著者
片岡 弘明 田中 聡 宮崎 慎二郎 石川 淳 北山 奈緒美 村尾 敏
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.329-334, 2012 (Released:2012-08-01)
参考文献数
28
被引用文献数
2

〔目的〕本研究の目的は,男性2型糖尿病者の筋量と血糖コントロールの関係を明らかにし,運動処方の一助とすることである.〔対象〕骨関節疾患および運動器疾患のない男性2型糖尿病者58名とした.〔方法〕血糖コントロール別に良好群14名,可群20名,不可群24名の3群に分類し,生体電気インピーダンス方式体組成計を用い上下肢・体幹筋量を測定した.〔結果〕上下肢・体幹の全てにおいて,不可群は良好群よりも有意な筋量の減少を認めた.さらに上肢,体幹においては,不可群は可群よりも有意な筋量の減少を認めた.〔結語〕上下肢・体幹筋量は,血糖コントロール不良者ほど減少していたことが明らかとなったことから,運動プログラム立案時には有酸素運動とレジスタンス運動を併用した運動を考慮する必要性が認められた.
著者
高橋 節子 海老原 昌絵 貝沼 圭二
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.235-241, 1998-03-15
参考文献数
14
被引用文献数
3

新形質米の米紛および澱粉の性質を知る目的で, バスマテー型香り米のサリークイーン, 低アミロース米の道北43号, 多収米のオオチカラ, 巨大粒米のハバタキ, インディカ系高アミロース米のホシュタカの5種を日本晴と比較した.測定は膨潤力・溶解度, フォトペーストグラフィー, ビスコグラフィー, ゲルのテクスチャーを求め, ゲルの離水率, ハンター白度の測定からは低温貯蔵安定性を検討した.90℃における米澱粉の膨潤力は17〜26を示し, 高アミロースのホシユタカが低く巨大粒のオオチカラは大であり低アミロースの道北43号・日本晴は膨潤しにくい.米澱粉の透光度上昇温度は58〜64℃を示し, ホシユタカは低く日本晴は高く, 添加物の影響では食塩・ショ糖が顕著であった.粘度測定から香り米のサリークイーンは粘度が高く, ホシユタカはコーンスターチに近似に曲線を描き, 米粉は米澱粉に比べて糊化温度が高く粘度は低い.澱粉ゲルはホシユタカ, 香り米のサリークイーンは硬さがあり日本晴は軟らかく低アミロース米の道北43号はこれらの中間であった.ビスコグラフィーで冷却25℃まで撹拌を継続したゲルは, ゲル化が阻害され硬さが低下し付着性が増大した.低アミロース米の道北43号は離水・白度が低く, ホシユタカは老化しやすく不透明なゲルであった.本報告で用いた新形質米各種は幅広い性質を示し、いろいろな調理や加工に利用できることが明らかとなったことから, 今後は北アフリカ料理のクスクス, 団子やういろうなど伝統的な和菓子や蒸し菓子などの調製について検討を行う予定である.
著者
杉橋陽一著
出版者
朝日出版社
巻号頁・発行日
1980
著者
中嶋 哲也
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1_9-1_17, 2010-08-31 (Released:2012-08-28)
参考文献数
24

直心流柔術の系譜に関する主な研究として 1990年に発表された論文,「直信流柔道について 一流名・術技及びその思想一」(以下,当該論文と表記)をあげることができる。当該論文では『直心流柔序』という伝書を使用し,直心流柔術から直信流柔道へ至る系譜について明らかにしようとしている。しかしながら,当該論文では『直心流柔序』の読解が不十分であり,特に直心流柔術の系譜に関する部分については十分な整理がなされていない。したがって,本研究では『直心流柔序』を通して直心流柔術の系譜を検証した。具体的には当時,寺田満英が直心流柔術の流祖とみなされていたかどうかという点について考察した。結果として,直心流柔術では寺田満英が流祖であるとみなされていなかったことが明らかとなった。
著者
松本 斉子 平井 葉子 徃住 彰文
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.385-400, 2003-09-01 (Released:2008-10-03)
参考文献数
33
被引用文献数
1

As an unprecedented phenomenon that might characterize new relations between people and domestic artifacts, a craze for a toy doll was analyzed in middle-aged people. The makers of the doll, which is modeled on a virtual character, have sold more than 700 thousand over the last three years in Japan alone, and the age distribution of buyers indicates a modal age of 51-60 year old. In this paper, 51 fan letters and 271 Web postings spontaneously sent to the toy maker were analyzed in terms of communicative functions and affective-cognitive contents. The results indicate that (a) the doll owners believe that the doll facilitates their interaction with family members and with friends, and (b) the doll owners attribute positive feelings in terms of both mental and physical states to the doll. The effects of affective attachment are discussed in terms of human emotion model.
著者
岩崎 博之 大林 裕子
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.695-705, 1998-09-30
参考文献数
24
被引用文献数
12

関東地方に雹をもたらす積乱雲の発生・発達過程についての基礎的な知見を得ることを目的として, 群馬県に雹をもたらした積乱雲(以後, 単に積乱雲)の出現特性を降雹調査データとレーダデータを用いて調べた.その結果, 次の特徴が見い出された.(1)1989年から1996年までの46降雹日の内, レーダエコーと対応できた降雹報告が71事例(39降雹日)認められた.(2)山岳域では日射の強い14時〜16時の時間帯に降雹をもたらす積乱雲の発生頻度が高い.それに対して, 3方向を山岳域に囲まれた半盆地域では, 日射の強い14〜16時と日射が弱まった18〜19時の2つの時間帯に積乱雲が発生する傾向にあった.北関東地方に卓越する熱的局地循環が積乱雲の発生する時間帯に影響すると考えられた.(3)移動方向が急変する積乱雲が認められ, それらは等高線に沿って移動することが多い.(4)降雹後, エコーの形態がライン状に変化する5つの積乱雲が認められた.エコーの形態がライン状に変化した領域は, 半盆地域と平野部の境界に対応する群馬県と埼玉県の県境付近に限られ, その時間帯も19時〜21時に限られていた.
著者
山口 典枝
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.29-41, 2013-06-28 (Released:2013-07-05)
参考文献数
21
被引用文献数
1

高齢化の更なる進行や疾病構造の変化など地域医療連携ニーズの多様化に対応し,できる限り在宅で過ごしたいという患者・家族の要望に応えるためには,医療・介護サービスを提供する限られた人的資源を有効的に活用する必要があり,それを支える仕組みづくりが急務となっている。 地域包括ケアの理念を踏まえ,なかでも在宅医療連携の協業におけるニーズを満たすためには,医師・看護師等によるICTを利活用した多職種協働とそれを支える情報基盤,さらにはその導入に伴う業務改革が不可欠である。ケアカンファレンスを中心とした多職種連携の実績が長く,地域包括ケアの先行モデルである「尾道方式」を,多職種間での情報共有やコミュニケーションに焦点をあてて考察したところ,成功の要件は下記の通りと考えられる。 ①地域の施設がつながる幅広い連携ネットワークがベースとして構築されていること②(患者・家族を含む)多職種チームメンバー間のコミュニケーションツールが提供されていること③ラーニングオーガニゼーションとして機能可能な情報の流れや学びの仕組みがあること④コアとなるチームメンバー以外の専門家の支援を仰げる仕組みが確立されていること以上4つの視点から,「情報共有およびコミュニケーションにおけるICT利活用の可能性」について検討し,限られた人的資源を効果的に活用する仕組を構築する際に参照可能なフレームワークと照らし合わせて,事例を分析する。
著者
中邨 真之
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

葉緑体では同義コドンの使用頻度と翻訳効率が必ずしも一致しない。また、葉緑体rps2 mRNAには翻訳効率の高いコドンが、rps16 mRNAには翻訳効率の低いコドンが多く含まれるように進化してきたと考えられる。このようなコドンの嗜好性がmRNAの翻訳効率にどのような影響を与えるのかについて、葉緑体in vitro翻訳系を用いて解析した。その結果、(1)rps16の5'非翻訳領域はほとんど翻訳活性を持たない、(2)rps16 mRNAのタンパク質コード領域はrps2よりも約3倍速く翻訳される、(3)この翻訳効率はコドン変換によりさらに高まることが明らかになった。
著者
宮崎 浩一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.132-141, 2002-09-15
参考文献数
9

密度依存型ジャンプマルコフプロセスを,国債入札における今後の落札シェアを予測するために用いた事例報告である.国債入札参加者を大きく,日系証券会社,外資系証券会社,その他金融会社の3つに分けた場合,外資系証券会社の落札シェアが日系証券会社の落札シェアを総合的に上回る(ウインブルドン現象と呼ぶ)の確率がおよそどの程度であるかを数理モデルに基づいて分析することを目的とする.分析方法は,まず,3社間のシェア競争のモデル化を確率的でない場合に考察し,次に,確率的な場合に拡張する.最終的には,将来の落札シェアの確率分布を求めて,ウインブルドン化の可能性を探る.今後3年間におけるウインブルドン化の可能性は,限定的であるという結果が得られた.This article provides an example how the density dependent jump Markov process is applied to the analysis of the probability of the Wimbledon phenomenon, which the foreign dealers 'share exceeds that of domestic dealers in the Japanese Government bond auction. The analysis involves three steps. First, a set of linear differential equations is constructed to model share competition among the three groups in the deterministic case. Second, the deterministic model is transformed to the stochastic one. The last step derives the probability of the Wimbledon phenomenon occurring from the future share distribution. The model indicates that the probability of the Wimbledon phenomenon within three years is quite limited
著者
加治 俊幸 長友 誠
出版者
鹿児島県農業開発総合センター
雑誌
鹿児島県農業開発総合センター研究報告 耕種部門 (ISSN:18818609)
巻号頁・発行日
no.2, pp.43-51, 2008-03

サトウキビ'NiF8'における施肥窒素の利用率を重窒素トレーサー法(以下、(15)Nトレーサー法)で明らかにした。当年に施肥した窒素の利用率は、春植え栽培で46%、株出し栽培で51%であった。施肥期別にみると、春植え栽培では、基肥窒素26%、追肥窒素64%で、基肥窒素の利用率は、追肥窒素の0.4倍であった。株出し栽培では、基肥窒素65%、追肥窒素45%で、逆に基肥窒素の利用率が追肥窒素の1.4倍で、作型によって大きく異なった。春植え栽培では、生育量確保のために追肥は梅雨明け後に施用される場合が多く、溶脱の機会が少ないこと、株出し栽培では、基肥は、生育初期から吸収され、サトウキビ体内に取り込まれ、溶脱しにくいことが大きな要因と考えられた。
著者
勝俣 隆
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究では、内外の中世小説の伝本を閲覧し、書誌学的調査を行い、資料を多数入手した。また、中世小説の挿絵と本文の関係について考察した。入手した伝本の中で優れたものは、ライデン民族学博物館所蔵『貴船の本地』の翻刻と解題のような形で公にした。説話では、七夕・羽衣等と中世小説の関係を考察した。特に、日本文学で、人間と動物の結婚についての法則を論じたものは意義がある。さらに、黒田日出男氏のコード論を利用して、渋川版における「遠山」のコードを分析した。最後に、まとめとして、中世小説の伝本が、海外に所蔵される経緯について論じた。