著者
稲田 道彦
出版者
香川大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

この2年の研究期間に香川県西部の三豊郡詫間町・仁尾町・三野町・豊中町・高瀬町の一部・観音寺市の一部を調査地域に定め、全墓地を訪ねると共に特に両墓制墓地の崩壊過程を調査研究した。この地域で一般的であった土葬が火葬の導入により墓地制度の変更がうながされた。このことが墓地を含む人にとの生活空間にどのような影響を及ぼしたのかというのが、研究者の問題意識であった。両墓制は従前の習俗を維持するのが困難になっった。特に埋葬地の埋め墓は多様な形態を示している。このような墓地制度の変化は葬儀などの儀式に変化を及ぼし、ひいては人々の宗教的な考え方にまで変容のきっかけを与えていることがわかった。さらに人々の生活スタイルの近代化や合理的思考などという現代人のライフスタイルもこれら地域の墓地空間の変化に大きく影響を与えていることが聞き取り調査で明らかになった。これらの地域の墓地の変化と比較するために、京都市や名張市など各地の両墓制墓地の変化の状況を調査した。また都市的な墓地文化を知るため、各地の都市の墓地の変容過程も調査した。調査地域の墓地の変容は火葬の導入がきっかけであったが、死者の埋葬地、遺骨、石塔というモノにこだわる現代人の態度が根底にあった。死者供養も墓石を建てることや実際の墓参りという行動によって自己満足を得ている。死者供養が人々の心の問題であるとして片づけることはできなくなっている。もしそうなら多様な死者供養が有り得るのであるが、現在地方固有の文化が都市的な葬制墓制文化に統一されつつある。墓地利用も入り会い形式ではなく、個人に区画し管理することを望むなど個人主義の傾向が強くなっている。1991年12月に人文地理学会事務局で開かれた特別例会で『両墓制墓地の変容ー香川県西部に事例を中心にー』という発表をおこなった。この表発は今回の科学研究費による研究の成果の一つである。
著者
三井 さよ
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

特養ホームでの聞き取り調査、阪神・淡路大震災以後ボランティア活動を継続している団体での聞き取り調査、および知的障害者の支援団体における準参与観察と聞き取り調査を通して、生活上で他者の支援を必要とするという経験の内実について理論的に考察すると同時に、その中でもその人の生活をその人自身のものとしていくための手法について、それぞれにおかれた環境や状況に応じて存在することを確かめ、その理論化を試みた。
著者
丹羽 美苗
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

覚せい剤や麻薬による薬物依存は大きな社会問題であるが,治療法がほとんど確立されていないのが現状である.治療薬の開発が遅れている理由として,依存形成の鍵となるタンパクが明らかになっていないことが挙げられる.そこで,PCR-select cDNAサブストラクション法を用いて,薬物依存形成の鍵となる新規機能分子の探索を試みた.その結果,覚せい剤メタンフェタミンを連続投与されたマウス脳側坐核から新規機能分子`shati'を同定した.昨年度までに、shatiが,メタンフェタミン誘発自発運動量亢進および場所嗜好性の形成に対して抑制的に働くことを明らかにした.さらに,shatiがメタンフェタミンによって引き起こされる細胞外ドパミン量の増加およびドパミン再取り込み能低下を抑制することを示した.本年度は,メタンフェタミン依存形成段階においてshatiが関与していることを検討するに留まらず,薬物依存抑制因子として報告されているTNF-αとの関連についても明らかにした.PC12細胞へshati発現ベクターをトランスフェクションすると,コントロール細胞と比較して,shatiおよびTNF-αmRNAの発現量の増加,ドパミン再取り込み能の促進,メタンフェタミン誘発ドパミン再取り込み能低下の抑制が観察された.これらshatiの作用は,可溶性TNF受容体およびTNF-α抗体を前処置しTNF-αを中和することよって抑制されたことから,shatiはTNF-αを介してドパミン再取り込みを促進していると考えられる.今後,shatiの依存形成メカニズムへの関与をさらに詳細に解明することが,薬物依存形成機構の解明と治療薬の開発に繋がると考えられる.
著者
齊藤 晋聖
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

光ファイバのクラッド領域に微細構造を有する微細構造光ファイバにはいくつかの種類が存在するが、本研究では、ソリッドコアフォトニックバンドギャップファイバの有する特異な光学特性に着目し、その複雑な構造パラメータと光学特性との関係を詳細に調査し、高度利用のための基盤技術を確立した。特に、コア径拡大と単一モード動作、および低曲げ損失特性の両立という観点から、複数のバンドギャップにおける光学特性を総合的に評価し、大コア径ファイバとしての最適な透過帯域(フォトニックバンドギャップの次数)を明らかにするとともに、ファイバ製造上の構造制御技術、およびファイバ使用時のコイル径等を考慮に入れたコア径拡大の理論的限界を特定した。
著者
三谷 泰浩 島谷 幸宏 江崎 哲郎 池見 洋明
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

近年,豪雨時に濁質物質がダム貯水池内に大量に流入し,下流河川における濁水の長期化が生じている。これは,貯水池への懸濁物質の供給が根本的な原因であり,懸濁物質の発生源の特定及び濁水発生要因を明らかにすることが求められている。本研究では,貯水池上流域の河川にて計測した懸濁物質の流出状況から懸濁物質の流出予測モデルを開発し,懸濁物質の流出特性を把握する。次に,その結果と地理情報システム(GIS)を用いて定量化された各種素因との相関分析により,濁水発生に影響を与える素因を特定し,特定された影響素因と懸濁物質流出特性の関連性及び影響素因の空間分布特から,貯水池上流域の潜在的な懸濁物質の流出危険度を評価する。
著者
糸井川 栄一 加藤 孝明
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,市街地火災安全基準の性能規定化を目指すために必要な基礎的条件を整理し,数理的アプローチによる防火性能評価手法の提案を行うことを目的とするものである.主たる研究成果としては,(1)市街地火災安全性の変遷とその要因を分析したこと,(2)市街地火災の根本的な原因の一つである地震時出火に対する対策効果に関して数理的に評価したこと,(3)地震時火災時の広域避難計画について現行の避難計画の改善を図る数理的計画手法を提案したこと,(4)広域避難安全性確保から見た市街地の延焼危険性に要請されるレベルを明らかにしたこと,などである.
著者
岡本 峰雄 野島 哲 古澤 昌彦
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

1.有性生殖を利用したサンゴ再生技術の研究開発セラミック製の着床具を開発して海域着生実験を行った。海域の水温と月齢の関係を調べつつ、石西礁湖各所でサンゴの成熟度調査を行って一斉産卵の予測を試みた。着床具は4月と5月の2回の満月前に海域に設置したが、前者で適切な着生結果が得られ、後者は少し遅すぎた。また、架台に密に配置した着床具の配置についても重要な知見が得られた。各着床具に光と流れが十分にあたるよう配置することの重要性が明らかになった。2.白化が頻発するなかでのサンゴ群集構造の変化についての研究石西礁湖のサンゴの健康度評価のため、92種のサンゴを対象に、クロロフィル蛍光を利用した光合成収率と光-ETR曲線を得た。この結果、健康なサンゴは暗順応状態で収率が0.66と、また100PAR時は27.8と共通であることを見出した。これを基準に白化状態のサンゴの健康度評価を行ったところ、熟練者が目視で判断した白化段階とほぼ一致する値を簡便に計測できるようになった。3.サンゴの受精卵・幼生の定量化のための基礎研究プランクトンなどの微細な海洋生物の定量的把握は海洋生物資源管理のうえで重要な課題である。現在実用化されている計量式魚群探知機の周波数の上限は400kHz程度であり、やや大型の動物プランクトン計測に用いられている。より微細な1mm程度以下の生物の計測を目的として、1.1MHzのスプリットビーム方式のTS測定システムを試作し、水槽実験で直径2mmの較正球を用いて探知範囲と計測精度の検討を行った。その結果小型動物プランクトンの計測が可能であるとの見通しが得られた。
著者
田村 忠久
出版者
神奈川大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

本研究ではオーストラリアで稼働中の3.8m鏡のカメラに取り付ける集光器を開発した。まず集光器の形状をシミュレーションによって決めた。今回は反射面を曲面状にすることは考えずに、全面が平らなものを設計した。反射面の反射率を90%と仮定して、いろいろな形状についてシミュレーションを行った結果、1.8倍の光量を得られることが判った。はじめ、金属を打ち出して成形し反射面にアルミ蒸着を施すことを考えたが、打ち出し用の型代が予算に収まらないため、ABS樹脂を成形して表面に金属メッキを施すことにした。クロムをメッキしたABS樹脂の平板の反射率を測定したところ86%であり、シミュレーションの仮定をほぼ満たしていた。メッキ金属はクロム、ニッケル、スズ・コバルト合金が考えられたが、集光率はどれもほぼ同じであったので、生産の歩留まりや耐久性からスズ・コバルト合金を採用した。3/8インチ光電子増倍管に集光器を取り付けて光量を測定したところ単体での集光率は1.5倍であった。この集光器を16×16のマトリックス状に組み上げてオーストラリアの3.8mCANGAROO望遠鏡に取り付け、95年11月、12月にCrabの観測を行なった。Crabについては93、94年の観測で、エネルギー閾値7TeVでガンマ線を検出している。今回取り付けた集光器で光量が増加していれば、エネルギー閾値が下がってガンマ線の計数率が増えているはずである。95年の観測は天候状態が不安定であったため、Crab方向に雲がかかっている時間帯を除いた解析によって集光器の総合的な性能評価を行なわねばならず、現在その解析を行なっているところである。
著者
柳澤 文孝
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

大気中に存在する物質は乾性沈着あるいは湿性沈着によって除去されて地上に沈着する。降雨が落下する間に大気中にある物質を取り込むウオッシュアウトを野外で実測する試みが国内外で様々なされてきたが、実測された例はなかった。そこで、中国四川省峨眉山に降雨採取容器を設置して降雨の試料を採取し、化学分析を行うと共に分析結果の解析を行った。降雨に含まれる成分は高度が下がるに伴って増加する。両者の関係を数式化した。
著者
湯浅 勲 小島 明子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

多くの研究者によって報告されている細胞レベルでの研究において用いられている食品成分からの抽出物の濃度は生理的な条件化における血中濃度より高い濃度を必要する場合が多い。生活習慣病の予防戦略として応用するためには有効濃度についての検討が必要である。本研究の目的は次の問題点((1)アロエ、茶、月見草およびタイショウガなどの食用植物抽出物のガン細胞に対する作用メカニズムの解明とそれぞれのメカニズムの違いを明確にする。(2)これらの作用メカニズムの違いを考慮し、複数抽出物の同時摂取することにより低濃度で有効となるシステムを検討する。)について明らかにすることである。平成16年度の研究においては、月見草抽出物は細胞内活性酸素を増加させることによりガン細胞のアポトーシスを起こすが、ガン細胞の増殖抑制には関与しないこと、また、月見草抽出物によるアポトーシスには細胞内ポリアミンが関与するが、細胞増殖には影響しないことを明らかにした。また、西洋ニンジンの葉抽出物がガン細胞の細胞周期をG2期で停止させることよりなど、アロエ、茶、月見草、タイショウガおよびニンジン葉抽出物はそれぞれ異なるメカニズムで抗ガン作用を示すことを明らかにした。また、平成17年度においては、食物繊維により腸管内で生成される酪酸の作用メカニズムについても調べた後、問題点(2)について作用メカニズムの異なる成分の同時投与の影響について検討した。その結果、緑茶抽出物は酪産と同時に添加することにより相乗的にヒト大腸ガン細胞の増殖を抑制すること、またカフェインは酪産と同時に添加することにより相加的にガン細胞の増殖を抑制することを明らかにした。今後さらに検討することが必要であるが、今回の研究により低濃度で有効なシステムの確立するための手がかりを得ることができた。
著者
鹿島 剛
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

SMN1遺伝子の発現が不活化されている脊髄性筋萎縮症SMA由来の線維芽細胞にRNA結合蛋白質hnRNP A2に対するRNA干渉を施すとSMNの産生量が減少する現象を見つけた。この作用機序は,SMN2遺伝子の翻訳レベルでの調節であることが解析できた。この事は,SMN2とA2による分子間相互作用が新たな分子標的として,創薬のターゲットとして今後の研究対象になることを示唆している。
著者
福島 道広
出版者
帯広畜産大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

(1)未利用動物資源である北海道産アレチマツヨイグサ種子油の脂肪酸組成はそれぞれリノール酸が71%及びγ-リノレン酸が13.7%占めており,市販の月見草油がリノール酸71.7%,γ-リノレン酸9.2%であったのに対し,γ-リノレン酸が4.5%高い値を示した.n-6脂肪酸のα-リノレン酸はアレチマツヨイグサ油には含められていなかった.(2)ラットへのコレステロール負荷条件下での短期投与(6週間)及び長期投与(13週間)実験の結果,短期投与では投与期間を通して成長阻害はみられなかったが,長期投与では月見草油,バイオγ-リノレン酸,紅花油,パーム油及び大豆油より体重増加量は減少した.血液中の総コレステロール濃度は短期及び長期投与の両方ともアレチマツヨイグサ種子油投与区で他の投与区より有意に低下した.また,悪玉コレステロールのLDL-コレステロール濃度も同様に低下した.アレチマツヨイグサ油は肝臓においてコレステロール濃度が短期投与及び長期投与ともに低下傾向を示した.糞便中へのステロール排泄量は,短期投与では各投与区間に変化はみられなかったが,長期投与ではγ-リノレン酸23.1%含んでいるバイオγ-リノレン酸油が他の投与区より有意に増加した.(3)各植物油脂を投与したラットの肝臓におけるHDL及びLDLの主要アポタンパク質であるアポA-1及びアポBのmRNAレベルには大きな差はみられなかった.また,血液中からのLDLの取り込みを担うLDL受容体のmRNAレベルについても変化はみられた.◎未利用資源として,リノール酸71.0%,γ-リノレン酸13.7%含むアレチマツヨイグサ油のラットへのコレステロール代謝を検討した結果,γーリノレン酸を9%含む月見草油と同様,短期投与(6週間)及び長期投与(13週間)ともに強いコレステロール低下作用を示した.以上,アレチマツヨイグサ種子油にはラット生体内のコレステロールを低下させる機能がみられた.その作用機序はコレステロール負荷条件ではコレステロール合成・代謝及びアポタンパク質への影響ではなかった.
著者
松尾 哲孝
出版者
大分医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

申請者は、茶カテキン類が肥満細胞株RBL-2H3細胞およびラット腹腔内細胞(PEC)のケミカルメディエーター(ヒスタミン及びロイコトリエン、LT)放出をin vitroで抑制することを既に明らかにしている。そこで本研究は、茶カテキン類の生体内での肥満細胞のケミカルメディエーター放出抑制効果について検討した。まず、茶カテキン類の中で最も強い抑制活性を示したEGCGをラット腹腔内に投与すると、A23187の刺激によるヒスタミン放出を抑制することがわかった。次に、茶カテキン類の経口投与における肥満細胞のケミカルメディエーター放出抑制効果について検討した。サフラワー油・月見草油・パーム油の3種の食餌脂肪に茶カテキン類を1%(w/w)添加してラットに3週間自由摂食させ、A23187で刺激したときに放出されるケミカルメディエーター量を測定した。その結果、茶カテキン類のヒスタミン抑制効果は認められなかったが、LT放出においては、すべての食餌脂肪群で抑制効果が認められ、特にサフラワー群ではその活性が強かった。また、月見草群では、LTB_4およびLTB_5の両方の放出を抑制した。さらに、PEC細胞膜リン脂質の脂肪酸組成を調べたところ、サフラワー群ではLTB_4の前駆物質であるアラキドン酸の有為な低下が認められたが、その他の群ではこのような効果は認められず、茶カテキンの抑制効果は、LTの前駆物質減少以外にも関与している可能性が示唆された。
著者
眞城 百華
出版者
津田塾大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

エチオピアのティグライにおいて1941年以後の帝国再編の中で中央政府の介入が深まり、ティグライ内の階層分化が深化した点が明らかになった。さらに中央政府とティグライの関係の中でエリトリアの政変の影響が色濃いことも明らかになった。エリトリア統合を狙う中央政府がティグライの行政官配置に介入し、またエリトリア統合のための社会運動をティグライのアドワ、アクスム地域で展開した。ティグライを介してエチオピア政府のエリトリアへの影響力の行使が見られた。
著者
塩田 達俊
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

高分解能な分光システムは基礎科学から応用まで幅広いニーズがある。これまで分解能1MHz、計測範囲100GHzと高性能なシステムが実現されているが、光周波数標準や物理化学過程の追跡などの進展のためにさらに性能の向上が望まれてきた。申請者は課題実施までに単側波(SSB)光変調器を用いて光周波数を高精度に且つプログラマブルに制御してスペクトル計測システムの実現を図ってきた。本研究課題では、SSB光変調器スペクトル計測システムの分解能を向上し、これまでの周波数制御システムをベースにして、新たに周波数安定化した光源を導入してシステムの性能を発展させることを目的とした。平成19年度は、前年度までに構築した高分解スペクトル計測システムの計測範囲の広帯域化をはかった。また、光変調器を用いたシステム全体を構築して計測精度の確認を行った。具体的には5THz以上の周波数帯域を示す光周波数コムを光源として光フィルタにより個々のピークを切り出し、光変調器による高精度な光周波数掃引を行う実験系を構築した。光ファイバとインライン半透鏡を組み合せて構築した1MHz線幅の共振器の透過スペクトルを計測することで、実測値として1MHzの分解能を確認した。さらに、H^<13>C^<14>Nガス(圧力約1Tprr、長さ約80cm)を用いた繰り返し計測から1MHz以下の光周波数計測精度を得た。また、光フィルタの掃引による光周波数コムのピークを選択することで1THz以上の計測帯域を得ることを確認した。
著者
近藤 真司
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ボウレイとレイトンはマーシャルの経済学と方法論を学び,当時の重要な研究テーマで彼が十分具体化できなかった応用経済学の分野に業績を残したことを明らかにした。ボウレイとレイトンの研究業績は,マーシャル経済学の現実への応用と経済学における統計的の開拓である。両者の統計学法論を考察することにより,ケンブリッジ学派の創設者として現代の経済理論の基礎を構築したマーシャルとは別の応用経済学に関心を持っていた彼の経済像を明らかにすることができた。
著者
池谷 のぞみ
出版者
東洋大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

救急医療は119番に通報する市民にはじまり、災害救急情報センターで119番通報を受ける受付指令員、救急隊から連絡を受け、医療機関と連絡をとりあう救急管制員、医療機関における医師、看護婦、その他のスタッフなど、多様な専門領域の人々が,それぞれの場所で分業を担うことによって特定の患者を搬送し、治療を受けさせるという一連の活動を可能にしている。この時間および空間をこえたところでの協働作業が可能となるためには、適切な情報環境の構築が重要である。そこで本研究では、救急医療情報システムにおいて、実際にどのように業務が遂行されるのか、すなわちそれぞれの分業の場面において情報がどのように扱われることで互いの協働作業がどのようになされるのかについて、ある大学の救急救命センターを拠点としてエスノメソドロジーの立場に立ったフィールドワークを通じて明らかにすることを試みた。特に、消防庁から患者受け入れ要請を救急救命センターにするためのホットラインに焦点をあて、その通話内容を分析した。実際の患者を目の前にしていない消防庁の管制員が、救急隊の連絡を受けて、それを正確に、医師にとって意味のある形で、しかも迅速に伝達することは容易ではないことが明らかになった。さらに、119番通報が年々高騰するなかで、救急救命センターに患者を搬送する際の判断基準を踏まえた活動の必要性を医師は感じていることがわかった。また、「上申」と呼ばれる、毎朝上級医師に対して行われるカンファレンスについても観察および録画を行い、複数のチームによる、チーム医療のもとでいかに情報の共有が行われ、クオリティ・コントロールがなされるのか、また具体的なケースを扱う中でインターを含めた若い医師に対していかに教育がなされるのかについても明らかにした。
著者
松田 靖
出版者
九州東海大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

Kojima and Kawaguchi(1989)の研究により,ディプロスポリーによる高頻度な条件アポミク1・であることが判明している花ニラ用栽培品種‘フラワーボール'‘テンダーポール'を供試材料とし,胚の単為発生期に特異的に発現する遺伝子群のクローニングを試みた.まず,両品種における胚の単為発生時期を特定化するため,花器官の形態的調査,ならびにパラフィン切片法による未受精胚の発育状況を調査した.その結果,2品種ともに,他のAllium属種と同様に,雄性先熟であり,開花5日後の柱頭成熟期に卵細胞の分裂が開始していることが判明し,この時期を単為発生初期とした.本時期に特異的に発現する遺伝子のクローニングを行うために,開花当日および成熟期(完熟種子)を加えた3つの異なる発育ステージにある胚(開花当日・単為発生期は胚珠)からnIRNAを単離し,RT-PCRによりcDNAを合成した.その後,ディファレンシャルディスプレイ法を使用し,単為的な胚発生初期にのみ特異的に形成するバンドの選出を行った.両品種において,それぞれ単為発生胚初期に特異的な複数のバンドが検出され,得られたバンドの塩基配列決定を順次行っている.塩基配列決定後,既知の遺伝子との相同性を確認し,これまでに報告されていない新規の遺伝子群を選抜するともに,in situハイブリダイゼーションにより組織特異性を調査することで,単為発生に関与する遺伝子群の特定を図る予定である.
著者
松田 靖
出版者
九州東海大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

アポミクシスの発現は一般に,高次倍数性個体で認められ,低次倍数性個体では抑制されることが知られている.そこで,アポミクシスの一様式であるデイプロスポリーの発現様式解明を目的とし,ニラを用いた半数体の誘導ならびに同形質に関連する,特に単為発生期に発現する遺伝子(群)の単離を試みた.半数体獲得を目的として,既にアポミクシス率が報告されているニラ(2n=4X=32)の3品種('テンダーポール','フラワーポール'および'ワイドグリーン')を供試材料とし,未受粉の5,075胚珠をB5ホルモン無添加培地上で培養したところ,4.49%に相当する227胚珠で胚形成が認められた.胚形成頻度を各品種間ならびに由来種子(多胚性種子あるいは単胚性種子)で比較したところ品種間で有意な差異が認められ,'ワイドグリーン'で最も効率的な胚形成が確認された.その後,順化にまで至った個体の倍数性をフローサイトメーターにより調査したところ,それらは全て4倍体であり,倍数性を維持していたことが明らかとなった.このように半数体獲得には至らなかったため,特定の発育ステージに発現するmRNAを比較することで,単為発生期に発現する遺伝子(群)の単離を試みた.花ニラ用栽培品種である'テンダーポール'を供試し,胚形成が認められない開花直後,単為発生胚の形成が開始される開花4日後の胚珠および種子内の成熟胚からmRNAを抽出し,これらをサンプルとしてディファレンシャルディスプレィ法による単為発生期に特異的に発現する遺伝子(群)の探索を行うこととした.現在,上流プライマー24種,下流プライマー9種の計216組み合わせで反応を行い,増幅産物による比較を行っている.
著者
九町 健一
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

フランキアは樹木の根に共生して根粒を形成させ、そこで窒素固定を行う能力をもつバクテリアだ。この共生窒素固定能により、フランキアは樹木の生育を促進する。本研究では、フランキアの共生に必要な遺伝子を同定することを目的として、フランキアの遺伝子操作法の確立に取り組んだ。また、根粒中でさかんにはたらいている(発現量の高い)遺伝子を網羅的に同定した。