著者
林 松彦 高松 一郎 吉田 理 菅野 義彦 佐藤 裕史 阿部 貴之 橋口 明典 細谷 龍男 秋葉 隆 中元 秀友 梅澤 明弘 重松 隆 深川 雅史 川村 哲也 田中 勝 杉野 吉則
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.551-557, 2012-07-28 (Released:2012-08-07)
参考文献数
24
被引用文献数
2 5

カルシフィラキシスは,末期腎不全により透析療法を受けている患者を中心に発症する,非常に疼痛の強い難治性皮膚潰瘍を主症状とする,時に致死的な疾患である.病理学的所見としては,小動脈の中膜石灰化,内膜の浮腫状増殖を特徴的所見としている.これまで本邦における発症状況などは不明であったが,平成21年度厚生労働省難治性疾患克服事業として,われわれ研究班により初めて全国調査がなされた.その結果,発症率は欧米に比べて極めて低いと推定され,その要因の一つとして,疾患に対する認知度が極めて低いことが考えられた.そこで,疾患概念を明らかとして,その認知度を高めるとともに,診断を容易にするために,全国調査を基として診断基準の作成を行った.この診断基準は,今後の症例の集積に基づく見直しが必要と考えられるが,カルシフィラキシスに対する認知度を高める上では重要な試みと考えている.
著者
小川 容子 嶋田 由美
出版者
岡山大学大学院教育学研究科
雑誌
研究集録 (ISSN:18832423)
巻号頁・発行日
no.161, pp.87-94, 2016

本研究は,大学生を対象に,短い旋律を記憶再認する際にどのようなリズム変容がおこるのか信号検出理論に則って検討したものである。実験に用いた旋律は,リズム(等拍・ぴょんこ)×歌詞(促音,撥音,拗音を含んだもの・促音,撥音,拗音を含まないもの)×歌詞のイメージ(動的・静的)×旋律構造(順次進行・跳躍進行)に配慮して作成した6種類の新規旋律である。実験1では音楽専攻学生と非音楽専攻学生を対象とした再認実験を,実験2では音楽専攻学生を対象に直後再認と遅延再認実験を実施した。実験1の結果から音楽専攻学生の方が非音楽専攻学生に比べて強い確信度を保持し高い正答率を獲得していること,両者とも「ぴょんこ」リズムの記憶が等拍リズムよりも不安定であることが明らかにされた。実験2の結果からは,直後再認の結果が遅延再認の結果を上回ること,直後再認時の「ぴょんこ」リズムの記憶が等拍リズムよりもきわめて不安定であることが認められた。音楽専攻の有無に関わらず,等拍リズムに比べて「ぴょんこ」リズムの記憶がかなり曖昧になることから,我が国の明治後期以降の唱歌調全盛期にみられる唱歌のリズム変容との関わりが,示唆された。
著者
高田 礼人
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

エボラウイルスは、ヒトまたはサルに急性で致死率の高い感染症(エボラ出血熱)をひき起こす病原体である。現在のところ、ワクチンや治療薬は実用化されていないが、2014年の西アフリカでの大流行と欧州や米国を含めた他国への拡散によって、予防・治療法開発が急務となった。中和抗体による受動免疫および既存の化合物が緊急的に用いられたが、実用化には大きな課題が残されている。(1)これまでに作製された治療用抗体は全てZaireウイルス特異的であり他の種のエボラウイルスには効果が無い。(2)投与された化合物の有効性がサルモデルで確認されていない事に加え、それらは細胞内で作用するウイルスポリメラーゼ阻害薬であるため、大量投与に伴う副作用が大きい。そこで、本研究では全てのエボラウイルス種に有効な抗体療法開発に繋がるマウスモノクローナル抗体の作出を試みると共にエボラウイルスの細胞侵入を阻害する新規化合物を探索し、エボラ出血熱治療薬の実用化を目指す。エボラウイルス(Zaire species)の表面糖蛋白質(GP)の遺伝子をゲノム内に組み込んだ増殖性の水疱性口炎ウイルスに感染させ回復したマウスに、エボラウイルス(Sudan species)のGPを持つウイルス様粒子を腹腔内投与してブーストする方法によって、昨年度得られた交差中和活性を示すモノクローナルIgG抗体2クローンおよびIgM抗体1クローンのエピトープ解析を行った。その結果、IgG抗体2クローンは既存の交差反応性中和抗体とエピトープを競合した。IgM抗体クローンは、異なるエピトープを認識すると予想されたため、IgG化し、エボラウイルス感染ハムスターモデルで受動免疫による効果を調べたが、治療効果は認められなかった。他方、fusion loopを認識する交差反応性抗体とGPとの結合構造の解析に着手し、Fabの結晶解析を終了し、GP-抗体複合体の電子顕微鏡による観察に成功した。
著者
筒井 淳也
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.301-318, 2011-12-31
被引用文献数
1

計量社会学でも用いられることが多くなっているマルチレベル分析には, 何らかのデータのまとまり (同一個人に属する複数のデータ, 同一の国に属する複数の個人など) の情報を利用して, 通常の回帰モデルに比べてバイアスの小さい点推定を可能にし, また文脈効果の推定において適切な区間推定を可能にするというメリットがある. この特性を活かすには, 典型的には階層化されたデータ (パネルデータや国際比較可能なクロスセクション・データ) を用いるのが一般的であるが, 本稿では通常のクロスセクション・データにもマルチレベル分析が柔軟に適用可能であることを示すために, 家族関係についての豊富なデータをもつNFRJ (全国家族調査) を使った分析例を示す. 具体的には親との関係良好度の分析を行うが, (最大) 4人の親との関係良好度のデータは個人ごとのまとまりをもっている可能性があり, マルチレベル分析に適している. 分析の結果, 親との居住距離については同居・遠居よりも近居で, 金銭的援助関係については「中庸」である場合に関係良好度が高いということがわかった. これにより, 家族依存の福祉体制であるとされる日本で, 過度の援助関係が感情的なコンフリクトを高めていることが示唆される. 手法の面では, 入手が容易であるクロスセクション・データにもマルチレベル分析が適用可能であることを示すことで, データのより有効な活用を促すことができると思われる.
著者
安岡 孝一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.487-495, 2005 (Released:2005-11-01)
参考文献数
27

日本の漢字情報処理における難題のひとつに,異体字処理の問題がある。当用漢字表およびそれに続く常用漢字表が,固有名詞を埒(らち)外としてしまった結果,人名における漢字と,地名における漢字が,それぞれ異なる字体を持つに至った,という現実が,この問題をさらに複雑なものとしている。この問題を解決するには,Unicodeのような「漢字統合」を主眼とする文字コードでは力不足であり,むしろ日本国内向けに特化された文字コードが望ましい。本稿で紹介するAdobe-Japan1-6は,Adobe Systems社が日本向けに開発した文字コードだが,日本市場でのニーズ,特に異体字処理を,非常に強く意識した文字コードとなっている。
著者
和久 大介 穴田 美佳 小川 博 安藤 元一 佐々木 剛 Waku Daisuke Mika Anada Hiroshi Ogawa Motokazu Ando Takeshi Sasaki
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.144-150,

ユーラシアカワウソ(Lutra lutra)はユーラシア大陸に広く分布する中型食肉目である。本種には11の亜種がおり,欧州亜種L. l. lutra,東南アジア亜種L. l. barang,中国亜種L. l. chinensis などが国内外の動物園や水族館で飼育されている。欧州の動物園や水族館にはA-line(L. l. lutra)とB-line(L. l. lutraとL. l. barangが交雑した可能性がある系統)という2つのlineが存在し,日本の動物園や水族館にも導入されている。本来は同じ亜種内で繁殖がおこなわれるが,日本では本種の個体数が少ないためA-lineとB-lineで繁殖がおこなわれている。実際にB-lineが東南アジア亜種の遺伝子を持っているか評価がおこなわれ,B-lineとA-lineの間に違いがあることが示された。ただし先行研究では,解析配列が307bpと短いことが問題として上げられる。本研究ではミトコンドリア(mt)DNA Cytochrome bの全長配列(1140bp)をA-line,B-line各1個体,中国亜種2個体から決定し,先行研究で決定されたB-lineの配列を含む4配列を加えて配列比較,系統解析をおこなった。その結果,A-line,B-lineそれぞれが特徴的な変異サイトを示し,系統解析では先行研究と同じようにB-lineは中国亜種とクレイドを形成し,A-lineは欧州亜種独自のクレイドを形成した。よって解析したB-lineのmtDNAは東南アジア亜種に由来する可能性がある。2015年現在,日本のB-line個体は全て本研究で解析したB-lineの子や孫である。亜種間交雑が示唆された国内のB-lineは,本種の繁殖・維持に活用できるが,A-lineや中国亜種の系統維持に活用することはできない。
著者
科学技術・学術基盤調査研究室
出版者
科学技術・学術政策研究所
巻号頁・発行日
2017-08 (Released:2017-08-04)
著者
藤川 吉美
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.23-39, 2006-03-31

日本語の「責任」と「義務」の概念は,意味が曖昧であり,かつその根拠が漠然としている。そこで本稿では,上記タイトルの下に「責任」(obligation)と「義務」(duty)の概念を明確に区別するとともに,あわせて「公正な社会」(fair society)の安定的な維持にとって不可欠な西欧古来のnoblesse obligeの新しい解釈とその意義について論じたいと思う。論文の構成は全6節からなっており,1.最初に本稿の趣旨について述べ,2.において「公正原理」と「責任概念」を定義し,両者が不可分の関係にあることを指摘した。3.においては,伝統的なnoblesse obligeの定義を与え,J.ロールスによって試みられたその新しい解釈を紹介するとともに,それが公正な社会的協力・分業において奏するところの効果について哲学的な検討を加えた。4.以降は,自然的な6つの「義務の原理」とそれに由来する6大義務(正義の義務,相互尊重の義務,相互扶助の義務,礼譲の義務,フェアプレイの義務,そして,他者に対し損害や危害や不条理な苦痛を与えない義務,または遵法の義務)およびその意義について論述し,5.以降で順次,次のような6大義務の詳細な説明を与えている。5.正義の義務6.相互尊重の義務7.相互扶助の義務8.礼譲の義務9.フェアプレイの義務10.他に損害・危害・不条理な苦痛を与えない義務(遵法の義務)以上である。ただし,5〜9を積極的な義務,また,10を消極的な義務と称している。こうした「義務」の概念は,人間理性の求める「自然的な義務」の概念とされ,すでに述べた「責任」の概念と違って,公正な社会を前提としないし,そこから利益を得ているという条件も,与えられる機会を自分の利得に活用するという条件も充たす必要のない概念であるということに特徴がある点を指摘し,その理由についても考察を加えた。こうした責任と義務の定義によって,公正な社会における個人の責任と義務がはっきりと理解され,より正しい社会の確立と維持に寄与するに違いないと考える。
著者
菊池 智子 大高 明史
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.129-138, 2014-11-19 (Released:2016-05-20)
参考文献数
24
被引用文献数
1

ワカサギ杯頭条虫Proteocephalus tetrastomus (条虫綱変頭目杯頭条虫科)の分布と生活史を明らかにするために,日本各地のワカサギで寄生状況を調査するとともに,青森県小川原湖のワカサギで条虫の寄生率と発育ステージの季節変化を調べた。ワカサギ杯頭条虫は,調査した34の湖沼のうち19湖沼のワカサギで確認された。条虫の分布には地理的な偏りは見られず,湖沼の塩分特性や栄養状態との関連性もなかった。条虫の寄生数とワカサギの肥満度との間には,どの湖沼でも有意な負の関係は見られなかった。 小川原湖のワカサギに見られるワカサギ杯頭条虫は,春から夏に向かって体長が増加するとともに成熟が進行した。感染可能な幼虫を持った成熟個体は夏期を中心にして6月から12月まで見られた。一方,小型の若虫は7月に現れ,その割合は秋から冬に高まった。こうした季節変化から,ワカサギ杯頭条虫の生活史は一年を基本とし,夏から秋に世代交代が起こると推測された。

12 0 0 0 歩兵内務書

著者
陸軍省 [編]
出版者
[陸軍省]
巻号頁・発行日
1875
著者
福田 実奈 畑 敏道 小松 さくら 青山 謙二郎
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.28-34, 2014-09-30 (Released:2014-11-26)
参考文献数
14

We investigated effects of coffee cue presentation on desire for coffee and cognitive performance. The 2 (cue and no-cue)×2 (instruction: reward and no-reward) between-subjects design was used. The smell and sight of coffee were presented in the cue condition, but not in the no-cue condition. The participants in the reward condition were instructed that they would obtain coffee after the behavioral task and the amount of coffee depended on their performance of the task. The participants in the no-reward condition were instructed to perform as many tasks as possible. The dependent variable was performance of the behavioral task and subjective desire for coffee. In the task, the participants were asked to find vowels among letters printed on task sheets. As a result, the participants in the cue condition found more vowels than those in the no-cue condition, in both instruction conditions. There was no difference in subjective rating between any conditions. These results suggest that the coffee cue may enhance cognitive performance rather than desire for coffee.
著者
三田村 秀雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.1284-1290, 2011 (Released:2013-01-19)
参考文献数
9
著者
大西 公平 斉藤 佑貴 福島 聡 松永 卓也 野崎 貴裕
出版者
日本AEM学会
雑誌
日本AEM学会誌 (ISSN:09194452)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.9-16, 2017 (Released:2017-05-24)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

Real haptics has been a unsolved problem since its starting in 1940's. After many R&Ds including the early works in US and other countries, the bilateral control designed in acceleration space solves this issue. The quality of the touching and tactile sensation is heavily depends on transperancy between master side and slave side. The robust motion control which is equal to the acceleration control gives high transperancy. The real haptics is now key concept in 21st century where QOL should be the basis of the society. The various examples are also shown.