著者
平野 亮太 田中 譲
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.1684-1693, 2001-06-15

部品の再利用と,組立て方式によるアプリケーション開発では,アプリケーションの仕様をいくつかの部分的な仕様に分解し,個々の部分的仕様を満たす部品を合成部品に組み立てることで,目的のアプリケーションを構築することができる.こうしたアプリケーション開発を支援するには,分解,再合成可能なアプリケーションの仕様記述法が必要である.また,大量のソフトウェア部品を管理し,仕様の類似性に基づく部品検索を実現する必要がある.本論では,著者らが提案した部品の抽象的な仕様記述を,部品の型記述として利用した類似部品検索の実現方式について述べる.部品の管理手法は,部品の型記述における半順序関係の定義を行い,その関係を表す一般化階層構造(束)を利用するものを提案する.また,ハッシュ法を用いることで,部品検索の高速化を図る.In our previous research, we introduced a component--pattern description method, based on IntelligentPad architecture, to describe the interface and the abstract behavior of each component. In this paper, we apply component--pattern descriptions to the search for desired components within a component library. The characteristics of component--pattern description method are the establishment of methods for composition and decomposition of patterns, and the use of the same form both for individual components and composites. Consequently, we can decompose a pattern into subpatterns, and later assemble the components that match those subpatterns to form composite results. For managing patterns, we propose a lattice structure representing the partial order over the patterns. We also introduce a coding method for pattern descriptions, and a hashing method for improving the efficiency of pattern search.
著者
中川 靖枝 岡松 洋 藤井 康弘
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.95-101, 1990
被引用文献数
8 17

ポリデキストロースR (PD) は人の消化酵素により加水分解を受けることの少ない水溶性多糖の一種である。PDの生理作用を調べる目的で青年期女性ボランティア22名にPDを5~10g摂取させ, 排便回数ならびに便通感に及ぼす影響を検討した。試験はラテン方格による交差試験法に準じて実施した。被験者のPD摂取を容易にするためPDは飲料の形態とし, PDをそれぞれ0, 5, 7, 10g/100ml含む飲料を調製した。被験者は同一種類の飲料を毎日1本ずつ5日間連続摂取し, それを4種類の飲料について繰返し行った。試験期間を通し, PD摂取量を除く食物繊維摂取量は8.0gから8.8gまでの値であり, 各試験期間の摂取量に差は認められなかった。PD摂取量の増加に伴い便が柔らかくなり, PD 7gあるいは10g摂取期間時の便の硬度はPD無摂取時に比べ危険率5%で有意に高値を示した。便の硬度はPD摂取量と有意に負の相関 (r=-0.387) を示した。しかし, 便の硬度以外の便通感と排便回数には影響を与えなかった。以上の結果ならびに考察はPDが排便に対する食物繊維様の作用を有していることを示唆した。
著者
篠田 英朗
出版者
広島大学
雑誌
広島平和科学 (ISSN:03863565)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.1-24, 2001

The Advisory Opinion of the International Court of Justice on the legality ofthe use and the threat of nuclear weapons on July 8, 1996, was a historic achievement inthe history of debates on the legality of nuclear weapons. It drew great attention ofacademics, governments, and civil society organizations and is now recognized as animportant milestone for those who are interested in the issue of nuclear weapons.However, this does not mean that the Opinion concluded the debate on the legality ofnuclear weapons. Rather, it stimulated further discussions and created new problems onthe issue of the legality of nuclear weapons. This article is intended to examine theOpinion in order to identify the polemics that concern the very normative framework ofcurrent international society. The main focal point is the jus cogens character ofinternational humanitarian law, which the Court avoided. In so doing, this articleidentifies the confusion in the Opinion and among the Judges about the relationshipbetween jus in bello and jus ad bellum applied to the use and the threat of nuclearweapons. The article also argues that the notorious concept of "an extreme circumstanceof self-defence, in which the very survival of a State would be at stake" was anunfortunate result of sterile understanding of the relationship between law and politics.
著者
大籔 貴志 浅野 晃
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SIS, スマートインフォメディアシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.203, pp.29-33, 2009-09-17
被引用文献数
1

道端で草花を見つけた時,その草花が何であるかを調べる場合には,専門家に聞く,もしくは植物図鑑で調べる等といった方法しか存在しない.また,Web上の画像検索システムにより,花の名前から画像を見つけ出すことは可能であるが,画像からその花の名前を特定することは不可能である.本研究は,この機能を類似画像検索によって提供し,画像をキーとする植物図鑑システムを構築することを目的としている.画像処理によって画像から得られる様々な特徴量の中でも,特に花の形状は,撮影条件で大きく変わるので一定の特徴量を抽出することは難しく,既存の研究においては花弁に対して真正面から撮ることを原則とするなどの制限が必要であった.そこで,本研究では様々な撮影条件に対して適応可能なシステムを作ることを目指し,形状の情報を用いず,花画像の類似度を,花弁部の抽出と色空間の変換,花弁の色相分布の相関演算によって求めることとする.基礎実験では,行ったすべての検索のうち,キーとした花が検索結果に入る割合を求め,それを検索適合率とした.データベースに登録している花画像は,ディジタルカメラによって撮影されたものであり,キーとして入力したのは,登録されている花と同種の花を携帯電話で撮影したものである.実験を行った結果,検索適合率は72%となり,本手法による画像検索の有効性を示すことができた.
著者
増原 英彦 松岡 聡 米澤 明憲
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. PRO, [プログラミング]
巻号頁・発行日
vol.95, no.82, pp.65-72, 1995-08-24

並列アプリケーションのための機能拡張や最適化を行う手段として、自己反映計算によるメタレベルプログラミングが有効であることが認められつつあるが、実際のアプリケーションに応用した場合の有効性は、メタアーキテクチャの設計に大きく左右される。現在我々は、並列オブジェクト指向言語ABCL/fのメタアーキテクチャを設計している。特徴は、メタインタプリタ・メタオブジェクトによる拡張、annotationによるメタレベルへの指示、継承によるメタプログラムの再利用などである。本論文では、いくつかの並列プログラムにおける機能拡張の例を挙げ、それらがどのように記述されるかを検討することで、メタアーキテクチャの有効性を確かめる。
著者
川浦 淳一 鈴木 陽一 浅野 太 曽根 敏夫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.756-766, 1989-10-01
被引用文献数
30

本論文では、ヘッドホン再生によってラウドスピーカ再生時の音場を模擬する手法について述べる。ヘッドホン再生条件と、ラウドスピーカ再生条件の比較から、頭部が静止している状態の静的な頭部伝達関数と、聴取者が頭部を動かすことによって生じる頭部伝達関数の動的な変化の2点について、ディジタル信号処理などの手法により補償を行った。静的な頭部伝達だけの補償によって、ヘッドホン再生によっても、頭外の水平面内任意方向への音像定位が実現できたが、正面付近のラウドスピーカを模擬した場合には前後の誤判定が増加する、頭内定位が起き易いなどの問題が生じた。静的な頭部伝達関数に加えて、伝達関数の動的な変化を模擬すると、前後の誤判定が減少し、頭内定位も減少するなど、より自然な音像定位が実現された。また、頭部回転に伴う動的な音源位置情報は、静的な伝達関数からの音源位置情報に比べて、少なくとも同程度の重みを持つものであることが示唆された。
著者
平野 勝義 稲垣 直樹 藤井 勝之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.183, pp.115-120, 2009-08-27
被引用文献数
1

近年,携帯情報端末機器を持ち運び,いつでもどこでも情報のやりとりが行われるユビキタス社会が進捗している.将来電子機器は小型化,軽量化されていき,小型のコンピュータを身につけられると予想される.その一例として,On-body channel伝送があり,電極のついたウェアラブルデバイスの研究が盛んに行われている.しかし,人体通信の伝送メカニズムにはまだ不明な点が多く,人体の電気的特性を考慮した最適なデバイス設計はされていない.本稿では,On-Body Channel伝送に特化したデバイス設計の指針を示す.電極の入力インピーダンスは人体を抵抗体とみなした時の電極接地抵抗により説明できることがわかった.
著者
島崎 仁司 秋山 正博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MW, マイクロ波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.210, pp.37-42, 2009-09-18

金属を含む糸を使って織られた導電性織物のマイクロ波帯域における表面抵抗を測定し,織り方などの抵抗値への影響について考察している.導電糸は金属の細線あるいは金属コーティングした糸を用いたものではなく,装飾用に伝統的な製法に従って作られたもので,服として身体装着することのできる電子機器の材質として使用することが期待てきる.測定にはマイクロストリップ線路共振器を用い,銅箔ストリップと織物ストリップのQ値を比較して,織物を導電性シートと考えた場合の表面抵抗を算出している.金属種として銅/アルミ,織り方として綾織/平織,さらに織る際の糸の束ね方および密度を変えていくつかのサンプルを用意し,それらの測定値を比較・検討している.
著者
高橋 一裕 長谷川 光司 阿山 みよし 春日 正男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎
巻号頁・発行日
vol.99, no.384, pp.7-10, 1999-10-21

マルチメディア技術の発展によって,迫力のある映像だけでなくより臨場感のある音場再生技術が望まれているが,これを実現しようとするとき,映像が音像定位に与える影響は無視できない.本研究では,視覚情報が音像定位に与える影響について実験的に検討する.被験者の正面より左右30度ずつに配置された2つのスピーカから被験者の両耳までの伝達関数をそれぞれ測定し,バイノーラルな音場再生を実現するための逆フィルタを求めた.これにより作成したバイノーラル音像と実音源による音像をそれぞれ用い,半円形のスクリーン上の様々な位置の映像を組み合わせて被験者に提示し,音像定位を測定した.
著者
落合 仁司
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.555-579, 2007-12-30

宗教の根本的な対象である神あるいは仏は伝統的に無限なるものと捉えられて来た。この神あるいは仏の無限を数学的な集合論における無限と捉え直すことによる帰結を解析する、それが宗教解析である。宗教解析において清沢満之の宗教哲学は避けて通れない。清沢は神あるいは仏を無限、われわれ人間を有限と捉えることにより、自力と他力の宗教の差異を鮮やかに浮び上がらせた。本論は清沢の無限、自力、他力等の概念を再構成し、それらを集合論における超限順序数、極限順序数、有限順序数の補集合等によって表現し、その帰結を解析する。結果として神あるいは仏の完備性(completeness)及び自力と他力の等濃性(equipotency)が導かれる。