著者
本吉 勇
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1-5, 2022 (Released:2023-03-10)
参考文献数
19

私たちの多くは、目を開くだけで自分を取り囲む光景やその中にある様々のモノを即座に認識し、また多彩な形や質感に満ちた世界を体験する。この驚くべき認識能力は眼と脳の情報処理に支えられている。20世紀の視覚研究は、線画やCG立体といった人工的な視覚刺激を用いてその仕組みを追求し、脳は二次元の画像から三次元世界を復元して情景や物体を認識する、という理論を提唱してきた。しかし、この理論は複雑な現実世界の知覚を全く説明できない。森の小道、食卓の上の柔らかな花束……私たちがふだん体験しているリッチでリアルな「見える」世界は、脳のどのような情報処理により生み出されるのだろうか? 本稿では、最新の研究成果を通して、限られた処理能力しかもたない人間の脳が網膜像からどのように複雑な光景や物体を認識しているかを解説する。
著者
渋沢敬三著
出版者
角川書店
巻号頁・発行日
1958
著者
Kenta Suzuki Kuniaki Kawabata
出版者
Fuji Technology Press Ltd.
雑誌
Journal of Robotics and Mechatronics (ISSN:09153942)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.1292-1300, 2020-12-20 (Released:2020-12-20)
参考文献数
11
被引用文献数
11

This paper describes the development of a robot simulator for remote decommissioning tasks using remotely operated robots at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station of the Tokyo Electric Power Company Holdings. The robot simulator was developed to provide a remote operation training environment to ensure operator proficiency. The developed simulator allows for the calculation of physical aspects, such as the hydrodynamics of a remotely operated vehicle and the aerodynamics of an unmanned aerial vehicle. A disturbed camera view presented to an operator can be generated by setting parameters such as transparency, color, distortion, and noise. We implemented a communication failure emulator on the simulator in addition to functionalities for calculating the integral dose and generating the gamma camera image. We discuss the functional requirements and introduce the implemented functionalities. The simulator was built using the developed functions and can be executed integrally.
著者
稲垣 行子
出版者
日本比較法研究所
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.83-107, 2021-12-30

公立図書館が行う図書(書籍)の貸出しは,図書館法の無料原則により利用者から利用料を徴収していないのが現状である。著作者の中でも職業作家は,公立図書館が行う図書の無料貸出しにより,引き起こされる損失部分について,何等かの報酬を得ることを希望するようになった。 欧州諸国では,「著作者の著作物が,図書館の図書の貸出しにより引き起こされた収入源の損失に対して,報酬を著作者に与える権利を認める」という制度を構築してきた。この制度は公貸権制度と呼ばれ,この報酬請求権を公貸権としている。公貸権は,著作者が被る損失の補填をするという報酬請求権であり,経済的な権利である。 公貸権制度は条約や協定のない制度であるが,EU加盟国を中心に,現在34か国で導入されている。日本を含めてアジア諸国では,図書館の書籍の貸出しに対して,著作者に損失補填をするという考え方になじまないようで,公貸権制度を導入する国がなかった。 2019年12月31日に台湾が,教育部及び文化部(部は日本の省レベル)が国立公共資訊図書館及び国立台湾図書館において,2020年1月1日から2022年12月31日までの期間に,公貸権を試行導入することを発表した。さらにWIPOの2020年著作権等常任理事会(SCCR)39thの会合で,シエラレオネ共和国が世界の公貸権制度の調査について発言した。SCCR40thの会合で,マラウイとパナマが共同提案国として加わった上で正式に提案している。今まで公貸権の制度がなかった国や地域が,導入や関心を持つようになっている。 本稿は,図書館の書籍(図書)の貸出しに関係する権利として,著作権法の貸与権について述べ,その上で公貸権との関係及び概要並びに現状などについて述べる。さらに新しく導入を検討している国の動向や,今後の方向性について述べていく。
著者
大原 愼司
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測と制御 (ISSN:04534662)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.103-108, 2021-02-10 (Released:2021-02-16)
参考文献数
9
著者
白鳥 義彦
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.46-61, 1995-06-30 (Released:2010-01-29)
参考文献数
23

デュルケームの生きた第三共和政期のフランスは, 「非宗教的・無償・義務的」という原則に支えられた初等教育制度が確立されたことに端的に見られるように, 近代的な国民国家を目指した歩を進めようとしていた.同時に, 普仏戦争の敗北から出発した第三共和政には国家の再建ということが課せられており, その一環として, 初等・中等教育と並んで高等教育の改革もまた議論された。このような背景を踏まえ, 本論文では, デュルケームの教育論のなかでも初・中等教育の問題の陰にかくれ, これまで検討されることの少なかったかれの大学論に注目した. かれは, 高等教育の問題についてもまた深い論述を行っている.実際デュルケームは, 1900年前後の「新しいソルボンヌ」を代表する人物の一人でもあった。デュルケームの論述の検討を通じて, 改革に至る当時の大学の諸問題や, 改革の理念における大学像が明らかにされる.大学は, 職業的な専門教育をおこなうグラン・ゼコールとは区別され, 社会的紐帯を高める役割を期待された「科学」の場として把握されている. またデュルケールの社会学は, そのような科学観を背景に大学内に制度化されたのであり, 高等教育改革の議論と関連づけることにより, かれの社会学の性格も浮き彫りにされるのである。
著者
東部 晃久 坂本 雄 山﨑 裕司
出版者
学校法人高知学園 高知リハビリテーション専門職大学
雑誌
高知リハビリテーション専門職大学紀要 (ISSN:24352535)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.45-48, 2021 (Released:2021-06-29)
参考文献数
5

口頭指示によって改善できない足部の引きずりを呈した慢性期高齢片麻痺患者を経験した.症例は70歳代の女性,軽度の右片麻痺と注意障害,短期記銘力の低下を認めた.歩行中,右足部が徐々に後ろに残り,転倒の原因となっていた.この症例に対して,視覚的プロンプトの提示と引きずり回数のフィードバックを併用した介入を週2回実施し,その効果について検討した.ベースライン期での引きずり回数に比較し,介入期の引きずり回数は有意に減少した(p<0.05).また,プローブ期でも引きずり回数は増加しなかった.以上のことから,今回の介入は足部の引きずりを減少させるうえで有効に機能したものと考えられた.
著者
生野 公貴
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.48 Suppl. No.1 (第55回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C-74, 2021 (Released:2021-12-24)

神経リハビリテーション分野における物理療法は,近年その適応の幅を大きく拡大させている。脳卒中における運動障害に対する神経筋電気刺激,歩行障害に対する機能的電気刺激(Functional electrical stimulation:FES),亜脱臼に対するFES,痙縮に対する振動刺激,感覚障害に対する経皮的電気神経刺激,脊髄損傷における上肢に対するFES,下肢に対するFESサイクリング,多発性硬化症におけるFESなど,神経疾患に対する物理療法はすでに各国の診療ガイドラインでも取り上げられているほか,数多くのシステマティックレビューが報告されている。しかしながら,研究間の異質性が高いためにその詳細な適応と方法論,効果については未だ不明な点が多く,臨床意思決定を不十分なものにしている。さらに異なる水準の問題として,病態メカニズムに基づく治療戦略の整合性が担保されているかという問題がある。そこで,本シンポジウムでは神経疾患における運動障害に対する物理療法を取り上げ,10年後の臨床意思決定をより有益なものに改変すべく,物理療法における臨床エビデンスと病態に基づく治療戦略の双方から考えていきたい。 運動障害においては,下肢Fugl-Meyer Assessmentスコア21以上が良好な移動能力のカットオフ値とされており(Kwong, et al., 2019),その機能障害の改善は我々理学療法士にとって重要な役割の一つである。運動障害は,脳損傷,とりわけ皮質脊髄路の損傷による一次的な影響のほかに,ICU-acquired weaknessや廃用症候群やサルコペニアなど二次的な影響によって結果として随意運動能力は障害されるため,いわゆる上位運動ニューロン障害としての運動麻痺として結論づけることなく,多角的な評価によって運動障害の病態を把握する必要がある。特に急性期においては,中枢神経系の不活性化のみならず重度運動麻痺による不動によって生じる二次的な筋萎縮や低栄養によって生じる筋消耗が問題となる。この時期には,筋萎縮の予防(Nozoe, et al., 2018)や感覚入力としての電気刺激が二次的障害を軽減させるうえで合理的な方法であろう。回復期では,運動機能の底上げと活動レベルの向上が必要となる。電気刺激による介入では,随意性の改善には有効とされるものの活動レベルまで汎化する報告は少なく(Sharififar, et al., 2018),臨床的には症例の問題点に沿って動作練習と併用した介入が重要となる。この時期には,詳細な病態評価により,物理療法によって改善可能性の有無を見極めることが重要である。生活期では,欧州における5年の追跡調査にて発症後2年後には6か月後よりもADL,上肢,下肢,体幹機能全てに機能低下が生じるという報告があるように(Meyer, et al., 2015),いかにして機能低下を防ぎつつ,さらなる生活範囲の拡大につなげるかが重要な課題である。その中の一つの取り組みとして,短期入院での高強度集中プログラムによる機能改善の可能性が示唆されており(Ward, et al., 2019),物理療法は重度麻痺者の運動を援助するツールとして重要な役割を担っている。このように,すべての病期において物理療法が効果的に作用できる場面は多く,さらなるエビデンスが蓄積されればより効果的な意思決定に結びつくものと期待される。 物理療法は決して徒手では生み出せない物理的エネルギーを治療に応用する治療法であり,物理療法にしか出せないメリットを存分に生かすことが重要である。そのため,この10年では神経疾患で生じる種々の障害・症状の病態理解とそれに基づく最も効果的な手段としての物理療法の適応の是非に関するエビデンスの構築が何より重要であろう。また,それらを実臨床の環境に落とし込んだ実務的な研究によって得られる臨床エビデンスの蓄積も重要な課題といえる。
著者
代 開秋 津末 昭生 本間 弘次
出版者
Japan Association of Mineralogical Sciences
雑誌
岩鉱 (ISSN:09149783)
巻号頁・発行日
vol.88, no.5, pp.247-264, 1993-05-05 (Released:2008-03-18)
参考文献数
40
被引用文献数
5 5

From the mode of occurrence, texture, and mineral assemblage, granitic rocks in the Kashiwa-jima-Okinoshima district are classified into four groups; namely, the Tanijiri-type granodiorite (abbreviated to TGd), the Tanijiri-type granodiorite porphyry (TGdp), the Moshima-type medium-grained granite (MmGr), and the Moshima-type fine-grained granite (MfGr). The similarity of major and trace element chemistry of the TGd and TGdp, and of the MmGr and MfGr suggests that the petrogenetic processes operating were similar, respectively. The Rb-Sr isotopic analyses of nine whole-rock samples of the Moshima-type granitic rocks (MmGr and MfGr) yield an age Rb-Sr of 16±2 Ma with an initial 87Sr/86Sr ratio of 0.70740± 0.00018. From the data of Nd and Sr isotopic ratios (Fig. 9) and of initial 87Sr/86Sr ratios and reciprocals of the strontium concentration (Fig. 10), it is suggested that the Tanijiri-type granodioritic rocks have been formed by mixing of an original S-type magma and sedimentary rocks of the Shimanto belt, while the Moshima-type granitic rocks have been formed by fractional crystallization of a S-type magma, which has been more felsic than the original S-type magma. From the chemical composition of garnet in the TGdp, it is suggested that the original S-type magma of the Tanijiri-type granodioritic rocks may have been generated by the partial melting of metamorphic rocks of pelitic and psammitic origin at a depth of about 20km. The TGdp shows a distinct porphyritic texture compared with the TGd. Minerals, such as plagioclase, orthopyroxene, cordierite, and biotite in the TGd have slightly wider range of solid solution compared with the minerals in the TGdp. Therefore, it is suggested that the petrogra-phical difference between the TGd and TGdp may have been caused by a difference in the ascent and cooling rate of their magmas.
著者
井手 洋一 古田 明子
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.1-8, 2023-02-25 (Released:2023-03-08)
参考文献数
38

タマネギべと病の薬剤防除の精度向上を目的として,ブームスプレーヤの噴霧高さが薬液付着や防除効果に及ぼす影響について検討した.葉先の30 cm上方から散布した場合の薬液付着は,葉身中央部,葉身抽出部ともに良好であったが,葉先とほぼ同じ高さから散布した場合は,葉身中央部付近の薬液付着が劣った.また,べと病に対する防除効果も葉先とほぼ同じ高さから散布した場合は劣った.今後は,本試験で得られた噴霧高さと薬液付着,べと病に対する防除効果の関係性をもとに,適切な薬剤散布技術に関する指導を行う必要がある.
著者
漆原 和子 勝又 浩 藤塚 吉浩 谷口 誠一
出版者
法政大学国際日本学研究所
雑誌
国際日本学 = INTERNATIONAL JAPANESE STUDIES (ISSN:18838596)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.151-172, 2007-05-31

On the island of Okinoshima off the coast of Shikoku in the Uwa Sea are settlements situated on areas of flat ground secured out of steep terrain by stone walls. In Hirose, there remain stone walls built as windbreaks against typhoons and prevailing northwesterly winter winds. In Moshima, the stone windbreaks have been entirely replaced with concrete or block walls. The type of stone used on the island is Tertiary intrusive granite. The stonework is characterized by sharp corners, produced by stacking angularly cut stones at 90° angles to one another, and the walls are given a concave curvature when they exceed approximately two meters in height. In the case of long, high earth-retaining structures, stones are laid over the arched wall surface to increase strength. The stone walls on the island are in a typically Honshu style, the exemplar of which is Anō-zumi. Across the island, hidana are built instead of verandas. These temporary structures, which are unique to the island, are made from bamboo or PVC pipes that extend out from the stone walls of homes. However, some also span roads. Hidana provide shelter against the winds that ascend the steep terrain, allowing best use to be made of the scarce land available on the island.
著者
石井 英也 小口 千明 大濱 徹也
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

青森県の下北半島に位置する脇野沢村は、江戸時代に能登半島を中心とする北陸の漁民や商人が、ヒバや鱈を求めてやってきて定住したしたことによって、その建設が促進された村である。そのため、脇野沢に住む住民達は、当初から明治初期頃までは水主を業とするものが多く、いとも軽々と周辺地域での他所稼ぎに従事してきた。その後、明治維新による山林の国有地化などによって、脇野沢住民の生業は鱈漁への傾斜を強めるが、鱈漁の季節性を埋め合わせるように、幕末以降発達しつつあった北海道鰊漁への他所稼ぎが多くなった。脇野沢村では、大正期以降に鱈漁が興隆し、それに北海道鰊場への他所稼ぎを組み合わせる一種の複合経営が成立する。それとともに、他所稼ぎの弊害も見られるようになるが、しかし、昭和戦前期までの他所稼ぎは、むしろ地域経済に利をもたらすものと肯定的にみられる傾向が強かった。第二次世界大戦後、脇野沢の鱈漁や、まもなく北海道の鰊漁も壊滅する。しかし、北海道はその開発が国の緊急課題となり、さまざまな基盤整備が行われるようになる。こうして脇野沢住民は、北海道での土木出稼ぎに従事するようになり、思いがけずに失業保険も手にするようになる。その出稼ぎは、高度経済成長期になると、とくに東京を中心とする関東にも向かい、まさに「出稼ぎの村」が形成される。この頃になると出稼ぎの量も質も、出稼ぎを引き起こすメカニズムも変質し、とくに昭和40年代以降にはさまざまな社会問題が注目されるようになった。その重要な問題の一つが、持続的社会の崩壊、つまり出稼ぎ者や年金生活者の増大に伴う地域そのものの空洞化であった。出稼ぎは、諸問題の発生や出稼ぎ者の高齢化や「出稼ぎは悪」という風潮のなかで、昭和末期以降急速に減少してきたが、村の再建が急がれる。
著者
ウンサーシュッツ ジャンカーラ
出版者
立正大学心理学研究所
雑誌
立正大学心理学研究所紀要 = The Journal of the Institute of Psychology Rissho University (ISSN:13482777)
巻号頁・発行日
no.18, pp.13-21, 2020-03-31

The East Japan Railway Company’s December 2018 announcement of the new station nameTakanawa Gateway on the Yamanote line was met with much criticism in the popular press. Althoughinitial criticism focused on the fact that results from a popular vote were not honored, many articlesconcentrated on the name’s characteristics, despite the fact that similarly named new stations—suchas Toranomon Hills, which also featured a mix of loan words( geetowei‘ gateway’, hiruzu‘ hills’) andhistorical place names( Takanawa, Toranomon)—were largely accepted. To examine why TakanawaGateway was especially targeted, this article conducted a close discourse analysis of 33 articles publishedfrom December 2018 to August 2019 in three major newspapers, which revealed three centralthemes: aichaku ‘affection’, loan words, and historical connections. Affection was given by both ordinarycitizens and company representatives as a core evaluative factor, but for ordinary citizens, theuse of loan words emphasized Takanawa Gateway’s international—rather than local—identity; this,combined with the lack of semantic transparency of geetowei—despite East Japan’s historical motivationsbehind the choice—appears to have contributed to a sense of alienation amongst the generalpublic. These results suggest that consideration not just of the image companies wish to produce butalso of the relationships they wish to form with local communities should also be factored into selectingnames for public spaces.
著者
近藤 圭太 山北 喜久 玉井 宏明 岡崎 誉
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.735-740, 2020-12-28 (Released:2020-12-28)
参考文献数
20

背景・目的:超高齢者が緊急入院すると,廃用症候群に陥りやすく,入院期間も長びき予後も悪くなることが問題となる。これに対し早期リハビリテーションの効果が期待されるなか,当院の現状を調査し検討した。方法:2017年度の1年間で,救急車搬送され入院となり理学療法を施行した超高齢者243人を対象とし,入院後48時間以内にリハビリテーション開始の早期リハ群と,以降の非早期リハ群に分け,早期リハの効果を,退院時転帰,在院日数などにつき検討した。結果:退院時転帰は,退院,転院,死亡で2群間に有意差はなく,平均在院日数が早期リハ群で縮減した(16.9±11.3日vs 21.8±12.6日,p=0.0195)。疾患別にみると,脳血管系と整形外科系で早期リハ群が多かった。結論:緊急入院した超高齢者に早期リハを行うことは,退院時転帰に有意差はなかったが,在院日数を有意に縮減した。在院日数縮減は廃用症候群の予防や病床回転率に寄与し,超高齢社会に向けての1つの対策となり得る。
著者
志村 哲祥 井上 猛 高江洲 義和
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

初めに、高校生において睡眠へ影響を与えている生活の要因を調査しました。たとえば、カフェインを夜に摂取すると2倍、寝床の中でスマホを使用していると3倍、睡眠の問題が生じやすく、また、欠席には起床時刻の影響が大きいことが明らかになりました。次いで、睡眠の問題があり欠席の多い高校生へ、上記の知見をもとにした睡眠指導をする群としない群に無作為に割り当てたランダム化比較試験を行いました。その結果、睡眠指導をした群では睡眠が有意に改善すると同時に、欠席率が半減し、退学者も大幅に減少しました。本研究により、学生の欠席や退学を、睡眠という観点から改善させることができることが明らかになりました。