著者
西原 志保
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.22-33, 2009-09-10 (Released:2017-08-01)

女三宮は、研究史においてその存在が六条院世界や物語のありようを変容させたものの内面を語らないと言われるが、『源氏物語』中に心内語や心情に添った描写、会話文、和歌は少なくない。それゆえそれらを女三宮のことばとして総合的に捉え、結婚当初、柏木事件後、出家後の変容を考察する。「身」、「我」など自己をあらわす語と、対置される語である「心」「世」「人」に着目し、柏木事件後にあらわれる「身」「我」という意識が、出家後「心」は描かれるものの消えることを述べる。
著者
門間 陽樹 川上 諒子 山田 綾 澤田 亨
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.129-142, 2021-09-30 (Released:2022-07-12)
参考文献数
88

身体活動が健康の維持向上に寄与することは広く受け入れられており,国内外のガイドラインで身体活動の促進が推奨されている。一方,近年では,海外のガイドラインにおいて有酸素性の身体活動だけではなく筋力トレーニングの実施についても言及されるようになってきており,週2回以上実施することが推奨されている。このように,筋力トレーニングに関する研究は,スポーツ科学やトレーニング分野だけではなく公衆衛生分野にも広がり,健康アウトカムに対する筋力トレーニングの影響をテーマとした研究を中心に筋力トレーニングに関する疫学研究が報告されるようになってきている。そこで本レビューでは,新たな運動疫学研究の分野である筋力トレーニングに関する疫学研究について概説する。最初に,筋力トレーニングに関する用語の定義と整理を行う。次に,筋力トレーニングに関する歴史を紹介する。その後,死亡や疾病の罹患をアウトカムとした筋力トレーニングの研究を中心に解説し,最後に,筋力トレーニングの実施割合および関連要因について述べる。本レビューで紹介する研究の多くは海外からの報告である。日本で実施されている筋力トレーニングに関する疫学研究は,主に実施者の割合に関するものであり,特に,健康リスクとの関連に関する疫学研究は非常に限られている。今後,日本人を対象とした研究が数多く報告されることが期待される。
著者
川人 潤子 岡久 玲子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PD-111, 2021 (Released:2022-03-30)

問題:本研究は,テキストデータから,体型による成人女性の自己認知の違いを比較検討する。方法:282名の成人女性(平均年齢52.97歳)を対象に調査した。調査項目は,年齢,身長,体重,自己認知を測定する特性語分類課題であった。結果:やせ(BMI≤18.5)32名,標準体型(18.5≤BMI<25.0)199名,肥満(25.0≤BMI)51名に分類し,特性語分類課題の記述を比較した。“協力的な”は,やせ43.7 %,標準64.8 %,肥満58.8 %であり,“陽気な”は,やせ43.7 %,標準58.2 %,肥満56.8 %と,標準と肥満で多い。一方で“心配性の”は,やせ50.0 %,標準40.2 %,肥満50.9 %とやせや肥満に多い。また,“社交的な”は,やせ25.0 %,標準37.1 %,肥満50.9 %と肥満に多かった。考察:Blaine & Johnson(2005)と同様,肥満の者は社交的な自己認知が認められたが,やせと肥満で心配性の自己認知が高かった。アジア人には極端なBMI値の者は少ないが,今後ネガティブな自己認知と食行動との関連の精査が必要であろう。
著者
深田 和浩 網本 和 藤野 雄次
出版者
公益社団法人 埼玉県理学療法士会
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.11-16, 2021 (Released:2021-04-09)
参考文献数
22

ヒトはあらゆる環境下において身体を垂直に保つことが可能であるが,脳卒中を発症すると安定した床面であっても姿勢を垂直に維持することが難しい症例も存在する。特に脳卒中重症例では,垂直性の問題により,基本動作練習や歩行練習が思うように進まないことを経験する。この垂直性障害については不明な点も多いが,近年では垂直性に関する報告も増えつつある。本項では,垂直性障害のレビューや評価と治療について概説したい。

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出版者
音楽之友社
巻号頁・発行日
1973
著者
永井 勇輝 山本 和清 宮﨑 渉 鈴木 一帆 友枝 萌子 阿久津 研介
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.33(2019年度 環境情報科学研究発表大会)
巻号頁・発行日
pp.193-198, 2019-11-25 (Released:2019-11-22)
参考文献数
3

近年,我が国に訪れる外国人観光客が年々増加傾向にある。したがって,大規模な災害が頻発している我が国では,地震・津波等の経験にばらつきがあるとされる外国人観光客への対策は急務であると考えられる。本研究では,観光施設等と外国人観光客が求めている避難誘導等の差異を抽出し,今後の外国人観光客の避難誘導の一助となる知見を得ることを目的とした。その結果,観光施設等では「人による避難誘導」「標識等サイン整備」を行うことが重要であり,さらに情報提供手段としては“Safety tips”の普及を行うことで,外国人観光客の求める情報提供・避難誘導につながると考えられる。
著者
堀口 万吉
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.231-244, 1983-11-30 (Released:2009-08-21)
参考文献数
15
被引用文献数
4 4

The Juno Peaty Site is situated on the Shibakawa lowland in the eastern part of Omiya City, Saitama Prefecture, and was investigated on the field from 1977 to 1981. The investigation was conducted to examine the natural environment of this site by the cooporation of archaeologist, geologist and many biologists. As the results, archaeological remains were found abundantly and useful observations were carried out, and many samples for scientific analysis were obtained to reconstruct the Juno's natural environment.This paper deals with a summary of the Juno Peaty Site with mainly geological evidences and several points of the problem to reconstruct of natural environment of this site. Especially, height and age of the highest sea level on the Holocene Transgression (Jomon Transgression) and palaeovegetation in the Jomon Age are described.Rising of sea level of Jomon Transgression in this site stagnated temporarily in the Kurohama stage (ca. 5, 700y.B.P.) showh by Kurohama Sand Bed with wave cut platform and trace fossils at 1m height on recent sea level, and thereafter, more risen sea level reached ca. 3m height on recent sea level in Moroiso-a stage. This 3m height indicates a upper limit of marine deposit in the highest sea level stage. Therefore it is presumedthat the highest sea level of Jomon Transgression stay on 3m height or more in the Moroisoa stage (ca. 5, 300y.B.P.) of Early Jomon Age.On the palaeovegetation in Jomon Age it is thought generally that the laurel forest (Cyclobalanopsis) had covered on the Pacific coast of Japan from Early Jomon Age downward. In the site, however, it was found out that the deciduous broad-leaved forest (Lepidobalanus) was dominant during the Jomon Age. This aspect is in contrast with the viewpoint that the laurel forest covered on the area of the Pacific coast in Japan, and it is characteristic feature found over the central part of Kanto Plain.
著者
唐帆 健浩 兵頭 義浩 松村 優子 北川 洋子 田部 哲也 北原 哲
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.454-458, 2003-11-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

嚥下障害患者に対して、内視鏡を用いた嚥下機能検査と咽頭食道造影検査を実施し、誤嚥の検出精度に関して両者を比較し、内視鏡検査の信頼性を検討した。対象は、誤嚥を疑われて当科を受診した86例である。患者の原疾患は、脳血管障害30例、ALS7例、脳腫瘍術後7例などである。誤嚥に関して内視鏡検査と造影検査は高い連関性を示した。内視鏡検査にて誤嚥を認めたのは86例中40例であり、このうち造影検査でも誤嚥を認めたのは32例であった。造影検査での誤嚥検出を基準とすると、誤嚥に関する内視鏡検査の鋭敏度は74%、特異度は81%であった。両検査は、嚥下機能検査として相補するものであり、特に内視鏡検査は誤嚥のスクリーニングに有用と考える。
著者
内山 朋規 濱田 将光
出版者
日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
雑誌
現代ファイナンス (ISSN:24334464)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.31-54, 2007-03-31 (Released:2018-12-07)
参考文献数
28
被引用文献数
1

個別銘柄データを用いて,わが国の普通社債のクレジットスプレッド変化やリターンのクロスセクションにおける様々な特徴を実証する.結果として,クレジットリスクの低い社債では前月スプレッド変化や国債イールド変化といった割引率が社債スプレッド変化の銘柄間格差に重要な変数である一方,クレジットリスクの高い社債では株価リターンや株価ボラティリティが重要な変数であることを示す.また,クレジットリスクが高い社債ではスプレッド変化にモメンタム効果がある一方,クレジットリスクの低い社債ではスプレッド変化にリバーサル効果があること,さらに,社債リターンには株式市場とは逆のモメンタム効果が観察され,クレジットリスクの高い社債で顕著であることが分かる.また,クレジットリスクの高い社債では,株価が社債スプレッドや社債リターンに先行し,株式市場は社債市場よりも早く情報を価格に反映する傾向があることなども示す.

1 0 0 0 OA 舌骨症候群例

著者
里見 文男 西村 善彦 森 裕司 雲井 健雄
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.359-362, 1991-03-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
7
被引用文献数
5 3

A 21-year-old female complained that the right greater cornu of her hyoid bone often slid out and projected to the side of her neck and caused pain on speaking. The projecting tip of the cornu could be returned manually to the original position, and the pain was instantly relieved. A plain radiogram of the neck revealed that the right greater cornu of the hyoid bone was elongated and had a much wider curvature than normal. Good symptomatic relief was obtained with surgical extirpation of the elongated greater cornu. There are various clinical features in the hyoid bone syndrome, including this case. The authors add a review of the literature.
著者
安田 みどり 扇 萌華 斎木 まど香
出版者
西九州大学
雑誌
西九州大学健康福祉学部紀要 = Journal of Health and Nutrition Science in Nishikyushu University (ISSN:24348767)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-7, 2019-11-15

キクイモに含まれる水溶性多糖類のイヌリンに及ぼす加熱やpHの影響について調べた。キクイ モ乾燥粉末中のイヌリンは、1 60℃以上の焙煎によって減少することが分かった。これは、加熱によるイヌリンの分解とカラメル化反応によるものと考えられる。また、イヌリンは、強酸性では酸分解のために著しく減少することが明らかとなり、これは加熱温度が高く、加熱時間が長いほどより顕著であった。生キクイモからイヌリンの水への溶出は、40℃、1時間の抽出では約30%、95℃では10分でも約半分のイヌリンが水の方へ溶出することが分かった。以上のことから、キクイモ中のイヌリンは、高温での加熱、強酸性、長時間の水さらしにより減少することが分かった。
著者
山下 洋史
出版者
明治大学商学研究所
雑誌
明大商學論叢 (ISSN:03895955)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.139-148, 2009-03-20