著者
竹内 雅俊
出版者
法学新報編集委員会
雑誌
法学新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.123, no.7, pp.137-154, 2017-01-16

一九九〇年代中頃から二〇〇〇年代初頭にかけ、特に米国の学会を中心に国際法学の方法論、とりわけ学際的なアプローチが再び注目される機会が増えた。これらは、法学とは異なる要素(○○の部分)を加えることにより、国際紛争や国際法を通じた解決の理解がより深められることが期待された。 しかしながら一方で、これら学際的アプローチには、様々な批判が向けられ、その存在意義が問われている。本稿は、これら批判を念頭におきつつ、国際法学におけるこの潮流を素描することを目的とする。
著者
植木 淳
出版者
神戸大学
巻号頁・発行日
2001

博士論文
著者
愛媛大学法学会
出版者
愛媛大学法学会
巻号頁・発行日
1974
著者
丸井 淳己 則 のぞみ 榊 剛史 森 純一郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会研究会資料 知識ベースシステム研究会 102回 (2014/7) (ISSN:24364592)
巻号頁・発行日
pp.10, 2014-07-24 (Released:2021-07-14)

It is now common to have a conversation with others on social media. Many research have been taken to see the community structure on social media, but there are few studies that apply link-based community (link community) detection on a large social network. Link community detection allows users to belong to more than one community. We improve the method of existing link community detection of Ahn et al., which extracts many small communities. We evaluate existing and proposing methods by network indexes, and we characterize link communities from users' biographies. We found that link communities sharing users have similar characteristics from biographies.
著者
小久保 卓 小山 聡 山田 晃弘 北村 泰彦 石田 亨
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.1804-1813, 2002-06-15

いまやインターネットは現代社会の中に急速に浸透しており,そのサービスの中でも特にWWW(World Wide Web)は新しいメディアとしてその情報量を増大させている.しかしながら最も一般的なWWW情報検索手法である検索エンジンは,必要な情報を得るためにある程度の知識や経験が必要とされ,多くの初心者にとって使いこなすのは容易ではない.こうしたWWW情報検索における問題の解決法の1つとして,ドメインを限定した専門検索エンジンの提供があげられている.そこで本論文では専門検索エンジンを構築するための新しい手法として``検索隠し味''を用いた手法を提案する.これはユーザの入力クエリに対しある特定のキーワードを追加すると,汎用検索エンジンの出力のほとんどがドメインに関係するWebページとなるという経験則を利用したものである.そして機械学習の一種である決定木学習アルゴリズムを元にWebページ集合からキーワードのブール式の選言標準形として検索隠し味を抽出するアルゴリズムを開発した.さらに本手法を料理レシピ検索に適用し評価実験を行うことで,その有効性の確認を行った.
著者
服部 等作
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.9-16, 2005-01-31 (Released:2017-07-19)
参考文献数
19

本研究の目的は、王、皇帝、あるいは聖職者用に象徴性を備えた玉座に関する研究である。本論文では、紀元前3000年期のメソポタミア文明1期のウルク、及びジェムデド・ナスル様式の印章に表現された3種類の特徴的な座像を調ペた。座像は、地面に直接すわる床座像、敷物にすわる床座像、そして低い座面の原形風スツールの上の床座および椅座の人物像が出現する。これら3種の座像から、地面に直接すわる床座像には、群像が多い、単独像に従い敷物あるいはスツールを利用する図像が増大する。特に単独の座像は、スツールの上の片立て膝の床座姿勢が多数ふくまれ、その表現には特別な人物を想起させる神殿や祭犯の光景が加わる。このことからスツールの上の床座、とりわけ片立て膝の床座姿勢をとる人物座像に玉座の性格の一部を有するとしてその特徴が見いだせる。
著者
油井 邦雄 小柴 満美子 中村 俊 濱川 浩
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 = Japanese journal of biological psychiatry (ISSN:09157328)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.29-34, 2011-03-25
参考文献数
47
被引用文献数
1

不飽和脂肪酸のアラキドン酸は神経発達に重要な役割を果すので,ミラー入 0 ロン系を中心とした情報伝達・処理や志向性に関わる脳機能の発達不全とされる自閉症スペクトラム障(Autism Spectrum Disorders : ASD)の対人的相互性障害を改善し得ると期待される。アラキドン酸 240mg/日(12 歳以下は1/2)の臨床効果を 16 週間の double-blind placebo-controlled trial で検索した。アラキドン酸投与群はプラセボー投与群にくらべて,社会的ひきこもりとコミュニケーションが有意に改善した。神経細胞の signal transduction に関わっている transferrin が投与前にくらべてアラキドン酸投与群で有意な変動を示し,superoxide dismutase も投与前にくらべてアラキドン酸投与群有意傾向で変動した。社会的相互性障害の改善は signal transduction の upregulation によると推察された。

1 0 0 0 車両と電気

著者
車両電気協会 [編]
出版者
車両電気協会
巻号頁・発行日
vol.14(7), no.162, 1963-07
著者
竹内 孝 西田 遼 鹿島 久嗣 大西 正輝
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.2I3GS5b03, 2021 (Released:2021-06-14)

群衆に対する移動誘導は,突発的な事故や道路遮断で生じる交通渋滞の解消や,災害時に混雑した建物などの危険箇所からの迅速な避難などの分野で注目を集める問題である.ある状況下において誘導はどのような群衆移動を起こすか?この質問に解答するシステムが実現されれば,誘導の意思決定における補助が可能になると考えられる.本研究では,群衆移動誘導におけるwhat-if問題を,少数かつ選択バイアスを持つデータから誘導における因果効果推定を行う問題として定式化する.さらにバイアスを補正した高精度な予測を行うために,空間データ解析と因果推論の分野で広く研究されている深層表現学習を用いた空間畳み込み反事実回帰(SC-CFR)を提案する.介入効果推定の性能評価には,すべての誘導を実行した場合の群衆移動データが必要であるが,そのようなデータは存在しない.そこで,高精度なマルチエージェントシミュレータを用いて,新国立劇場での避難シナリオにおける避難データを生成した.このデータを用いた実験によって,提案手法によって介入効果の推定誤差が既存法と比較して最大56%削減されたことを示す.
著者
中尾 俊之 松本 博 岡田 知也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.89, no.11, pp.2304-2308, 2000-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5
被引用文献数
4 2

慢牲腎不全・透析患者では,感染防御に対する解剖学的・生理学的機構の障害や好中球,単球・マクロファージをはじめTリンパ球, Bリンパ球の異常を認め,免疫不全の状態にあり易感染性宿主となっている.一般細菌感染症では下気道や尿路および透析用血管内留置カテーテルの感染が多い.また肝炎ウイルス感染や結核症の罹患率は一般人に比べて著しく高いことが注目される.腹膜透析患者の腹膜炎では,明らかな感染源なしの自然発症細菌性腹膜炎の頻度が高い.
著者
米家 泰作
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2020年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.99, 2020 (Released:2020-12-01)

近代日本の林学は,日本が帝国主義への道を歩み始めた19世紀末に制度化され,ドイツ林学を通じて科学的林業の考えを取り入れた。報告者はこの点に留意して,林学の確立と植民地の拡張,ならびに環境主義の関わりについて検討を重ねてきた(米家2019,米家・竹本2018,Komeie 2020)。本報告では,科学的林業の素養がないまま台湾で草創期の林学の基盤を築いた田代安定に注目し,植民地林学の形成にみる本国と植民地の関係性について考察する。田代安定(1857-1928)は,19世紀末から20世紀初頭にかけて、主として植物学や人類学の分野で活躍した人物であり,八重山諸島や台湾先住民の調査で知られる。また,研究者としての側面と,台湾総督府の植民地統治を支えた技官としての側面があり,その多面的な人物像の検討が進んでいる(呉2008,中生2011)。田代と台湾の関わりは,日清戦争時の澎湖諸島占領に随行し(1895年),自生植物の目録と「植樹意見」を作成したことに始まる。田代は創設された台湾総督府に勤め,主として林政と先住民統治に関わった。前者に関しては,街路樹を含む植林の促進と,熱帯植物殖育場における有用植物の研究が大きい。これらは,田代が植物学の知識を活かして熱帯林学の基盤づくりを進め,植民地の開発を意図したことを示している。ただし,総督府における田代の立場は殖育場主任に止まり,林務課や林業試験場の要職には就かなかった。また、田代の関心はもっぱら植栽すべき種の選定と育苗にあり,伐採林業の促進には関わりが弱かった。一方,東京農林学校が1890年に帝国大学に編入されると,ドイツ林学を学んだ林学士の輩出が始まった。林学教室のスタッフの一人,本多静六(1866-1652)は,植民地となった台湾や朝鮮に関心を広げ,帝国の林学を志向することになる。1896年に台湾の山岳植生を調査した本多は,「植物家」のように植物種を単に記録するのでなく,林学の立場から植生の人為的変化を捉えるべきだと主張した。本多と田代は,澎湖諸島の植生の成因について意見が相違しており,植物種に関心を置く田代と,生態学的な視座から森林管理を志向する本多の立場は,対照的であった。植民地台湾に赴任した帝大卒の林学士として,本多と同期の齋藤音作がいるが,数年で内地に戻っている。より本格的な人材として,林務課長や林業試験場長を務めた賀田直治(1902年卒)と,林業試験場長を務め,後に九州帝大に招聘された金平亮三(1907年卒)が挙げられる。他にも帝大や高等農林学校で林学を修めた人材が,次第に台湾の林政に加わるようになると(呉2009),林学を基盤としない田代の存在意義は次第に弱まったと推測される。田代は1920年代初頭に台湾総督府の仕事から離れた。本国から科学的林業の担い手が送り込まれたことで,世代交代を迫られたといえる。しかし林学者ではない人物が,有用植物の把握や植樹の提起を通じて植民地林学の基礎を築いたことは,帝国日本の林学形成の一端が植民地にあったことを示している。
著者
舟津 昌平
出版者
日本経営学会
雑誌
日本経営学会誌 (ISSN:18820271)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.26-36, 2017 (Released:2019-09-03)
参考文献数
38

This study examines how to legitimize innovation activities when a firm introduces a department promoting innovation (like R&D). Uncertainty is the nature of innovation and this produces various problems. Firms have dealt with such problems by setting up full-time departments in manufactures, but, there is a problem about mobilizing resources. Prior research has claimed that entrepreneurs have to legitimize their activities by getting collaborators in order to achieve mobilization. However, prior research still has problems: legitimation process convergent top-down legitimation, getting the cognition of authorities even though existing studies on the legitimation process and distinguish between top-down legitimation and manipulation strategy. Next, getting collaborators is regarded as a mere instrument for legitimation that doesn't have practical value. However, getting collaborators may have practical value in the front office of service providers. This study claims the importance of a front-based legitimation process, while prior research tends to pay attention to the top-down process. So the purposes of this article are (1) to reconsider the legitimation process by analyzing the case of setting up a new department (2) to examine the practical value of getting collaborators. This investigation is a case study. It is the case that MOS Food Services introduced the ‘Jisedai MOS development department’. The data sources are mainly a) 6 interviews with 5 people from MOS Food Services; b) participant observation of a collaborative program between the university and the firm; c) lectures and discussion with Mos Food Services. As a result of analysis, this study claims that top-down legitimation is not enough and front-based legitimation is more important when the front office has an important role to serve customers and resources are divided between money and others. In addition, the acceptance of collaborators may have practical value when various stakeholders can relate with innovation activities. This article is novel and original in analyzing the legitimation process from the view of the front office and pointing out the front-based process as well as the top-down process.
著者
Takuma HARA Hiroyoshi AKUTSU Shuho TANAKA Hiroyoshi KINO Hidetaka MIYAMOTO Rieko II Shingo TAKANO Eiichi ISHIKAWA
出版者
The Japan Neurosurgical Society
雑誌
Neurologia medico-chirurgica (ISSN:04708105)
巻号頁・発行日
pp.2022-0132, (Released:2022-11-25)
参考文献数
25
被引用文献数
1

This study analyzed risk factors for postoperative cerebrospinal fluid (CSF) leak after graded multilayer cranial base repair method with dural suturing. We performed surgery via the endoscopic endonasal approach (EEA) from 2012.6 to 2018.4, and those consecutive clinical data were prospectively accumulated and retrospectively analyzed. We tailored the repair method according to the intraoperative CSF leak grade. Among 388 surgeries via the EEA, there were 10 (2.6%) cases of postoperative CSF leak after graded repair with suturing. Postoperative CSF leak occurred in two of the 150 cases without intraoperative CSF leak (grade 0), one of the 104 cases with small (grade 1) intraoperative CSF leak, two of the 60 cases with moderate (grade 2) leak, and five of the 74 cases with large (grade 3) leak. Univariate analysis indicated that chordoma (P = 0.023), estimated tumor volume ≥ 7400 mm3 (P = 0.003), and maximum tumor diameter ≥ 32.5 mm (P = 0.001) were significant risk factors for postoperative CSF leak. Additionally, among cases with intraoperative grade 3 CSF leak, chordoma (P = 0.021), estimated tumor volume ≥ 23000 mm3 (P = 0.003), and maximum tumor diameter ≥ 45.5 mm (P = 0.001) were significant risk factors for postoperative CSF leak. Maximum tumor diameter, estimated tumor volume, and chordoma tumor pathology are related to a higher risk of postoperative CSF leak.
著者
莚田 泰誠
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
日本臨床薬理学会学術総会抄録集 第42回日本臨床薬理学会学術総会 (ISSN:24365580)
巻号頁・発行日
pp.2-S25-1, 2021 (Released:2021-12-17)

ファーマコゲノミクスは、薬効や副作用などの薬物応答性に関連する遺伝的要因 (ゲノムバイオマーカー) を見出し、個人個人に合った薬を適切に使い分けることを目指す研究分野である。がん治療においては、医薬品の適応判定を目的としたコンパニオン診断薬として、がん遺伝子検査と次世代シークエンサーを用いたがんゲノムプロファイリング検査が、現在約30薬剤について保険収載されている。これらのコンパニオン診断薬のほとんどは、がん組織を用いる体細胞遺伝子検査であるが、2019年より、従来、遺伝性乳癌卵巣癌症候群の診断に用いられてきたBRCA1/2検査が乳癌・卵巣癌・前立腺癌・膵癌治療薬オラパリブの選定のために行われている。一方、薬物血中濃度や重症副作用を予測する遺伝子検査 (薬理遺伝学検査) では、抗がん薬イリノテカンによる副作用の発現リスクを予測するUGT1A1検査、炎症性腸疾患、リウマチ、白血病、自己免疫性肝炎等の治療におけるチオプリン製剤 (6-メルカプトプリン、アザチオプリン) の至適投与量を予測するNUDT15検査、多発性硬化症治療薬シポニモドの投与可否・投与量を判断するためのCYP2C9検査 (いずれも保険収載)、ゴーシェ病治療薬エリグルスタットの用法・用量調整に用いられるCYP2D6検査 (先進医療) のわずか4種類 (5薬剤) が臨床応用されているに過ぎない。このように、臨床導入が限定的である薬理遺伝学検査の社会実装を推進するためには、臨床的有用性 (clinical utility) を示す信頼性の高いエビデンスを示すとともに、結果返却に関するプロセスを含むゲノム医療の提供体制の構築に関する検討が必要であると考えられる。
著者
小林 史弥 杉本 匡史 青柳 西蔵 山本 倫也 長田 典子
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.263-272, 2022-11-25 (Released:2022-11-25)
参考文献数
20

A paradigm shift is taking place from the era of buying common off-the-shelf products to that of buying personalized products. In this study, we modeled salesclerks’ utterances and performed experimental evaluation of using a communication robot in bespoke scenes, which is a sales method of customized products. First, we extracted the model of the expert salesclerks’ utterances that is useful for improving satisfaction in suit bespoke by comparison with novice salesclerks. Next, we modeled customers’ emotions evoked in bespoke scenes. Then, we analyzed how the robot’s speech based on the model of utterances evoked customers’ emotions. As a result, we revealed that the speech that encouraged the customer’s decision was useful for improving the customers’ satisfaction.
著者
大津 耕陽 泉 朋子
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.301-314, 2022-11-25 (Released:2022-11-25)
参考文献数
18

Conversational agent that anthropomorphizes daily items could be a useful means of drawing the user’s attention to the object and providing effective guidance. However, many previous attempts have focused on physical robotization, and it is not clear how the introduction of linguistic anthropomorphic conversations into these conversational agents will affect the user’s sense of familiarity with the objects and feeling that the objects themselves are speaking to them. We focused on four elements of anthropomorphic expression and investigated how adding these elements to plain text changes the way humans perceive machine and non-machine artifacts. As a result, it was clarified that when anthropomorphic elements is added to the text, it become easier to perceive the object itself is speaking and enhances feelings of attachment and familiarity. This tendency is significantly seen in the younger generation.
著者
井上 昌次郎
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究者らが睡眠促進物質(SPS)の一成分として同定した酸化型グルタチオン(GSSG)は、還元型グルタチオン(GSH)とともに生体内に広く分布し、活性酸素の中和などによって解毒をおこない、生体防御にかかわることが知られている。また、中枢神経系では両物質がグルタミン酸作動性神経伝達を阻害することが知られている。一方、グルタミン酸は興奮性アミノ酸として重要な神経伝達物質であるが、その過剰は酸化窒素の生成を促進し、これが神経毒として作用すると理解されている。これらの事実から論理的に推論すると、睡眠促進物質としてのグルタチオンはグルタミン酸作動性神経伝達を阻害することによって睡眠を増強するが、このさいの睡眠には覚醒時の神経興奮によって生じたグルタミン酸過剰ないしは神経毒産生を解消する能動的な生理機能が賦与されているのではないか、という仮説に到達する。本研究は睡眠促進物質グルタチオンを通して生体防御に果たす睡眠機能について、このような革新的な発想を実験的に解析しようとするものである。実験動物に若い成体の雄ラットを用い、無拘束・無麻酔状態で、自発行動・脳波・筋電図・脳温を連続的にモニターした。第3脳室には微小量の睡眠物質溶波を連続注入するためのカニューレを慢性的に挿入した。これらの実験動物にGSSGまたはGSHを夜間の活動期に投与すると睡眠が有意に増加することがわかった。また、GSSGを明期に投与したのちに部分断眠または強制運動を負荷すると、体温上昇や睡眠潜時が有意に軽減されることがわかった。これらの結果は上の仮説に符合するものであり、さらなる解析により確証できるものと考えられる。