著者
加古 哲也 持田 耕平 郷原 優 中務 明 小林 伸雄
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.467-472, 2022 (Released:2022-12-31)
参考文献数
12

本邦固有の有用な遺伝資源である,トウテイラン(オオバコ科クワガタソウ属)の夏秋期出荷の鉢物生産方法の開発を目的に,摘心時期,摘心節位が開花時期ならびに生育に及ぼす影響について検討した.鉢物用 ‘NG-1’ を用いた実験の結果,摘心時期が遅い区ほど開花は遅くなった.一方,摘心時期が遅くなると到花までの積算温度は少なくなった.出荷期の生育は,摘心時期が遅くなると開花節位は低下し開花枝長は短くなった.高い節位で摘心を行った場合,開花は早く,到花までの積算温度は少なくなり,開花節位は低下し,開花枝長は短くなった.開花枝は,摘心時期や摘心節位にかかわらず増加した.一方,6月末の摘心,また,低節位での摘心では不開花枝も増加した.これらのことから,トウテイランの鉢物利用において,摘心時期ならびに摘心節位により鉢物生産における開花期や生育の制御が可能であることが明らかとなった.なお,5月末前後に基部から2~3節の直上で摘心することで敬老の日を目標とした9月上旬の鉢花出荷が可能であると考えられた.
著者
椿 信一 篠田 光江
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.11-18, 2023 (Released:2023-03-31)
参考文献数
16

我が国に産する辛味ダイコン11品種中10品種は,一般的な青首ダイコンと比較して,搾汁液中のイソチオシアネート含量が多く,強い辛味が感じられた.葉片の形状や,根形,根色は変化に富み,一定の傾向は認められなかったが,小型で水分含量が少なく,硬度,Brix値が高く,スクロース含量が高いといった諸特性から,いずれの辛味ダイコンも北支系ダイコンに属すると考えられた.供試品種の搾汁液当たりのイソチオシアネート含量は ‘京都薬味’ が最も多く,ハマダイコン系3品種も多い値を示した.乾物率とイソチオシアネート含量の間には強い正の相関が認められ,水分含量が少ない品種ほどイソチオシアネート含量が多い傾向が見られた.糖組成は品種間差が大きく,‘松館しぼり’ 各系統とハマダイコン系が糖組成におけるスクロースの割合が高かった.糖組成の違いは品種の類縁関係を示す指標として活用できる可能性が示唆された.

1 0 0 0 OA 雑録

出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.10, no.12, pp.1280-1308, 1907-12-05 (Released:2011-09-02)
著者
安井 早紀 木村 優弥 川村 仁 小松 一
出版者
青森大学付属総合研究所
雑誌
青森大学付属総合研究所紀要 (ISSN:24361585)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.11-19, 2022-09-30 (Released:2022-12-28)
参考文献数
10

青森大学薬学部発のブランディング企画第1弾として,漢方・生薬学の教員による市民講座を開講し,薬学部ならではのテーマにより,広く県民の方々へ本学の特色を打ち出し,地域に根ざす青森大学の魅力を認識させることが,ブランディング確立につながるものと考え,薬食同源に基づいた薬膳料理教室を企画した.日常的に利用されている食材を使い,薬膳料理として試食体験をしてもらい,身近な食材の思わぬ効用を知ってもらい,健康な身体づくりの一助にすることを目的とし,秋から冬にかけての病気あるいは病気の予防に対応した薬膳教室を3回シリーズで行った.
著者
木下 俊一郎 伊形 尚久
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.8, pp.542-547, 2019-08-05 (Released:2020-01-31)
参考文献数
10

磁力線は,ひも状の実体である――この主張にすぐさま賛同してくれる読者は,どれくらいいるだろうか.だがこの描像は,電磁場によってブラックホールからエネルギーを引き抜く「Blandford–Znajek機構」の本質をきわめて自然に説明する.回転している物体に絡んだひもは,物体にトルクをおよぼしてその回転にブレーキをかける.この結果,物体は角運動量と回転エネルギーを失い,その角運動量とエネルギーはひもの張力を介して物体から取りだされる.物体をブラックホールに,ひもを磁力線に読み替えたものが,Blandford–Znajek機構の原理である.宇宙には,活動銀河核やガンマ線バーストといった,ほぼ光速に近い速度でプラズマガスを噴き出す,いわゆる相対論的ジェットを伴った天体現象が様々なスケールで存在する.このような天体の多くは中心にブラックホールをもつことが示唆されるため,そのブラックホールの回転エネルギーは相対論的ジェットの莫大なエネルギーの供給源となり得る.Blandford–Znajek機構は,非常に強い電磁場中を伝導性の高いプラズマが満たしている,電磁場優勢プラズマの環境下にあるブラックホール周辺ではたらく.ブラックホールの回転エネルギーから,高効率で強力なエネルギー流束を達成できるため,相対論的ジェットの駆動メカニズムとして盛んに研究されてきた.近年では,一般相対論的磁気流体力学に基づく数値シミュレーションも可能となり,エネルギー流束の生成も確認されている.ところが,Blandford–Znajek機構の物理的描像に対する理論的な説明は,研究者によって見解・解釈が異なっており,いくぶん混乱や誤解が生じている(一部には,この機構が因果的な問題をはらむという批判さえある).この系でとりあつかう対象には,電磁場・電流・プラズマの運動などに加えて,ブラックホールの強重力による顕著な一般相対論的効果もある.結果,電場や磁場などの様々な物理量が,場所や座標系に応じて相対的にその意味や解釈を変えてしまう.この点が物理的描像を見えづらくしている一端であろう.ここでは従来とは異なるアプローチとして,電磁気学における磁力線と,南部・後藤ストリングとの対応に着目する.すなわち,冒頭の主張である.磁力線は,接線方向に縮もうとする磁気張力と垂直方向に反発しようとする磁気圧をもつ.とくに張力の大きさは,南部・後藤ストリングと同じようにエネルギー密度と等しい.このような力学的性質は,磁力線を主体とする力学系として,ストリングの場合と類似した形に定式化される.いうなれば,磁力線は座標系の選び方などによらない“変わらない”物理的概念なのである.以上の観点に立つと,Blandford–Znajek機構で標準的な定常・軸対称系の磁力線は,ブラックホールまわりを一様角速度で剛体回転している南部・後藤ストリングと明白に対応づけされる.さらに特筆すべきは,エネルギー引き抜きの指標である単位張力あたりのエネルギー・角運動量流束が,どちらの系もエルゴ領域内の全く同じ場所・同じ代数関係式で決定されることである.この結果は,磁力線とストリングによる両者のエネルギー引き抜き機構が,運動方程式を解かずとも決まる局所的な同じキネマティクス,つまり張力により支配されていることを意味している.
著者
泉 恭博 泉 文一郎
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.11, no.11, pp.1265-1271, 2020-11-20 (Released:2020-11-20)
参考文献数
5

広島方式運動器検診の検査項目に前屈制限を追加している.受診したSLR<45度の前屈制限例63例(年齢は平均11.8歳,性別は女子29名,男子34名)で,頚椎,胸椎前後弯角を測定した.前屈制限児の頚椎部は5°以上の後弯は35例(56%)に認めた.学校検診では頸椎後弯変形の簡便な指標はないので,放置されている.運動器検診で抽出できる前屈制限者の全脊柱二方向評価ができれば頚部後弯変形の指摘が可能になる.
著者
石倉 瑞恵
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学研究紀要 = Bulletin of Ishikawa Prefectural University (ISSN:24347167)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.95-103, 2022

社会主義はジェンダーを克服し、女性の解放を導いたのか。本稿では、旧チェコスロバキアにおける労働者としての女性像の変容に着目し、社会主義期の女性解放の本質を検証した。社会主義は、伝統的な家制度を解体して女性の雇用を促進させたが、その施策のすべてが女性解放ではなく、健全な社会主義国家建設を意図していたため、働く女性の増加に伴い少子傾向が顕在化すると、施策は女性解放から後退し、結婚、家族、子育てこそが社会主義の課題であると社会主義の本質を再解釈した。女性像は、社会主義初期のイメージである国営農場に働く生産労働者から変容した。社会主義後期における女性像は、労働力の主力であるブルーカラーと相反する。すなわち、家事・育児を担い、男性においては評価されない優美さを持ち合わせ、男性の職業領域を犯すことがない労働者、前社会主義的な女性像であり、男性にとっての好ましい他者であることが明らかになった。
著者
大塚 雄作
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.65-78, 2013-05-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本論では,日本高等教育学会と大学教育学会を比較することを通して,両学会の研究連携のあり方について展望した.高等教育を研究対象とするマクロなアプローチを中心とする日本高等教育学会に対して,大学教育学会は,授業担当者が自らの授業の改善のために,自らの授業を研究対象とするミクロなアプローチを中心としてきた.しかし,この10~15年の間に,両学会に同時に属する会員の割合も多くなり,両者の境界は必ずしも明確ではなくなってきた.教育実践は,それぞれのローカリティにおける「個別性」が問われるが,その「個別性」の表現に,教育の文脈や背景,学生の多様性の記述などとともに,社会・文化・歴史・制度といった「普遍性」ある分類が的確に含まれる必要がある.そのような形で,実践と理論の橋渡しを試みていくことが,今後,日本高等教育学会と大学教育学会の両学会に求められていくであろう.
著者
松澤 繁光
出版者
The Surface Finishing Society of Japan
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.788-792, 1991-08-01 (Released:2009-10-30)
参考文献数
25
著者
福江 良純
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.11-20, 2008 (Released:2010-08-25)
参考文献数
17

彫刻の古典的模刻技法に「星取り法」と呼ばれる方法がある.古代ギリシャに原理的な起源を持ち, 複雑な人物像を, 大理石から精確に彫り出すために発達した, 機械的転写の技法である.だが, 彫刻とは単純に外形に還元できるものではなく, 転写の過程には形以外の質的なものが彫り込まれなくてはならない.彫刻家の創意はここに働き, この技法を用いながらも, 複製には尽くされない同形のオリジナル作品を作り出すことが出来る.したがって, この技法による造形的な現象の解明は, 芸術作品の複製とオリジナルという問題の構造を明らかにする手掛かりとなる.その際有効なのが, 一切の機械的手法に依らない「直彫り法」との対比であり, 感覚と形態の問に介在するラインの感覚の考察である.「星取り法」による形状の固定作用を図の固定的性格から説明し, 作品のオリジナル性については, 「直彫り法」に見られるラインの感覚のダイナミズムに根拠を求めてみた.また本論末尾では, 星取り法を用いた創造的な取組の実例として, ロダンに言及する.
著者
南雲 道彦
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.380-389, 2006 (Released:2007-06-28)
参考文献数
39
被引用文献数
6 7

液相からの水素侵入に関する基本的な電極反応を概説した. 水素の表面被覆率や吸収水素量を含めて, 水素侵入速度を表すパラメーターを決めるいくつかのモデルを紹介した. 腐食過程では, とくに水素侵入に及ぼす表面皮膜の影響を電極/電解液界面の電気二重層の構造と水素のアンダーポテンシャル析出から述べた.
著者
佐藤 毅
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.85-88, 1973-12-31 (Released:2009-11-11)