著者
関田 寛 武田 明治 内山 充
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.57-63, 1983
被引用文献数
1

多種多様の果実野菜類が世界中で大被害をこうむっているミバエ類に対して, 唯一有効なくん蒸剤であるとして植物検疫上世界各国で使用されているEDBには近年発癌性のあることが判明して以来, 食品衛生上重大な危ぐの念が抱かれるに至った. これを契機として, 著者らはEDBくん蒸後に輸入された生鮮果実類中のEDBの簡便迅速な残留分析法の確立を検討し, あわせて著者らの方法を用いて実態調査を行った.<br>1) EDBは果実類 (可食部) の均一化試料の水混和物から Dean-Stark 蒸留装置を用いて留出し, ヘキサン層に移行させ, ヘキサン層を液相分離用ロ紙を用いてろ過したものをECD付きガスクロマトグラフィーを行うことにより, 簡便かつ迅速に, しかも, 高感度かつ高精度に定性及び定量することができた. 本法におけるEDBの検出限界は0.005ppmであった.<br>2) 今回検討した果実類のうちで, グレープフルーツ以外の全ての果実試料検液のガスクロマトグラム上にそれらの果実成分に由来する大小多様のきょう雑ピークが観察された. これらのきょう雑ピークの除去法を検討したところ, 残留農薬分析に常用されている活性化フロリジルを検液中に直接添加することにより, レモン, オレンジ及びマンゴー試料の場合には, きょう雑ピークのみを完全に除去することができた. この方法により, レモン及びオレンジの場合には, ガスクロマトグラフイーの所要時間を大幅に短縮することができ, マンゴーの場合には, 保持時間が近接しているためにEDBとまぎらわしいきょう雑ピークを除去することができた. しかし, このフロリジル添加法は, パパイヤの成分に由来する検液注入約3時間後に出現する巨大なきょう雑ピークを消失させる効果は, 全く認められなかった.<br>3) 今回の調査結果では,1981年10月に米国から輸入されたレモンから0.045~0.617ppm, ネーブルオレンジから0.042~1.890ppm, 同時期にハワイ州から空輸されたパパイヤから0.084~0.465ppmのEDBが検出された. そしてこれらの一部のものには, 厚生省が定めたEDBの残留許容値 (0.13ppm) を越えるものがあった. 他方, 同時期にメキシコから輸入されたグレープフルーツからは0.040ppm以下の極めて低いEDB残留が認められたに過ぎなかった. また, 1982年3月フィリピンから空輸されたマンゴーからは, EDBは全く検出されなかった.<br>4) 生鮮果実類中に残留するEDBは, その初期濃度が同一でも, 果実の種類, 果実の保管貯蔵場所の室温あるいは通風換気の状況によって, その経時的減衰の動向が大きく異なることが推測された.
著者
南部 久男 関 東雄 田島 木綿子 山田 格
出版者
富山市科学博物館
雑誌
富山市科学博物館研究報告 = Bulletin of the Toyama Science Museum (ISSN:1882384X)
巻号頁・発行日
no.40, pp.99-101, 2016-06-20

2015年の富山湾(富山県側)で鯨類の漂着,目撃情報を収集した.2015年はマイルカ科のカマイルカLagenorhynchus obliquidens の漂着6例6個体,目撃3例と,ネズミイルカ科のイシイルカ(イシイルカ型)Phocoenoides dalliの漂着が1例1個体確認された.両種とも富山湾では既知種である.カマイルカの12月の目撃情報は,北上初期に富山湾へ来遊した個体と考えられ,富山湾では最も早い時期のカマイルカの目撃情報であった.イシイルカは富山湾での記録は少なく,今回が3例目であった.
著者
中島 求
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
年次大会
巻号頁・発行日
vol.2013, pp._F112002-1-_F112002-5, 2013

The swimming motions of animals are quite interesting and useful from the viewpoint of science and engineering. Three dolphin-like robots and a swimming humanoid which were developed by the author's group were introduced in this paper. The dolphin-like robots of Type 1 and Type 2 were developed in order to investigate the performance of the steady straight swimming. Type 1 had one air motor to actuate the caudal fm and one passive joint at the root of the fin. The total length of the robot was 1.75m. The maximum swimming speed of 1.15m/s and the maximum propulsive efficiency of 65% were achieved. Type 2 had the similar structure with Type 1 although the main joint was actuated by an electric motor whose maximum power was 7.4kW. The maximum swimming speed of 1.9m/s was achieved. Type 3 was developed in order to investigate the performance of the maneuverability. A loop-the-loop motion and three-dimensional motion in the water were realized. The swimming humanoid was developed for research of human swimming. It had 20 motors inside and the body size was half of an actual competitive swimmer. The swimming motion in a circulating water tank and the free swimming in a swimming pool were realized, respectively.
著者
赤松 友成 今泉 智人 西森 靖 王 勇 小河 慎二 伊藤 雅紀 松尾 行雄
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.203-207, 2018-02

生物系特定産業技術研究支援センターの援助を受けてすすめられた「イルカ型対象判別ソナーの開発」(2007-2011)では,広帯域型と従来の狭帯域型の差は一目瞭然であり,カタクチイワシの密な魚群中でもエコグラムが一尾ずつ分離してみえた。このような高精細魚群探知機は研究用途だけでなく,すでに商用として普及し始めている。2016年の夏,古野電気(株)が広帯域スプリットビームシステム(FCV-2100)を発売した。また本稿では触れないが,広帯域散乱では反射強度いわゆるターゲットストレングス(TS)の周波数応答を計測することができる。すなわち,対象の大きさだけでなく,形やインピーダンス差を反映した応答スペクトルが得られると示唆される。これを魚種判別に用いる試みがなされており,懸垂状態の水槽実験ではよい成果を挙げているが,野外への応用にはまだいくつかハードルが存在する。広帯域技術は,研究段階から応用段階に入り,その精細なイメージと反射スペクトルの特性から,いかにして役立つ情報を取り出すかが今後の焦点である。本稿ではとくに養殖業への展開を踏まえて,現段階で利用可能な広帯域技術の応用について述べる。
著者
吉池 哲也 森川 裕久 孫 啓龍 小林 俊一 中島 求
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
年次大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.89-90, 2008

It is known that a dolphin swims fast and freely in water. The propulsive performance and the kinetic performance of the dolphin are one of great concern among researchers. We paid attention to the dolphin's tail flukes which has an important role to generate propulsive force. So the experiments on both the propulsive force of the outboard propulsor with the oscillating wing which is similar to the dolphin's tail flukes in shape and the velocity of a small boat equipped with the outboard propulsor were carried out. The propulsive performance of the wing was discussed compared with rectangular wings.
著者
赤松 友成
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 = Journal of the Society of Biomechanisms (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.134-137, 2007-08-01
参考文献数
12

イルカは哺乳類としての制約条件のもと,超音波の送受信で周辺を認知できるソナー能力を進化させてきた.イルカの有するソナーは高い空間分解能と高度な対象判別能力を持っている.これまでの魚群探知機がモノクロテレビであったとしたら,イルカ型ソナーはハイビジョンテレビと言えるだろう.イルカのような広帯域ソナーを漁業資源探査に応用すべく,私たちの研究チームではイルカソナーシミュレータを構築し,実証機開発に向けた準備が進んでいる.
著者
松山 優治 青田 昌秋 小笠原 勇 松山 佐和
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.333-338, 1999-10-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
17
被引用文献数
8 13

Seasonal variation of Soya Current along the Hokkaido coast in the Sea of Okhotsk was investigated both by the long-term current record obtained at the moored station off Sarufutsu and adjusted sea level record at the tidal stations along the Hokkaido coast. The current record shows significant seasonal variation, i.e., strong in summer and weak in winter. The current variation is closely correlated with the sea level difference between by high sea level in the Japan Sea compared with that in Sea of Okhotsk, while the weak current in winter is due to small difference of the sea level between both seas. This fact strongly depends on the unique seasonal variation of the sea level along the Hokkaido coast in the Sea of Okhotsk, i.e., maximum in winter and minimum in spring. The high sea level in winter is retained by the low salinity water in the subsurface layer of the southern part of the Sea of Okhotsk (Ito, 1997) and found along the southern coast of Hokkaido. The interannual variation of sea level along the Hokkaido coast in the Sea of Okhotsk in winter correlates with the Monsoon-Index (MOI) variation defined as difference of atmosphere pressure between Irkutsk in Russia and Nemuro in Hokkaido.
著者
上田 康郎
出版者
茨城県病害虫研究会
雑誌
茨城県病害虫研究会報 (ISSN:03862739)
巻号頁・発行日
no.35, pp.25-28, 1996-04

近年,海外からの安価な農産物および加工品の輸入増加に伴って,国内産サツマイモの主な消費用途であった澱粉,アルコール等の原料・加工用および飼料用の需要が大幅に減少した。これに対応して国内の各サツマイモ産地は,青果用サツマイモを主体とした生産に転換し,産地間の競争が激しくなった。この結果,青果用サツマイモは従来に増して高い品質が求められるようになり病害虫の防除は必須となっている。とくに,ネコブセンチュウは収量・品質に及ぼす被害が大きいので,従来からD-D剤またはクロルピクリン剤等の土壌くん蒸剤による防除が行われてきた。これらの土壌くん蒸剤は,ネコブセンチュウに対して優れた防除効果を示すが,処理時の地温や土壌水分等の土壌条件や気象条件によって効果が左右される。最近では,一段と安定した高い防除効果を得るために土壌くん蒸剤の施用量を増したり,または両薬剤を併用する傾向にある。ネコブセンチュウの防除効果を一段と高める手段として,安易なくん蒸剤の増量またはくん蒸剤相互の併用は,防除効果の点から得策と考えられず,さらに,危被害の発生および環境への影響についても考慮することが必要である。これらのことから,今回ネコブセンチュウに対する薬剤の体系防除法について試験を行ったので結果の概要を報告する。
著者
鈴木 彬
出版者
公益社団法人日本数学教育学会
雑誌
日本数学教育学会誌 (ISSN:0021471X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, 2003-01-01

この基調発表は,日本数学教育学会の研究活動の1つとして,本学会の前年度までの全国大会での研究発表や協議内容を中心にして,数学教育研究の基調となる課題や指針について研究部中学校部会で考察検討したものです.項目・内容は,各分科会の研究発表・協議の課題を明確にするという立場で,1. 本分科会の位置(性格) 2. これまでの研究経過 3. 問題点と今後の課題として述べてあります.大会の分科会構成はその都度便宜的に区分けするもので,この基調発表の領域とは必ずしも一致していない場合もあり,研究の内容等はいくつかの領域に関連共通したり重複したりしているものもあります.新学習指導要領での教育課程がはじまり,各学校現場で創意工夫と自主的で意欲的な実践活動が一層期待されます.特に,「数学的活動を楽しむ.」という目標を踏まえて,これまで以上に生徒が自ら学び,自ら考える力を育てることが期待されています.さらに,21世紀に向って,これまでの数学教育をどう改善していけばよいか,問題提起や提案が活発になり,一層研究が深まることが期待されます.新学習指導要領の特徴は,授業内容,授業時数の削減,総合的な学習の時間や選択教科の時間の設置,絶対評価の導入など承知のことですが,さらに,学習指導要領の枠組の基準は最低とされ,選択の内容を現場に委ね,内容の上限撤廃なども挙げられ,新しい教育改革が進んでいます.そして,選択の内容が現場に委ねられたということから,選択でどのような数学の内容を取り扱うのがより効果的であるかの研究も大いに期待されます.評価については,絶対評価の実施により評価規準をどう作っていくか.毎日直面することに対しての評価規準の研究も,より一層取り組んでいくことが期待されます.国際交流も年々盛んになる昨今,数学の学力や学び方など数学教育について国際的視野に立った研究も望まれます.本学会が,日本の数学教育研究の根幹をなす学会であり,研究大会はその成果や進むべき方向を確認し,数学教育の在り方を追求していくものです.この基調発表は,学会誌「数学教育」(原則として毎年毎卷の第1号)と全国大会総会特集号に掲載します.日頃の研究活動や全国大会の分科会で,ここに示した当面する課題を十分に念頭に入れて,先行研究や研究の積み上げに留意して,広くかつ継続的な視点を失わないよう実践的な追求をしていくように期待するものです.
著者
後藤 雅宏 東島 弘樹 北岡 桃子
出版者
日本膜学会
雑誌
(ISSN:03851036)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.226-232, 2021 (Released:2021-08-24)

In recent years, pollinosis immunotherapy has been attracting much attention, however, the administration methods of vaccine drugs have been limited to the subcutaneous injection or the sublingual administration. In this study, we developed a transdermal vaccine administration strategy for the simple and non–invasive pollinosis immunotherapy. For the transdermal antigen delivery, the presence of stratum corneum, the hydrophobic outermost layer of the skin, is an obstacle. Another problem with current pollinosis immunotherapy is side effects of using the whole allergen molecules. To overcome these issues, we applied a solid–in–oil (S/O) nanodispersion, which is composed of hydrophilic antigen molecules coated with hydrophobic surfactants, and enables transdermal penetration of the antigen molecules into the skin. In addition, we introduced a T cell epitope peptide derived from the cedar pollen allergen (PepA : SMKVTVAFNQFGP), which had shown lower risks of the side effects. We succeeded in preparing an S/O nanodispersion containing PepA. The oil–based S/O system enhanced the skin penetration of the PepA. Antigen specific IgE levels in the murine models were significantly reduced by the S/O administration. Activations of the type–1 helper T and regulatory T cells were also confirmed, which indicates the effectiveness of the pollinosis immunotherapy using the S/O vaccine system.
著者
吉竹 功央一 並木 淳郎 小崎 遼太 猪口 孝一郎 越智 明徳 関本 輝雄 山口 薫 大沼 善正 近藤 武志 柴田 正行
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.626-630, 2019-06-15 (Released:2020-08-17)
参考文献数
7

症例は60歳代,男性.意識消失を伴う高度房室ブロックの診断で恒久ペースメーカ植込みを行った.手術中,良好な閾値がみつからず,心房リードの留置に難渋したため,心房リードを右房側壁に留置した.手術翌日に呼吸困難,酸素飽和度の低下を生じ,胸部CT検査で右肺の気胸,心膜気腫,縦隔気腫を認めたため,胸腔穿刺で脱気を行った.解剖学的に心房リードが右房壁を穿孔した可能性が高いと判断し,外科的治療を考慮したが,心房・心室リードともに感度・閾値・抵抗値に変化を認めず,バイタルは安定していたため,経過観察とした.その後は経過良好であり,脱気後1週間で胸腔ドレーンを抜去し,胸部CT検査で気胸,心膜気腫,縦隔気腫が消失していることを確認して退院となった.解剖学的に右房側壁は胸膜と近接しており,リードのスクリューが心膜,胸膜を貫通し,気胸,心膜気腫,縦隔気腫を生じたと考えられる.心膜気腫,縦隔気腫は恒久ペースメーカ植込みの合併症において比較的稀である.治療法の選択に苦慮したが,保存的加療で治療し得た症例を経験したので報告する.
出版者
日経BP
雑誌
日経ニューメディア = Nikkei new media (ISSN:02885026)
巻号頁・発行日
no.1723, pp.5-6, 2020-10-05

NHKは2020年9月15日に「NHKインターネット活用業務実施基準」の改訂に向け素案を公表した。最も注目されたのが、常時同時配信などを含む業務実施に要する費用についてである。現行の実施基準では各年度の受信料収入の2.5%を上限とされているが、これを削除する…