著者
毛利 勝彦
出版者
国際基督教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

要国による非公式フォーラムとしてのG8サミットは、変化する国際政治経済の文脈において、強大国の単独主義を牽制し、多国間主義再生への足掛かりとして機能しうる一方、少数国による寡頭制化の可能性もはらんでいる。新興国、アフリカ諸国、市民社会等との対話によってG8をより民主的なグローバル秩序構築のための協議体に転換する方向もありうるが、金融危機や気候変動などに対処する枠組みとして台頭してきたG20はまだ十分にその機能を果たすまでには至っていない。
著者
渡辺 稔 武井 智美 河合 智之 今泉 祐治
出版者
名古屋市立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

ラット、ブタ等の哺乳動物の虹彩散瞳筋において各種薬物により張力変動が生じる時、平滑筋細胞でのどのようなCa動態の変化がそれをもたらしているかが研究課題であった。特に副交感神経興奮時或いはムスカリン様作用薬投与時の弛緩機構解明を主に検討した。まずムスカリン作用薬がM_2タイプのリセプタ-を介する可能性が高いものの従来のM_1、M_2という分類では充分説明できないことがわかった(あたらしい眼科、1989)。また毛様体神経節除去によりラット散瞳筋を副交感神経除神経すると、神経刺激による弛緩だけでなく、ムスカリン様作用薬による弛緩も消失した(E.J.P.,1988)。このことは、化学伝達物質のアセチルコリンが何等かの弛緩物質の遊離を介して散瞳筋を弛緩させている可能性を示唆するものである。そこで、弛緩を引き起こす生理活性物質を広く検索した結果Ca、ベ-タ、アルファ、ムスカリニック拮抗薬すべての存在下で高K液により顕著な弛緩が生じることを発見した(B.J.P.,1990)。遊離弛緩物質としては、血管上皮細胞由来の弛緩物質(NO)或いはペプチドではないこと、またその弛緩の際の細胞内情報伝達系としては、_cーGMPおよび_cーAMPが関与している可能性は低いことが示唆された。一方、上頸神経節切除による交感神経除神経では、散瞳筋の交感神経終末の変成によるノルアドレナリン再取り込み能消失のためと考えられるノルアドレナリンに対する特異的感受性の増大が見られたが、ムスカリン性弛緩は影響を受けなかった(J.J.P.,1989)。Ca動態を探るのに最も有用と思われたFura2による細胞内Ca濃度の測定は散瞳筋では組織が非常に小さいため張力との同時測定の成功率が非常に低くまだ結果の発表段階に到っていない。以上の結果からラットおよびブタ虹彩散瞳筋において、ムスカリン作用薬および高K液は副交感神経由来の弛緩物質を遊離させ、筋を弛緩させる可能性の高いことがわかった。
著者
佐々木 健介
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

プリオン持続感染細胞ScN2aに治療薬を投与して異常プリオン蛋白の動態を解析する研究で、種類の異なる薬剤を投与して蛋白重合度変化の違いを詳細に検討した。薬剤投与によりプロテアーゼ抵抗性異常プリオン蛋白だけでなく、プリオン蛋白オリゴマーも抑制された。しかし、コンゴ・レッドおよびその誘導体化合物を投与した場合には、分子量数100kDa程度の比較的小さなオリゴマーの抑制効果が乏しいのに対して、ペントサンポリ硫酸投与では十分な抑制効果が示された。これが生体での治療効果に影響を及ぼしている可能性があり、低分子オリゴマーが神経細胞毒性に関与することが示唆された。全反射顕微鏡を用いた解析で、蛍光標識した抗プリオン蛋白抗体を培養細胞から調製したサンプルと反応させて、プリオン蛋白と結合したと考えられる輝点を検出・測定した。未反応の遊離蛍光抗体およびプリオン蛋白モノマーと結合した低輝度の輝点をガウス分布のあてはめにより除外して、重合プリオン蛋白に複数の抗体が結合したと考えられる高輝度のスポットを定量化した。異なるエピトープを認識する抗体を用いて比較解析を行ったところ、高輝度のスポットの割合は抗体ごとに異なり、オリゴマーを構成するプリオン蛋白分子の異常な重合や構造変換を示唆している可能性がある。また、ヤコブ病剖検例の検討を継続して、ヒトのプリオン病におけるペントサンポリ硫酸脳室内投与例のうち、4例の剖検データを蓄積した。治療群では、非治療コントロール群と比較してプリオン蛋白オリゴマーの割合が低下している傾向を認めた。プリオン病の病態解明にプロテアーゼ抵抗性という指標だけでなく、蛋白重合度や構造変換という指標も重要であることが示された。
著者
程 子学
出版者
会津大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究では、個々の学習者の状況を正確且つ全面的に把握し、その状況に応じた適切な学習支援を行うことを目的としている。ユビキタスラーニング環境においては、学習者は、実世界において実際のオブジェクトを観察・接触・操作することにより、学習することができる。また、学習支援は学習者の状況をアウェアし、リアルオブジェクトに埋め込んだ処理機能によって、適時適地に状況に適応するように行われることを目指している。今年度では、前年度の研究結果を踏まえ、学習者の状況を定義し、検出するプラットフォームとして、 SDML(Situation Description Markup Language)を提案し、室内に敷かれるユビキタスタイルというセンサーネットワークを開発し、個体(人やモノ)の位置と識別子を一括して取得することが可能になり、それに基いて、室内の学習者と周りの人やモノからなる状況を検知し、適切な支援を行う。特に、児童に対して、危険の状況を認識させ、安全意識の向上の教育に応用した。また、身体に装着するジャイロセンサーノードによって、学習者の活動の状況を把握する方法をも試みた。さらに、 U-Petというバーチャルキャラクタを設計し、センサ等で把握した学習者の実世界における学習活動の状態に基づき、ユビキタスペットの様態や支援の内容が変更し、学習者ヘフィードバックする。その特徴として、学習カーブの各フェース(順調、停滞、低下)に応じて異なる支援戦略をもって学習者に学習支援を提供できる。 U-Petは、自分の学習状態と成長率をもち、学習者の学習状態に適していきながら、一定の違いを持ち、練習しすぎた学習者に休憩を呼びかけたり、怠けた学習者に努力を喚起したりする支援を行い、学習活動を円滑に行うようにする。
著者
伊原木 大祐
出版者
同志社大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

今年度は、初年度の研究から得られた成果をもとに、本研究全体の核心をなす「受肉」概念の哲学的解明に着手する段階として位置づけられる。具体的な成果は以下のとおりである。1、後期アンリによるキリスト教論の基本的な方向性を把握すべく、レヴィナスとの違いを強く意識しながら、情感性の概念に立脚した「法」批判の意義を検討した(「生の現象学による法の批判」、雑誌『理想』に掲載予定)。アンリは、いわば「ユダヤ-カント的なもの」(リオタール)への批判的立場をヘーゲルやシェーラーと共有しているが、スピノザ哲学に想を得つつ、その立揚をいっそうラディカルな内在思想によって先鋭化している。この着眼のおかげで、レヴィナス思想との錯綜した関係もかなりはっきりと捉えられるようになった。2、アンリによる受肉概念は、エロス的関係における欲望の「挫折」という問題を踏み台にして成立している。サルトル受肉論との対比によって、逆にアンリの独自性が明確になってきた。また、前年度にレヴィナスの生殖論を「生の現象学」によって基礎づける可能性を示唆したが、レヴィナスが十分に扱いえなかった「胎児」の哲学的ステイタスという問題に関して、それを極めて特殊な「有機的抵抗」の経験として厳密に内在的な観点から再理解する方途が探求された。これは、パーソン論とは大きく異なる生命倫理学的な視野を切り開くものである。3、本年度の研究目標の一つとしていた「共同体と個体の関係」の解明からは、「種的社会の展開」および「擬態としての現象」(来年度発表予定)という二つの副産物が生まれた。いずれの論考も、現代フランス現象学に固有の考え方と深い親近性をもった分析となっている。
著者
峰崎 岳夫 梅田 秀之
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

近年の研究によりガンマ線バーストは大質量星の重力崩壊による極超新星に伴う現象であることが次第に明らかになってきた。したがって初期宇宙で発生したガンマ線バーストを用いて星と銀河が生まれ始めた太古の宇宙を解き明かすためには、ガンマ線バーストに付随する極超新星現象の諸性質、発生条件などを理解することが重要である。しかしながら極超新星に関する研究は始まったばかりで極超新星およびガンマ線バースト現象の理解のためには、詳細な観測が可能な近傍の極超新星やガンマ線バースト残光の研究が欠かせない。そこで本研究では近傍で発生した極超新星ないしその候補の可視〜近赤外線の多波長モニター観測を遂行し、精密な光度曲線データをもとに個々の事例について理論モデルを構築して超新星の諸性質(爆発エネルギーや親星の質量など)を求めることを目的としている。Ib型超新星SN 2008Dは2008年1月9日にSwift XRTによって偶然にもX-ray transientとして発見された大変貴重な超新星であり、そのX線放射は超新星のショックブレークアウトに伴うものともガンマ線バーストやX線フラッシュの低エネルギー版とも言われている。本研究課題に基づき、1月12日から100日以上にわたって東京大学ビッグバン宇宙国際研究センター2m望遠鏡を用いてこのSN 2008Dの可視近赤外線モニター観測を行い、精密な多波長光度曲線を得ることができた。このデータから求めた輻射光度曲線とスペクトルの情報を理論モデルで解釈することにより、SN 2008Dが爆発エネルギーや親星質量の観点から極超新星と通常の重力崩壊型超新星の中間的な性質を持つことが示された(Tanaka et.al. 2009 ApJ, 692, 1131 ; Minezaki et.al. in preparation)。
著者
豊福 利彦
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、個体発生の過程で神経提細胞による心臓流出路形成、網膜の光受容体形成におけるセマフォリンの役割を解析した。クラス6セマフォリンは心臓流出路形成の細胞移動を制御すること、クラス4セマフォリンは網膜の光受容体形成を膜輸送制御を介して制御することを明らかにした。
著者
竹内 純一 高橋 規一 實松 豊 川端 勉 川喜田 雅則 香田 徹
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

機械学習,情報理論,およびそれらの応用に関する諸課題について,記述長最小原理に基づく統一的視点のもとに研究を行った.特に,Markovモデルの幾何学的構造と確率的複雑度の関係,通信路容量と確率的複雑度の関係について考察し新たな知見を得た.また,アンサンブル学習等に関して考察し,効率的アルゴリズムや推定法を提案した.さらに,これら基礎的知見に基づき,ネットワークセキュリティにおけるインシデント検知,ポートフォリオ(分散投資戦略),超解像などについて,新たな学習手法を提案し,その有効性を示した.
著者
香田 徹 實松 豊 緒方 将人
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

次世代無線通信方式として注目を集めるOFDM(直交周波数分割多元)方式は,ドップラー効果による周波数のずれに対し脆弱な点を課題として抱えていた.研究代表者らは,サブキャリア間の直交性を必要としない擬似直交マルチキャリアCDMAを提案し,さらにこの結果を発展させたユーザ間の時間・周波数の同期誤差に強い耐性をもつGabor-Division(GD)-CDMAを提案した. GD-CDMAシステムは次の3つの特徴を兼ね備えている.(1)負のマルコフ符号を用いることでユーザ間干渉を独立同分布(i. i. d.)符号に比べ最大9/25まで削減可能(2)時間と周波数のオフセットを同時に推定可能な2次元同期捕捉が可能.(3)時間領域,周波数領域, 2種類のマルコフ符号を使って信号帯域を同時拡散する.符号のマルコフ性により平坦な周波数スペクトルが得られる.以上の結果から, GD-CDMAは, OFDM方式で問題であったドップラー周波数シフト対策が可能であることが示された.周波数の同期保持にはフィードバック構造のPhase Locked Loop(PLL)回路がもっぱら用いられるが,超広帯域通信での応用を見据え、研究代表者らはこれとは異なり、ニュートン法に基づく到来波から周波数と位相を直接同定する手法を提案した。
著者
山脇 成人 岡本 泰昌 山下 英尚 高見 浩
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

脳血管性うつ病(vascular depression: VD)の認知情報処理に関連する脳機能障害と部位を明らかにし、病態に基づいた治療法を開発することおよびVDの存在が脳卒中後のリハビリテーションにおよぼす影響を明らかにして脳卒中患者のリハビリテーションの予後を改善させることを目的として以下のような検討をおこなった。1)脳卒中患者の障害部位と抑うつの臨床症状の特徴との関連、2)VDの長期予後についての検討、3)機能的MRIを用いたVDで認められる機能障害についての検討、4)脳卒中後うつ病とリハビリテーションとの関連。その結果、1)両側の基底核が障害されていた患者ではApathy Scale(意欲低下の程度を示す)の得点が有意に高く、左側前頭領域が障害されていた患者ではZung Self-Rating Depression Scale(抑うつ期分の程度を示す)が有意に高値で,あった、2)VD群ではnon-VD群と比較してうつ病相期間(平均2.6年対1.3年)、入院回数(平均1.1回対0.4回)ともに有意に多く、経過観察期間中に認知症を発症した割合(18%対4%)も有意に高かった。3)言語流暢性課題を用いた。血管障害の有無で比較すると、有意な差は認めなかったが、これまでのうつ病相の回数で比較すると複数回のうつ病相を経験した患者では前帯状回の活性が低下していた,4)脳卒中患者では抑うつ、意欲低下の程度と機能障害の程度と相関していた。以上の結果より脳卒中患者では障害部位の違いにより認められやすいうつ病の症状に違いがあり、左側前頭領域が障害されていた患者で典型的なうつ病症状が、両側の基底核が障害されていた患者で意欲の障害といったより器質的な症状が認められやすいこと、VDではうつ病自体の長期的予後が低く、持続的な器質性の認知障害をきたしやすいこと、老年期うつ病患者の認知機能の低下や脆弱性には血管障害の存在とともにうっ病の再発の多さが関連していること、脳卒中後のリハビリテーションの進行に抑うつが影響を及ぼすことが明らかとなった。
著者
藤田 美琴 (久木元 美琴)
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

昨年度より調査してきた海外在住の日本人の保育ネットワークについて知見をまとめ,国内外の学会において報告・議論した計.この報告では,海外在住の日本人母同士の対面接触を通じた相互の情緒的サポートの様相と,特に対面接触の得られにくい海外地方圏におけるコミュニケーション・ツールの重要性が示された.これらの学会での議論をもとに英語論文を作成し,現在,海外誌『Netcom』に投稿中である.次に,子育て支援の多様化の一環として,非共働き世帯向けの子育て支援である「地域子育て支援拠点事業」を取り上げ,大都市圏と地方都市における供給状況と利用可能性について現地調査を行った.これにより,行政の関与の強さの違いが施設配置にも影響を及ぼしており,利用可能性に格差を生じさせていることが明らかとなった.さらに,非大都市圏における保育の問題をさらに考察するために,沖縄県での調査を実施した.沖縄県は,非大都市圏のなかでも多くの待機児童を抱える地域であるとともに,アメリカ統治時代の歴史的背景によって,固有の「5歳児保育問題」が生じている.こうした地域的背景から,沖縄県では,認可保育所のみならず,認可外保育所や幼稚園,学童保育といったサービスが相互に補完的な役割を果たしながら保育のシステムを形成していることが示唆された.以上の調査研究による知見を踏まえ,昨年以前に得られた知見とあわせ,地域の子育て支援のシステムに関する博士論文としてまとめた.博士論文では,大都市圏と地方圏における保育ニーズの多様化と,それに応じたサービス供給の地域的様相や利用者の生活空間,サービス供給において重要となる地域的主体の役割が明らかにされた.この博士論文によって,2010年3月に博士(学術)を取得した.なお,博士論文の内容の一部(「地方温泉観光地における長時間保育ニーズへの対応」)は,『地理学評論』に掲載された.
著者
福田 慎一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、新たな「ゾンビ企業」の判別手法を開発し、それに基づいて「ゾンビ企業」が復活するメカニズムに関する実証分析を行うと同時に。非上場企業のデータを用いながら、ガバナンス構造がパフォーマンスに与える影響を実証的に考察し、複数の論文にまとめて公刊した。また、その政策的含意の考察という観点から金融政策および財政政策に関する理論的・実証的を行い、複数の論文にまとめて公刊した。
著者
福田 理絵子
出版者
北里大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本年度の我々の研究は、前年度確立したラット頬髭の毛乳頭細胞を使用した、毛乳頭細胞凍結保存法を用いて、臨床の場でも今後この凍結プログラムが使用可能かを見極める事である。その方法としては、頭部腫瘍や瘢痕拘縮修正術を行う際に出る正常ヒト毛乳頭細胞を患者の承諾を得て採取する。正常毛乳頭細胞は少量のため既知の方法にて培養後に使用した。前年度に我々が確立した凍結法に基づき処理した後に、コンピューターフリージングを施行した。ラットに比べ細胞の回収率は低いが保存量としては十分と考えられた。(ラット毛乳頭細胞の場合60〜70%に対しヒト毛乳頭細胞では、50〜60%であった。)解凍後のヒト毛乳頭細胞を培養系に戻すと、2〜3日は正常の増殖過程が認められず、その後正常増殖が開始され細胞数が増加した。これら、凍結保存後のヒト毛乳頭細胞を前年度同様にヒト毛包との共培養の系に移植する予定であったが、同時期に正常ヒト毛包を得る事が出来ず、また毛乳頭細胞も十分な供給量が得られなかったため、共培養は断念した。そこで、我々は解凍ヒト毛乳頭細胞をヌードマウスの肉様膜上に移植した。3体のヌードマウスの計4箇所にそれぞれ移植し観察した。しかし、2箇所移植したヌードマウスは移植後2日目に死亡し、他の2体でも発毛は観察されなかった。本年度の我々の研究はまだこの段階である、今後解凍後のヒト毛乳頭細胞の回収率を上げる必要性があると思われた。得にラットに比べヒトの場合、解凍後の培養系に置いcontaminationを起こす確率が高い、これは手技的な問題もあるがラットにくらべるとヒト毛乳頭細胞の方がcontaminationに弱いとも考えられる。さらにヒト毛乳頭細胞においても共培養の系を試みる必要があり、これらの課題をクリアーした上で臨床試験に移りたいと考えている。
著者
佐和橋 衛 山本 尚生 樋口 健一
出版者
東京都市大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本課題では,ピークデータレート1Gbpsを実現する第4世代移動通信方式に位置づけられるInternational Mobile Telecommunications(IMT)-Advancedに向けた高効率無線パケットアクセス技術を提案し,効果を計算機シミュレーションで明らかにした.具体的には,100MHz程度の送信帯域幅を有するLayered OFDMの無線インタフェース,高効率マルチアクセス,無線リソース割り当て制御,制御情報の高効率多重法,高精度チャネル推定,高次マルチアンテナ技術などを提案し,効果を計算機シミュレーションあるいは実験評価により明らかにした.
著者
梅澤 啓一
出版者
立正大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

世界80数カ国の6歳前後から15歳までの子ども達の絵5万点余りを年齢に沿って分析していったところ、絵に表されている子どもたちがとらえる現実形態の様相とその形態に込められている感性の質は、基本的に共通であり、従って、表現と感性の発達過程とそのメカニズムには普遍性があると認められた。そして、このことをいくつかの典型作品を例にしてその発達過程とメカニズムを辿ることを通じて跡づけた。
著者
杉野 緑 川上 昌子 朝比奈 朋子
出版者
岐阜県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は1990年代後半から急増した日本のワーキングプア(不規則・不安定雇用労働者、低賃金労働者)の社会的性格を実証的に明らかにし、その性格に即した地域での自立条件を提示するための基礎的研究である。一工業都市を対象として不安定労働市場、生活保護、居住条件の側面からワーキングプアの生活実態を検討した。不安定労働就業者の労働市場は縮小しており、ワーキングプアが就労できる雇用の社会的創出とワーキングプアを包摂する失業時所得保障と住宅保障を中軸とする社会保障制度の構築こそが必要である。
著者
勝西 良典 中谷 常二
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

3年間の研究のなかで、ビジネス倫理の教科書を出版し、アメリカの主要な研究書を翻訳し、カントの実践哲学のもつ形式主義がかえってビジネスと倫理の関係にかんする多様なモデルを提供することが示された。また、経営学者と哲学・倫理学者と実務家の交流、および日米独の研究者の交流が確立された。その理論的成果の一端は2010年8月出版予定の書物で公表される。また、実際的活動としては、経営倫理実践研究センターにおいてホールディングス形式の企業形態における共通の規範の醸成法等の各論において継続される。
著者
鈴木 孝太 山縣 然太朗 田中 太一郎 安藤 大輔
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

近年、妊娠中の喫煙が、出生した子どもの肥満と関連していることが示唆され、さらに、この関連には性差があることも推測されていたが、実際に検討されたことはほとんどなかった。本研究では、日本の一地域において、約20年にわたって妊娠中から子どもの発育を追跡してきたデータを用いて解析を行った結果、妊娠中の喫煙が小学生の肥満と関連していることを明らかにした。さらに、これらの関連には性差が存在することを示した。
著者
柴田 浩平 前田 豊樹 三森 功士
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

大腸癌における発癌または癌進展における新規non-coding RNAが注目されてきた。われわれは大腸発癌および癌進展において重要な役割を担う因子について解析を行った既存のデータベース(aCGH, Gene Expression, SNP アレイ)があり、これらをin silico に解析するなどしてlong nc RNAおよびmicroRNAについて解析を進めた。その結果、1)mTOR経路を標的とするmiR144が大腸癌の予後と関連すること。2) 大腸癌のゲノムクラスター上変異と発現変異とが相関する領域としてmiR17-92aが重要であることを改めて明らかにした。さらに3)大腸発癌関連遺伝子多型として8q24 (rs6983267)が知られるが、同多型直上において存在するlincRNA を同定し、同ncRNAの発現がMYCを介した大腸癌進展に寄与することを明らかにした。本助成により、臨床的に有用なマーカー候補であるnon coding RMAを同定し、また基礎的にも新たな発癌機構を明らかにしえた。
著者
柴田 早苗
出版者
岐阜大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

イヌのアトピー性皮膚炎の免疫病態には、ケモカインであるCCL17/TARCが重要な役割を果たしていると考えられている。イヌケラチノサイトにおいて、CCL17 mRNA転写は主にTNF-αによって誘導されることが明らかになっている。しかしながら,その制御メカニズムは明らかにされていなかった。そこで、イヌADに対するケモカインを標的とした治療法の開発に向けて、ケラチノサイトにおけるTNF-α誘導性CCL17mRNA転写の制御メカニズムを明らかにすることを目的に研究をおこなってきた。その結果、イヌケラチノサイト細胞株であるCPEKにおけるTNF-α誘導性CCL17 mRNA転写は、p38によって正に、ERKによって負に調節されていることが示唆された。このことから、研究代表者はERKがイヌAD治療の標的分子として有用となりうると考えた。そこで、本研究では、ADにおいて特異的に発現増加あるいは低下しているERK関連分子をAD新規治療法の候補分子とするために、ADと診断されたイヌの皮膚病変部・非病変部および健常皮膚におけるp38、ERKの活性化およびERKの活性化に関与する分子群の発現を比較検討することとした。当該年度においては、EGFファミリーおよびEGFR mRNA転写量について、リアルタイムRT-PCRを用いて検証するために、EGFファミリーおよびEGFRに対する特異的プライマーを設計した。これら特異的プライマーを用いて、各分子のmRNAを定量することに成功した。また、EGFRに対する特異的抗体を用いたウエスタンブロッティングにも成功した。これらにより、今後はアトピー性皮膚炎病変皮膚を用いた解析が可能となった。