著者
西村 明美
出版者
一般社団法人 日本デジタルゲーム学会
雑誌
日本デジタルゲーム学会 年次大会 予稿集 第13回 年次大会 (ISSN:27586480)
巻号頁・発行日
pp.70-75, 2023 (Released:2023-03-30)
参考文献数
27

世界で猛威を振るったコロナウイルス感染症のパンデミックの中、『あつまれどうぶつの森』は国際的に記録的セールスを達成した。各国のメディアでは、このゲームを取り巻く社会現象には当該パンデミックが関連していると報道した。そこで、本研究では、日本、フランス、イギリス、韓国、アメリカの5 ヵ国を調査対象とし、当該ゲームタイトルをプレイするモチベーションが前述の状況の下、文化的普遍性を有する現象なのかを検証した。その結果、国際的に当該ゲームタイトルをプレイするモチベーションが、「レクリエーション」であることが示唆された。また、このモチベーションには、異文化理解の枠組みとして世界的権威を持つホフステードの6 次元モデルの2 つの指標である「人生の楽しみ方」と「短期志向/長期志向」と呼ばれる各国の文化的価値観との間に関連性があることが明らかにされた。
著者
関口 秋香
出版者
東京女子大学言語文化研究会
雑誌
東京女子大学言語文化研究 (ISSN:09187766)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.32-46, 2016-11-01

The aim of this paper is to contrast stereotypical utterances (“yakuwari-go”) of characters in Japanese and American animated films. It focuses on so-called women’s language and its frequency in Disney movies which feature princesses and Ghibli movies whose main characters are girls. It attempts to answer three questions. (1) What are the differences between the stereotypical utterances in Disney and Studio Ghibli movies? (2) What historical changes are there in the frequency of use of women’s language? (3) What can be said about these changes, considering the fact that stereotypical utterances reflect social stereotypes? To answer the first question, linguistic features of the words used by the characters in the Disney movies and Ghibli movies were examined. To answer the second question, the frequencies of occurrence of women’s language in heroines’ utterances were found, and to answer the third question, the historical changes in the use of women’s language in the movies are examined against the social background of the U. S. A. and Japan. The results show that Disney movies make use of differences between General American and British pronunciation, as well as very colloquial or non-standard forms (such as -in’ for -ing) and slang to distinguish characters. On the other hand, Japanese stereotypical utterances mainly employ different personal pronouns, and characteristic sentence endings. The frequency of women’s language used by the heroines dropped sharply after 1989 in Disney movies and after 1997 in Ghibli movies. The use of women’s language in the movies suggests that changes in the stereotypical image of women started earlier in Disney movies than in Ghibli movies.
著者
福冨 則夫 中村 智幸 土居 隆秀 武田 維倫 尾田 紀夫
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.53-58, 2002-05-24 (Released:2010-06-28)
参考文献数
16

Twenty-one specimens of the Pacific lamprey, Entosphenus tridentatus, were collected from the Hoki (8 specimens), Yusaka (11 specimens) and Arakawa Rivers (1 specimen), all tributaries of the Naka River, and the mainstream of the Naka River (1 specimen), Tochigi Prefecture, central Japan, between August 1999 and April 2001. Seven spawning redds, possibly constructed by Entosphenus tridentatus, were found in the Yusaka River on May 2 and 11, 2000, eggs being observed in one of them. Two specimens, collected from the Yusaka River and reared in an aquarium with a gravel substrate, subsequently spawned about 1000 eggs being observed in the redd. Forty-one of the eggs were reared at 15°C in an electric incubator, hatching starting 13-17 days after spawning. The hatching percentage was 92.7%, the accumulative temperature to hatching being between 195 and 255°C.
著者
今本 成樹 今本 三香子
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.32-35, 2021-06-25 (Released:2022-06-25)
参考文献数
6

6カ月齢の雌の雑種猫の卵巣子宮摘出手術時に,左側子宮の異形成と同側の腎臓欠損が確認された。子宮の近位部は通常の位置に確認できたために卵巣と共に摘出した。猫の子宮の異形成は,約0.1%の割合で確認され,その30%で同側の腎臓の欠損を伴い右側に多いと報告されている。しかし,このような報告は国内ではない。本邦において猫の子宮卵巣摘出手術は最も頻繁に実施される手術の1つであるので,今回と同様の発生異常に遭遇する可能性は低くないと考えられる。子宮の異常が確認された場合には,同側の子宮以外の異常も確認する必要がある。
著者
澤田 匡人 新井 邦二郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.246-256, 2002-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
31
被引用文献数
7 2

本研究は, 小学3年から中学3年までの児童・生徒を対象に, 妬み傾向, 領域重要度, および獲得可能性が, 妬み感情の喚起と, その対処方略選択に及ぼす影響を検討することを目的とした。研究1では, 妬みの個人差を測定する単因子構造の児童・生徒用妬み傾向尺度 (Dispositional Envy Scale for Children; DESC) が作成され, 十分な信頼性, 妥当性が認められた。研究2では, 予備調査において, 妬みが喚起される8つの領域と, 16種類の対処方略が見出された。この結果を受けて, 研究2の本調査では, 仮想場面を用いた対処方略の分析が行われた。その結果,「建設的解決」,「破壊的関与」,「意図的回避」の3因子が抽出された。次に, これら3種類の対処方略の選択に関わる要因として, 妬み傾向, 領域重要度, および獲得可能性を取り上げ, 領域別・年齢帯別に因果関係の検討を行った。パス解析の結果, 成績領域を除き, 中学生では領域重要度が妬みの喚起に影響を及ぼしているのに対し, 小学生ではそうした傾向は認められなかった。また, 小学3・4年では, 妬み感情の対処として主に破壊的関与が選択される傾向にあった。さらに, 全ての領域を通じて小学5・6年以降では獲得可能性が高いと妬みを感じやすく, 意図的回避と建設的解決方略を選択しやすいことが明らかにされ, 妬みの対処方略選択に発達差のあることが確認された。
著者
山本 容子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.17-22, 2016 (Released:2018-04-07)
参考文献数
25

バイオフィリアの概念を導入した環境教育,特に初等教育の展開についての文献調査を行った結果,アメリカでは,小学校の学習環境の設定に,バイオフィリックデザインを取り込み,それを使った体験学習のアプローチが検討,実践されていること,子どものバイオフィリアの育成時期として,幼児教育,初等教育段階が適切であるという議論がなされていること,子どものバイオフィリアを引き出す活動を導入したアプローチにより,認知と言語の発達などの教育実践目標の達成を図るような教育プログラムが行われていることが明らかになった。
著者
藤岡 明房
出版者
立正大学経済学会
雑誌
経済学季報 (ISSN:02883457)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.163-188, 2013-03-29

平成21 年9 月政権についた民主党は,かねてからマニフェストで取り上げていた高速道路の無料化を実施する前に,限定した路線だけで高速道路の無料化を実施するという社会実験を平成22 年6 月から平成23 年3 月末までの期間に行った.その社会実験は37 路線50 区間において行われ,全車種が対象となった.社会実験が終わった後,政府から社会実験の結果が発表されたが,社会実験により,高速道路の交通量が増加することや,平行する一般道の交通量が減少することが予想されたにもかかわらず,必ずしも交通量の増加や減少は明らかではなかった.その理由として,社会実験として選ばれた区間は,当初からあまり影響が出ないような区間が選ばれていたことが考えられる.そこで,社会実験の効果を統計的に確認するため,統計的手法の一種である一元配置分散分析と二元配置分散分析を社会実験の結果に適用してみた.また,社会実験の効果が地域的に異なっているのか否かを確認するため,全国を6 つの地域に区分して分析を行ってみた.その結果,関東地域,中部・近畿地域で社会実験による交通量の増加が有意ではなかったことは予想できたが,北海道も交通量の増加は有意ではなかった.影響があったのは,東北地域と中国・四国地域であり,限定された影響といえる.並行一般道路の交通量はある程度減少するものと予想されていたが,実際にはすべての地域において有意な差は見いだせなかった.したがって,今回の高速道路無料化の社会実験の結果からは,無料化した高速道路の交通量は大幅に増加するとか,平行する一般道の交通量は著しく減少するとかは必ずしも言えないことになった.
著者
稲本 元 加藤 学
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.337-351, 2021 (Released:2021-07-28)
参考文献数
54

透析患者では食事制限,透析による水溶性ビタミンの喪失,代謝異常による要求量増加,治療薬の影響などにより水溶性ビタミンが不足する.水溶性ビタミンの必要量は健常人必要量より多く,食事では充足できず,水溶性ビタミンの補充が必要で,補充により生命予後が改善する.欧米ですでにできている補充用ガイドラインの日本版を日本透析医学会で作成し,総合水溶性ビタミン剤(経口薬,注射剤ともに)を製造,販売してもらい,治療に用いるべきである.
著者
渡部 文雄 内野 修 城尾 泰彦 青野 正道 東島 圭志郎 平野 礼朗 坪井 一寛 須田 一人
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.673-682, 2000-10-25 (Released:2009-09-15)
参考文献数
22
被引用文献数
33 36

気象庁では1987年1月から綾里、1993年3月から南鳥島、1997年1月からは与那国島において、非分散型赤外線分析計を用い、大気中の二酸化炭素濃度を連続的に測定している。最も観測データが蓄積されている綾里では、エルニーニョ現象やピナトゥボ火山噴火に伴う二酸化炭素濃度増加率の大きな年々変動が見られ、全球的な気候変化と炭素循環の変動が密接に関係していることが示唆される。また、1998年には前年の年平均濃度と比べた年増加量が、綾里では3.0ppm、南鳥島では2.8ppm、与那国島では3.1ppmで、綾里と南鳥島では観測開始以来最大の大きさであった。この大きな年増加量は1997/1998年の大規模なエルニーニョ現象が引き起こしたと考えられる。
著者
佐伯 靖雄
出版者
産業学会
雑誌
産業学会研究年報 (ISSN:09187162)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.36, pp.59-76, 2021 (Released:2022-04-01)
参考文献数
15

The purpose of this study is to analyze various aspects of the business strategy of Tesla, a U.S. company specializing in complete electric vehicles, and to clarify its competitive advantage. In this study, we will clarify how the company has risen to the top of the world, albeit in a specific segment, in such a short period of time, and how this competitive advantage has been achieved. The following three points are conclusions. First, Tesla is very good at defining its business domain and then redefining it in a short period of time from there. Secondly, it is a super speedy management. And thirdly, although there is no denying that there is a strong element of genus, Tesla has been able to take full advantage of the corporate value of SpaceX, which is owned by Mr. Musk, the founder of the company. The maverick statements of Mr. Musk and his unique way of conducting business make Tesla a company that stands out in some ways. However, we would like to emphasize that the corporate behavior in pursuit of its business strategy is based on economic rationality, as evidenced by its excellent entry process and its sincere approach to engineering.
著者
石井 祥子 奈良 由美子 鈴木 康弘 稲村 哲也 バトトルガ スヘー ナラマンダハ ビャンバジャブ Shoko ISHII Yumiko NARA Yasuhiro SUZUKI Tetsuya INAMURA Sukhee BATTULGA Byambajav NARMANDAHK
出版者
放送大学
雑誌
放送大学研究年報 = Journal of The Open University of Japan (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.19-33, 2023-03-25

筆者らは、2017年10月から、JICA草の根技術協力事業(パートナー型)「モンゴル・ホブド県における地球環境変動に伴う大規模自然災害への防災啓発プロジェクト」を実施してきた。当初計画では、2022年9月までの5年間を予定していたが、COVID-19感染症流行のため、それ以後は現地での実践活動が継続不可能となった。幸い、これまでの成果と今後の活動の可能性が認められ、約1年半をめどにプロジェクト延長が承認された。そこで、筆者らは、2022年8-10月にウランバートル市とホブド市を訪問し、約2年半ぶりに本格的に活動を再開することができた。 本稿では、感染症流行により活動が制限された状況下における持続的な取り組みと、渡航が再開された2022年後半の活動をまとめる。主な内容は、防災カルタ大会の開催、市民を主体とする防災ワークショップの開催、そして映像コンテンツの制作と評価・活用についてである。
著者
常深 志子 近藤 健 藤原 香子 中野 美佐
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.250-256, 2023-04-15 (Released:2023-04-15)
参考文献数
20

急性期病院での認知症ケアチームにおける作業療法実践を検討した.認知機能低下を伴う運動器疾患術後の高齢者16名を調査した結果,認知機能改善はMini Mental State Examination-Japaneseではなく,Functional Independence Measure(以下,FIM)cognitiveに認められた.また,FIM motorに改善を認め,行動・心理症状,せん妄,向精神薬内服,テープ付き紙おむつの使用数,身体拘束使用数は減少した.作業療法士の認知症ケアチームへの関わりは,急性期医療における高齢者ケアに役立つことが示唆された.