著者
松尾 稔 木村 稔 西尾 良治 安藤 裕
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.547, pp.199-210, 1996-09-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
10
被引用文献数
5 7

建設発生土を地盤改良材 (サンドコンパクションパィルなどの中詰め材) として再利用できれば, 環境問題解決の有効策として期待できる. 本論文で示す基礎的研究では, 建設発生土による地盤改良が施工された状況を想定して室内実験および数値解析を行い, 施工時に発生する過剰間隙水圧消散後の強度増加が実際に起こること, またそれが盛土荷重による強度増加とは独立に生じることを示した. さらに, プラスチックボードドレーンを任意位置に配置した場合の計算方法について, 模型実験と解析を通じて検討した.
著者
小松 恵美 向井 加奈恵 中島 由加里 尾崎 紀之 中谷 壽男
出版者
コ・メディカル形態機能学会
雑誌
形態・機能 (ISSN:13477145)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.17-24, 2014 (Released:2015-05-08)
参考文献数
12
被引用文献数
1

我々は三角筋への筋肉内注射(筋注)部位決定方法である、肩峰より三横指下に代わる新しい方法として、対象者の肩峰外側端の前後中間点(a 点)を決め、この点から三角筋に沿って下ろした線が前後腋窩線と直交する交点(b 点)を決定し、ab 間の距離を布メジャーで三角筋に沿うように測定して、3等分した上1/3ab 点、2等分した1/2ab 点、b 点を適切な筋注部位として発表した。さらに近年、この筋注部位を簡便に決定するための曲尺を用いた器具を作製した。今回この器具で決定した点と、この器具を使用しない布メジャーで決定した点の位置を、ご遺体(男性:11名で83.6 ± 9.3歳、女性:8名で84.3 ± 10.9歳)を用いて比較し、器具の有用性を検討した。各筋注部位の安全性を検討するため、剥皮前に布メジャーで決定した筋注部位の1/2ab 点にゲルを注入した後、三角筋深層の腋窩神経とゲルとの位置関係を観察した。同じく布メジャーで決定した筋注部位の上1/3ab 点、1/2ab 点、b 点の皮膚・筋層の厚さを測定し比較した。器具で決定した点は布メジャーで決定した筋注点よりも、上1/3ab 点で男性は平均5.8 mm、女性は平均7.0 mm、1/2ab 点で男性は平均4.4 mm、女性は平均5.3 mm 低かった。下1/3ab 点は両方法でほぼ同じであり、ここに腋窩神経が位置していた。器具での1/2ab 点は腋窩神経の観察された下1/3ab 点よりも男性は平均14.8 mm、女性は平均13.5 mm高い位置になった。注入したゲルは広がっていたが、腋窩神経はゲルの広がりの中央には位置せず、ゲルの下縁に接するか、ゲルより下方に位置していた。筋の厚さの平均は1/2ab 点とb 点でほぼ同じであり、上1/3ab 点と比べて、男性は約4.0 mm、女性は約5.0 mm 厚かった。これらのことから、器具を用いて測定した上1/3ab 点は、布メジャーを用いた測定と同じように、筋注に適した部位であるので、我々の作製した器具は三角筋の筋注部位を決定するのに有用なものであることが示された。さらに、b 点は上1/3ab 点よりも筋が厚く、1/2ab 点よりも腋窩神経との距離が離れているため、b 点がより安全な筋注部位として適していると思われる。
著者
佐野 真由子 有賀 暢迪 飯田 豊 市川 文彦 井上 さつき 君島 彩子 辻 泰岳 牧原 出
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究は、研究史の空隙となっている第二次大戦後の万国博覧会史に取り組むものであり、時期的対象は、万博を統括する政府間組織BIE(在パリ、1931年発足)が大戦終結を受けて活動を再開した1945年から、植民地独立を主要因とする国際社会の変容を背景に、今日も有効な万博の新定義を打ち出すに至った1994年までである。その目的は、催事としての万博それ自体を詳解することではなく、万博史研究というレンズを通じて、国際情勢から開催・参加各国内の政局、関係業界の動向、関係者個々人のミクロな経験までを途切れなく見通し、かつ、自ずと世界の多様な視点に立脚する、新たな戦後世界史叙述の可能性を提示することにある。
著者
大西 健児 小林 謙一郎 岩渕 千太郎 中村(内山) ふくみ
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.520-522, 2011-09-20 (Released:2017-08-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

Department of Infectious Diseases, Tokyo Metropolitan Bokutoh General Hospital A 18-year-old Japanese woman seen as an outpatient for refractory enterobiasis had been treated with pyrantel pamoate over 40 times since the age of 11. She washed her hands and cleaned house frequently, and all family members took pyrantel pamoate, but Enterobius vermicularis eggs remained. She was orally administered 400mg of albendazole 3 times inclinicvisits, after which eggs have not been seen for 1 year. Pyrantel pamoate isusedwidely against enterobiasis in Japan. Our case shows albendazole to also be effective against enterobiasis. Albendazole thus appears to be a useful anti-helminthic in enterobiasispatients in whom pyrantel pamoate is not effective. This is, to our knowledge, the first case of enterobiasis treated with albendazole in Japan.

1 0 0 0 OA 方鑒要義

著者
飯田天涯 著
出版者
経世堂
巻号頁・発行日
1920
著者
葛目 大輔 井上 湧介 森本 優子 吉田 剛 山﨑 正博 細見 直永
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.641-643, 2022 (Released:2022-08-27)
参考文献数
7
被引用文献数
2

【症例】56歳男性【主訴】両下肢脱力【現病歴】鶏肉を好む偏食あり.前医で両下腿浮腫を認め,心不全にて入院した.心不全に対し利尿薬による加療が行われたが両下肢脱力が出現し徐々に悪化したため,当院に転院した.【入院時現症】軽度の意識障害と両下肢の浮腫,筋力低下及び腱反射消失を認めた.【入院経過】脚気ニューロパチーを考えチアミン100 mg/日を開始した.これにより神経症状は改善した.その後,ビタミンB1 12 ng/ml(正常値24~66)と低値である事が判明した.【結論】心不全加療中に筋力低下を認めた際には脚気ニューロパチーの合併を考慮し,ビタミンB1補充に留意する必要がある.
著者
森 照貴 川口 究 早坂 裕幸 樋村 正雄 中島 淳 中村 圭吾 萱場 祐一
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.173-190, 2022-03-17 (Released:2022-04-20)
参考文献数
63
被引用文献数
2

生物多様性の現状把握と保全への取組みに対する社会的要求が高まる一方,河川を含む淡水域の生物多様性は急激に減少している可能性がある.生態系の復元や修復を実施する際,目標を設定することの重要性が指摘されており,過去の生息範囲や分布情報をもとにすることは有効な方法の一つである.そこで,本研究では 1978 年に実施された自然環境保全基礎調査(緑の国勢調査)と 1990 年から継続されている河川水辺の国勢調査を整理し,1978 年の時点では記録があるにも関わらず,1990 年以降,一度も採取されていない淡水魚類を「失われた種リスト」として特定することを目的とした.109 ある一級水系のうち,102 の水系で二つの調査結果を比較することができ,緑の国勢調査で記録されている一方,河川水辺の国勢調査での採取されていない在来魚は,全国のデータをまとめるとヒナモロコとムサシトミヨの2種であった.比較を行った 102 水系のうち,39 の水系では緑の国勢調査で記載があった全ての在来種が河川水辺の国勢調査で採取されていた.一方,63 の水系については,1 から 10 の種・種群が採取されていないことが明らかとなった.リストに挙がった種は水系によって様々であったが,環境省のレッドリストに掲載されていない種も多く,純淡水魚だけでなく回遊魚や周縁性淡水魚も多くみられた.水系単位での局所絶滅に至る前に「失われた種リスト」の魚種を発見し保全策を講じる必要があるだろう.そして,河川生態系の復元や修復を実施する際には,これら魚種の生息環境や生活史に関する情報をもとにすることで,明確な目標を立てることが可能であろう.
著者
福嶋 裕造 福嶋 寛子 藤田 良介 宮川 秀文 橋本 篤徳
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.219-223, 2020 (Released:2021-09-28)
参考文献数
14

手指の指節間関節症にはヘバーデン結節およびブシャール結節が含まれる。ヘバーデン結節は手指の遠位指節間関節の変形性関節症であり,ブシャール結節は手指の近位指節間関節の変形性関節症である。今回,手指関節症に対して疎経活血湯を投与して急激な改善を認めた3症例を経験した。症例は全例女性である。症例1は58歳で主訴は左中指 DIP 関節痛でヘバーデン結節と診断した。症例2は60歳で主訴は左環指 DIP 関節痛でヘバーデン結節と診断した。症例3は37歳で主訴は右環指 PIP 関節痛でブシャール結節と診断した。全例に疎経活血湯エキスを投与し関節痛が改善した。疎経活血湯は軽症から中等度の骨関節脊椎の疼痛に対して,NSAIDs と同様に有用な可能性があると考えられた。
著者
越後和典
出版者
滋賀大学経済経営研究所
雑誌
彦根論叢
巻号頁・発行日
no.369, 2007-11-30
著者
川口 慎介
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

沿岸域の海洋表層における窒素循環を明らかにすることを目的として、5月中旬と10月中旬の二回、岩手県上閉伊郡大槌町にある東京大学海洋研究所国際沿岸海洋研究センターにおいて、大槌湾内の表層水採水および数点での鉛直採水を実施した。表層水の採取には注意深く洗浄したポリバケツを使用し、鉛直採水には1MのHClで洗浄したX型にスキン採水器を用いた。採取した試料のうち硝酸の酸素同位体分析用試料は塩化第二水銀で滅菌した上でバイアル瓶に入れて東京都中野区にある東京大学海洋研究所へ持ち帰った。同時に、硝酸の酸素同位体と同様に海洋表層の窒素循環の新たな指標として期待されている溶存還元性気体成分(水素・一酸化炭素・メタン)を分析するための試料も採取し、これらについては国際沿岸海洋研究センターに設置した自作のガスクロマトグラフを接続した還元性気体検出器で分析を行った。国際沿岸海洋研究センター前の防波堤から採取した表層海水の還元性気体成分について24時間変動を調べたところ、潮位と明確な相関を持つ変動をすることが明らかとなった。この傾向からは、湾内の海洋底が巻き上がることで生じた高濃度還元性気体成分を示す水塊の混合比が表層水の還元性気体成分濃度を支配している、と考えられた。一方で、水素濃度の上昇が窒素固定量と比例するという議論もあり、今後の詳細な解析により、還元性気体濃度と窒素循環との直接的な関係を明らかにすることを試みる必要があるだろう。
著者
伊藤 瑠里子
出版者
愛媛大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2016

【研究目的】自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder : ASD)における性別違和の特徴を明らかにする検査指標を開発することを前提とし, ASD者の性別違和についてジェンダー・アイデンティティ尺度を用いてコントロール群と比較検討して特徴を明らかにすることを目的とした.【研究方法】愛媛大学医学部附属病院精神科を受診したASD患者をASD群, 一般公募にて参加した対象者をコントロール群としてジェンダー・アイデンティティ尺度と成人用自閉スペクトラム指数日本語版(Autism-Spectrum Quotient : AQ)を実施した. 対象年齢は社会との繋がりを認識し始め, 性別違和を自覚する15歳以上30歳未満とした. コントロール群は, AQの得点がカットオフ値以上の事例は除外した.【研究成果】ASD群6名(M:F=4:2, 平均21.5±3.77歳)と, コントロール群21名(M:F=7:14, 平均24.38±2.21歳)を対象として統計的分析を行った。① ジェンダー・アイデンティティ尺度内の低次4因子及び高次2因子についての2群間比較・低次4因子の一つである, 自己の性別が社会とつながりを持てている感覚である“社会現実的性同一性”はASD群が有意に低値で, 自己の性別が他者と一致しているという感覚である“他者一致的性同一性”では, 有意に低値であった(<.01). 自己の性別が一貫しているという感覚である“自己一貫的性同一性”においてもASD群が有意に低値である傾向がみられた(<.05).・自己の性別での展望性が認識できているという感覚である“展望的性同一性”, “社会現実的性同一性”の高次因子の一つである現実展望的性同一性の総得点平均はASD群が有意に高かった(>.05).②AQ総点とジェンダー・アイデンティティ尺度間の相関・ジェンダー・アイデンティティ尺度の高次2因子, 低次4因子に対してAQの総得点の相関を調べた. ASD群では, AQ総点と, 現実展望的性同一性, 展望的性同一性が負の相関がみられた(>.05). また, 一致一貫的性同一性, 自己一貫的性同一性において正の相関がみられた(>.05). コントロール群では相関はみられなかった.【考察】ASD者は, 自己のジェンダー・アイデンティティと他者の認識が一致していないと感じている. また, 自己のジェンダー・アイデンティティを生かした社会生活の展望が曖昧であり, ASD者の中でもより強い特性を持つ者は, その傾向が強まることが示唆された.
著者
道林 克禎
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.1, pp.93-109, 2008-02-25 (Released:2010-02-10)
参考文献数
74
被引用文献数
9 9

Peridotites derived from the uppermost mantle consist dominantly of olivine and subsequently of pyroxene, spinel, garnet, and plagioclase. Crystal-plastic flow of mantle rocks results in various types of structure within peridotite being developed to varying degrees, depending upon the structure sensitivity of the different mineral phases. Plastic deformation leads to the simultaneous development of shape-preferred orientations and crystal-preferred orientations. A shape-preferred orientation is the expression of the average orientation of flattening (foliation) and elongation (lineation) directions, as defined by the orientations of individual grains. A crystal-preferred orientation (CPO) is the expression of crystallographic orientations of grains within the rock, as developed via dislocation creep and recrystallization. During intense homogeneous plastic deformation of a peridotite composed of minerals with a dominant slip system, the preferred orientation of the slip plane and slip direction tends to coincide with the plane of plastic flow and the flow direction, respectively. Recently, a new olivine CPO classification (A, B, C, D, and E types) has been proposed by Karato and co-workers to illustrate the roles of stress and water content as controlling factors of olivine slip systems. An additional CPO type (AG) has also been proposed in recognition of its common occurrence in nature. Given that olivine and the other constituent minerals in peridotites contain intrinsic elastic anisotropies, the development of CPO within peridotite during plastic deformation gives rise to seismic anisotropy in the upper mantle. Thus, the anisotropic properties of mantle rocks derived from the upper 100 km of the mantle, such as Ichinomegata peridotite xenoliths from the northeast Japan arc, have been calculated and applied with the aim of understanding the seismic anisotropy of the Earth's mantle.