著者
里田 直樹
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

前臨床ミニブタモデルでこれまで免疫寛容(免疫抑制剤なしで拒絶が起きない状態)のマーカーと考えられていた制御性T細胞の特異的遺伝子;FOXP3発現が、逆説的に拒絶の早期に末梢血中で高くなることを見出した。本研究では、さらにミニブタのモデルを用いて拒絶時のFOXP3の発現のメカニズムを明確にし、FOXP3が低侵襲性の信頼できる肺移植の早期拒絶のバイオマーカーとなりうるかどうかを検討した。今後とも、本研究で早期拒絶のバイオマーカーが確立されれば全例に多量の免疫抑制剤を用いるのではなく、ベースラインの免疫抑制剤を感染症が起きない程度に減らしたうえで、早期の拒絶を診断した場合にのみ免疫抑制剤を増量する、いわゆる個々の患者ごとに特有のテーラーメイド的、免疫抑制療法が可能となる。さらに、この方法で肺移植の拒絶の早期における拒絶のバイオマーカーが確立されれば、すべての肺移植の患者に強力な免疫抑制剤を投与するという現行のやり方を改め、ベースラインの免疫抑制剤の量を減らしたうえで、FOXP3を拒絶マーカーとして患者のモニタリングを行い、拒絶が起きた場合には速やかに免疫抑制剤を増やすという、個々の患者に合わせたテーラーメイド的免疫抑制療法が可能となり、過剰免疫抑制による患者の感染症死を激減することができると期待される。本研究は多量の免疫抑制剤を用いるのではなく、ベースラインの免疫抑制剤を感染症が起きない程度に減らしたうえで、早期の拒絶を診断した場合にのみ免疫抑制剤を増量する、いわゆる個々の患者ごとに特有のテーラーメイド的、免疫抑制療法の一歩となる方向に位置づけたと言える。
著者
水越 敏行 木原 俊行 黒上 晴夫 生田 孝至 竹内 理 久保田 賢一 黒田 卓 田中 博之
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

4年間で主として以下のような研究に取り組んできた。1.国際協力ボランティアとの交流を通した高校の総合的学習の研究2.中学校および高校における情報教育の開発研究3.総合的学習と情報教育を中心とした学校の診断的研究4.環境番組の連続視聴が視聴者に及ぼす影響についての研究5.異文化間理解教育における外国制作による日本用地理番組の効果に関する実証研究6.学校放送番組とWebを連携させた交流学習システムの開発と評価7.動画クリップ活用に関する実証的研究8.大学における遠隔双方向学習の事例分析と評価9.諸外国におけるICT教育の事例の動向把握10.メディアに対する子どもの態度に関する実証的研究(学校教育におけるインターネット利用の有無、諸外国間の比較に注目して)11.携帯電話などの新しいメディアについての調査研究12.高等教育における外国語教育でのマルチメディア活用そして、4年間にわたる研究成果を報告書としてまとめた。1.総合的学習と情報教育の接点(水越敏行)2.中学校の情報教育(水越敏行)3.高等学校の情報科(黒田卓)4.諸外国の情報教育(木原俊行)5.子どもはメディアをどう見ているか-比較文化的考察-(生田孝至)6.日常文化の中でのメディア教育(岡田朋之)7.テレビとインターネットをつないだ共同学習(黒上晴夫)8.遠隔学習の新しい可能性(久保田賢一)9.外国語教育におけるメディア利用(竹内理)
著者
陳 豊史
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

「ドナー不足」に対する打開策として、心臓死ドナー(donation after cardiac death, DCD)肺を用いた肺移植がある。DCDでは心停止後の温虚血による臓器傷害が甚大であるが、吸入による薬物投与などの手法を開発することで、傷害肺の有効利用が可能になる。これに基づき、申請者は、以下一連の研究を行った。(1) rat肺ex vivo潅流モデルを用いて、さらに優れた肺保護作用を有する薬剤の検索(2)新しいDDSを用いた薬剤の吸入効率改善についての検討(3) 大動物ex vivo肺潅流モデルの確立。
著者
天野 仁一朗 里田 隆博
出版者
九州歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

我々はラットの前交連尾側端レベルの線条体中央部に、微小電気刺激および徹小化学(受容体)刺激によって開口筋と舌突出筋には同側優位の顕著なEMG活動を誘発するが、閉口筋,舌後退筋または顔面筋には何の活動も誘発しない線条体顎領域striatal jaw regionを発見した(Neurosci. Lett.,253:79-82,1998;Brain Res.893:282-286,2001)。平成14年度は本研究課題の最終段階として、解剖学者と共同して線条体顎領域SJRニューロンの線維連絡について形態学的解析を行った。1本の電極で微小電気刺激と微量トレーサ注入が同時に行なえる微小シータガラス管電極(θ管電極;先端直径25〜65μm)で誘発EMG活動を指標にSJRを同定し、SJRにコレラトキシンサブユニット(CTb)を電気泳動的に注入した。CTbの注入部は、前交連の最尾側のレベルにおいて、線条体のほぼ中央部に限局していた。逆行性標識神経細胞体は、主として、(1)大脳皮質の運動野、体性感覚野、島皮質、(2)視床の内側中心核(NCM)と束傍核、(3)扁桃体外側基底核、(4)黒質緻密部に分布していた。大脳皮質からSJRへの投射線維は主としてV層とVI層から起り、その起始領域には二つの中心が認められた。すなわち、感覚運動野顔領域と島皮質領域である。これらの皮質領域は、連続刺激によってそれぞれ異なるタイプの連続顎運動が誘発される領域である。なお、順行性終末標識を淡蒼球外節、脚内核、黒質網様部に認めた。以上の生理学実験は研究代表者・天野一朗が担当し、解剖学実験は研究分担者・里田隆博(広島大学歯学部)が担当した。なお、研究結果はNeurosci. Lett.,322:9-12,2003に報告した。
著者
里田 隆博
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

ラット孤束核への入力系を調べるため,孤束核を目標にWGA-HRPを注入した.小脳に対する損傷を最小限にするため,後頭骨の一部を除去して,小脳の一部を吸引除去の後,第四脳室尾側部を確認して,孤束核にトレーサーを電気泳動的に注入した.注入が孤束核中央部に限局した例では孤束内の線維が標識され,またそれは反対側にまでおよんでいた.注入部位の尾側部の孤束核内に標識細胞が見られると同時に,孤束内に軸索を伸ばしている舌下神経核ニューロンと迷走神経背側核ニューロンが観察された.また孤束核より,腹外側方へ伸びる軸索が観察され,孤束核ニューロンと延髄網様体ニューロンとの関連が示唆された.孤束核を中心として大量に注入された例では,同側舌下神経核,迷走神経背側核に標識細胞が見られたと同時に,顔面神経核の最尾側部のレベルにおいて正中部を通過して,反対側へ向かう軸索が観察され,両側性に三叉神経上域から三叉神経運動核内において標識神経終末が観察された.さらに吻側方においては同側の三叉神経中脳路核に多数の標識細胞が,内側・外側結合腕傍核に多数の標識神経終末が見いだされた.これらの神経細胞および標識終末は,孤束核への限局注入例と比較して,孤束核の腹側の網様体よりの入力と考えられる.一方,疑核尾側方網様体にトレーサーが注入された例でも,同側の三叉神経中脳路核に標識細胞が見いだされた.次にこの三叉神経中脳路核ニューロンの延髄および頚髄内の下行性投射を調べるため,咬筋または側頭筋にTrue BlueやFluororubyを注入して,頚髄にFluorogoldを注入し,三叉神経中脳路核内に二重標識されるニューロンの存在を調べた.その結果,中脳路核には二重標識された細胞はみあたらず,中脳路核ニューロンの軸索は頚髄には投射せず,延髄内にとどまっていることが分かった.
著者
里田 隆博
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

ニホンザルを用い,咽頭を支配する運動神経細胞および神経終末について調べた.実験にはニホンザル15頭を用い,舌咽神経を剖出し,その末梢枝(舌枝,咽頭枝)にHRPを注入した.また茎突咽頭筋を剖出しHRPを注入した.48時間生存の後,潅流固定し,脳幹部と末梢の神経節(舌咽神経上神経節,下神経節,迷走神経上神経節,下神経節,交感神経上頚神経節,中頚神経節,下頚神経節)の60μmの凍結連続切片を作製しHRP検出反応を施した.舌咽神経の末梢枝は,頚動脈洞と頚動脈小体を支配する頚動脈洞枝,舌根部を支配する舌枝,咽頭収縮筋を支配する咽頭枝より構成されていた.茎突咽頭筋の支配神経は舌枝より分岐しており,大変細くその枝にHRPを注入するのは困難であった.咽頭枝と頚動脈洞枝は迷走神経とも連絡があり,又,これらの末梢枝は交感神経上頚神経節とも連絡があった.舌枝注入例では,孤束核に多数の標識終末が見られ,また一部の例においては三叉神経脊髄路核の中間亜核の背側部に標識終末が見られた.標識細胞は下唾液核に出現した.神経節は舌咽神経上神経節,下神経節に標識細胞が見られ,交感神経上頚神経節にも標識細胞が見られた.一方,咽頭枝注入例では,脳幹内には,標識終末は見られず,標識細胞が疑核の顔面神経後核と細胞緻密部に出力した.神経節は少数の標識細胞が下咽神経下神経節,迷走神経上神経節,交感神経上頚神経節に出現したのみであった.又,茎突咽頭筋の支配神経細胞は疑核の顔面神経後核にのみ出現し,細胞緻密部には出現しなかった.以上の結果より舌枝は主として求心性の要素よりなり,咽頭枝は主として遠心性の要素よりなるが,少数の求心性要素も含んでいるということが分かった.又,茎突咽頭筋の支配運動神経細胞は疑核の顔面神経後核にのみ存在することが分かった.
著者
松島 龍太郎 里田 隆博 高橋 理 田代 隆
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

カルシトニン遺伝子関連ペプタイド(CGRP)とP物質はともに感覚神経の中でも特に侵害刺激(痛覚刺激)の伝達物質として働くことが考えられている。脳幹部の三叉神経脊髄路核内における両物質の分布と共存関係について検索した。この結果、CGRP陽性線維は三叉神経感覚核群の全亜核に分布しており、三叉神経主感覚核ではその背側亜核に背外側部と腹側亜核の内側縁に、三叉神経脊髄路核の吻側亜核ではその背内側部と内側部に、同中間亜核では腹内側縁と外側縁に、そして同尾側亜核では第I層、第IIo層そして第V層に分布した。これらCGRP陽性線維は大部分がP物質を共有していた。一方、三叉神経節ではCGRP陽性細胞の大部分は小型ないし中型の円形ニュ-ロンであり、P物質を含有するニュ-ロンは他の細胞に比較して小型であった。三叉神経根を切断した実験例では、同側の三叉神経感覚核群においてCGPR陽性線維のほとんどが消失した。以上の結果より、三叉神経系のCGPR陽性線維の大部分は三叉神経節由来の一次求心線維であり、P物質をも含有することが明らかとなった。すなわち、小型神経節細胞に由来する痛覚伝達線維である。一方、実験動物の一側の歯髄に炎症を起こさせた場合、同側の三叉神経脊髄路核の尾側亜核にオピオイド(ダイノルフィン)含有ニュ-ロンが増加した。これらの細胞はCGRP陽性の神経終末と接触している事実が観察された。したがって、口腔領域に発した痛覚情報は、三叉神経節の小型細胞を経由して三叉神経脊髄路核尾側亜核に投射され、上位脳あるいは局所に投射するニュ-ロンに直接に伝達されることが明らかとなった。
著者
内田 隆 村上 千景 里田 隆博 高橋 理 深江 允
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1993

ブタ歯胚のエナメル蛋白に関して、分子生物学的、生化学的、光顕および電顕免疫組織化学的に検索し、以下の結果を得た。1. 小柱鞘蛋白のクローニングを行い、全アミノ酸配列を決定した、それをシースリンと名付けた。シースリンは380または395のアミノ酸残基よりなり、そのN端側に26アミノ酸残基よりなるシグナルペプチドを持っている。シースリンはラットのアメロブラスチンと塩基配列で77パーセント、アミノ酸配列で66%の相同性を持っていた。シースリンのC端部付近にはリン酸化された糖鎖がついていると考えられるが、その部位は推定できなかった。2. シースリンは分泌後速やかに分解され、そのN端側約100〜150アミノ酸残基を含むフラグメントは13-17kDaの小柱鞘蛋白となって、小柱鞘に局在する。C端側95アミノ酸残基は29kDaカルシウム結合蛋白となり、このC端部約20アミノ酸が切断されると27kDaカルシウム結合蛋白となる。両者はリン酸化された糖蛋白であり、幼若エナメル質表層のみに局在する。シースリンの分子中央部は特定の構造に局在せず、速やかに分解される。3. エナメリンのクローニングを行い、全アミノ酸配列を決定した。エナメリンは1104のアミノ酸残基よりなり、エナメル芽細胞より分泌されたエナメリンは、分子量約150kDaでエナメル質最表層に位置し、ヒドロキシアパタイトに親和性を持たないと考えられる.エナメリンの分解産物のうち、N端側631アミノ酸残基よりなるプラグメントがヒドロキシアパタイトに親和性を持つ分子量89kDaエナメリンとなる。この89kDaエナメリンがさらに分解して、136番目から238番目のアミノ酸残基よりなる部分が32kDaエナメリンとなる。4. エナメル質形成において、アメロゲニンはエナメル質の形態を作り、エナメリンは石灰化開始とアパタイト結晶の成長に関係し、シースリンは小柱鞘の形成に関与していると考えられた。
著者
里田 隆博
出版者
広島大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

ニホンザルの舌咽神経内の交感神経およびその求心性線維と遠心性線維の検索を行った。実験にはニホンザル15頭を用い,舌咽神経の末梢枝を剖出し,その末梢枝にHRPを注入し48時間生存の後,灌流固定し,脳幹部と末梢の神経節(舌咽神経上神経節,下神経節,迷走神経上神経節,下神経節,交感神経上頚神経節,中頚神経節,下頚神経節)の60μmの凍結連続切片を作製しHRP検出反応を施した.舌咽神経の末梢枝は,頚動脈洞と頚動脈小体を支配する頚動脈洞枝,舌根部を支配する舌枝,咽頭収縮筋を支配する咽頭枝より構成されていた.頚動脈洞枝は迷走神経とも連絡があり,また交感神経上頚神経節とも連絡があった.この頚動脈洞枝にHRPを注入すると,同側の孤束核に標識終末が見られ,顔面神経核の背内側方の網様体の中にも標識細胞が見られた.また末梢の神経節においては,舌咽神経上神経節,下神経節,迷走神経下神経節,交感神経上頚神経節に標識細胞が見られた.舌枝に注入した例においては,孤束核に多数の標識終末が見られ,また一部の例においては三叉神経脊髄路核の中間亜核の背側部に標識終末が見られた.又,標識細胞に関しては下唾液核に出現した.末梢の神経節に関しては舌咽神経上神経節,下神経節に標識細胞が見られ,交感神経上頚神経節にも標識細胞が見られた.一方,咽頭枝に注入した例においては,脳幹内には,標識終末は見られず,標識細胞が疑核の顔面神経後核と細胞緻密部に出現した.末梢の神経節に関しては少数の標識細胞が舌咽神経下神経節,迷走神経上神経節,交感神経上頚神経節に出現したのみであった.以上の結果より舌咽神経の頚動脈洞枝と舌枝は主に求心性の要素よりなり,咽頭枝に関しては主として遠心性の要素よりなるということが分かった.また今回の実験では舌咽神経のどの枝にも交感神経の要素が多少なりとも入っていることが分かった。
著者
川口 由彦
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本年度は研究実施計画に書いたように、昨年度がら収集してきた資料を更に充実させるべく、群馬県立文書館に3回、京都府立総合資料館に2回、調査に赴いた。小作争議表、小作調停受理・結果報告書、自作農創設維持計画書、地主所蔵文書などを中心に、群馬と京都という二つの地械での地域での地主小作関係の現代的内容を考察するためである。今年度の科研費は、この調査にほとんど費やしたといっていい。ここからわかったのは、京都の場合、1927年頃から小作争議解決の方式とでもいうものが登場することで、小作調停条項であらかじめ検見対象地を決めておき、地主小作立会のもと、農会の技術者が厳密に収穫量を測定し、収穫量を前提に機械的に減免額を決定するという手続の設定にまでいたっているということである。地主小作立会のもとの検見というのは、それ自体としては、江戸時代からのムラ仕事としてなされる「ムラ決め」の延長線上といえなくもないが、これを調停条項として、法的強制力を持たせたところにこの時代の特徴がある。どりわけ、争議の際の「当事者間の合意」を制度的に排除してしまった点で、地主小作人間の対立が極限にいたり、ぎりぎりのところで小作関係を継続するためこのようなシステムが生まれたと思われるのである。農林省発行の「小作年報」所載の調停条項例で見ても、京都と新潟くらいでしか見られない特異なシステムである。これにくらべると、群馬では、そもそも京都のように小作料減額免除システムをあらかじめ決めておくという解決方法が少なく、一回きりの減額や土地返還を決めるものが圧倒的に多い。例外は、全国的に「無産村」として名をはせた新田郡強戸村と、隣村の山田郡毛里田村である。この2村では争議が激甚に戦われたが、これを反映して調停条項も、当該争議以降の減額免除規定を定めるものが多い。ただ、その内容を見ると、地主小作両者からなる「委員会」をつくってここで合意するとなっているものがよく見られ、京都のように合意の契機を排除するところまでいっていない。強戸村の場合、村政も小作側が握ってしまうという特異な事態があったにせよ、従来の「ムラ決め」的要素を引ぎずっているといっていい。この相違が、農地改革期にも現れ、京都の場合は、農地改革は自明のことで、次のステップが考えられていくのに、群馬では、農地改革自体に大きな力が注がれる。農地法下の農民のあり方もこれに規定されたものとなるのである。
著者
中村 秀仁
出版者
独立行政法人放射線医学総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、「次世代がん診療装置CROSS(Correlation Response Observatory for Scintillation Signals)計画」のプロトタイプとして有機シンチレータと無機シンチレータから成るハイブリット型検出器CROSS-miniを完成させました。また、そのプロトタイプ検出器を用いた業績の一つとして、平成20年12月1日に米国科学誌に報告し、同日、文部科学省にて記者会見を行いました「放射線源から放出される放射線の革新的な計測方法の開発」を挙げます。
著者
玉浦 裕 阿部 正紀 北本 仁孝 金子 宏 長谷川 紀子
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

集光太陽ビームをセラミックスに照射し1300-1600℃に急速加熱すると、特殊な反応中間体を経由し、空気酸素分圧下で酸素放出反応が進行することを世界で初めて明らかにし、この反応で生成したセラミックス還元体が水を分解(水素生成過程)することを見出した(特開2008-094636)。これを用いるソーラー水素生産の実用化に向け、ロータリー式太陽反応炉およびビームダウン式集光システムの開発を行った。
著者
西村 将洋
出版者
西南学院大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、19世紀から20世紀へと移行する世紀末転換期から、1945年の第二次世界大戦終結までの期間を対象として、ヨーロッパで形成されたジャポニスムの内実を検討しつつ、その上で、日本人がジャポニスムをいかに受け入れ、そして、いかなる日本イメージを再構築したのかを調査・考察した。研究成果は大きく以下の4点にまとめられる。(1) ロンドンでの文献調査ロンドンの専門機関を利用して、1910年に開催された日英博覧会や、同時期のロンドン演劇界に深く関わった劇作家・舞踏研究家の坪内士行の足跡を調査し、1910年代の日英異文化交渉の一端を明らかにした。(2) ジャポニスムに関する日本語文献の収集と分析当時の日本人によるヨーロッパの旅行記やジャポニスム関連文献を収集することで、日露戦争(1904-1905年)前後から第二次世界大戦終結までの期間を対象として、通史的な観点から、ジャポニスム概念の質的な変化を析出した。(3) 1910年代のイギリス・ジャポニスムと日本人についての考察イギリスのジャポニスムと日本人の関係を探るために、特に1910年代に注目し、日英博覧会、演劇批評、文芸批評の観点から、日英異文化交渉の一面を明らかにした。具体的には、1910年代前後にイギリスを訪れた長谷川如是閑、坪内士行(作家・坪内逍遙の息子)、長谷川天渓らの異文化体験について考察を加えた。(4) 1930年代~1940年代の日仏文化交流についての考察1930年代から1940年代にかけてのパリにおける日本文学紹介や、異文化交渉の状況を調査した。具体的には、川路柳虹、松尾邦之助、坂本直道(坂本龍馬の末裔)、藤田嗣治について考察を加えた。
著者
木村 典代
出版者
高崎健康福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

【目的】これまでに紫外線暴露による血中β-カロテン濃度の変化及び血中抗酸化能へ及ぼす影響については明らかにされていない。そこで紫外線暴露量の多いスポーツ競技者と少ない競技者ではUVBによって惹起されるDNA酸化傷害の程度が異なるか否かと血中抗酸化ビタミン濃度に変化がみられるかどうかを検討した。【対象・方法】研究協力の同意が得られた高校女子ソフトボール部員12名、高校女子バレーボール部員17名、コントロール群として大学女子学生11名を対象とした。平成18年夏期に早朝空腹時採血を行い、ヒトリンパ球を用いたCBMN assayを行った。HPLC法により血漿β-カロテン、アスコルビン酸、α-トコフェロール濃度を測定した。採血前の1週間は抗酸化ビタミンの摂取量調査、身体活動量および日常の紫外線暴露量を計測した。【結果および考察】自然誘発性の小核出現率はいずれの群でも低く、群間の差は見られなかったが、UVB照射を行ったリンパ球においては、バレーボール部(21.5±11.0%)がコントロール群(7.8±5.4%、p<0.01)やソフトボール部(9.5±5.7%、p<0.05)よりも有意に高かった。両運動群で身体活動量が同等であったにもかかわらず、バレーボール部のみ小核出現率がコントロール群よりも高値を示した原因の1つとして、α-トコフェロール濃度がコントロール群よりも有意に低値を示していたこと(p<0.05)が関係しているかもしれない。しかしながら、α-トコフェロール濃度と小核出現率の間には相関関係は認められず、さらに、β-カロテンの摂取量や血中濃度にも3群間で差が認められなかった。従って、ソフトボール部のように日常的に紫外線に暴露されている場合には、これらの抗酸化ビタミン以外の紫外線に対する何らかの耐性が高まっている可能性が考えられた。
著者
小荒井 衛 小松原 琢 黒木 貴一 岡谷 隆基 中埜 貴元
出版者
国土地理院・地理地殻活動研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

芋川流域で火山灰分析に基づく段丘編年を行った.芋川流域で最も高位の段丘から浅間草津火山灰(As-K)が検出されなかったことから,この段丘面は16,500年以降に形成された面と推察される.段丘形成年代から小松倉背斜の成長速度の見積もると,0.8~1.9×10^<-6>/年となり,西山丘陵の活褶曲の成長速度や小千谷地区の活褶曲の成長速度と,オーダー的には同程度である.長野県・新潟県県境付近の地震では,逆断層の上盤側で,地質,地質構造,既存活断層の分布等に支配される形で地盤災害が集中しており,今回の地震に伴い松之山背斜が成長した可能性が指摘できた.
著者
菅田 健
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

我々は免疫正常な乳幼児ロタウイルス(以下RV)胃腸炎入院患児に対し、ウイルス学的解析を実施し、抗原血症は約5日間、抗原量は第2病日をピークとし徐々に減少することの確認をした。一方で、免疫抑制状態にある患児についてのRV感染は不明な点が多いため、今回我々は造血幹細胞移植を受けた患児血清を用い同様の検討をおこなった。その結果、免疫正常患児に比して長期間、低レベルでの抗原血症が続いていることを明らかにした。
著者
大場 正昭
出版者
九州大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010

今年度は、多孔性構造を利用したゲスト分子および機能性分子ユニット間の相互作用と電子状態の制御を目的として、多孔性錯体材料{Fe(pz)[Pt(CN)_4]G}(1;pz=pyrazine,G=guest molecule)を基軸化合物として研究を推進した。昨年度までに、化合物1をヨウ素蒸気に曝すと、ヨウ素がPt(II)に酸化的に付加したヨウ素付加体が得られ、ヨウ素含有量によりスピン転移温度を300-400Kの間で連続的に変化させることに成功した。今年度は、機能性分子ユニットであるピラー配位子pzの運動とスピン状態の相関を検討した。中性子準弾性散乱および固体^2H NMRスペクトルより、10^<-13>-10^<-3>sのタイムスケールでpzの回転運動の温度変化を追跡した結果、pzは高スピン状態の細孔中で4-fold jump motionをしているが、低スピン状態になると骨格構造とpz間の立体反発により、その回転速度が3桁以上遅くなることを確認した。このpzの回転による回転エントロピーがゲスト吸着によるスピン状態変換に寄与することも、理論的に説明された。また、Fe(II)をCo(II)に変えた類縁体{Co(pz)[Pt(CN)_4]G}では、Co(II)周りの対称性変化に伴って光吸収が変化し、特にアルコール類に対して特異的な応答が観測された。さらに、ピラー配位子をCholest-5-en-3-yl-4-pyridinecarboxylateに変えて疎水場を導入した化合物では、ハロゲン化アルキルに対して特異的に応答することを見出した。機能性分子ユニットを合理的に集積して相互作用空間を作り上げることで、ゲスト分子によるスピン状態の変換に成功し、詳細な構造解析と理論計算からその機構を解明した。これらの結果を基に、機能性分子ユニットを変換することで、より特異的なゲスト応答性の発現にも成功した。
著者
佐久間 康之
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

公立小学校での英語活動のみが英語の刺激として純粋に(近く)作用する教育環境の学校を対象に3年間にわたり縦断的かつ横断的調査を行った。主な研究成果は以下の4点である : (1) 学年別の児童英検の比較において学年が上がるにつれてリスニング力は高かった。(2) 中学年及び高学年の1年間の変容において, 児童英検によるリスニング力は全学年ともに向上したが, 心理的要因の結果は多種多様であった。(3) 中学年及び高学年のリスニングカと相関があった心理的要因の項目は自己評価(自分自身をみつめなおす)及び記憶方法(効率的な覚え方)であった。(4) 英語活動の実施時数の多さは中学1年時の音絹認知に正の影響を及ぼす可能性が見出された。
著者
木原 直美
出版者
長崎外国語短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

擬似初心者21名を対象に1年間定期的に多読指導を行った結果、多読は擬似初心者の授業参加へのモチベーション向上、英語読書への興味・自信、英語読書量の蓄積という点において、リメディアル教育として大きな可能性を持っていることが確認された。また、一定の条件が揃った場合、擬似初心者は多読を通して未知語の学習を行うことも可能であり、その学習成果が多読終了後に定着し得ることも確認された。しかしながら、構文理解力、語彙力が低い擬似初心者は、困難を伴わず読める多読図書の難易度が限定されており、先行研究等で提唱されている「多」読の量を確保することは難しく、多く読むことで生じるとされている多読指導による英語力向上も期待することは難しいことが明らかになった。擬似初心者を対象とした多読指導では、多く読ませるための支援が不可欠であり、特に単語増強、構文理解のサポートが別途必要であることが示唆された。
著者
登美 博之
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

工科系の学生がコンピュータ支援による演習を行うことによって、英語の能力の向上を図ることのできる教材「英文構造理解のための3つのアプローチによるライティング教材」を研究開発し、CALLやLANシステムなどによって教材として運用できるようにした。この教材は、3つの分野の英語を用いて、そしてまた「英語の文構造に対応した日本語の語句配列」を表示することによって、日本語と英語の2つの言語からアプローチするものである。