著者
忠 和男 川西 直樹
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

既設橋脚の耐震補強には、水平耐荷力の増加を抑え、変形性能のみを向上させることが必要とされる。本研究では、既設の円形断面鋼製橋脚について、従来までの縦リブ追加による補強に対して、縦リブの下端と橋脚底面との間にわずかなすき間を設ける耐震補強法(接触縦リブ補強)を提案し、その耐震補強効果について検討した。これらの結果、提案した耐震補強により補強前の橋脚に対して水平耐荷力の増加をごく僅かに抑え、変形性能の向上を図ることができることが確認された。
著者
岩里 琢治 糸原 重美 加藤 裕教 西丸 広史
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

Rac特異的GTPase activating protein(GAP)の一つであるαキメリンに着目し、中枢神経回路の形成と機能におけるその役割を明らかにすることを目的として研究を行った。全身性およびCre/loxPシステムを用いた領域特異的αキメリン変異マウス、さらに、α1およびα2イソフォームのそれぞれに特異的なノックアウトマウスを作成した。それらのマウスを行動学的、および、組織学的に解析することにより、海馬機能におけるαキメリンの働きの一端を明らかにした。
著者
岩里 琢治
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

高等動物の高度な行動の基盤となるのは,精緻に構築された神経回路である。神経回路の精緻化には,発達期の限られた期間における神経活動が重要な役割を果たすことが知られているが,その機構はほとんどわかっていない。本研究課題では,神経回路の活動依存的発達のモデルとして,バレル形成を中心としたげっ歯類体性感覚(バレル)野発達の分子機構の研究を行った。特に注目した分子は,1型カルシウム依存的アデニル酸シクラーゼ(AC1)とNMDA型グルタミン酸受容体(NMDA受容体)であり,領域としては,特に視床,脳幹における役割を解明することを目的とした。われわれは前年度までの研究において,視床特異的Creマウスの開発に成功しているが,その時空的組換え特性を,レポーターマウスを用いて,さらに詳細に解析した。視床特異的AC1ノックアウトマウスのバレル形成の解析も前年度から行っているが,今年度も引き続きさらに詳細に解析した。今年度はさらに,視床特異的CreマウスをNR1 floxマウスと交配することにより,視床特異的NR1ノックアウトマウスを作製した。脳幹の解析に関しては,共同研究として海外のグループから,領域特異性の異なる2種類の脳幹特異的Creマウスの譲渡を受け,輸入を行った。これらのマウスは体外受精によるクリーニングを経て,国立遺伝学研究所に無事導入された。現在,レポーターマウスを用いて,Cre組換えの特異性を確認しているところである。同時にAC1 floxマウス,NR1 floxマウスとの交配も行っている。脳幹特異的AC1,NR1ノックアウトマウスが手に入れば,それらの大脳皮質体性感覚野第4層におけるバレル,視床VB核におけるバレロイド,脳幹三叉神経核におけるバレレットの組織学的解析を行う予定である。
著者
松井 邦人 MAINA James W.
出版者
東京電機大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

現在,舗装のマネージメントシステムの中で,火急の課題として舗装の理論設計システムの構築に関心が集まっている.土木学会舗装工学委員会から,理論設計に必要な舗装構造解析ソフト(GAMES)を公開し,舗装技術者が広く利用できるようにしてほしいとの依頼があり,2003年9月に土木学会舗装工学ライブラリー3として出版の準備をすることが決まった.2005年2月に脱稿し,現在印刷中である.GAMESの基本ソフトウエアは,研究代表者の研究室で開発しており,車両の自重を考慮した鉛直方向の分布荷重と,水平方向の制動荷重を考慮できる.研究分担者は本ソフトウエアで用いられている理論をすっきりした形に再構築し,計算効率化と計算精度の向上を図り,さらにユーザが利用しやすいようにウインドウズ化を行い,本ソフトウエアの開発に多大なる貢献を果たした.本ソフトウエアの精度については,同様の機能を持ち世界的にも評価の高いシェル石油開発のBISARとの比較も行っており,GAMESの方が優れていることを確認している.すでに本ソフトウエアは,現在進行中の羽田空港拡張工事と関西空港拡張工事の設計で利用され,超大型ジェット機の設計にも十分に対応できることを確認され,実務にも役立つことが実証されている.さらに研究としては,舗装表面に作用するより複雑な荷重形態(ねじり荷重やモーメント荷重)に対する解析も行うことができる理論を構築,論文にも投稿している.また,舗装マネージメントで必要な舗装構造評価についても,従来の理論に改良を加え新しいDBALMを開発し,初期値の影響を評価した.このソフトウエアでは動的FEMを用いているが,現在波動理論を解析的に解く方向で作業中であり,理論構築は終了しコード化が最終段階にある.
著者
石倉 智樹
出版者
国土技術政策総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

航空輸送サービス産業の生産活動において,空港という社会資本が不可欠である以上,空港容量が逼迫しボトルネック化することによって,生産効率性が低下することは不可避である.特にネットワークの中核をなす空港における容量制約は,効率的に生産量拡大が可能な地点における物理的な生産量制約となり,航空輸送サービス産業の成長を阻害する主要因となる.したがって,そのような空港における容量に余裕を持つこと自体が,経済学的な意味での生産効率性の向上をもたらすと言える.また,航空輸送サービスは,様々な産業の生産活動において派生需要として中間投入的に利用されるため,この生産性の向上の効果は航空輸送サービス産業のみならず,あらゆる産業の経済活動に波及すると考えられる.その結果,国民経済レベルでの大きな効果が生じると期待される.一般に用いられる(部分均衡的な)費用便益分析の手法や産業連関分析による経済効果手法では,事前にwith/withoutそれぞれのケースについて航空需要予測値を推定することが必要となる.このため,需要予測値が得られていなければ,経済効果計測を行うことができないという問題点を抱えている.したがって,航空需要予測値の有無に依存せず,空港整備による経済効果を直接推定する手法が望まれる.本研究は,空港の容量拡大による航空輸送サービスの生産性向上,およびその経済波及効果・便益を,需要予測値の有無に依存せず,評価する手法を構築した.その適用事例として,我が国の国内航空輸送ネットワークの中心的空港である羽田空港の容量拡大による,航空輸送サービス産業の生産性向上と経済効果を推定するモデルを同定した.さらに本研究は,羽田空港の整備が我が国経済に及ぼしてきた効果,再拡張事業等による将来の容量拡大がもたらす効果の定量的推定を行った.
著者
新野 宏 伊賀 啓太 中村 晃三 鈴木 修 石部 勝
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

水平格子間隔70m、鉛直方向45層、領域サイズ66.4km×66.4km×15.1kmの非静水圧準圧縮系のメソ数値モデルを用いて、1977年にアメリカ・オクラホマ州のデル・シティで発生した竜巻の環境場の高層観測デーダを水平一様に与えたところ、スーパーセル型積乱雲とこれに伴う竜巻の現実的な再現に成功した。積乱雲が発生して50分が経つと、水平風の鉛直シアと積乱雲の上昇気流との相互作用で高度2km付近に気圧の低下が生じ、この層の下で上昇流が強化される。これに伴って、60分頃になると高度1.2km付近で、水平渦度の立ち上げとその引き伸ばしにより下層のメソサイクロンが形成され、この回転場により1.2km付近での気圧降下が起こって、更に下層の上昇流を加速し、高度1kmでは40m/を越える上昇流が形成される。一方、地表面付近にはストームの降水域から流れ出す冷気流と周辺から吹き込む暖湿な気流のぶつかるガスト・フロントが形成されているが、ガスト・フロント上の水平シアに伴う鉛直渦度が丁度この強い下層の上昇流の下に来て引き伸ばされることによって竜巻が発生することが明らかとなった。このことは、スーパーセルに伴う竜巻が、定性的にはlandspoutと呼ばれる局地前線に伴う竜巻に似た機構で発生することを示している。本研究では、この他、日本付近の積乱雲を含むメソスケール対流の環境場を記述する環境パラメータの気候学的調査、竜巻ないしはダウンバーストと思われる突風被害をもたらした亜熱帯低気圧の構造とライフサイクルの解析、激しい積乱雲を生ずることの多い梅雨期のメソαスケール低気圧の力学の解析も行なった。
著者
佐藤 馨一 清水 浩志郎 為国 孝敏 竹内 伝史 小林 一郎 馬場 俊介 古屋 秀樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

平成16年度の研究は個別の大規模社会資本の整備事例をもとに、これらの総合的な評価を行い、今後の課題を整理した。平成15年度は道路公団の民営化論議が集中的に行われたこともあり、その是非や問題点について活発な意見交換がなされ、研究分担者間の共通認識が確立した。以下に平成16年度の研究成果を取りまとめる。(1)「公共事業方式と政府企業方式の混同の危険性」が指摘された。最近の民営化論議は大規模社会資本の将来展望を持つこともなく、財務分析のみが突出している、との批判がなされた。また、中部国際空港の整備事例を研究した結果、大規模社会資本が公共事業方式でなくとも実施可能なことを検証した。(2)大規模社会資本の更新投資の問題が取り上げられた。新幹線も高速道路も減価償却という発想がなく整備されてきた。このことにより更新のための投資財源がまったく存在しない事態を招いている。その結果、「荒廃する日本」と言われる日も間近にせまり、民営化論議はそれに拍車をかけている。(3)受益者負担による社会資本の整備方式は社会的便益を無視しており、公的な財源を用いて大規模社会資本を整備し、その利用価格を安くすることによって社会的便益を増大するという基本的な考え方に立ち戻るべきである。(4)大規模社会資本は土地依存型であり、ITのように技術依存型とは整備の仕方や活用はまったく異なる。地形も気象条件も多様な国土において経済効率を追い求めると、地域格差が増大し、過疎地域の切り捨てにつながる。竹島という小さな島の領有をめぐって日本と韓国が深刻な諍いをしているとき、国内の過疎地域を無視する国土政策は根本的に間違っている。「均衡ある国土の発展」という目標は、極めて重要な国家政策となる。
著者
羽田野 直道 中村 統太 西野 晃徳 PETROKSY Tomio ORDONEZ Gonzalo
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

量子ドットの電流電圧特性を測定する実験は広く行われています。しかし、それに対応する理論には決定的なものがありません。本研究では従来の手法と独立で相補的な手法を開発しました。我々の方法は、電子間相互作用のない場合に決定的な手法であるランダウアー公式を、相互作用がある場合に自然に拡張した理論になっています。その手法を用いて、簡単な模型において厳密に電流電圧特性を求めたところ、電位差を増やすほど電流が流れにくくなる領域があることを見いだし、その原因を明らかにしました。電子間相互作用のために2つの電子が互いに束縛し合う状態ができますが、その状態が量子ドットを通過できないために起こります。
著者
小池 淳司
出版者
鳥取大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

現在,わが国では,財政赤字の増大などの社会的要請をうけて,社会資本整備評価必要性が叫ばれている.社会資本整備評価のためには定量的な客観性を有する評価手法が必要であるが,そのためには経済理論に基づいた社会資本整備手法の確立が不可欠である.土木計画学の分野では,これら社会的要請に答える形で,社会資本整備評価に応用一般均衡モデルを適応する試みがここ数年の研究課題となってきている.本研究では旅客交通整備評価のための空間的応用一般均衡モデルの開発と同時に,その実証分析に向けた応用の検討を行うことを目的としている.一般に,空間的応用一般均衡分析による交通整備評価は物流交通整備を対象としているため,旅客交通を明示的に扱うことが不可能である.そのため,本研究では世帯が消費する自由目的の旅客交通行動と企業が消費する業務目的の旅客交通行動を応用一般均衡のフレームで整合的モデルを構築している.さらに,交通需要データ(全国旅客純流動調査)と社会経済データ(地域間産業連関表)によりモデル内の未知パラメータ推定手法を提案することで実証可能としている.実証研究としては,わが国における整備新幹線計画,リニア中央新幹線計画,さらに,羽田空港発着枠増加などの効果を計測し,地域別の帰着便益を算出している.一方,東京首都圏における震災による交通マヒの社会経済的被害なども算出している.以上の研究成果は,土木計画学研究発表会,応用地域学会年次大会,WCTR(世界交通会議),RSAI(世界地域学会),災害比較シンポジウムなどを通じで内外の研究者と意見を交わし,評価を受けている.さらに,査読付き論文として,土木計画学研究論文集,Proceedings of 1^<st> Workshop for "Comparative Study on Urban Earthquake Disaster Managementに登載された.
著者
村上 英樹
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.貨物航空会社の提携による規模の経済と範囲の経済に関する分析本研究は、インテグレーター化する航空会社が、従来型の航空会社に対し、垂直的差別化行動をとると仮定し、そのための投資が、航空会社の利潤にどのように影響するかを経済理論モデル化した。その上で、モデルの現実妥当性を部分的に実証した。理論モデルによると、垂直的差別化を行う航空会社は出来るだけ支出を抑えながら差別化のための投資をする。実証分析では、費用関数を推定することにより、近年高度なサービスを提供するインテグレーターが費用削減行動をとっていることが実証された。2.国内便・国際便提携による乗り継ぎ利便性の要因分析次に、国内線を経由して海外に出国しようとする旅客に対してアンケート調査を行い、国内線運航航空会社と国際線運航航空会社が提携して、乗り継ぎの接続の利便性を図ろうとする場合に、どのようなスケジューリングを行えば旅客の利便性が向上するのかを統計的に計測したとともに、利便性の判断基準となる旅客の時間価値をビジネス旅客と旅行客とについてそれぞれ算出した。ビジネス旅客にとっては、時間が有効に活用されないという理由から、早めに到着する場合に利便性が低いということが判明した。従って、旅客サービス向上のためには、国内線運航航空会社と国際線運航航空会社が密に提携することが必要であるとした。3.非提携・独立系航空会社の市場行動と市場成果独立系航空会社である米国のLCCによる単独参入の経済効果を測定した。それによると、LCCの参入は、市場価格を引き下げると共に輸送量を増大させ、消費者余剰を増加させること、その効果は大手との同一空港における直接的競争のほうが、近隣空港への参入よりも効果が大きいこと、またサウスウエスト航空の参入によるプラスの経済効果は長期間持続するのに対し、それ以外の航空会社のプラスの参入効果は2〜3年で終息し、やがてマイナスの経済効果に転じることが明らかとなった。4.LCCによるアライアンスの経済効果大手航空会社に対するLCCの強みは「無駄なサービス」を廃止したという意味での垂直的製品差別化、低費用性、及び輸送密度の経済性であることに着目し、LCCアライアンスがプラスの国民経済的効果を持つためのこれら3つのパラメータの範囲を確定した。
著者
竹中 康治 加藤 一誠 村上 英樹 手塚 広一郎 吉田 雄一朗 浦西 秀司 辻本 勝久 乾 友彦 乾 友彦 井尻 直彦 呉 逸良 轟 朝幸 村上 英樹 松本 秀暢 手塚 広一郎 吉田 雄一朗 辻本 勝久 浦西 秀司 三枝 まどか
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本の航空・空港政策には改善すべき点が多い。まず, 航空の自由化は経済学的にも望ましいことが証明された。なぜなら, 二国間協定よりも多国間協定の方が経済厚生は大きくなり, 低費用航空会社の参入も経済厚生を改善するからである。そして, 規制の強化ではなく, 市場を通じた航空会社の安全性の向上も可能である。また, 空港政策については必ずしも所有・運営に民間の参入が望ましいとはいえない。同時に, 格付けのあるレベニュー・ボンドには空港の運営規律を維持する作用があることも明らかになった。
著者
朴 びよん渡
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

富士写真フィルム社製の通称「OPERAフィルム」、原子核乳剤を48ミクロンの厚さで厚さ200ミクロンのTACフィルムの両面に塗布した構造の原子核乾板を使って、高度1万メートルの上空での宇宙線飛跡の強度の測定を行った。原子核乳剤の表面は厚さ1ミクロンのゼラチン膜で保護されている。手荷物検査のX線をシールドする厚さ1mmの鉛板とOPERAフィルム(面積10cm*12cm)2枚を密着して、黒色の多層ラミネートフィルムで真空パックして、手荷物の状態で、国際線の旅客機で米国のシカゴに飛び、シカゴでフィルムの向きを変えて再度真空パックして日本に持ち帰った。それを現像し、飛跡読み取り装置S-UTSによって、乾板面に対する角度45度までの直線状飛跡で、最少電離粒子を含む全ての飛跡を読み出した。読み出した面積は100cm^2である。往路の飛跡、復路の飛跡、パックする以前からの飛跡の3つのタイプに分類する解析を行っている。OPERAフィルムに記録される直線状の飛跡は、1MeV程度の自然放射能由来の飛跡とは明快に識別できることが確認できた。2006年秋の日本物理学会で結果の一部を発表した。
著者
小杉 賢一朗
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

土壌水を採取するための吸引圧制御型ライシメータを桐生森林水文試験地内のマツ沢流域に設置した。土壌水の採取深度は,50cmおよび100cmとした.おそよ2週間に1度の頻度で現地を訪れ,自動採水された土壌水サンプルの回収を行った。2002年5月から2003年12月の浸透水量は深度50cm,100cmで降水量の各々60%,51%であった.桐生試験地の年平均降水量,流出量は1630.0mm,872.9mm(流出率53.6%)であるが2002年は渇水年であり,各々1179.3mm,405.3mm(流出率34.4%)であったことと比較して,ほぼ妥当な量の採水が行われたと考えられた。採取された水のSiO2濃度は,地温の季節変動と高い相関を示していた。2002年5月から2003年10月までの平均濃度,積算移動量は深度50cmが12.6mg/l,555.7mg,深度100cmが16.9mg/l,711.3mgであった.自然濃縮だけでなく50cm以深からも供給されている結果は,不飽和水帯においては深く浸透するほど多く溶け出すという既存の知見に一致した。深さ50cmで採水された浸透水の硝酸態窒素濃度が,2002年10月以降急激に上昇して12月始めにピークとなり,その後減少することがわかった。カルシウム,マグネシウム等のカチオンの濃度は硝酸態窒素濃度と非常に高い相関を持ち,硝酸濃度の増加に追随して,土壌溶液の電気的中性を維持するように土壌コロイドから引き出されたものと推察された。深さ100cmで採水された浸透水の硝酸態窒素やカチオンの濃度は,深さ50cmの浸透水と比べてほぼ一ヶ月後にピークを持つ変化を示し,溶質が下層土壌に徐々に移動していく様子が明らかとなった。ただし2003年の観測では,両深度とも硝酸態窒素濃度の増加が観測されず,採水機設置時の土壌や植生の撹乱が初年度の硝酸態窒素濃度の上昇に関係している可能性が指摘された。
著者
稲垣 知宏 中村 純 隅谷 孝洋 長登 康 佐々井 祐二 深澤 謙次
出版者
広島大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

最先端の研究で利用される数値シミュレーションを通じて自然科学を学習していくための新しい教育について企画し、必要な電子教材の作成支援システムを開発することを目的に,計算機シミュレーションをテーマにした教育コースを作成すると共に電子教材開発を進め,これを利用した教育を実践した。教育の現場と研究の現場の連携とこれを支援するシステム,学問の新たなパラダイムに根ざした新しい教育の中で先端科学に対する社会的関心を引き出す可能性,教育に必要な電子教材開発について明らかにした。(稲垣、中村、隅谷、長登、佐々井、深澤)計算機シミュレーションを利用しようとする場合,必要に応じて電子教材を開発するところから出発することになる。扱いやすい教材開発環境が整ってきたことで,現在いろいろな形で教材開発が進められているが,今回の開発ではFlash(Macromedia社)上のActionScriptを利用して電子教材開発を進めた。数名の大学院生に対する90分程度の講習会から出発して教材開発者を育成し,約1年間の開発期間で70以上の教材を作成することができた。このような開発は大学院生の教育にも効果を上げている。(稲垣、中村、佐々井、深澤)電子教材開発コラボレーションの基盤環境としてWikiを利用したサイトを構築しその役割と可能性について調べた。容易にサイト構築が可能で,情報の掲載,修正方法を簡単にするツールは他にもあるが,Wikiは,普及状況,無料利用可能な事からも,教育現場に導入し易いツールである。Wikiサイト上では,気軽に情報を掲載できることから,従来までとは異なり開発途上にある動的な情報を蓄積することが可能になった。今後,コラボレーション全体の輪を広げることで,継続的な教材開発の道が開けると考えている。(稲垣、隅谷、長登)なお、これら研究成果については、国内の研究会等で報告している。
著者
兼村 晋哉
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

標準模型を超えたテラスケール新物理学模型と拡張ヒッグス模型の様々な様相に関する理論的研究と、LHC実験や線形加速器実験での現象論を研究した
著者
真嶋 哲朗 藤塚 守 川井 清彦 遠藤 政幸
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2005

様々な光機能性クロモフォアを修飾したDNAを用いて、DNA内の光電荷分離、電荷移動機構を明らかにし、高効率・長寿命電荷分離を実現した。さらに、光機能性DNA分子ワイヤー、光エネルギー変換などの光電変換デバイスや、高効率DNA損傷法への展開を行い、DNA光ナノサイエンスの創製を試みた。
著者
塩澤 真人 戸塚 洋二 鈴木 厚人 中村 健蔵 伊藤 好孝 久嶋 浩之 西川 公一郎 塩澤 真人
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、100万トン実験装置のための、安価で高性能な光センサーを開発するものである。13インチのハイブリッド光センサーの試作をし、動作試験から、改良研究を行った。いくつかの問題点が見つかったが、それに対する解決方法を明らかにした。1.高電圧(25キロボルト)印加できず放電してしまう。-->光電面を製造中にセラミック絶縁体を加熱し、耐電圧を向上させる。2.ダイオードの短時間での劣化がおきる。-->新たに5mmφの光ダイオードを開発した。寿命は改善したようである。3.有効面積が小さい(240mm)-->ダイオードの位置と光電面の曲率を最適化することにより、300mmまで改善できることがわかった。4.HPDの構造全体の最適化-->部品の効率化、フランジの強度改善、光電面の曲率の最適化案を作成した。以上の開発により、致命的な技術的困難はなく、大型ハイブリッド光センサーの優れた基本特性と製作可能性が確かめられたと考える。今後の課題としては、生産性の向上のための光センサーと電子回路の最適なデザイン検討と開発がある。また、コスト低減のために、さらなる大型化の可能性の追求も必要である。
著者
奥田 眞夫 桑原 俊也 丸山 剛郎
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

平成3年度、4年度に正常者と顎口腔機能異常者を対象として収集した咬合、咀嚼筋活動および咀嚼時下顎運動のそれぞれのデータを分析し、咬合異常による異常な歯牙接触と咀嚼運動の関連性を検討することにより、顎口腔機能異常の発症のメカニズムを考察した。咬合については、臼歯部におけるクロスバイトおよび平衡側干渉、前歯部のクロスバイトあるいあインターロッキングにより下顎が偏位し、顎関節内部障害や咀嚼筋における筋膜疼痛機能障害症侯群に至ったものと考えられる結果が明らかとなった。すなわち、ナソマット咬合器におけるファンクショングラフの分析結果に基づき、歯列模型で下顎運動をシュミレートすることにより、各種咬合異常に起因する機能時の歯牙接触の異常が、顎関節や咀嚼筋に与える影響が3次元的に考察できた。咀嚼筋活動については、顎口腔機能異常者では、正常者にみられるような左右側のバランスあるいは各咀嚼筋における協調性が認められず、異常な歯牙接触による下顎の偏位をコントロールしようとする補正がなされており、これは咀嚼時下顎運動経路上に筋活動量を色表示として同時描記する方法で診断可能であることを、平成5年度日本補綴歯科学会関西支部学術大会で発表した。下顎運動については、約10年間に大阪大学歯学部附属病院第一補綴科に来院した顎口腔機能異常者の咀嚼時下顎、運動の分析により、発症原因となる咬合異常の診断が可能となっているが、3次元的な下顎のトランスレーションのみならず、軸回りのロ-テーションも考慮に入れる必要性があることを、第89回および第90回日本補綴歯科学会学術大会において発表した。今後さらにこれらを統合し、より詳細な顎口腔機能異常診断システムの開発を目指すものである。
著者
崎村 建司
出版者
新潟大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、脳の特定な部位や細胞に限定した標的遺伝子の欠損が出来るCreリコンビネース発現マウスを系統的に作出し、脳機能を分子レベルで解明するリソースを開発することである。このために、我々は本年度新たな方法を開発した。第1に迅速遺伝子改変ベクター作成法である。構築の迅速化を図るために、ES細胞での相同組換えに必要な薬剤耐性カセットやネガティブ選択に用いるジフテリア毒素遺伝子カセットなどをあらかじめ組み込んだ汎用ベクターを用いて、BACクローンでのRED/ET組み換え法、さらにラムダファージの組み換え系を利用して多種類のDNA断片を一時に結合して相同組換えベクターを作成する。この方法の特徴は、これまでベクター作成時に問題になっていたDNAライゲーションのステップを用いないので、特別な訓練を受けていない学生や技官にも出来るところにある。第2に、ES細胞での相同組換え効率を高めるために薬剤耐性カセットを改良した。UPA-trap型ターゲティングベクターを用いることで、薬剤耐性コロニーの中に占める相同組換え体の割合を上げることができた。これらの技術改良は、遺伝子改変マウスを迅速かつ安価に作成する上できわめて重要なものである。また、本研究では各種細胞選択的にCreリコンビナーゼ発現するマウスを作製した。海馬CA3錐体細胞で特異性高く組替えが惹起できるGRg1Creの他、海馬CA1錐体細胞選択的なCP14、小脳プルキンエ細胞のD2CRE、小脳顆粒細胞に選択性の高いGRe3iCre、ほぼ全ての顆粒細胞にCreを発現するTiam1Creである。これらCre発現マウスは特定研究「統合脳」の班員のみならず広く脳研究をおこなう研究者に提供する予定である。
著者
高倉 弘喜
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究では,データベースの主記憶常駐化を実現するために必要となる耐障害方式の開発について研究を行った。近年の計算機はノートパソコンでも数百メガバイトの主記憶を搭載可能であるが、現在主に利用されている二次記憶データベースではその高速性を十分に発揮できない。一方、主記憶には揮発性や電気的衝撃に弱いなどの問題点があるため、主記憶データベースを実現するには二次記憶と同等の耐障害能力を保証するバックアップシステムが必須になる。そこで、本研究では以下の点について研究を行った。1. 部分的主記憶データベースシステムの構築主記憶にデータベース全体を常駐,させる方式は前年度に提案したが、マルチメディアデータは極めて巨大であり、数ギガバイトの主記憶をもってしてもそのすべてを主記憶に常駐させることは不可能である。そこで、ホットスポットデータのみを主記憶に常駐させ、それ以外のデータは従来のシステムと同様に二次記憶に保存する部分的主記憶データベースを構築した。2. 部分的主記憶データベースシステムのバックアップ方式の開発部分的主記憶データベースシステムでは、主記憶データと二次記憶データとの間で検査点時刻が異なるためデータベース全体の一貫性維持が問題となる。そこで、前年度に提案した方式を部分力主記憶データベースシステム向きに拡張した。上記の方式を携帯型地理情報システムに実装し、映像情報をユーザインタフェースとして、GPSおよび姿勢センサーから得られた情報で地理情報を検索・追加・更新するシステムを試作し、携帯時の障害発生に対する有効性について検証を行った。