著者
島田 裕巳
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.293-316, 2008

近代の社会に入って、新宗教が登場して以降、そうした教団は、さまざまな角度から批判を受けてきた。この論文では、新宗教の先駆的な形態である天理教からはじめて、戦後に巨大教団に発展した創価学会、そして無差別テロを実行するまでにいたったオウム真理教をとりあげ、それぞれの教団がどのような形で批判を受けてきたのかを見ていく。天理教の場合には、神懸かりする教祖を盲信する淫祠邪教の集団として批判され、批判の主体はメディアと既成教団だった。創価学会に対しては、最初既成仏教教団が批判を展開したが、政界進出後は左翼の政治勢力からも批判を受け、言論出版妨害事件以降になると、メディアが創価学会批判の中心になった。オウム真理教に対しては、最初からメディアが批判的で、一時は好意的に扱われた時期もあった。近年では、オウム真理教の場合に見られるように、メディアが新宗教批判の主体で、そこには社会の新宗教観が反映されている。
著者
小林 卓 大井 三代子
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子短期大学紀要 (ISSN:13477196)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.121-142, 2013-03-19

「戦後の図書館学教育と女性司書」として、鬼頭當子(きとう まさこ)への聞き取りによるオーラル・ヒストリーの研究を行った。鬼頭が、実践女子専門学校から、実践女子大学図書館、慶應義塾大学図書館学科、国際基督教大学図書館とすすみ、館長になるプロセスをおいながら、「結婚、出産と仕事」、「全面開架とサイン」「UTLAS、大学教育」などを聞き取ることにより、鬼頭の歩んできた道がライブラリアン一筋の生き方であると同時に、戦後女性の生き方であることを浮かび上がらせた。
著者
中下 留美子 鈴木 彌生子 林 秀剛 泉山 茂之 中川 恒祐 八代田 千鶴 淺野 玄 鈴木 正嗣
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.43-48, 2010-06-30
参考文献数
20

2009年9月19日,乗鞍岳の畳平(岐阜県高山市)で発生したツキノワグマ(<i>Ursus thibetanus</i>)による人身事故について,加害個体の炭素および窒素安定同位体比による食性解析を行った.体毛の炭素・窒素安定同位体比は,他の北アルプスの自然個体と同様の値を示した.さらに,体毛の成長過程に沿って切り分けて分析を行った結果についても,過去2年間の食性履歴において残飯に依存した形跡は見られなかった.当該個体は,観光客や食堂から出る残飯等に餌付いた可能性が疑われていたが,そのような経歴の無い,高山帯を生息圏の一部として利用する個体である可能性が高いことが明らかとなった.<br>
著者
杉山 和明
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.239-259, 2008-10-28

本稿の課題は,英語圏人文地理学における農村性と若者に関する研究の枠組みを援用しつつ,浜松都市圏東部に暮らす高校生を調査参加者として,かれらが日頃訪れるさまざまな場所についての語りを取り上げ,若者集団の主体的な行動を明らかにするとともに,それらの空間に対していかなる意味づけを行い,どのような場所感覚を抱くのかを考察することである。注目すべき調査結果として挙げられるのは以下の3点である。第一に,都市性/農村性の相対性の意識が認められ,都市性と農村性の対比が日常の場所感覚のなかで常に関係づけられていること,第二に,こうした都市性/農村性の意識をもたらす背景にあるのは,かれらの暮らす近隣住区に均質化された消費空間の進出が続いており,かれらにとって肯定的な意味が付与された場所となっていること,第三に,空間行動では男子高校生に比べて女子高校生の移動性が優位であり,学年による行動領域の階層が認められたことである。
著者
松永 伸太朗
出版者
日本労働社会学会
雑誌
労働社会学研究 (ISSN:13457357)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-25, 2016

<p>The aim of this paper is to reveal why animators working in Japan don't regard their low-paid and long-time work as problems. Previous studies haven't theoretically considered animators'labor process. Instead, this paper revealed relations between their occupational norms and their logic of acceptance of bad work conditions with ethnomethodological analysis of interviews.</p><p>The conclusion of this paper is as follows: Firstly, there are two types of norms in animators'workplace. One is"artisan"norm, which means that animators should follow instructions of upstream workers, the other is"creator"norm, which means that animators should show their originality. Artisan norm is superior to creator norm. Secondly, understanding and using skillfully these norms is a kind of requirement to be a competent animator. Thirdly, both norms have a common feature, which means that animators should have high-level techniques. Sustained by this common feature, animators compete for higher skills. However, their competition has been intensified because there are many cases that high skill workers can't earn appropriate wages by some institutional factors. As a result, animators who earn wages to manage to make their living become relative winners. However low-paid their labors are, animators who can make their living are winners, and so they don't tend to regard their work condition as problems.</p>
著者
岩坪 健
出版者
同志社大学
雑誌
社会科学 (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.1-17, 2014-02

西洋音楽に使われる楽器とジェンダーに関する研究は、すでに欧米において進められていて、男性/女性向けの楽器や、男性/女性らしい楽器に分かれる。平安時代にもジェンダーの概念があり(千野香織氏の説)、源氏物語に描かれた絃楽器にもジェンダーが見られるか考察する。当時の絃楽器には和琴・箏の琴・琵琶・琴(きん)の琴(こと)の四種類があり、このうち和琴だけが日本原産で、ほかの三種は外来である。千野氏の論によると、中国は男性性-日本は女性性に分けられるので、日本産の和琴は女性性の楽器と仮定できる。また、和琴は東琴(あづまごと)とも呼ばれ、東国は都より下に見なされていた。よって和琴には、女性性と下位の要素が共存している。これは上位の中国は男性性、下位の日本は女性性と説く千野説にも合う。次に箏の琴は、源氏物語では「あやしう昔より箏は女なん弾きとる物なりけり。」(明石の巻)とあり、女性向きの楽器と捉えられていた。逆に琵琶は、「琵琶こそ、女のしたるに憎きやうなれど、」(少女の巻)により、女性には似合わない、と見なされていた。最後に琴(きん)の琴(こと)は、中国では君子の嗜む楽器として尊ばれていた。以上により、琴(きん)の琴(こと)と琵琶は男性性、箏の琴と和琴は女性性の楽器と定義され、それにより物語の新たな読みが拓かれるのである。
著者
山本 康司
出版者
神戸大学
巻号頁・発行日
2019
著者
小川 剛生
出版者
慶應義塾大学国文学研究室
雑誌
三田國文 (ISSN:02879204)
巻号頁・発行日
no.32, pp.1-17, 2000-09

一 はじめに二 成立年代考証のために三 「ついのまうけの君」四 「いまの尊氏」五 元弘三年以後の事実の投影六 昭慶門院御所をめぐる記述から七 『増鏡』の作者像八 両統迭立下における廷臣の立場九 鎌倉後期的体制の終焉一〇 おわりに