性動物モデルであるSPORTS(Spontaneously Running Tokushima-Shikoku)ラットを対象に、高運動習性の表現型形成の分子基盤を解明することを目的に、次世代シーケンサーを用いた全エクソン配列解析、連鎖解析、ならびにデータベースを用いた選択アルゴリズムから新規に構築するラットゲノム解析パイプラインを駆使することで、未同定の原因遺伝子のスクリーニングを行い、候補遺伝子群を得るとともに、モデルラットの表現型関連遺伝子のスクリーニングツールとシステムを確立した。
著者
大武 信之
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

国公私立大学が利用するセンター試験は、過去問題として蓄積されているが、一般問題・特別問題(点字)ともに再利用可能な形式ではない。本課題では、点字問題を再利用可能な形式にするするための環境と、一般問題(墨字)と特別問題の関連付けが無いため、双方を自動的に電子化し、墨字から点字、点字から墨字の双参照を可能とするシステムを提供した。本課題の点字過去問題アーカイブシステム環境は、一般の古書点字にも使用可能で、点字古書を電子化し、複製本を提供できると共に、劣化した古書点字を新書に甦らせることも可能にした。本システムは、点訳ボランティア等にも専門的な知識なく使えるシステムとして提供することができた。
著者
ジョンズ アダム・ルカス
出版者
立教大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

オーセンティシティーは研究や議論の中でいくつかの使い方があり、幅広く使われているこのコンセプトにこれらの定義を結びつける枠組みを提案した。多くのデザイナーはモノの生産立地より材料の本質を重視する。ただし、デザインプロセスの中の決定的要素の原型や試作品を作るのに製造者が近くにいることが不可欠である。多くのデザイナーは「オーセンティック」なモノを作るのにその国のデザイン本質や文化を保存しすべての作品に適用する必要性は感じない。ブランドを持つ製造者にとってデザイナーの国籍や材料の原産国、そして商品の生産地は商品のオーセンティシティーに関して重要ではないという意見および経験的根拠があった。
著者
市村 哲
出版者
東京工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

板書や電子スライドを用いた講義をE-ラーニング教材として提供できる講義自動収録・配信・理解度判定システムを構築した.システムは,黒板の前の講師を自動追尾録画し,その映像からE-ラーニング教材を即座に作成することができる.研究成果として,ChalkTalkコアモジュールの動物体認識精度向上を実現した他,Android用プレーヤー,HTML5版プレーヤー(Android, iOS, Windows, MacOS, LinuxOSに対応)を実装した.
著者
馬渡 駿介 片倉 晴雄 高橋 英樹 齋藤 裕 矢部 衛 柁原 宏
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

地球規模の環境問題を解決し、生物多様性を守り、人類の生存を保証する方策は、生物がどのくらい多様なのか知ってはじめて可能となる。しかし、「生物はどのくらい多様なの?」との素朴な疑問に今まで誰も答えられなかった。本研究は、一地域の生物多様性を丸ごと明らかにしようとする、日本で、また世界的にもこれまで例のない研究であり、生物多様性解明への社会的要望の高まりを受けて計画されたものである。研究は、北海道厚岸湾に位置する約1平方km^3の無人の大黒島およびその周辺浅海域で行い、地域生物相の徹底解明をめざした。その結果、土壌繊毛虫、土壌性鞭毛虫類、有殻アメーバ、トビムシ類、ササラダニ類、植物上ダニ類、土壌表層ダニ類、維管束植物、海産無脊椎動物、魚類、齧歯類において、合計5新種、約25の日本初記録種を採集し、生息種の全貌をほぼ解明した。