著者
BAKHRONOVA Munisa (2010) バフロノヴァ M (2009) BAKHRONOVA MUNISA (2007-2008)
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年度は、11月17日~12月16日まで28日間ウズベキスタン、サマルカンド市内の旧市街に位置する伝統的な4つのマハッラ(Xuja・Zudmurod(タジク人が主に居住)、Qoraboy Oqsoqolマハッラ(タジク人とユダヤ人が居住)、Ozodマハッラ(ジプシー、タジク人が居住)、Obodマハッラ(トゥルクメン人、タジク人が居住))において最終的なフィールドワークを実施した。さらに、それぞれの4つのマハッラ内で行われる女性のみの集まり、Bibi SeshanbeやBibi Mushkulkushodに参加し、行事を仕切る女性のリーダーにも聞き取り調査を行いました,今までの質問票調査、インタービューの最終結果をまとめ、それぞれのマハッラのリーダー(Oqsoqol,Noib)、サマルカンドのコミュニティ社会、マハッラの歴史などに詳しいサマルカンド国立外国語大学、Samiboey Xurshed教授、文献調査の検索などに協力をえたウズベキスタンの首都タシュケントのIjtimoiy Fikr(Public Opinion Study Center)の方々にお会いし、最終的な調査結果の報告をした。本研究のウズベキスタンのコミュニティ社会の研究にどのような貢献をもたらすことができるのか、成功と欠点について皆さんの意見、指摘などを聞いた。最後に、サマルカンド国立外国語大学の英語学部3、4年生向けのSamiboev教授のセミナーにも参加し、最後に30分の研究発表をする機会あった。また、2011年1月12日~22日まで11日間欧州の首都ブリュッセルのシンクタンクCentre for European Policy Studies(CEPS,世界でのトップ10位に入る非常に優れたシンクタンクの一つである)。最近では、中央アジア出身の博上課程の優れた若手研究者がCEPSに数人集まっており、1月に行われた集まり会に参加することができ、自分の研究を紹介する機会を与えられた。
著者
岡 洋樹 高倉 浩樹 北川 誠一 黒田 卓 木村 喜博
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

旧ソ連圏に属したモンゴル、ウズベキスタン、アゼルバイジャン、グルジア、ロシア連邦サハ共和国について、社会主義期から体制崩壊後の歴史記述・認識とその教育面への反映の状況を、収集した文献と、現地研究者との協力を通じて比較検討することによって、相互の共通性と特色を解明する。とくにソ連圏崩壊後に各国で顕著な民族主義的歴史記述や教育が創出している歴史認識の特徴と社会主義期との継承関係を解明する。
著者
菅野 裕臣 菅原 睦 柳田 賢二 池田 寿美子 ムハメ フセーゾヴィチイマーゾフ ラシド ウマーロヴィチユスーポフ アリ アリーイェヴィチジョン マネ ダヴーロヴィチサヴーロフ マハンベト ジュスーポフ アジズ ジュラーイェフ ブルット インノケンチイェヴィチキム 劉 勲寧
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

クルグズスタンとウズベキスタンのドゥンガン人計4名を日本に招聘してドゥンガン人に関する国際集会を持ったが,これはドゥンガン人研究者の初めての日本訪問であり,これを基礎に日本ドゥンガン研究会が発足することになり,その論集を作成することが出来た.さらに研究組織は上記2国を訪れ,またウズベキスタンのウズベク人,カザク人,高麗人研究者を招聘して,中央アジアの多言語状況についての研究・報告を行った.
著者
川島 一夫
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

児童の愛他心の形成における欲求ー価値理論の検討著者は、川島(1989)において、愛他行動の発達における、情況的抑制要因と促進性個人内要因について検討を行い、発達的に2つの異なる要因が影響することを明らかにしてきた。前年度では、その検討結果と、高野(1989)の欲求ー価値理論との関係において、児童の情動反応としての愛他心の形成において、影響する欲求ー価値の関係を調査しクラスタ-分析による検討を行なった。本年度はその結果ににもとづき、2つの実験を行なった。第1実験では、愛他行動の発達の過程において、その動機づけの理由としてどのようなものが影響しているのかについて検討した。そこで検討されたことは、1愛他心についての基準の形成の過程で、社会的あるいは物的な報酬のどちらが各年齢段階で影響しているか。2Mussen(1977)らのいう内面化された動機や自己報酬(内在的報酬)は、どの段階から効果を持つようになるのか。3愛他行動の内在化の過程において緊急度とコストによって分けられた3種の愛他行動は異なった動機の発達をする、ということであった。その結果、寄付行動で、社会的強化を愛他行動の基礎とする児童が増加し、自己強化をその動機であるとする児童は、四年生で最大となり、六年生で減少していることが明らかとなった。第2実験において、欲求ー価値理論に基づいた、児童の愛他行動における要求の認知について検討を行なった。第1実験と同様の絵画を用いて愛他行動場面での要求の認知の検討が行なわれた。その結果、年齢の主効果が有意であった。すなわち、愛他行動の場面での要求の認知は、年齢とともに上昇した。また、愛他行動の種類によって異なる傾向が見られた。すなわち、救助行動は、どの学年においても、要求の認知が高い傾向が見られた。
著者
樫村 志郎 山崎 敬一 南方 暁 棚瀬 孝雄 米田 憲市
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

紛争処理は広く合意型と裁定型に分けることができる.合意型の紛争処理においては,紛争処理過程の開始,進行とその結果が紛争当事者による承認ないし規範受容に結合されている(ただし,裁定型の紛争処理でも,紛争解決の最終結果の規範的妥当性が,制度的規範により構築されるにとどまり,その過程や結果の解釈等は,かなり紛争当事者の規範受容によって構築されたり影響されたりする).本研究では,合意型の処理において当事者の間のどのようなコミュニケーションがなりたっているのかを知ることを主眼として,エスノメソドロジーの知見を参考にしながら,複数の研究を行った.(1)まず,法社会学の研究と理論における,非公式紛争紛争研究のレビューを行った.(2)その上で,理論的分析としては,法的コミュニケーションを単なる相互了解としてではなく,法的場面を存立させるための根源的かつ基盤的作用をもつものとしてとらえる社会学的視角の総合と洗練を行った.(3)以上の理論的分析の上にたつ,経験的分析としては,まず,紛争当事者と法的専門家が公式・非公式の紛争処理の準備のために事件の分析を行う法律相談場面.紛争当事者と紛争解決者が合意にもとづく紛争解決を達成するために事件の分析を行う調停場面(シミュレーション)をとりあげて,詳しい分析を行った.(4)この経験的知見を確かめるために,人が日常的場面を理解しようとする際に規範へと言及する場面を半実験的に構成し,法制度的場面と比較した.これらの結果として,本研究は,理論的ならびに経験的分析を組み合わせて,合意型の紛争処理過程が,独特の制度的規範構造のもとで起こるコミュニケーションとして,日常的なコミュニケーションと区別されることを示すことに成功した.
著者
寺嵜 弘康 丹治 雄一
出版者
神奈川県立歴史博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

横浜正金銀行リヨン出張所初代主任の川島忠之助資料(書簡、書類、写真など)を調査し、目録の作成と撮影作業、書簡619通の翻刻作業をおこない、川島忠之助資料の全容を明らかにすると同時に、横浜正金銀行の欧米支店における活動実態について新資料を提示した。
著者
杉山 康憲
出版者
愛媛大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年度の研究計画に基づいて「糖尿病モデルラットを用いた糖尿病発症および合併症に関するプロテインキナーゼの探索」を行った。本実験で使用した糖尿病モデルラットであるOLETFおよびコントロールラットであるLETOは大塚製薬徳島研究所より分与して頂いた。OLETFラットおよびLETOラットの雄を糖尿病発症前の12週齢、糖尿病発症後の25週齢および40週齢的合併症が発症すると考えられる老齢の60週齢に解剖し、脳、肺、心臓、肝臓、腎臓、脾臓、すい臓、精巣を摘出した。各臓器抽出液を調製し、抽出液中に存在するプロテインキナーゼをマルチPK抗体を用いて検出した。その結果、各臓器抽出液から多数のプロテインキナーゼのバンドが検出された。このうちM1C抗体を用いて25週齢のOLETFラットを解析すると、すい臓において約110kDaおよび約200kDaのバンドが検出され、これらのバンドはLETOラットでは検出されなかった。これらの結果から、この約110kDaおよび約200kDaのバンドは糖尿病の発症に関わるセリン/スレオニンキナーゼであると考えられた。また、40週齢のLETOラットをYK34抗体を用いて解析すると、精巣において約150kDaのバンドが見られたが、OLETFラットでは検出されなかった。これらの結果は、約150kDaのチロシンキナーゼがLETOラットと比較してOLETFラットで発現量が顕著に減少することから、糖尿病発症後において精巣で見られる男性生殖器の機能不全に関わるプロテインキナーゼである可能性が考えられる。現段階では、これらのプロテインキナーゼの同定はできていないが、今後これらを同定することで糖尿病の発症や合併症の解明に繋がると予想される。
著者
花枝 美恵子
出版者
麗沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

1.対内直接投資が政策論議の対象となった背景が日米独では異なっている。米国では経常収支の赤字が背景であったのに対し、ドイツにおいては産業立地国としての自国の競争力の喪失の有無とそれへの対応策が背景となっている。米国の貿易指向性に対し、ドイツは雇用指向的といえる。日本の政策論議に関してはドイツとの類似性が高いことがその特徴である。2.日本の直接投資における内外不均衡問題に対する従来の分析視点は二つの意味で問題がある。第一に対内直接投資を重視し、日本企業の対外直接投資行動に見られる問題性への言及がないこと。第二に企業行動の能動性が十分明示的に示されていないことがそれである。3.ミクロの行動原理の基となるものとして企業統治に注目する、との分析視点をとるとこうした問題点を改善でき、直接投資をめぐる政策論議に建設的な貢献を行なうことが可能となる。従って、現在日本で問題となっている対内直接投資の不均衡問題の分析に当たっては、従来一般的であったマクロ的接近方法や、企業戦略に重点を置いたミクロ的接近方法に加えて企業統治の視点からの分析も行うべきである。4.日本の対内直接投資政策に関しては、精査的対応の対象となる領域は企業の直接投資行動に影響を及ぼす制度的条件が中心となるべきである。環境変化への迅速な対応をやりやすくするためのリストラ促進政策や、新規事業への参入のための事業連結をしやすくする制度的枠組の整備といった範囲での対応策が有効であるだろう。
著者
堀内 桂輔
出版者
大分医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

1 ケージドATPパルス光分解法をもちいて、硬直状態においたスキンドファイバ筋標本を等尺的に収縮させ、張力の経過を記録した。温度は一定、8℃。実験の主眼は、カルシウムイオン(Ca)濃度を種々に変えたときの張力経過の違いを調査することであった。2 ATP光遊離で張力はまず必ず低下し、その経過はCa濃度によらなかった。Ca濃度が充分に高い(pCa<5.8)ときは、その短い弛緩のあとに張力が定常プラトーにのぼった。Ca濃度が中間(7.0<pCa<6.0)であるとき、初期弛緩の後の張力上昇は、まず定常レベルを一過性に越えてその後に定常レベルへ向かって減少するという経過を示した。この一過性収縮における張力上昇のハーフタイムにはCa濃度が高いほど長いという性質があった。3 中間Ca濃度において観察した一過性収縮は次のような簡単な反応モデルで模倣できることが分かった。R+ATP→Q、X←→Q←→A、ただしR、X、Aはそれぞれ硬直、弛緩、収縮の状態、Qは「収縮前状態」であり、Ca制御はXQ間遷移にのみ働くとする。4 ケージドCaやケージド燐酸の実験における張力過渡応答へCa濃度の効果を予測する上でも、ここに提案したモデルが有意義であることが分かった。光分解液にADPを添加しておくと、ATP遊離における収縮のCa感受性が高まることが分かったが、これは上記モデルでは理解できないことであった。
著者
津田 敏隆 MADINNENI Venkata Ratnam MADINENI VENKAT RATNAM RATNAM MADINENI VENKAT
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

データ空白域とされてきた赤道域の成層圏の大気特性を解明することを目指し、インドネシア西スマトラの赤道大気レーダー観測所を中心に行われた気球(ラジオゾンデ)集中観測結果、ならびにCHAMP衛星によるGPS掩蔽データを用いた研究を行った。とりわけ、対流圏・成層圏の物質循環や大気波動エネルギーの上方輸送に重要な役割を果たす熱帯域対流圏界面の微細構造の特性解明、ならびに赤道域で活発な積雲対流により励起される多くの大気波動のうち特にエネルギー・運動量の上方輸送を担い大気大循環の駆動力となっている大気重力波および赤道ケルビン波の特性を研究した。インドネシア域の5ヶ所で2004年4-5月に行われたラジオゾンデ集中観測の結果を用いて、慣性重力波の鉛直構造および時間変動を事例解析した。対流圏上部・成層圏下部において卓越した重力波(周期2-3日、鉛直波長は3-5km)が認められた。波動エネルギーは高度約20kmで最大となるが、必ずしも時間連続ではなく間欠的であった。重力波の水平伝播特性を5観測点間で相互相関解析し、水平波長約1,700kmで東南東の方向に伝播していたことが分かった。長波放射(OLR)の衛星データを用いて雲分布の時間・空間変動を調べ、インド洋からインドネシア海洋大陸に向けて東方伝播する積雲対流群が重力波励起に関与していることを示した。また、ラジオゾンデとGPS掩蔽データを併用して、対流圏上部・成層圏下部におけるケルビン波の特性を解析し、東西波数1,2で東進する成分が特に卓越していることを示し、その気候学的特性を明らかにした。ケルビン波は対流圏界面の温度構造に大きな変動を与えており、対流圏界面高度および極小温度が周期的に変動することが分かった。なお、東西波数が1ないし2の全球規模のケルビン波に加えて、局所的な波動擾乱も起こっており、積雲対流がその励起源となることを示した。これらの研究成果を国際学術誌に論文公表した。
著者
吉新 通康 和座 一弘 鶴田 貴志夫 吉新 通康 五十嵐 正紘
出版者
自治医科大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

米国では、簡便で正確に精神疾患をスクリーニングするNew Prime-MDなる質問票の有効性が報告されている。そこで、日本でもこのNew Prime-MDの利用可能性、妥当性が保証されれば、これを利用して、鬱病の一般プライマリ・ケア外来での受診率、プライマリケアでの場での初期症状をも明らかにに出来ると考えた。また、米国については今までPrime-MDが実施されたデーターを使用した。まず、New prime-MDの日本語訳を作成した。次に都会型診療所1ヶ所、僻地診療所、自治医科大学の地域家庭診療センターの外来患者で一定期間の各診療所の外来患者の中で1)20歳以上、2)痴呆がない、3)緊急患者でない、4)本研究に対して同意の得た患者に対して(各診療所の100人計300人の患者) Prime-MDの記入と診察を終えた患者に対して患者満足度質問票に回答してもらい、質問票の回答を分析して、Prime-MDの日本での利用可能性や各主要精神疾患の受診率や、各主要精神疾患、特にうつ病の初期症状を米国のデーターと分類比較した。また妥当性を検証するために、プライマリ・ケア医師がPrime-MDによって診断し、次にDSM-IVに精通した精神、心理領域の専門家が、上記診療を終了直後にStructured Clinical Interviewに沿って、診断し、上記の2つの診断名の一致率(κ値)を求めた。以上の研究から、以下の新たな知見を得た。1) Prime-MDの利用可能性と妥当性は、日本においても高い。2)主要な精神疾患の受診率は、プライマリ・ケアの現場でかなり高い率である。3)うつ症状の初期症状として、多彩な身体症状を呈する。4)うつの身体症状として、日本では、特異的(腹部症状、肩こり等)なものが存在する。
著者
元 晶ウク
出版者
静岡産業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、日韓プロサッカー観戦者の観戦動機が同時に測定できる尺度項目を開発することと、それを用いて両国サッカー観戦者の観戦動機比較を行ない、その相違と類似点を明らかにすることを目的とした。調査の結果、開発された尺度は、日本と韓国のサッカー観戦者の動機を同時に測定できる妥当性と信頼性の高い測定項目であることが明らかになった。また、両国観戦者の観戦動機平均値の差を多変量分散分析によって検証した結果、Kリーグ観戦者はドラマ、家族、選手動機の平均得点、Jリーグ観戦者は達成、娯楽、技術動機の平均得点が有意に高いことが明らかとなった。Kリーグ観戦者はスポーツ自体より、レジャーやレクリエーションの手段としてサッカー観戦を行うことに対し、Jリーグ観戦者はスポーツ自体の魅力を求めて観戦を行う特徴が確認された。また、両国のサッカー観戦者の主な観戦動機は達成、娯楽、ドラマ、逃避であることが明らかになった。さらに、選手個人の魅力に関する動機はサッカーのような団体種目においてはそれほど重要な動機として作用しないことも確認された。
著者
佐藤 潤一
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

2009年度の研究は、昨年度の研究において構成した離散不動点定理の経済モデルへの応用と、進化ゲーム理論と古典ゲーム理論との関係に関するものであった。2企業が同質な財を市場に供給している状況下で、お互いの企業が自社の利潤の最大化を目的とし、それぞれ独立に供給量を決定するというCournotモデルにおいての均衡の存在について考察した。このモデルでは、2企業の供給量および、それに準じて決定される価格が整数値、つまり離散的であるのが現実的なモデルである。しかし、現在までに離散的なモデルでの均衡の存在については報告されてない。そこで、2企業の供給量で決定される価格の挙動と離散的な均衡の存在についてとの関係を明らかにした。具体的には、2企業の供給量が整数値である状況下でも、それに準じて決定される価格の挙動に適当な仮定を置くことにより均衡が常に存在することを示した。ここで、価格に置いた仮定は、古典的なCournotモデルの状況を含んでいることに注意すれば、昨年度に構成した離散不動点定理は、経済学等の社会的背景に応用した際にも意味をもつものであるといえる。また、進化ゲーム理論の柱であるレプリケータダイナミクスの定常点と、古典ゲーム理論との関係について研究を行った。特に着目したのは、レプリケータダイナミクスを用いることにより、行列で表現される古典ゲームを進化ゲーム理論の範疇で取り扱うことが可能になる点である。さらに、古典ゲームの重要な解概念であるNash均衡が、レプリケータダイナミクスの安定な定常点に対応することも報告されている。しかし、定常点には安定な定常点の他に、不安定な定常点も考えられる。そこで、不安定な定常点に対応する古典ゲーム理論の戦略表現を明らかにした。具体的には、プレイヤーの立場が対等な対称2人ゲームにおいて「定常点の不安定多様体の次元の分だけ、各プレイヤーが譲歩している」という知見を与えた。
著者
稲垣 真澄 加我 牧子 矢田部 清美 後藤 隆章
出版者
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、通常学級に通う発達性読み書き障害児の学習全般に不可欠な読み書き支援法に関して、認知神経科学的特性を踏まえた上で構築することが目的である。新たに、ひらがな音読検査課題と漢字読み書き課題を開発し、健常小学生の発達変化のデータ集積を行い、発達性読み書き障害診断アルゴリズムを確定した。診断された発達性読み書き障害児の音韻操作能力ならびに語彙能力の把握を行った上で、読み書きの認知神経心理学的モデルにワーキングメモリの要素を加味した支援法を開発し、漢字読み書きの障害例に一定の効果を見いだした。
著者
岩貝 和幸
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

ナノクリスタル合成〜新たな構造性活性点の創製として水/界面活性剤/有機溶媒溶液を用いた単分散ゼオライトナノクリスタル合成法をMOR型に適用し合成条件を検討した。MOR型ナノクリスタル合成ではナノサイズ化の目標であるシリカライトナノクリスタルと同様の粒子径60nmを達成することができた。構造性活性点触媒反応システムへの展開〜ZSM-5ナノクリスタルでは結晶サイズがナノスケールであるため結晶外表面酸点量が多いよって、外表面酸点を不活性化した場合、大半の酸点が不活性化され反応活性が著しく低下する可能性がある。本年度は酸点量と結晶サイズが異なるZSM-5を合成し、外表面酸点を不活性化してアセトンからのオレフィン合成を行い、酸点量と結晶サイズの影響を明らかにすることができた。外表面酸点を不活性化したZSM-5ナノクリスタルではアセトン転化率がほぼ100%を維持し、芳香族の選択率を減少させ、オレフィン選択率を向上させることに成功した。構造体触媒反応システムへの応用〜粒子径が50nmのZSM-5ゼオライトナノクリスタルを積層した触媒膜を用いてZSM-5ゼオライトナノクリスタルの外表面酸点を不活性化における影響について検討した(MTO反応)。外表面酸点を不活性化することによりZSM-5ナノクリスタルを積層した触媒膜は転化率68%、オレフィン選択率43%を長時間にわたって達成した。積層膜の改良で触媒層機能を強化することにより高選択性をいかしたまま転化率の向上を達成することができた。
著者
山本 憲二 芦田 久
出版者
石川県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

ニワトリ卵黄より抽出した糖ペプチドまたは糖ペプチドに糸状菌エンドグリコシダーゼ(エンド-M)を作用して遊離した糖鎖を縮合反応または還元アミノ化反応によりアルギン酸やキトサンに多価に重合した糖鎖結合ポリマーを合成し、糖鎖の非還元末端に存在するシアル酸残基にインフルエンザウイルスを結合させて捕捉する新しい概念の感染阻害剤として応用した。阻害剤について動物細胞を用いたインフルエンザウイルス感染阻害能を調べた結果、高い感染阻害活性を示すことを確認した。
著者
平野 隆 鈴木 正志 前田 一彦
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

耳管閉塞およびインフルエンザ菌による慢性中耳炎症マウスモデルを用いて、中耳慢性炎症病態における IL-17 産生 T 細胞の動態につき検討した。BALB/cマウスを用いて、中耳炎モデル作成後3日目、14日目、2ヶ月目に中耳貯留液、中耳粘膜および側頭骨を採取し、中耳貯留液中の IL-17 濃度の測定、中耳粘膜下のリンパ球のフローサイトメトリーによる解析および IL-17mRNA の発現につき解析を行った。中耳粘膜において、Th17 細胞および IL-17 産生γδT 細胞の増加を急性期から慢性期に認め、中耳貯留液中の IL-17 濃度においても2週間目から2ヶ月の慢性期に至るまで、明らかに対照群と差を認めた。中耳粘膜の単核球細胞の IL-17mRNA の表出も、対象群と比して明らかな強発現を認めた。 中耳粘膜における Th17 細胞や IL-17 産生γδT 細胞が中耳局所の慢性炎症に関与している事が推測された。
著者
黒田 和道 芝田 敏克
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

インフルエンザウイルスのM1に蛍光タンパク質を付加したもの(GFP-M1)と全反射照明蛍光顕微鏡を用い、ウイルス粒子形成過程の生細胞での観察を試みた。GFP-M1発現細胞にウイルスを感染させたところ、約8時間後からGFP-M1の顆粒状構造が細胞表面に観察され始め、その後、顆粒は集積傾向を示した。もう一つのウイルスタンパク質であるHAでも同様な傾向が確認された。これは、GFP-M1顆粒形成がウイルス粒子形成に対応することを示す。
著者
今野 祐多
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

昨年度のH_2水素安定同位体組成定量システムに引き続き,同じく還元性気体であり,極限環境において大きなエネルギー源および炭素源となるCH_4の水素安定同位体組成定量システムを構築した.それを応用し,岐阜県瑞浪超深地層実験施設における地下水中のCH_4の定量を行った.炭素同位体組成の情報だけではCH_4の起源を判別することは出来なかったが,水素同位体組成の情報を併せることで,単純な有機物由来のCH_4では無く,CO_2還元由来ではないかと結論した.一方で,H_2の水素同位体組成は-700‰前後であり,地下水と温度平衡になっている可能性が考えられる.微生物によるH_2の生成消費反応はH_2-H_2O平衡を促進させるため,水素に関わる微生物活動の可能性を示唆しているのではないかと考える.また,窒素固定反応に付随してH_2が副次生成されることが知られており,海洋において窒素固定速度とH_2濃度に相関があることが報告されている(Moore et al., 2009など).ところが海洋表層は大気からの混入と現場で生成されるH_2の区別が難しく,H_2濃度のみから窒素固定速度を求めることはやや定量性に欠けると考える.そこでH_2の水素同位体組成を定量することで窒素固定速度の定量を目指した.ところが実際の海水試料中に溶存するH_2濃度はsub-nM~数nM程度であり,現システムで精度良く水素同位体組成を定量するのは難しく,窒素固定速度と整合性の取れたデータを取得することは出来なかった.しかし,得られた水素同位体組成は一般的な大気と生物由来と考えられるH_2との間の値を取っており,将来的に少量で精度良く水素同位体測定が可能になれば,海洋窒素固定速度定量に対して有用なツールとなる可能性があると考える.
著者
宇野 賀津子 八木 克巳 武曾 恵理 福井 道明 室 繁郎
出版者
財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

新型インフルエンザ等易感染性疾患や重症化しやすい疾患、またその病態とIFN システムにつ いて検討する計画をたてた。しかしながら、新型インフルエンザは2010 年以降大きな流行が なく、当初計画した研究を遂行できなかった。そこで感染重症化リスクの高い、糖尿病、MPO-ANCA 腎炎、慢性閉塞性呼吸器疾患(COPD)患者と健常人のIFN 産生能を比較、これら疾患患者では健 常人に比べて有意に低下している事、MPO-ANCA 腎炎患者ではプラズマサイトイド樹状細胞数の 著しい低下や血中IFN の存在を明らかにした。COPD 患者では、憎悪回数とIFN 産生能との関連 性は認められなかったが、糖尿病患者では、歯周病罹患群でIFN 産生能が特に低下していて、 IFN システムは易感染性と関連している指標として有用である可能性が示唆された。